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横浜地方裁判所 平成25年(ワ)4810号 判決 2015年1月29日

原告

被告

主文

一  被告は、原告に対し、三九五九万二七二三円、並びにうち三五九九万二七二三円に対する平成二五年一〇月三一日から、及びうち三六〇万円に対する平成二三年七月一〇日から、各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用はこれを一〇分し、その三を原告の、その余を被告の負担とする。

四  この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

被告は、原告に対し、五四九八万五五九一円、並びにうち四九九九万五五九一円に対する平成二五年一〇月三一日から、及びうち四九九万円に対する平成二三年七月一〇日から、各支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要等

本件は、被告運転の普通乗用自動車(以下「被告車」という。)が原告に衝突した交通事故(以下「本件事故」という。)について、原告が、被告に対し、自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」という。)三条及び民法七〇九条に基づき、損害賠償金等の支払を求めた事案である。

一  前提事実(証拠を記載した事実以外は当事者間に争いがない。)

(1)  原告(平成五年○月○日生)は、本件事故当時、県立高校三年生であり、平成二四年四月一日、a大学○○科に入学した(甲一二、甲一三)。

(2)  本件事故の発生

ア 日時 平成二三年七月一〇日 午後四時一四分ころ

イ 場所 横浜市泉区和泉町四〇三九番地一六

ウ 被告車 普通乗用自動車(ナンバー<省略>)・被告運転

エ 態様

被告車は、深谷町方面(南側)から弥生台方面(北側)に向かい、県道(以下「本件道路」という。)を走行中、立場駅前交差点西側出口の横断歩道付近から中央線沿いに設けられたゼブラゾーンに入り、ゼブラゾーン内を直進していたところ、その左側部分に停車中の車両の間を通り抜け、被告車の左方から右方に向かい、本件道路を横断してきた原告に衝突した。

オ 責任原因

被告は、被告車の保有者で運行供用者であり、かつ、前方注視義務を怠り、前方注視不十分のまま漫然と被告車を進行させた過失により、進路前方を左方から右方に横断中の原告に被告車を衝突させたものであるから、自賠法三条及び民法七〇九条により、本件事故により発生した損害について賠償する責任を負う。

(3)  治療経過等

ア 原告は、本件事故により、外傷性くも膜下出血、急性硬膜下血腫、脳挫傷、びまん性軸索損傷等の傷害を負い、平成二三年七月一〇日から同月二〇日までb医療センターに入院した後、同月二六日から平成二四年一〇月一九日までc病院に通院し(実日数八日)、平成二三年一一月二九日から平成二四年八月二八日までb医療センターに通院(実日数四日)した(甲二の一ないし三、甲三)。

イ 原告は、平成二四年一〇月一九日、脳外傷後遺症、高次脳機能障害の傷病名で症状固定の診断を受け(甲四)、平成二五年一〇月二八日、本件事故の脳外傷に起因する高次脳機能障害が残存しており、神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないとして、自賠法施行令別表第二第七級四号(以下等級のみを記載する。)に該当する旨の認定を受けた(甲七)。

(4)  既払金

ア 原告は、被告の任意保険会社から合計六一万八二〇〇円の支払を受けた。

イ 原告は、平成二五年一〇月三〇日、本件事故による自賠責保険金として、一〇五一万円の支払を受けた。

二  争点に対する当事者の主張

(1)  過失相殺

(被告の主張)

ア 被告は、被告車が本件事故現場手前の立場駅前交差点を青信号で通過した際、前車に続いて同交差点のすぐ先で停止し、その先にある立場交差点を右折する予定で同交差点手前の右折レーンに入るべく、右前方のゼブラゾーンに進入し、二〇mほど走行したところで、左前方約四mに左方から右方へ向かって飛び出してきた原告を発見し、急制動を講じたが、間に合わず、被告車の左前部を原告に衝突させた。

原告には、道路横断にあたって、走行する車両の有無及び動静を確認し、その走行を妨げないように横断する義務を怠った過失があるから、その基本的な過失割合は三〇%であり、さらに、下記の事情を考慮すれば、少なくとも五〇%の過失相殺をすべきである。

イ 原告が渋滞車列の間から出てきたときの被告車の前面と原告との距離は五m足らずであり、原告は、被告車が至近距離に迫っていたにもかかわらず、その直前で横断を開始した。

ウ 本件道路は、歩車道の区別のある道路であり、本件事故現場の東側の歩道には間断なくガードパイプが設置されており、本件事故現場からわずか二〇mほど離れたところに横断歩道が設置されているのであって、そもそも本件事故現場を歩行者が横断することは予定されておらず、人の横断・通行が激しいか、又は頻繁に予想される場所であることを前提とした住宅街・商店街における事故とはいえない。

むしろ、本件事故現場は、交通量も多く、歩行者が横断する際には通常の道路よりも車の動静に強い注意を払わないと危険であるという点で幹線道路に類似しているにもかかわらず、原告は、イヤホンで耳を塞ぎ、駆け足で横断するという、車の動静に全く注意を払わない態様で横断した。

エ 本件事故当時、立場駅前交差点の原告進行方向の信号は赤色であったにもかかわらず、原告は、本件事故現場からわずか二〇mほどしか離れていない同交差点の横断歩道ではなく、あえて本件事故現場を横断した。

オ 被告車が走行していたゼブラゾーンは、導流帯であって、法律上、必ずしも車両の走行が禁止されているわけではない。

カ 本件道路の制限速度は時速四〇kmであるところ、本件事故当時の被告車の速度は時速二〇km程度であり、被告車の速度に関して被告の責任が加重される理由はない。

(原告の主張)

ア 原告にも右方の確認が不十分であったという過失はあるものの、ゼブラゾーンを走行してくる車両はないと考えるのが通常であり、下記の事情を考慮すれば、原告の過失割合は五%程度にすぎない。

イ 被告は、走行車線からゼブラゾーンへ進路を変更した地点から二〇m程度のところで時速三〇kmに達するような高速度で被告車を走行させ、かかる危険な運転のために衝突直前まで原告を発見することができなかったのであるから、著しい過失ないし重過失がある。

ウ 本件事故現場は、駅前で、大型スーパー、薬局、レンタルビデオ店等多数の店舗が存在する場所であり、本件事故当時(日曜日の午後四時一四分頃)は買物客も多く、特に人通りの多い時間帯であった。

エ 原告は、本件事故当時、通常の速度で歩いていたと考えられ、原告と被告車の位置関係からすれば、被告は、衝突の相当前の段階で原告を発見できたはずであり、原告の直前横断として過失相殺率を修正する余地はない。

また、本件道路は幹線道路ではないから、本件事故は横断歩道付近の事故とはいえない。衝突時の立場駅前交差点の信号表示は明らかでない上、本件事故現場は、ガードパイプが途切れており、同交差点の信号表示によらず、四輪車や二輪車が路外駐車場に多数出入りする場所であることからすれば、同交差点の信号表示は原告の過失を加重する理由とはならない。

(2)  損害

(原告の主張)

ア 治療費 四三万四四〇〇円

イ 入院雑費 一万六五〇〇円(一、五〇〇円×一一日)

ウ 入通院付添費 一一万一一〇〇円

原告は、重篤な傷害を負ったため、入院中の付添看護及び通院時の付添を要し、主に原告の両親が付き添ったから、入院中は日額六五〇〇円、通院時は日額三三〇〇円の付添費を請求する。

6,500円×11日+3,300円×12日=111,100円

エ 通院交通費(付添交通費を含む。) 八万七二九〇円

オ 逸失利益 四〇四〇万四〇三〇円

原告は、症状固定時一九歳であり、本件事故がなければ、平成二八年三月に四年制大学を卒業後、六七歳まで就労を続けたと考えられるから、以下のとおり、基礎収入を四四八万二四〇〇円(平成二三年女子大卒全年齢平均賃金)とし、二二歳から六七歳までの四五年にわたり、五六%(七級相当)の逸失利益を請求する。

なお、原告には、易疲労性、記憶力、注意力等の問題があり、当初予定していたよりも難易度の低い大学に入学し、他の同級生よりもはるかに多くの時間を勉強に費やして現在の学業成績を修めているが、継続的な一般就労をするには、多くの制限を受けることが予期されるから、その労働能力を半分程度喪失したとする評価は不自然ではない。

4,482,400円×56%×(18.8195-2.7232)=40,404,030円

カ 傷害慰謝料 一八〇万円(入院一一日、通院一五か月余り)

キ 後遺障害慰謝料 一二〇〇万円

原告の後遺障害は七級と認定される重篤なものであり、一〇代という若年でこのような重篤な後遺障害を負ってしまったことが十分考慮されるべきである。

ク 損害合計 五四八五万三三二〇円

ケ 損害填補後の損害 四九九九万五五九一円

54,853,320円-618,200円(前提事実(4)ア)=54,235,120円

54,235,120円×5%×844日÷365日=6,270,471円(確定遅延損害金)

54,235,120円+6,270,471円-10,510,000円(前提事実(4)イ)=49,995,591円

コ 弁護士費用 四九九万円

サ よって、原告は、被告に対し、五四九八万五五九一円(ケ+コ)、並びに四九九九万五五九一円(ケ)に対する自賠責保険金受領日の翌日である平成二五年一〇月三一日から、及び四九九万円(コ)に対する本件事故日である平成二三年七月一〇日から、各支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

(被告の主張)

ア 治療費及び通院交通費は認める。

イ 傷害慰謝料

通院実日数が一二日に留まることに鑑みれば、五〇万円が相当である。

ウ 後遺障害慰謝料

原告主張の事情を前提としても一〇〇〇万円が相当である。

エ 逸失利益

(ア) 症状固定は平成二四年であるから、基礎収入は同年の女子大卒全年齢平均賃金四四三万四六〇〇円とすべきである。

(イ) 原告は家庭生活、学校生活には概ね適応できているとされており、その日常行動には重篤な問題は認められない。また、原告は、本件事故後、○○試験において高い合格率を記録し、卒業生の就職先を多数有する学科に入学し、優秀な学業成績を修めており、相当の能力を有している。

そうすると、原告本人の努力の反映を考慮しても、なお、原告が本件事故によって五六%もの労働能力を喪失したと認めることはできず、喪失の程度は三五%(九級相当)ないし一四%(一二級相当)に留まっているというべきである。

(ウ) 労働能力喪失期間は二二歳から六七歳までの四五年間であるから、用いられるべきライプニッツ係数は15.3490(18.0722-2.7232)である。

第三当裁判所の判断

一  争点(1)について

(1)  前提事実のほか、甲一九、後記各証拠及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

ア 本件事故現場付近の状況

本件道路の本件事故現場付近における幅員は一二・一mであり、そのうち被告車が走行してきた西側車線の幅員が五・五m(一車線)、東側車線の幅員が六・六m(二車線)である。本件道路の立場駅前交差点は、信号機による交通規制が行われており、その西側出口には横断歩道が設けられている。

本件道路の西側車線は、本件事故現場の先の立場交差点手前で二車線となるため、立場駅前交差点の西側出口から中央線寄りに車両を誘導するゼブラゾーンが設けられている。ゼブラゾーン部分は、立場駅前交差点の西側出口においては幅二・一mであるが、本件事故現場付近から次第に中央線に向かって細くなっている。

本件事故現場は立場駅ターミナルに近く、本件道路の両側には店舗等の建物が立ち並んでおり、交通量が比較的多く、本件道路の制限速度は時速四〇kmとなっている。

本件事故現場の両側にはガードパイプを設置した歩道があるが、西側については薬局の駐車場への車両の出入等のためにガードパイプが途切れている。

イ 事故態様

被告は、青信号で立場駅前交差点に進入したが、前方が渋滞していたため、その西側出口にある横断歩道の辺りで一旦停止した。被告は、右方のゼブラゾーンが空いており、その先の立場交差点で右折する予定であったことから、すぐに発進してゼブラゾーンに進入し、渋滞で停止している車列の右側を時速二〇km程度の速度で直進した。被告は、上記横断歩道の北端から約一五m進んだ地点で、左前方四・〇mの地点に車列の間を通って本件道路を横断してくる原告を発見し、急制動をかけたが、同横断歩道の北端から一九mの地点で被告車の左前部を原告に衝突させた後、八・一m先の地点で停止した。

(2)  以上のとおり、本件事故は、横断歩道付近の道路を横断してきた歩行者に道路を直進してきた車両が衝突したものであり、歩行者側にも比較的交通量の多い道路を、右方から走行してくる車両の有無等を十分に確認しないまま、横断歩道によらずに横断した過失が認められる。

しかし、本件道路はその幅員等に鑑みれば幹線道路とはいえないこと、道路両側に店舗等が立ち並び、歩道にはガードパイプがもうけられているものの、車両等の出入のためこれが途切れている部分もあること、本件事故当時は人通りの多い時間帯であったことなどからすれば、本件事故現場を走行する車両にとって、通常、道路を横断する歩行者がいることが予測できないというような状況であったとはいえず、車両側の過失は相当大きい。

さらに、本件事故現場付近のゼブラゾーンは、前方で増設される車線に円滑に車両を誘導するために設けられたものであって、その通行が禁止されていないとはいえ、ゼブラゾーンの部分を通常の車線と同様に車両が走行することは想定されていない。それにもかかわらず、被告は、あたかもゼブラゾーンを一つの車線であるかのようにその開始地点から特に速度を調節することもなく走行して本件事故を惹起したのであるから、被告には著しい過失があるというべきであり、過失相殺の割合は、一五%に留めるのが相当である。

(3)  被告は、原告が渋滞車列の間から出てきた地点から被告車の前面までの距離は五m足らずであったとして、その横断の態様は直前横断にあたると主張する。

しかし、そもそも原告が本件道路西側の歩道から本件道路の横断を開始した地点においては、渋滞車列の陰になって被告車の存在は確認できない状態であったと考えられ、さらに、上記のようなゼブラゾーンが設けられた目的に照らすと、原告が渋滞車列の間から出てきた際に、渋滞車両を追い抜きながらゼブラゾーンを走行してくる車両がいることを予測するのは困難であったといえる。本件道路のような形状の道路においては、車線が増設される手前でゼブラゾーンに入り、前車の右側方を通過しようとする車両がみられることもあるが、本件においては、被告は、少なくとも二〇m以上、ゼブラゾーンの左側に複数台の車両が停止している状況で、本件事故現場の約二〇m手前からゼブラゾーンを走行していたのであって、通常、このような走行をする車両がいることまで予測すべきであるとはいえない。

また、被告は、原告が駆け出してきたとも述べるが、本件現場付近の状況からすると、ゼブラゾーンの左側に停止していた車両の右側面と被告車の左側面との間はわずかな空間しかなかったと考えられるところ、原告は、渋滞車列の間を抜けた直後に被告車の左前角に衝突しており、被告自身衝突の直前まで全く原告の存在に気付いていなかったことからすれば、被告が原告の横断態様を正確に認知・記憶しているかは疑問といわざるをえず、他に原告があえて被告車の前方に飛び出したと認めるべき証拠はない。原告がイヤホンで耳を塞いでいたことについても適確な証拠があるとはいえない。被告は、本件事故現場における直近の信号である立場駅前交差点の原告横断方向の信号は赤色であったから、原告の横断は赤信号無視に近い危険な行為であった旨の主張もするが、被告が同交差点の信号を確認してから原告が横断を開始するまでにどの程度の時間が経過していたかは明らかでなく、本件事故現場が約二〇m離れていることなどからすれば、原告が横断を開始した時点において上記信号が赤色であったと推認することはできない。なお、仮に、上記信号が赤色であったとしても、同信号から本件事故現場までの距離に鑑みれば、その信号規制が本件事故現場まで及ぶとするのは相当とはいえない。

以上のとおり、被告が主張するような理由で原告側の過失を重く評価するのは相当でなく、上記認定した一五%の過失相殺率を修正すべき事情は認められない。

二  争点(2)について

前提事実及び上記の認定判断のほか、後記各証拠によれば、以下の損害が認められる。

ア  治療費 四三万四四〇〇円(争いがない。)

イ  入院雑費 一万六五〇〇円

原告は本件事故のため一一日入院しており、その入院雑費は日額一五〇〇円とするのが相当であるから、上記額を認める。

ウ  入通院付添費 一一万一一〇〇円

原告の負った傷害の内容及び程度、原告の年齢、医師の指示等(甲二の二、甲一三)に鑑みれば、入院中の付添看護及び通院時の付添を要したこと及び原告の家族が付添をしたことが認められるから、以下のとおり、入院中は日額六五〇〇円、通院時は日額三三〇〇円の付添費を認めるのが相当である。

6,500円×11日+3,300円×12日=111,100円

エ  通院交通費(付添交通費を含む。) 八万七二九〇円(争いがない。)

オ  逸失利益 三八一一万七三三八円

原告には、本件事故の後遺障害として高次脳機能障害が残存しており、運動機能や身の回りの動作能力について問題がないとされており、本件事故後に四年制大学に進学し標準以上の成績を修めているものの、疲れやすく、すぐ居眠りをする(中等度)、以前に覚えていたことを思い出せない、複数の作業を同時に行えない(いずれも軽度)などの認知・情緒・行動障害があり、ストレスにより頭痛、疲労を起こしやすい、およそ週に一回以上、ムッとする、怒る、イライラするなどの表情や態度がみられるなど、感情統制等にも問題がみられ、自らの努力及び周囲の協力により現在の学業成績を維持していることが認められる(甲四ないし七、甲一二、甲一三)。学業と労働において、求められる資質が大きく異なることは明らかであり、学生としては標準以上の成績を修められたとしても、就労すれば他の労働者との協同を必要とすることが多いため、上記のような認知障害等が就労環境に適応する能力を阻害し、就職や就労継続に支障を来す蓋然性は高いというべきである(甲一四ないし一六)。

そうすると、原告の後遺障害の程度は、一般就労を維持することは可能であるものの、一般人と同等の作業を行うことは困難な程度のものというべきであり、神経系統の機能又は精神に障害が残り、軽易な労務以外の労務に服することができないものとして、七級四号に相当すると認められる。

したがって、原告が本件事故時高校三年生であって、平成二四年四月一日に四年制大学に入学し、その後、一九歳で症状が固定したことに鑑み、以下のとおり、基礎収入を四四三万四六〇〇円(平成二四年女子大卒全年齢平均賃金)とし、二二歳から六七歳までの四五年にわたり、五六%(七級相当)の逸失利益を認める。

4,434,600円×56%×(18.0722-2.7232)=38,117,338円

カ  傷害慰謝料 一〇〇万円

本件事故による傷害が重傷であったこと及びその入通院期間に鑑みれば、上記額を認めるのが相当である。

キ  後遺障害慰謝料 一〇〇〇万円

原告は、学生時代に重篤な後遺障害を負ったものであるが、本件における諸般の事情を考慮すれば、その慰謝料は上記額とするのが相当である。

ク  損害合計 四九七六万六六二八円

ケ  過失相殺(一五%)後の損害額 四二三〇万一六三三円

コ  損害填補後の損害 三五九九万二七二三円

42,301,633円-618,200円(前提事実(4)ア)=41,683,433円

41,683,433円×5%×844日÷365日=4,819,290円(確定遅延損害金)

41,683,433円+4,819,290円-10,510,000円(前提事実(4)イ)=35,992,723円

サ  弁護士費用 三六〇万円

シ  認容額

三九五九万二七二三円(コ+サ)、並びに三五九九万二七二三円(コ)に対する自賠責保険金受領日の翌日である平成二五年一〇月三一日から、及び三六〇万円(サ)に対する本件事故日である平成二三年七月一〇日から、各支払済みで民法所定の年五分の割合による遅延損害金

三  よって、原告の請求は、被告に対し、三九五九万二七二三円並びにうち三五九九万二七二三円に対する平成二五年一〇月三一日から、及びうち三六〇万円に対する平成二三年七月一〇日から、各支払済みまで年五分の割合による金員の支払を求める限度で理由があるから、上記限度でこれを認容し、その余の請求は理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。

(裁判官 餘多分亜紀)

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