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横浜地方裁判所 平成5年(行ウ)33号 判決

原告

株式会社アオキインターナショナル

右代表者代表取締役

青木拡憲

右訴訟代理人弁護士

佐藤義行

後藤正幸

被告

横浜市長 高秀秀信

右訴訟代理人弁護士

會田努

事実及び理由

第三 争点に対する判断

一  争点1について

原告は、本件免除申請については、本件土地が法六〇三条の二第一項二号所定の「特定施設の用に供する土地」に該当するかどうかが問題であるのに、被告はこの点については特別土地保有税審議会の審議に付しておらず、同審議会もこの点については審議をしていない旨を主張する。

しかしながら、乙第七号証(平成四年七月二一日付けの横浜市特別土地保有税審議会会長から横浜市長あての答申書)によれば、同審議会は、本件土地については、他の六件とともに、「建物と一体利用されていない又は検査済証を交付された管理建物がない並びに利用率が低い駐車場」であって免除対象土地に該当しない旨を答申していることが認められ、このことと、被告が本件処分の通知書に、本件土地は同条一項一号、二号及び法附則三一条の四の二所定の要件のいずれにも該当しない旨を記載していることからすると、同審議会は、本件土地について、右のいずれの要件についてもこれに該当するか否かを審議して右の答申をしたものと推認することができる。この認定に反する証拠はない。したがって、本件処分をするについては、同審議会の審議を経ているものというべきであるから、同審議会の審議を経ないでなされた本件処分は違法であるとの原告の主張は、理由がない。

二  争点2について

法六〇三条の二第五項は、同条一項により特別土地保有税の納税義務の免除認定に係る処分をしたときは、遅滞なくその旨を当該土地の所有者答に通知しなければならない旨を規定するが、法律上その通知に処分の理由を付すことを要求されていないし、その処分の理由を付さなければならないと解すべきいわれもないから、処分の理由を付さないでなされた本件処分は違法であるとの原告の主張は、この点で理由がない。

三  争点3について

1  法六〇三条の二第一項一号及び二号によれば、特別土地保有税の納税義務の免除の対象となる土地というためには、事務所、店舗その他の建物又は構築物で、その構造、利用状況等が恒久的な利用に供されている建物又は構築物に係る基準に適合するものの敷地の用に供する土地(法六〇三条の二第一項一号の土地、建物等に係る恒久性の要件)、又は工場施設、競技場施設その他の特定施設で、その整備状況、利用状況等が恒久的な利用に供される特定施設に係る基準に適合するものの施設の用に供する土地(法六〇三条の二第一項二号の土地。特定施設に係る恒久性の要件)のいずれかに該当し、当該土地の利用が国土利用計画法に規定する土地利用基本計画、都市計画その他の土地利用に関する計画に適合していること(土地利用計画適合性の要件)が必要である。特定施設に係る恒久性の要件については、当該土地が、駐車場、資材置場その他土地自体の利用を主たる目的とする特定施設の用に供する土地(昭和六一年一月一日以後取得)である場合には、さらに一定の要件(法附則三一条の四の二)が必要である。

2  本件においては、本件土地が、その地上に自動車の駐車施設等を設置していない、いわゆる青空駐車場であって、これが建物等に係る恒久性の要件又は法附則三一条の四の二所定の要件に該当しないものであることは、当事者間に争いがない。

そして、本件建物の構造、規模及び利用状況からして、これが恒久的な利用に供されている建物であることは明らかであるから、本件土地が特定施設に係る恒久性の要件を充たすか否かは、もっぱら、これが本件建物と一体として利用されているといえるかにかかっているのである。

3  ところで、特別土地保有税の制度は、地価高騰が著しくなり、投機的な土地取引が行われるようになったため、土地政策として、土地譲渡益に対する重課措置とともに投機目的の土地取引の抑制と土地の有効利用の促進を目的として設けられたものであるから、当該土地が未利用地ではなく、最終的な利用に供されるものである場合には、これに課税をするのは相当でない。このため、法は、一定の要件のもとに特別土地保有税の納税義務を免除する制度を設けたが、未利用地とそうでないものとの区別が技術的に難しく、しばしばこれが悪用されたことから、平成三年度に法が改正され、免除の要件の見直しが行われ、免税点の引き下げとともに免除の対象が縮減され、その運用の厳正化が図られることとなった。こうした特別土地保有税及びその免除の制度の立法の趣旨、目的にかんがみると、特定施設と一体的に利用されている土地とは、特定施設との間に地理的、機能的に一体性があり、それが客観的に明確である土地をいうものと解すべきである。

4  この地理的一体性がある土地とは、当該特定施設を維持し、又はその効用を果たすために使用されている範囲の一画地と解すべきであるから、それが道路、塀、垣根、溝等により他の土地と明確に区別することができるときは、原則としてこれによるべきである。

これを本件についてみると、本件土地は、本件建物から直線距離で約一四〇メートルも離れた位置にあり、本件建物の敷地とは幅員約二二メートルの公道で分断され、その公道の信号機のある横断歩道を渡って往来しなければならない別区画の土地であるから、本件建物とは地理的一体性はないといわなければならない。

5  本件土地は、本件建物との間に地理的一体性があると認められないばかりでなく、機能的一体性も欠くものである。すなわち、建物等の特定施設との間に機能的一体性がある土地とは、当該特定施設の用に供されているというだけでなく、これがなければ当該特定施設を維持し、又はその効用を果たすことができない関係にある土地をいうものと解すべきところ、〔証拠略〕によれば、本件土地は、公道からの入口部分をコンクリートで舗装し、駐車部分は砂利等を敷いて圧し固めた駐車場で、原告から配置された管理人が管理し、平日は自動車通勤の原告従業員により、土曜日及び日曜日は自動車で来店する客により、それぞれ利用されているものであるが、原告は、平成四年五月一日当時において、既に別図2のとおり本件土地以外に一〇か所の駐車場を確保して、駐車場法二〇条、横浜市駐車場条例四条により附置が義務付けられた規模を大きく超える駐車施設を有して利用していたことが認められるから、本件土地があれば本件建物(売場面積二九五〇平方メートル)の利用効率がよくなるといえるにしても、これがなければ本件建物を維持し、又はその効用を果たすことができないというものではなく、これに準ずるともいえないものである。

6  原告は、東京都内のタクシー会社(一般旅客自動車運送業者)の営業所の建物から約二二五メートル離れた駐車場について、法六〇三条の二第一項二号により特別土地保有税の納税義務が免除された事例があるから、本件についても同様に取り扱うべきであると主張し、〔証拠略〕によれば、東京都二三区内において、そのような取扱いがなされた事例があることが認められるが、タクシー会社における駐車場は、その存否が直接その企業の存亡にかかわるものであり、最終的な利用に供されていると認められ易いものであって、本件とはこの点で異なるのみならず、地域性も異なるものである。むしろ、〔証拠略〕によれば、千葉県松戸市においては、本件と類似の小売業者の、店舗から五〇メートルないし七〇メートル離れた駐車場及び商品倉庫について、地理的一体性がないとして免除認定をしなかった事例もあることが認められるから、右のタクシー会社の事例があるからといって、当然に本件についても免除の要件があるということにはならないのである。

7  原告は、駐車場法二〇条、横浜市駐車場条例三条、四条及び一〇条による規制の例をひいて、本件土地と本件建物との間に一体性を認めるべきであると主張するが、同法及び同条例は、道路交通の円滑化を図り、公衆の利便に資するとともに、都市の機能の維持及び増進に寄与することを目的とし、都市における自動車の駐車のための施設の整備に関して必要な事項を定めるものであって、投機的な土地取引の抑制と土地の有効利用の促進を目的とする特別土地保有税制度とはその立法の趣旨、目的を異にするものであるから、それぞれの立法の趣旨、目的にそった取扱いがなされ、その結果として両者で取扱いが異なることはあり得ることであり、そのことのゆえに本件について駐車場法や横浜市駐車場条例の右規定と同じ解釈をしなければならないというものではない。

8  さらに、原告は、租税特別措置法六二条の二の規定による新規取得土地等に係る負債の利子についての取扱いの例をひいて、本件土地と本件建物との間に一体制を認めるべきであると主張する。右の負債の利子の損金への不算入の制度は、企業の税負担回避行為に対処し、同時に不要不急の土地取得を抑制することを目的として導入されたものであるが、特別土地保有税制度とは目的の一部を同じくするだけで、規制の対象も方法も異にするものであるから、右7で述べたのと同じ理由で、そのことのゆえに本件について右規定と同じ解釈をしなければならないというものではない。

四  結論

以上の次第で、本件土地は、法六〇三条の二第一項二号の特定施設に係る恒久性の要件を充たすものとはいえないから、これが同号の免除要件に該当しないとしてなされた本件処分は適法であって、その取消しを求める原告の請求は理由がない。

よって、右請求を棄却することとし、訴訟費用の負担につき、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小林亘 裁判官 秋武憲一 今井弘晃)

見取図

<省略>

〔編注、この見取図は判決文に添付されている別図を簡略化したものです。〕

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