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横浜地方裁判所 平成17年(行ウ)35号 判決 2006年5月17日

原告

X1

X2

上記両名訴訟代理人弁護士

矢島宗豊

同補佐人税理士

石戸道子

被告

南足柄市

上記代表者兼処分行政庁

南足柄市固定資産評価審査委員会

上記委員会代表者委員長

同訴訟代理人弁護士

大澤孝征

植木智恵子

主文

1  原告らの請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は原告らの負担とする。

事実及び理由

第3 当裁判所の判断

1  地方税法349条2項1号に掲げる事情の有無について

ア  法432条1項ただし書は、固定資産税の納税者は、その納付すべき当該年度の固定資産税に係る固定資産のうち、法411条3項の規定によって土地課税台帳等又は家屋課税台帳等に登録されたものとみなされる土地又は家屋の価格については、当該土地又は家屋について法349条2項1号に掲げる事情があるため、同条同項ただし書、3項ただし書又は5項ただし書の規定の適用を受けるべきものであることを申し立てる場合を除いては、固定資産評価審査員会に対し審査の申出をすることができない旨規定する。

これによれば、本件審査申出に係る平成17年度は、法341条8号にいう第3年度であるから、平成17年度の固定資産税の賦課期日である同年1月1日において、本件各土地について法349条2項1号に掲げる事情がなければ、審査の申出をすることができないということになる。

イ  そこで、本件において同号に掲げる事情があるかどうかについてみると、原告らは、南足柄市長は、本件各土地を1画地の宅地として認定評価したのに対し、原告らは、平成17年度の賦課期日における現況は、3画地であり、うち1画地は宅地、その他の2画地は山林であるとして審査申出をしたとして、市長の認定と原告らの申出とが異なることをもって、同号にいう「特別の事情」がある旨主張する。

しかしながら、同号にいう「特別の事情」とは、土地については、現況地目の変更等により、土地の区画、形質に著しい変化があった場合等をいうものと解される。原告らが本件審査申出の理由としていることは、本件各土地について上記のような変化があったということではなく、その評価に誤りがあるというに過ぎないものであって、要するに、固定資産課税台帳に登録された事項についての不服をいうものと認められるから、およそ上記「特別の事情」とはなり得ないものである。原告らが、固定資産課税台帳に登録された価格についての不服をいうのであれば、このような不服は、上記アのとおり、法は、基準年度に限って審査申出をすることができるとしているのである。

ウ  原告らは、その他にも、前記第2、4(1)ウ及びエのとおり、南足柄市長が本件各土地を高級住宅地として評価したことや、標準地の評価方法等に違法がある旨主張し、後者の点は本件審査申出の補充書(〔証拠略〕)においても述べられている。

しかしながら、上記のとおり、本件においては、本件各土地について法349条2項1号に掲げる事情がなければ、審査の申出をすることができないのであり、これらの事由はいずれも同号に規定する事情には当たらないものといわざるを得ない。

エ  原告らは、本件各土地は、平成4年において2筆3画地であったのであり、以来その現況に変更がない旨主張しており、また、本件審査委員会に対しても、「本件各土地は、平成5年以来、形質及び現況地目の変更をしていない。平成16年1月1日以降平成17年1月1日までの間に、新たに樹木を植栽したり、伐採、移植したことはない。」と申し立てていたのであって(〔証拠略〕)、本件中には、本件各土地に現況地目の変更等があったという証拠はない。

オ  以上のとおり、本件各土地については法349条2項1号に掲げる事情があると認めることはできないし、原告らが同事情があるとして本件審査申出をしたともいえないから、本件審査申出は不適法である。

2  原告らのその余の主張について

原告らは、前記第2、4(1)アのとおり、本件審査決定には手続的な違法があるとも主張する。

しかし、まず、原告らは、本件審査決定が原告らの審査申出書に不備があったとして却下した可能性を主張するが、前記第2、2(5)のとおり、本件審査決定は、法432条1項ただし書の規定により審査の申出をすることができないとして本件審査申出を却下したのであって、原告らの主張はその前提を欠くものである。

そして、法433条1項は、固定資産評価審査委員会は、固定資産税の納税者から審査の申出を受けた場合、その申出を受けた日から30日以内に審査の決定をしなければならないとしており、本件審査決定は、確かに本件審査申出から3日以上を経過してされたものである。

しかしながら、この期間は、審査手続を速やかに行うという見地から規定されたもので、30日以内という短い期間を定めていることからしても訓示規定と解すべきであって、これに反したからといって直ちに審査決定が違法となる性質のものではないというべきである。

したがって、手続的違法をいう原告らの主張にも理由がない。

3  結論

以上のとおり、本件審査申出が不適法であるとして、これらを却下すべきとした本件審査決定は適法である。したがって、原告らの本件請求は理由がないからいずれも棄却することとし、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条、65条1項本文を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 河村吉晃 裁判官 植村京子 高橋心平)

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