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横浜地方裁判所 平成4年(わ)1947号 判決 1993年6月28日

裁判所書記官

坂詰幸治

本店の所在地

神奈川県鎌倉市梶原四丁目一六三七番地

有限会社

東海造園

右代表者取締役

岩井清高

本籍

千葉県船橋市八木が谷五丁目三八九番地の一

住所

神奈川県鎌倉市笹目町九番一二号 島津ハウス鎌倉二〇一号

会社役員

岩井清高

昭和一六年三月二七日生

右両名に対する法人税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官西本仁久出席のうえ審理をして、次のとおり判決する。

主文

一  被告人有限会社東海造園を罰金七〇〇〇万円に処する。

二  被告人岩井清高を懲役一年に処する。

訴訟費用は全部同被告人の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人有限会社東海造園(以下、被告会社という。)は、神奈川県鎌倉市梶原四丁目一六三七番地に本店を置き、不動産業を営んでいた者であり、被告人岩井清高は、平成四年二月三日に被告会社の取締役として登記する以前は、被告会社の実質上の経営者として、被告会社の業務全般を統括していた者であるが、被告人岩井清高は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、所得の大部分を匿名組合契約に基づいて第三者に取得させたかのように仮装するなどの方法により所得を秘匿した上、平成元年四月一日から平成二年三月三一日までの事業年度において、被告会社の実際所得金額が三億一三五九万九四五二円、課税土地譲渡利益金額が二億九四五三万九〇〇〇円であり、これに対する法人税額が二億一二九二万一三〇〇円であったのに、平成二年五月三一日、同市由比ガ浜四丁目六番四五号所在の鎌倉税務署において、同税務署長に対し、同事業年度の所得金額が四三七万三〇六四円、課税土地譲渡利益金額が四三七万三〇〇〇円であり、これに対する法人税額が二五八万円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって、不正の行為により、被告会社の同事業年度における法人税額のうち二億一〇三四万一三〇〇円を免れたものである。

(証拠の標目)

一  被告人岩井の当公判廷における供述

一  被告人岩井の検察官に対する供述調書三通

一  巌谷勝廣(謄本)、山崎繁、柄澤友二の検察官に対する各供述調書

一  大蔵事務官作成の次の書類

法人税額計算書、売上高計算書、期首棚卸高調査書、仕入高調査書、期末棚卸高調査書、給料調査書、歩合給調査書、雑給調査書、外注費調査書、広告宣伝費調査書、旅費交通費調査書、賃借料調査書、消耗品費調査書、事務用品費調査書、交際費調査書、通信費調査書、水道光熱費調査書、福利厚生費調査書、燃料費調査書、修繕費調査書、損害保険料調査書、地代家賃調査書、租税公課調査書、支払手数料調査書、謝礼金調査書、顧問料調査書、雑費調査書、雑収入調査書、受取利息調査書、支払割引料調査書、交際費損金不算入額調査書、損金の額に算入した道府県民税利子割調査書、販売費及び一般管理費調査書、課税土地譲渡利益金額調査書

一  検察事務官作成の電話聴取書

(法令の適用)

被告会社につき

罰条 法人税法一六四条一項、一五九条

訴訟費用 刑事訴訟法一八一条一項ただし書(被告会社に負担させない)

被告人岩井につき

罰条 法人税法一五九条

刑種の選択 懲役刑

訴訟費用 刑事訴訟法一八一条一項本文

(量刑の理由)

本件は、脱税額が二億一〇〇〇万円余と多額であり、脱税率も九八パーセント強に及んでおり、その方法も、免税特権のある在日パキスタン大使館員に匿名組合契約に基づき利益を取得させたように仮装するなど悪質である。

なお、被告人岩井は、本件所得につき、当該事業年度後に施工するつもりであった約三億円の未施工工事があり、本件申告時にはそれを経費として計上できることを知らなかった旨供述するけれども、同被告人は、長年不動産会社を経営しているうえ、本件当時、税理士の資格のある弁護士を顧問弁護士としていたことや本件脱税の方法等をあわせ考えると、同被告人は、税法上の知識を十分有していたものと推認され、当該事業年度の未施工工事を経費として計上しうることを知らなかったとは容易に認めることはできず、また、それを経費として計上しなかったのは、同被告人が供述する未施工工事の大半については、実際にそれを施工する意思がなく、経費ではなかったからであるといわざるをえない。

以上のような、本件脱税額、脱税率、脱税の態様等にかんがみると、本件は悪質な脱税事件であり、被告会社に対しては、主文掲記の罰金刑に処するのが相当であり、また、被告人岩井については、同被告人は、本件の罪と併合罪の関係にある詐欺・不動産侵奪罪及び宅地建物取引業法違反の罪でいずれも懲役刑に処せられており、本件は、右詐欺・不動産侵奪被告事件の公判中に行われたものであることをあわせ考えると、同被告人が、現在、本件につき反省していること、子供が難病に罹患していることなど同被告人に有利な情状を斟酌しても、主文掲記の実刑に処せられるのはやむをえない。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 竹田央)

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