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横浜地方裁判所 平成6年(行ウ)45号 判決

原告

有限会社アイカ

右代表者代表取締役

石井陸奥雄

被告

神奈川県戸塚県税事務所長 中須賀守敏(Y1)

神奈川県知事 岡崎洋(Y2)

右両名訴訟代理人弁護士

福田恆二

右両名指定代理人

武井政二

笹本秀行

井立雅之

瀬尾鉄二

事実及び理由

第三 争点に対する判断

一  本件賦課決定の適法性について

被告県税事務所長が、固定資産評価基準により本件建物の課税標準額を決定したことが適法であるかにつき判断する。

法七三条の一三第一項は、不動産取得税の課税標準額は、不動産を取得したときにおける不動産の価格とする旨規定し、右課税標準額は、「固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されている不動産」については、右価格によりこれを決定し(同法七一条の二一第一項本文)、固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されていない不動産又は特別の事情があり当該固定資産の価格により難い不動産については、道府県知事が自治大臣の定める固定資産評価基準によりこれを決定するものとしている(同条二項)。そして、固定資産課税台帳の登録価格は、各年度ごとに固定資産税の賦課期日において評価、決定されるものであり、基準年度の価格が第二、第三年度に据え置かれることを別にすれば、原則として、当該年度限りのものというべきであるから、法七三条の二一第一項の「固定資産課税台帳に固定資産の価格が登録されている不動産」とは、不動産の取得時において、その取得の日の属する年の固定資産税の賦課期日における不動産の価格が固定資産課税台帳に登録されている不動産をいうと解される。

これを本件についてみるに、〔証拠略〕によれば、原告は、平成元年一一月二四日、本件建物を新築により取得し、平成四年一月七日、本件建物の価格が、固定資産課税台帳に六一五九万九七六五円と登録されたことが認められる。なお、原告は本件建物の所有権を取得したのは平成二年一月二九日である旨主張するが、右証拠に照らし、理由がないというべきである。このように、原告が本件建物を新築により取得した平成元年一一月二四日の時点において、本件建物の価格が固定資産課税台帳に登録されておらず、しかも、後に右台帳に登録された価額は、その取得の日の属する年とは異なる平成二年の固定資産税の賦課期日における本件建物の価格にすぎないのであるから、本件建物は、法七三条の二一第二項の「固定資産課税台帳に価格が登録されていない不動産」に該当し、その課税標準額は、固定資産評価基準によりこれを決定すべきことになる。したがって、被告県知事から権限の委任を受けた被告県税事務所長が、右評価基準により、本件建物の課税標準額を決定したことは適法であり、その額は、〔証拠略〕によれば、前記被告県税事務所長の主張どおりとなるものと認められる。

なお、原告は、本件賦課決定における本件建物の課税標準額が固定資産課税台帳の登録価格により高額となっているのは不合理である旨主張する。しかし、右課税標準額は、新築時である平成元年一一月二四日における本件建物の価格を、固定資産評価基準により算定したものであるのに対し、右課税台帳には、その翌年である平成二年一月一日における本件建物の価格が登録されている(法三四九条、三五九条)のであり、固定資産税の課税標準額については新築時から時間が経過したことに伴う経年減点補正がされる結果、右登録価格が、本件課税標準額を下回ったとしても、直ちに不合理であるとはいえない。

また、〔証拠略〕によれば、本件裁決において、審査庁が固定資産評価基準により本件建物の価格を再評価した結果、その価格は六二四三万三一四八円となり、本件建物の課税標準額を上回ることが認められるから、右課税標準額がそれ自体不当に高額なものであるということもできない。したがって、原告の主張は理由がない。

以上によれば、本件賦課決定は適法である。

二  本件裁決の適法性について

1  〔証拠略〕によれば、本件裁決に至る経緯について、以下の事実が認められ、この認定に反する原告代表者の供述部分はにわかに採用することができない。

本件審査請求後の平成五年七月一五日、被告県知事は、原告に対し、一回目の審尋を行い、神奈川県の事務吏員である高桑和己(以下「高桑」という。)が、原告の主張内容を確認する目的で、原告の事務所に赴いた。右審尋の際、原告代表者は、審査請求の理由について、本件賦課決定に係る課税標準額は不当であるから、本件建物の価格を審査庁が固定資産評価基準により評価し直して欲しい旨申し述べた。

そこで、被告県知事は、本件建物の価格を再評価することとし、高桑は、同年八月四日、原告からこれに必要な資料の提出を受け、本件建物の現況を調査する目的で、再度原告事務所に赴いた。右二回目の審尋には、原告代表者及び原告の事務員である田中蓉子が同席し、その際、原告代表者らは、高桑に本件建物の竣工図面及び見積書を提示した。

同年九月一六日、三回目の審尋が行われ、その際、高桑は、前記竣工図面、見積書に基づき、原告代表者らから本件建物内部の構造及び内装につき説明を受け、その現況を確認するとともに、本件建物の新築時における構造、内装の状態を尋ね、その後の変更工事の有無を確認した。

右三回目の審尋後、本件裁決に至るまでの間、原告代表者から高桑に対し数回にわたり、本件裁決の時期に関する問合せの電話があったが、それ以外に、原告から本件審査請求に関し格別の申立てはなかった。

2  以上を前提に、本件裁決の適法性について判断する。

審査法二五条一項ただし書は、審査庁は、審査請求人等の申立てがあったときは、口頭で意見を述べる機会を与えなければならない旨規定しているが、右申立てがない場合に、いかなる審理方式により審理を行うかは、審査庁の裁量に委ねられているというベきである。本件において、原告が審査請求書に〔証拠略〕上で、口頭で意見を述べる機会を付与するよう申し立てたのに対し、被告県知事は、都合三回の審尋を行って、関係者からの事情聴取、証拠書類の取調べ、検証等を実施しており、このうち、一回目の審尋の際、原告が本件建物の価格を審査庁が再評価して欲しい旨の意見を陳述したことは前記のとおりである。したがって、被告県知事は、原告の申立てに即した意見陳述の機会を付与したものというべきである。これに対して、原告は、本件建物の検証内容の提出を受けた上、さらに、本件建物の再評価の内容を開示してもらい、価格評価につき不服な点を明らかにする意向であったが、被告県知事がその機会を与えなかった旨主張する。しかし、前掲各証拠によっても、原告が被告県知事に対し、本件建物の検証内容等の提出及びこれについての意見陳述の機会の付与を申し立てたとは認められないのであり、このような場合に、被告県知事が進んでこれらの措置を講ずべき義務があるということはできない。したがって、被告県知事がこれらの措置を講じなかったとしても、審査法二五条一項ただし書に違反するとはいえない。

また、原告は、被告県知事が原告に処分庁提出の課税標準額算出内容を閲覧させなかったこと、処分庁に弁明書の提出を求めなかったことが違法である旨主張する。しかしながら、審査法三三条二項は、処分庁が提出した物件について、審査請求人等が閲覧を求めることができる旨規定するのみであって、審査請求人等の申立てがない場合にまで、審査庁がこれを閲覧に供する義務を負うものではない。同法二二条についても、審査庁が処分庁に対して、弁明書の提出を求めることができる旨を規定するにとどまるから、その提出を求めるかどうかは、審査庁の適正な判断に委ねられていると解され、少なくとも、審査請求人等から弁明書副本送付の申立てがない場合にまで、審査庁が進んで処分庁に弁明書の提出を求める義務があると解することはできない。本件において、原告が被告県知事に対し、被告県税事務所長が提出した課税標準額算出内容の閲覧及び弁明書の副本の送付を申し立てたとは認められないから、被告県知事が右措置を講じなかったとしても、本件裁決が違法であるということはできない。

以上によれば、本件裁決は適法である。

(裁判長裁判官 浅野正樹 裁判官 近藤壽邦 近藤裕之)

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