横浜地方裁判所 平成18年(ワ)3108号 判決 2008年3月12日
主文
1 被告は、原告X1に対し、金77万1063円及び内金66万6469円に対する平成17年10月18日から、内金8万1000円に対する平成19年4月28日から支払済みまで、それぞれ年5分の割合による金員を支払え。
2 被告は、原告X2に対し、金46万2490円及び内金37万7504円に対する平成15年4月2日から、内金8万1000円に対する平成19年4月28日から支払済みまで、それぞれ年5分の割合による金員を支払え。
3 被告は、原告X3に対し、金61万8164円及び内金53万3065円に対する平成16年11月3日から、内金8万1000円に対する平成19年4月28日から支払済みまで、それぞれ年5分の割合による金員を支払え。
4 被告は、原告X4に対し、金73万0548円及び内金64万9548円に対する平成18年1月11日から、内金8万1000円に対する平成19年4月28日から支払済みまで、それぞれ年5分の割合による金員を支払え。
5 被告は、原告X5に対し、金74万0834円及び内金65万9834円に対する平成18年2月3日から、内金8万1000円に対する平成19年4月28日から支払済みまで、それぞれ年5分の割合による金員を支払え。
6 被告は、原告X6に対し、金15万3528円及び内金7万2320円に対する平成18年3月14日から、内金8万1000円に対する平成19年4月28日から支払済みまで、それぞれ年5分の割合による金員を支払え。
7 その余の原告らの請求をいずれも棄却する。
8 訴訟費用はこれを5分し、その1を原告らの、その余を被告の各負担とする。
9 この判決の主文第1ないし第6項は、仮に執行することができる。
事実及び理由
第1当事者の求めた裁判
1 原告ら
(一) 被告は、原告X1に対し、金92万1063円及び内金66万6469円に対する平成17年10月18日から、内金23万1000円に対する平成18年9月2日から支払済みまで、それぞれ年5分の割合による金員を支払え。
(二) 被告は、原告X2に対し、金61万2490円及び内金37万7504円に対する平成15年4月2日から、内金23万1000円に対する平成18年9月2日から支払済みまで、それぞれ年5分の割合による金員を支払え。
(三) 被告は、原告X3に対し、金76万8164円及び内金53万3065円に対する平成16年11月3日から、内金23万1000円に対する平成18年9月2日から支払済みまで、それぞれ年5分の割合による金員を支払え。
(四) 被告は、原告X4に対し、金88万0548円及び内金64万9548円に対する平成18年1月11日から、内金23万1000円に対する平成18年9月2日から支払済みまで、それぞれ年5分の割合による金員を支払え。
(五) 被告は、原告X5に対し、金91万2634円及び内金65万9834円に対する平成18年2月3日から、内金25万2800円に対する平成18年9月2日から支払済みまで、それぞれ年5分の割合による金員を支払え。
(六) 被告は、原告X6に対し、金33万5728円及び内金7万2320円に対する平成18年3月14日から、内金26万3200円に対する平成18年9月2日から支払済みまで、それぞれ年5分の割合による金員を支払え。
(七) 訴訟費用は被告の負担とする。
(八) 仮執行宣言
2 被告
(一) 原告らの請求をいずれも棄却する。
(二) 訴訟費用は原告らの負担とする。
第2事案の概要等
本件は、原告らが、被告との間の金銭消費貸借契約に基づき、弁済として支払った金員を、利息制限法所定の制限利率に引き直して計算すると、過払金が生じているとして、被告に対し、不当利得返還請求権に基づき、過払金の返還を求めると共に、取引履歴の開示がされず、過払金発生後もその事実を告げなかったという不法行為に基づき、これによる精神的苦痛に対する慰謝料及び弁護士費用の損害賠償を求めた事案である。
被告は、原告らとの取引は、個々の独立した取引であり、過払金が発生したとしても、その後の債務には充当されず、一連の充当は相当でないこと、被告が悪意の受益者ではないこと、過払金返還請求権につき、本訴提起より10年を遡ったものについては消滅時効が成立すること等を主張して、原告らの請求を争った。
1 争いのない事実等(弁論の全趣旨により認められる事実を含む。)。
(一) 被告は、貸金業の規制等に関する法律(以下「貸金業法」という。)2条2項所定の貸金業者である。
(二) 本件取引の存在
原告らは、被告との間で、遅くとも別紙「法定金利計算書」の各原告に対応するNo.1の取引日に金銭消費貸借契約を締結し、以来、最終取引日まで借入れと返済を繰り返してきた(以下「本件各取引」という。)。
本件各取引についての取引日、借入金額及び弁済額は、別紙「法定金利計算書」1ないし6の「年月日」、「借入金額」及び「弁済額」欄にそれぞれ記載されているとおりである。
(三) 消滅時効の援用
被告は、本件各取引に係る過払金返還請求権につき、本訴提起より10年以上を遡る分につき消滅時効を援用するとの意思表示をした。
これに対し、原告らは、予備的に、一部消滅時効にかかっている過払金返還請求権と、その後の借入債務とを対当額において相殺する旨の意思表示をした。
(四) 相殺の意思表示
被告は、準備書面において、時効にかかっていない本件各取引に係る過払金返還請求権と被告の残債権とを対当額で相殺する旨の意思表示をした。
2 争点
(一) 既発生の過払金を後に発生した貸金債務に充当すること(いわゆる一連計算)の可否
(二) 貸金債務に充当される過払金について民法704条の利息が発生するか
(三) 仮に、貸金債務に充当される過払金について民法704条の利息の発生が認められたとして、利息金を後に発生した貸金債務に充当することの可否
(四) 原告らの損害賠償請求(慰謝料請求、弁護士費用請求)の可否
(五) 原告らに対する過失相殺の可否
(六) 本訴提起前10年以上を遡る過払金返還請求権の時効消滅
3 争点に関する当事者の主張の要旨
(一) 争点(一)について
【原告ら】
本件各取引は、当初の借入金に対し、数回ないし10回程度の分割返済がされると、最後の返済時に残額の弁済をしたこととして、同日に新たな書き換えによる借入がされるという書類上の形式を採っているが、これは、短期間の書き換えにすぎず、その実質は、一連一体の継続的取引である。リボルビング契約その他の基本契約が存在するかしないかに関わらず、取引実体をすなおにみれば、上記一体性は肯定される。借入の度に借入申込書が作成されているが、会員番号は、常に同一となっている。
したがって、利息制限法所定の制限利率に引き直して計算した結果、過払金が生じた場合、これを後の借入債務に順次充当することは当然に許される。
【被告】
(1) まず、原告らと被告との間では、15回から20回程度の貸付取引が行われているが、原告らと被告との間には、全ての取引を規律する基本契約が存在しないこと、そして、これらの各取引が個別の契約に基づいているということについては、各借用書等の存在等から、争いようのない事実である。
(2) 上記事実を前提にしてもなお、既発生の過払金を後に発生した貸金債務に充当すること(一連計算)が許されるのか。この場合、被告に対しては、貸金債権の消滅という不利益な法律効果が生じ、他方、原告らに対しても、過払金債権の消滅という重要な法律効果が生じる以上、かかる法律効果を導く法的根拠が明らかにされなければならないということについては、裁判所を含む「司法」の使命である。
(3) 原告らは、一連計算の法的根拠の1つとして、利息制限法の強行法規性を主張する(原告ら準備書面3の2頁)。
しかしながら、利息制限法には、「既発生の過払金及び利息金は後に発生した貸金債務に当然に充当される」との法律効果は一切規定されていない。
裁判所は、立法者であってはならず、法の客観的な意味を探求することを使命としなければならないのは、当然である。ここに、法の客観的な意味とは、法の解釈適用に当たっては、政治的要求に左右されてはならず、国民の法に対する予測可能性を害してはならないということである。
この点、原告らの主張は、借主保護という政治的要求の下、利息制限法に規定されていない法律効果を求めるものであって、解釈論の域を大きくはみ出し、国民の予測可能性を著しく害するするものである。
最高裁昭和43年11月13日大法廷判決では、そもそも制限超過利息を残存元本に充当することについてさえも、「借主保護という利息制限法の立法趣旨を考慮しても法の解釈を超えるものである」旨の反対意見が存在していたことが想起されるべきである。
利息制限法は、上記法律効果を発生させる法的根拠とはならない。
(4) さらに、原告らは、公平の観点をもって、一連計算の法的根拠の1つとするようである(原告ら準備書面2の6頁)。
しかしながら、これこそは実質的な理由付けであり、立法事実に他ならないこと明白であり、上記法律効果を発生させる法的根拠ではない。
さらに、原告らは、最判平成19年7月19日にいう「充当の合意」が原告らと被告との間に存在したとして、上記法律効果を発生させる法的根拠とするようなので(原告ら準備書面4)、これを検討する。
イ 確かに、原告らと被告との間において、「既発生の過払金を後に発生した貸金債務に充当することを合意」しているのであれば、そのような法律効果が生じるのは当然であり、まさに、法的根拠たり得るものである。
しかしながら、ここで「合意している」というからには、「黙示の合意」の成立を認める場合であっても、当事者双方が、少なくとも、合意している内容を認識していることが最低限必要であるということは、論を待たない。そして、その「合意の内容」とは、「制限超過部分を元本に充当した結果、過払金が発生した場合には、その後に発生する新たな借入金債務に充当する」というものである。
この点、原告らは、被告が「現実の意思」を問題とすることは不当である旨論難するが、「合意」とは、「意思の合致」であり、仮に、黙示的であっても、当事者双方が、「制限超過部分を元本に充当した結果、過払金が発生した場合には、その後に発生する新たな借入金債務に充当する意思」を有していなければ、意思が合致することはあり得ないのである。そして、かかる「意思」を有していなければならない時期は、遅くとも、過払金を貸金債務に充当する時点である。
原告らは、最高裁は、「現実の意思」など問題にしていないというが、裁判所は、空想の世界を論じる場ではない。当事者間に現れた「事実」を確定し、これを法に当てはめる場である。そして、上記問題に即していえば、当時の当事者双方の「意思・認識」を確定して、その「合致」があるかを検討しなければならないのである。これが、民事裁判の姿であるということは、今更言う必要はないはずである。
しかしながら、上記最判は、そのような課程を全く経ることなく、空想の世界に逃げ込み、「合意」があったと「事実認定」したのである。しかも、上記最判の原審においては、「合意」の有無が争点になっていなかったにもかかわらず(乙50)、突然に、認定するに至り、反論の機会を与えることなく確定したのである。そこには、仮に、「合意」の有無を検討させるために原審に差し戻した場合、事実としての「合意」の存在を認定することは到底無理であるから、上告審において、確定させること狙ったものであり、政治的判断が働いたと言わざるを得ないのである。
ウ そこで、本件であるが、原告らの尋問の結果、少なくとも原告らにおいては、被告との取引期間の全てを通じて、「制限超過部分を元本に充当した結果、過払金が発生した場合には、その後に発生する新たな借入金債務に充当する」という意思を全く有していなかったことが明白となった。
すなわち、原告X1は、被告人との取引当時、過払金が発生していたことを認識しておらず(原告X1尋問7頁)、過払金が発生する場合もあるという認識もなかったと認められ、まして、被告から借入れをするときには、「できるだけ返して、もうなくしたい」と思っており(同11、12頁)、将来の借入れなど、全く想定していなかった。
また、原告X3も、被告人との取引当時、過払金が発生していたことを認識しておらず(原告X3尋問6頁)、過払金が発生する場合もあるという認識もなかったと認められ、まして、被告から借入れをするときには、「また次回も借りるだろうなというふうに思いながら、借りたのではない」というのであるから(同9頁)、将来の借入れなど、全く想定していなかった。
さらに、原告X4も、被告人との取引当時、過払金が発生していたことを認識しておらず(原告X4尋問7頁)、過払金が発生する場合もあるという認識もなかったと認められ、まして、被告から借入れをするときには、「次にまた借りようという気持ちはなかった」というのであるから(同9頁)、将来の借入れなど、全く想定していなかった。
さらに、原告X5も、被告人との取引当時、過払金が発生していたことを認識しておらず(原告X5尋問6頁)、過払金が発生する場合もあるという認識もなかったと認められ、まして、被告から借入れをするときには、「できれば、そこで手切りたい」と思っていたというのであるから(同10頁)、将来の借入れなど、全く想定していなかった。
さらに、原告X6も、被告人との取引当時、過払金が発生していたことを認識しておらず(原告X6尋問4頁)、過払金が発生する場合もあるという認識もなかったと認められ、まして、被告から借入れをするときには、「次に借りようなんてことは考えておらず」、「完済をしたときには、二度と借りるもんかと思った」というのであるから(同11頁)、将来の借入れなど、全く想定していなかった。
かかる原告らの取引当時の「意思・認識」(事実)が尋問の結果明らかになったからには、これらを無視して、よもや「当事者は、・・・、制限超過部分を元本に充当した結果、過払金が発生した場合には、その後に発生する新たな借入金債務に充当することを合意している」(最判平成19年7月19日)などと認定することは、到底許されないし、できないであろう。
裁判所が、かかる「事実認定」を軽々に行うならば、訴訟当事者がいくら攻撃と防御を尽くしても全くの無駄であり、民事裁判は、茶番に等しいということを苦言する。
(5) 最高裁第三小法廷平成19年2月13日判決がいう「特段の事情」の不存在
最高裁第三小法廷平成19年2月13日判決がいう「特段の事情」、すなわち、①貸主と借主との間で、基本契約が締結されているのと同様の貸付けが繰り返されており(貸付繰返し)、②先行貸付け過払金の充当に関する特約があるか(特約の存在)、又は、③先行する貸付けの際にも後の貸付けが想定されていたこと(貸付想定)との要件については、原告らと被告との間の取引には、認められない。
この被告の主張が正しいということについては、原告らの尋問を行った結果、裏付けられた。
すなわち、原告らは、被告から借入れを行う際、ことごとく、次回の借入れを想定することはなかったし(上記③の要件の欠缺)、過払金の存在及びその発生の可能性を認識していない以上、被告との間で、先行貸付過払金の充当について特約を締結することなどあり得なかった(上記②の要件の欠缺)のである。
よって、最高裁第三小法廷平成19年2月13日判決がいう「特段の事情」は、認められない。
(6) 相殺
原告らは、既発生の過払金ないし利息金をその後に発生した貸金債務に充当する、いわゆる一連計算を導く法的根拠の1つとして、予備的に、過払金債権と後に発生する貸金債務との相殺を主張する(原告ら準備書面5)。
この点、原告X1を例にとると、例えば、平成12年1月17日に発生した30万円の貸金債務(乙2の6)と、原告X1が主張するところの、これ以前に発生していたとする過払金債権とが、原告X1が平成20年1月7日付け準備書面5においてした相殺の主張によって、相殺されるためには、上記30万円の貸金債務が、相殺の主張時まで存在していて過払金債権と相殺適状でなければならない。すなわち、平成12年2月18日以降の原告X1による2万5000円の各弁済を無効として、30万円の貸金債務が残存していなければならないのである。
しかしながら、原告X1が上記30万円の貸金債務の弁済として2万5000円を支払ったことは、紛れもない事実であって、これにより、貸金債務は、弁済によって、消滅したのである(勿論、制限超過部分は残存元本に充当され、元本は、それだけ消滅した)。かかる弁済の効果を認めないとする理由はない。
この点、東京高裁平成19年7月25日判決(乙51)は、相殺の主張を明確に否定しているところである(18頁)。
このように、原告らが、相殺を主張する時点では、受働債権たる貸金債務は既に消滅していて、相殺適状にはないから、相殺は、認められない。
以上のとおり、本件において、いわゆる一連計算を導く現行法上の法的根拠は、どこにもない。
原告らと被告間において、長年に亘り取引が継続したのは、その都度、原告らにおいて、新たな資金需要が生じたからであって(原告X1・6頁等)、まさに、結果的にそうなったに過ぎないし、長年に亘り取引が継続したとの事実から、「当事者は、・・・、制限超過部分を元本に充当した結果、過払金が発生した場合には、その後に発生する新たな借入金債務に充当することを合意している」(最判平成19年7月19日)などという事実を推認することは、推認の域を遥かに超えていて、理解不能である。
また、本件における借換契約についても、従前の取引にかかる債務を準消費貸借の目的とし、現実に交付された金員を消費貸借の目的とする混合契約の締結に他ならず、少なくとも、原告らにおいて、過払金の存在を認識しておらず、将来の借入れを想定していない以上、やはり、「当事者は、・・・、制限超過部分を元本に充当した結果、過払金が発生した場合には、その後に発生する新たな借入金債務に充当することを合意している」(最判平成19年7月19日)などという事実を推認させる間接事実には成り得ない。最高裁昭和43年11月13日大法廷判決によって、従前の取引にかかる債務が減少ないし存在しないことになるだけである。
全ての貸金取引を規律する基本契約が存在せず、かつ、各貸金取引が個別の契約に基づいている場合であっても、どうしても、既発生の過払金を後に発生した貸金債務に充当するという法律効果を発生させたいというのであれば、新たな立法を待つほかないのである。
裁判所は、決して、立法府になってはならないのである。
(二) 争点(二)について
【原告ら】
貸金業者である被告は、利息制限法所定の制限を超過する利率に係る利息を収受していれば、やがて元金の返済が終わり、過払金が発生することを知っていたはずであるから、過払金が発生した場合には、特段の事情がない限り、民法704条の「悪意の受益者」に該当する。
被告は、貸金業法43条のいわゆるみなし弁済が成立すると信じていさえすれば「悪意」が否定されるなどと主張するが、過払金返還訴訟における貸金業者の「悪意」は、みなし弁済が成立しないことの認識ではなく、利息制限法所定の制限利率を超えていることの認識で足りる。
【被告】
被告は、民法704条にいう「悪意の受益者」には該当しない。
民法704条の「悪意の受益者」とは「法律上の原因のないことを知りながら利得をした者」を意味する(最高裁判所昭和37年6月19日判決・裁判集民61巻251頁)ところ、貸金業者である被告は、貸金業法43条1項のみなし弁済が成立すれば、利息制限法を超過する利息であっても有効な利息の弁済として受領できるから、本件において「法律上の原因がない」とは、「本件利息の受領にみなし弁済が成立しないこと」をいい、悪意の受益者とは、「本件利息の受領につきみなし弁済が成立しないことを知りながら本件利息を受領した者」と解するのが相当である。
本件において、被告は、原告らに対し、貸金業法17条1項所定の要件を充足した書面を交付した。同法18条1項所定の書面は交付していないが、最高裁判所平成11年1月21日判決・民集53巻1号98頁によれば「特段の事情」があれば被告は同書面の交付義務を免れるのであるから、被告は、原告らから受領した利息につきみなし弁済が成立する可能性が十分存在すると認識していた。したがって、被告は「悪意の受益者」ではない。
仮に、過払金を貸金債務に充当して計算するいわゆる一連計算の法的根拠を「当事者間の合意」に求める場合、当事者間においては、被告が、過払金を新たな借入金債務が発生してこれに充当されるまで保有することを認めるというのが合理的な意思であるというべきである。過払金を後に発生する貸金債務に充当することを合意しているというのであるから、当然の意思解釈であるはずである。
かかる意思解釈は、長年に亘り取引が継続していることや、借換契約の締結から、前記「合意」の存在を推認することよりも、遥かに容易なはずである。
従って、結局、後の借入金債務に充当される過払金については、被告がこれを保有する「法律上の原因」があることになるので、不当利得とはならず、よって、利息は発生しない。
(三) 争点(三)について
【被告】
原告らは、過払金に利息の発生を認め、そして、利息金についても、後に発生する貸金債務に充当させている。
しかしながら、前記のとおり、貸金債務に充当される過払金について、利息が発生することはあり得ないのであるが、仮に、利息の発生を認めた場合であっても、これを後に発生した貸金債務に充当する法的根拠は、どこにもない。
すなわち、仮に、過払金元本を貸金債務に充当して計算するいわゆる一連計算の法的根拠を、「当事者間の合意」に求めたとしても、少なくとも、原告らは、取引当時、過払金の発生すら認識していなかったのであるから、将来、利息金が発生することもまた、認識不可能であったのである。
従って、利息金をもって、これを将来の貸金債務に充当することを合意することなど、全くあり得ない(黙示の合意の存在も認められない)のである。
(四) 争点(四)について
【原告ら】
原告は、被告に対し、書面により全部の取引履歴の開示を求めて以降、本訴提起までに数回、電話や書面で取引履歴の全部の開示を求めたが、被告は、これに応じなかった。被告の取引経過不開示の結果、「債務が残っているのか、あるいは逆に過払金債権を有しているのか確定することができず、原告らは、破産手続を選択するのか、破産手続を選択したとして管財事件となるのか、もしくは任意整理の可能性もあるのか、判断することができず、心理的に不安定な状況に置かれ、弁護士に依頼したにもかかわらず、落ち着いて仕事もできず、平穏な日常を送ることができない日々が続いた。
最高裁平成17年7月19日判決は、貸金業者は、債務者から取引履歴の開示を求められた場合、その開示要求が権利の濫用に亘ると認められるなどの特段の事情のない限り、貸金業法の適用を受ける金銭消費貸借契約の付随義務として、信義則上、保存している業務帳簿に基づいて取引履歴の開示義務を負うと判示している。これに反する被告の行為は不法行為を構成する。
このような精神的苦痛に対する慰謝料としては、各原告につき先例を参照し20万円が相当である。
また、本訴提起に弁護士を依頼せざるを得なかったところ、その費用としては、1人につき3万1000円が相当である。
【被告】
(1) 損害の不発生
原告らは、上記のように、「心理的に不安定な状況に置かれ、弁護士に依頼したにもかかわらず、落ち着いて仕事もできず、平穏な日常を送ることができない日々が続いた」(原告らの訴え変更申立書5頁)と主張し、損害を被ったという。
しかしながら、まず、原告X1は、弁護士に相談した当初から、任意整理の方針で行くことは決まっており、破産の相談をしたことはなく(原告X1尋問12頁)、しかも、弁護士に相談して1週間がたったころには、弁護士から過払いになっているという報告を受けて、安堵したというのであり(同7、12、13頁)、上記主張とは全く異なっていることが明らかとなった。
そして、原告X1が感じていたのは、要するに「なかなか解決できないのは、何でだ」(同13頁)という、法的紛争を抱える者にとっては、当たり前の感情を有していたに過ぎないのである。
また、原告X3も、弁護士に依頼したのは、初めから債務整理であり、原告らは、破産手続を選択するのか、破産手続を選択したとして管財事件となるのか、もしくは任意整理の可能性もあるのか、判断することができず、心理的に不安定な状況に置かれ、弁護士に依頼したにもかかわらず、落ち着いて仕事もできず、平穏な日常を送ることができない日々が続いた」などという事実が存在せず、虚偽であることが白日の下にさらされた。
(2) 不当訴訟
本件のような貸金業者相手の過払金請求訴訟においては、社員が代理人となって訴訟を行うを防ぐために事物管轄を地方裁判所にするべく、過大な慰謝料請求を行ったり、有利な和解金額を引き出すことを目的に不要な慰謝料請求を併合する場合が多々存在する。
本件でも、原告ら本人尋問の結果、すべての原告において、「債務が残っているのか、あるいは逆に過払金債権を有しているのか確定することができず、原告らは、破産手続を選択するのか、破産手続を選択したとして管財事件となるのか、もしくは任意整理の可能性もあるのか、判断することができず、心理的に不安定な状況に置かれ、弁護士に依頼したにもかかわらず、落ち着いて仕事もできず、平穏な日常を送ることができない日々が続いた」などという事実が存在せず、全くの虚偽主張であることが明白となったが、何故に、このような主張となったのか、大いに疑問のあるところである。
仮に、このような事実が存在しないことを知りながら、請求に及んだとすれば、訴訟詐欺にも問擬される重大な不法行為であるし、上記目的のために請求に及んだとすれば、不当訴訟である。
(3) 開示義務違反の不存在
そもそも、貸金業法は、債務者との関係において、貸金業者に取引履歴を開示すべき義務を負わせていない。
貸金業法19条は、貸金業者に対し、その営業所又は事務所ごとに債務者ごとに、貸し付け契約に係る受領金額その他一定の事項を記載した帳簿を作成し、保管すべき義務を規定しているが、その趣旨は、貸金業者をして正確に取引内容を記録・保存させ、後日において確認が可能な記録を残すことにより、貸金業者の業務の健全化を図り、業務の透明性を確保しようとする点にある。つまり、同条は、金融庁、財務局の監督官庁による監督機能の確保を目的とするものであって、直接、債務者と貸金業者間の開示義務等、私法上の権利義務関係を創設するものではない。
また、貸金業法は、帳簿の保存義務のみを定めており、債務者に対する提出や開示を義務づける規定はない。
金融庁事務ガイドライン3-2-7(1)は、債務者、保証人等からの一定事項の開示請求については、貸金業者がこれに協力すべきことを規定しているが、これは「協力」義務に止まり、開示義務という形での規定ではない。
なお、被告は、原告ら代理人の要求にしたがって、本訴提起前に現存する取引履歴の開示を全て行っているのである。
従前の裁判においては、裁判所が、損害発生の有無や因果関係を全く吟味することなく、原告の主張を漫然と受入れ、感覚的な判断をしていたと言わざるを得ないのであり、裁判所は、もはや、そのような態度を改めるべきなのである。
原告らの損害賠償請求は、認められるべくもない。
(五) 争点(五)について
【被告】
前記のとおり、原告らに損害賠償請求が認められることはあり得ないのであるが、仮に、認められた場合であっても、原告らの尋問の結果、原告らには、取引経過を把握できなかったことについて、ことごとく、落ち度が存在していた事実が明らかとなった。
すなわち、原告らは、総じて、被告から受け取った書面については、受け取ったそばから廃棄しており、被告との取引を把握しようなどと考えたことは微塵もなかったのである。
被告の過失相殺の主張が認められることは、明らかである。
【原告ら】
争う。
被告に取引履歴の開示義務があることは前記のとおりである。
(六) 争点(六)について
【被告】
一連の計算が相当でないことは、(一)において詳述したところであるが、そうであるとすれば、過払金は、これが発生するごとに、その時から消滅時効の起算が開始し、10年を経過した時点で消滅時効により消滅する。
仮に、一連の充当計算が認められるとしても、その結果生じた過払金についても同様であるから、本訴提起より10年以上を遡った時点で発生していた過払金は、時効消滅している。
被告は、本訴において、消滅時効を援用する。
【原告ら】
争う。
原告らは、予備的に、一部消滅時効にかかっている過払金返還請求権と、その後の借入債務とを対当額において相殺する旨の意思表示をした。
第3争点に対する判断
1 取引経過について
被告は、原告らとの取引経緯にかかる大半の履歴を本訴提起前に提出しているが、原告ら主張の取引履歴は、それより2、3年程度遡っている。
ところで、被告らが最古の取引であるとして提出する借入申込書をみると(乙1の1、乙4の1、6の1、8の1、10の1)、「前30万」、「前23万」、「残241972」、「その他の家族変わりなし」など、それより前に取引が存在することを推認させる記載があるので、原告ら主張のとおり、別紙「法定金利計算書」1ないし6のNo.1に記載された取引日が当初の取引であると認められる。
これによれば、原告らは、被告との間で、遅くとも別紙「法定金利計算書」の各原告に対応するNo.1の取引日に金銭消費貸借契約を締結し、以来、最終取引日まで借入れと返済を繰り返してきた。
本件各取引についての取引日、借入金額及び弁済額は、別紙「法定金利計算書」1ないし6の「年月日」、「借入金額」及び「弁済額」欄にそれぞれ記載されているとおりである。
その借入に対する返済金を利息制限法所定の制限利率に引き直し計算すると、法定金利計算書1ないし6記載のとおり、過払金が生じている計算となる。
2 争点に対する判断
(一) 争点(一)について
本件各取引は、いずれも償還票に基づく一定額の元利均等の返済を約したリボルビング契約であると認められる(例えば、乙2の1の第1条)。また、被告が開示した取引履歴によれば、いずれの原告についても、契約番号を異にする借入申込書の作成にも拘わらず、会員番号は前後一貫して同一であることが認められる(例えば、乙1の1ないし14)。
そして、上記1に認定する本件各取引内容は、数回ないし10回程度の当初約定の比較的少額の分割弁済額を支払うと、1年ないしそれ以内の弁済期日に比較的多額の残元本が一括返済されたものとして、同日にほぼ前の借入額と同額の借入を受けるという書換えがほぼ定期的に行われている。
また、本件各取引において、書き換えは、ほぼ1年ないしそれ以内の短期間に行われ、その間、取引の断絶、中断とみられる長期間隔は、原告X6のNo.40とNo.41との間に1年半の間隔があることを除き、認められない。
以上の事実からすれば、本件各取引は、一連一体の取引であり、仮に過払金を生じた場合、その過払金は、その後に起こされる借入金債務に当然充当されるべきものと解される。原告X6のNo.40とNo.41との間に1年半の間隔があるが、この場合でも同様である。
この点につき、被告は、前記のとおり、本件各取引が別個のものであると主張し、既存の借入債務については格別、発生していない後の債務に充当されることを争うが、上記のように、本件各取引がいわゆる切替貸付けであると認められることからすれば、そのような貸付形態においては、各貸付けが全体として1個の連続した貸付取引であって、発生した過払金につき、その後に発生する新たな借入金債務に充当する旨の合意を含んでいるものと解するのが相当である(最高裁判所平成19年7月19日第一小法廷判決)。
仮に、個々の貸付が別個独立の取引であるとしても、過払金をその後に発生する借入金債務に充当することが信義則上是認できないような特段の事情が存在しない限り、上記過払金はその後の借入金元本に充当されるものと解すべきである。同一の貸主と借主との間で継続的に貸付けとその返済が繰り返される金銭消費貸借取引においては、弁済によって過払金が発生した場合にこれを後の貸付金に充当しないとすれば、借主は必要のない元本を借り入れた形となり、その分高利の利息を支払わなければならず、利息制限法の趣旨に反するし、借主は、借入総額の減少を望み、複数の権利関係が発生するような事態が生じるのは望まないのが通常だからである(最高裁判所平成15年7月18日第二小法廷判決)。
被告は、最高裁判決にいうような黙示の合意や、最判平成19年7月19日のいう合意が本件各取引においては認められないと主張し、黙示であれ、その存在が厳格に認定されるべきであると主張する。
しかしながら、貸主と借主の関係に照らすと、①同一当事者間の金銭消費貸借取引関係においては、貸金の利率と過払金に対する利息及び損害金の利率との間に大きな格差が存在することによる当事者間の不公平を可能な限り生じさせないとの信義則が支配していること、②1個の基本契約の下に取引が連続している場合と、いったん完済となった後に再度貸付けを行った場合とで、結論に大きな相違が生じることは正義公平の観念に照らして容認できないこと、③過払金発生時に別口の債務が存在する場合と、過払金発生後に債務が発生した場合とで取扱いを異にする合理的理由は存在しないこと、④借主は、借入総額の減少を望み、複数の権利関係が発生するような事態が生じることは望まないのが通常であるところ、この借主の合理的意思は、過払金発生後に新たな借入れをした場合でも何ら変わるものではないこと、⑤残存元本額を可能な限り縮小して債務者保護を図るのが利息制限法の趣旨であり、最高裁も利息制限法違反を是正するために一貫して即時充当による借入額の縮小を認めてきたことからも、基本契約ごとに分割して充当計算を行うべきではない。
(二) 争点(二)について
貸金業者が制限超過部分を利息の債務の弁済として受領したが、その受領につき貸金業法43条1項の適用が認められないときは、当該貸金業者は、同項の適用があるとの認識を有しており、かつ、そのような認識を有するに至ったことがやむを得ないといえる特段の事情がある場合でない限り、法律上の原因がないことを知りながら過払金を取得した者、すなわち民法704条の「悪意の受益者」であると推定されるものというべきである(最高裁判所平成19年7月13日第二小法廷判決(同裁判所平成17年(受)第1970号・同裁判所平成19年7月17日第三小法廷判決)。
本件において、被告は、各原告に対し、貸金業法17条1項所定の要件を充足した書面、同法18条1項所定の書面を交付したとして、この立証をし、被告は、原告らから受領した利息につきみなし弁済が成立すると認識していたから、上記最高裁判所の特段の事情があると主張する。しかしながら、「悪意」とは、「本件取引における利率が利息制限法所定の制限利率を超過していること」であり、被告は、出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律(以下「出資法」という。)が定める制限利息をのみならず、利息制限法所定の制限利率で算出された残元金、利息等を把握することができるはずであり、上記認識があったとしても、過払金の発生については容易に知りうる立場にあるものであり、被告の主張する事実をもってしても、上記特段の事情の存在は認められない。
したがって、被告は民法704条の「悪意の受益者」に当たる。
(三) 争点(三)について
上記(二)の判断のとおり、過払金につき被告が悪意の不当利得者である以上、これに法定利息が発生することは当然のことである。借入債務に利息が生ずることとの衡平の観点からみても、利息発生自体を否定する理由はない。
被告は、あるいは、過払金利息をそのまま積算させるのではなく、新たな借入債務に元本充当することを問題とするのかもしれない。この利息の充当は、あたかも過払金の一部に利息を組み入れ、過払金元本であるかのように新たな借入債務に充当されることから、民法405条の問題がないわけではないが、原告らが相殺の意思表示をしていることからみて、債務者のために最も利益に弁済充当がされるべきであるという法理からみても、許されないものではないと解する。
(四) 争点(四)について
最高裁平成17年7月19日判決は、貸金業者は、債務者から取引履歴の開示を求められた場合、その開示要求が権利の濫用に亘ると認められるなどの特段の事情のない限り、貸金業法の適用を受ける金銭消費貸借契約の付随義務として、信義則上、保存している業務帳簿に基づいて取引履歴の開示義務を負うと判示している。また、開示されるべきは、保存期間の経過の有無を問わないものという。したがって、これに反する被告の行為は、信義則上の義務に反し、不法行為を構成するものと解されるところ、本訴提起までに被告が保存しているとする取引履歴を開示したことは認められるものの、一部履歴の開示がされないことは現在でも明らかであるし、その開示要求に対し、早急な対応を欠き、長期にわたり、開示に応じなかったことに照らすと、原告らの債務負担状況にかかる認識形成を阻害し、これによって、経済的な再生の選択や、債務の全体像を把握し得ない不安を原告らに与えた事実は明らかである。
その損害は、原告ら各自につき、慰謝料として6万円、弁護士費用として2万1000円とみるべきものである。
被告は、具体的な損害の発生がないとして、各原告につき事情を主張するが、経済的に一度は破綻した原告らにとって、債務の残額の把握ができず、催告や請求のおそれに不安を抱くのも当然のことである。不開示により、経済的再生の途につき、どの程度の選択の遅れがもたらされたかは、必ずしも明らかではないものの、その遅れがもたらされた事実は否定できない以上、被告の損害賠償債務は否定できない。
なお、原告らは、過払金発生後、その事実を告げずに制限利息を超える約定利息を徴したことが詐欺に当たると主張するが、そこまでの立証はない。原告によっては、過払状態となっても、その後の借入により、債務が残存するケースが見られるなどしており、取引経過中、常に過払となるのは、概ね本件各取引の後半ないし終了間際であるからである。
(五) 争点(五)について
被告は、(四)の損害賠償請求につき、原告らが被告から適法に交付された各種書面をことごとく廃棄したことが、取引履歴を自ら不明なものとしたものであるから、同損害の発生につき、各原告にも過失があり、この過失が斟酌されるべき旨主張する。
しかしながら、(四)で説示したとおり、被告に取引履歴の開示義務が信義則上認められることからすれば、原告らが証拠を廃棄してしまったことが過失にあたり、損害賠償額算定において斟酌されることはないと解される。被告の主張は理由がない。
なお、被告は、原告X4及び同X5において、返済のあてなく、その意思もないのに、本件各取引の最終日に多額の借入に及んだとして、逆に、同原告らの詐欺を主張するが、同原告らの尋問結果によれば、同主張を認めるに至らない。
(六) 争点(六)について
消滅時効は、「権利を行使することができる時」から進行する(民法166条)ところ、過払金返還請求権は、権利が発生した時点から行使可能な債権である。そして、過払金は個々の弁済が行われるたびに個別に発生するから、消滅時効は、個々の過払金返還請求権ごとにその発生時点から進行すると解する余地もある。
この見解によれば、本件につき、別紙金利計算書1ないし6のとおり、各原告につき、一時的にせよ、過払状態が発生しているから、厳密にいえば、それらの過払金債権のうち、本訴提起より10年以上を遡るものについては、時効消滅したものといえる。
しかしながら、原告らは、時効消滅した過払金返還請求権を自働債権とし、その後の貸付金債権を受働債権として相殺する旨の意思表示をしているから、上記過払金返還請求権につき消滅時効が完成しているとしても、民法508条により、過払金返還請求権を順次、その後の取引に係る貸付金債権と相殺できるものと解される。現に最高裁判所平成19年2月13日第三小法廷判決は、相殺の可能性を指摘しているところである。
以上により、法定金利計算書1ないし6のとおり、各原告につき過払金が発生していることになる。
4 総括
以上から、原告らの請求は、法定金利計算書1ないし6の最終取引日欄の合計額に8万1000円を加算した金額の限度で理由がある。
過払金元本の遅延損害金は、最終取引日の翌日であり、損害賠償については、訴えの変更申立書が被告訴訟代理人に送達された平成19年4月27日の翌日からである。
その余の原告らの請求は理由がない。
第4結論
よって、原告らの被告に対する請求は、主文第1項ないし第6項の限度で理由があるからこれを認容するが、その余は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法61条、64条を、仮執行宣言につき同法259条1項を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 三代川俊一郎)
(別紙)法定金利計算書1~6<省略>