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横浜地方裁判所 平成7年(行ウ)16号 判決 1999年6月09日

神奈川県大和市南林間一丁目一八番一六号

原告

株式会社 東京ショップ設計事務所

右代表者代表取締役

梅谷郁夫

右訴訟代理人弁護士

鈴木義仁

篠原義仁

岡村共栄

山田泰

森卓爾

西村隆雄

藤田温久

中村宏

神奈川県大和市中央五丁目一三番一三号

被告

大和税務署長 五明繁夫

右指定代理人

井上良太

佐野正美

久保寺勝

小平宣男

上田幸穂

主文

一  原告の請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第一請求

被告が、いずれも平成五年八月三一日付けで原告に対してした次の処分のうちの次の部分を取り消す。

一  原告の平成二年五月一日から平成三年四月三〇日までの課税期間(以下「平成三年四月期」という。)の消費税更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分(ただし、いずれも異議決定により一部取り消された後のもの)のうち納付すべき消費税額七〇万三七〇〇円を超える部分

二  原告の平成三年五月一日から平成四年四月三〇日までの課税期間(以下「平成四年四月期」という。)の消費税更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分のうち納付すべき消費税額六七万四二〇〇円を超える部分

第二事案の概要

本件は、被告がいずれも平成五年八月三一日付けで原告に対してした原告の平成三年四月期及び平成四年四月期の消費税の各更正処分(ただし、平成三年四月期については、異議決定により一部取り消された後のもの。以下、まとめて「本件更正処分」という。)について、原告が、消費税法(平成六年法律第一〇九号による改正前のもの。以下「法」ということがある。また、消費税法の規定については、条名だけで表示することがある。)三〇条一項に規定する課税仕入れに係る消費税額の控除(以下「仕入税額控除」ともいう。)を認めず、原告の納付すべき消費税額を過大に認定した違法があり、これに付随してされた過少申告加算税の各賦課決定処分(ただし、平成三年四月期については、異議決定により一部取り消された後のもの。以下、まとめて「本件賦課決定処分」という。)も違法であるとして、「第一 請求」欄記載のとおり右過大分の取消しを求めたものである。

一  争いのない事実

1  原告の業務内容等

原告は、肩書き住所地に本店事務所を有し、建築設計及び施工業を営んでいる法人である。

2  消費税の確定申告制度

事業者は、国内において行った課税資産の譲渡等につき、申告納税方式(四二条以下)により消費税を納める義務がある(五条一項)ところ、所定期間内に、課税期間ごとに、(1) その課税期間中に国内において行った課税資産の譲渡等に係る課税標準である金額の合計金額(課税標準額)、(2) 課税標準額に対する消費税額、(3) 消費税額から控除される課税仕入れ等に係る税額(三〇条一項)、(4) 納付すべき消費税額等を記載した確定申告書を税務署長に提出しなければならない(四五条)。

3  原告の消費税に関する課税の経緯

原告の平成三年四月期及び平成四年四月期(以下まとめて「本件係争各期」という。)の消費税に関する課税の経緯は、別表一、二のとおりである。

すなわち、

(一) 原告は、別表一、二の「確定申告」欄の課税標準額、消費税額、控除対象仕入税額及び納付すべき消費税額のとおりの内容で、確定申告をした。

(二) これに対して、被告は、別表一、二の「更正・賦課決定」欄記載のとおりの更正処分をした。本件更正処分と確定申告とを対比すると、平成三年四月期については課税標準及びこれについての消費税額に多少の違いがあるものの、この点は後記異議決定により違いのないものとなった。平成四年四月期の課税標準及びこれに対する消費税額には違いはない。

ところで、本件更正処分において確定申告と大きく異なった点があり、それは、確定申告においては、控除対象仕入税額が三二〇万九〇七八円(平成三年四月期)及び五〇四万八四七七円(平成四年四月期)であるのに、本件更正処分においては、本件係争各期ともこれが零円とされた点であり、その結果として、納付すべき税額欄に違いが生じているものである。右の点に関する本件更正処分における理由は、原告が各課税期間の課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿又は請求書等(以下「帳簿等」という。)を提示しないため三〇条一項による仕入税額控除は認められないというものであった。

(三) 本件更正処分に対する異議申立てと審査請求に関する経緯は、別表一、二の該当欄記載のとおりである。

このうち、平成三年四月期については、異議決定により本件更正処分における課税標準額が異議申立てにおける額(確定申告額におけるのと同一額)と同一にされた。これに対し、平成四年四月期については、異議決定及び審査請求が棄却され、本件更正処分が維持されている。したがって、異議決定後の原告の主張と被告による本件更正処分との相違点は、控除対象仕入税額が零円かそうでないかの一点になった。

二  本件の争点と双方の主張

本件の争点は、原告の本件係争各期の消費税につき、仕入税額控除の適用はないとしてされた本件更正処分及びこれに付随してされた本件賦課決定処分の適否である。

これについての双方の主張は、以下のとおりである。

1  被告の主張

(一) 帳簿等の保存の意味と原告の帳簿不提示

(1) 法三〇条七項の「保存」の意味

法三〇条七項は、仕入税額控除の規定(同条一項)について、事業者が当該課税期間の仕入税額控除に係る帳簿又は請求書等を保存しない場合には、災害その他やむを得ない事情により保存をすることができなかったことを当該事業者において証明した場合を除き、帳簿等の保存がない課税仕入れ等に係る消費税額につきこれを適用しない旨規定している。そして、法施行令五〇条一項は、「法第三十条第一項の規定の適用を受けようとする事業者は、同条第七項に規定する帳簿又は請求書等を整理し、当該帳簿についてはその閉鎖の日の属する課税期間の末日の翌日、当該請求書等についてはその受領した日の属する課税期間の末日の翌日から二月を経過した日から七年間、これを納税地又はその取引に係る事務所、事業所その他これらに準ずるものの所在地に保存しなければならない。」旨規定している。このように、法施行令五〇条一項が、仕入税額控除に係る帳簿等の保存期間につき、税務当局において課税権限を行使し得る最長の期間である七年間(国税通則法七〇条五項)と定め、しかも、それらの帳簿等の保存場所について、税務調査に便宜な納税地又はその取引に係る事務所、事業所等に限っていることからすると、法三〇条七項が仕入税額控除に係る帳簿等の保存がない場合において原則的に同条一項の規定を適用しないとしているのは、税務調査が行われた際に、保存されている仕入税額控除に係る帳簿等が税務職員に提示され、これに基づいて課税仕入れ等に係る消費税額が算出でき、申告の正確性を確認し得るということを予定したものというべきであり、そのような趣旨の下に帳簿等の保存を要求しているものと解される。換言すれば、法三〇条七項にいう仕入税額控除に係る帳簿等の保存というのは、単に帳簿等が事業者の支配下に存在しているということを意味するのではなく、納税者が適法な税務調査に際し調査担当職員からその提示を求められた際には、正当な事由がない限りこれに応じ、当該職員がこれを閲覧検査し得る状態に置くべきことをも含むものと解される。

(2) 帳簿等の不提示

ところが、本件において、原告は、被告税務職員が再三にわたり帳簿等の提示を求めたにもかかわらず、正当な理由もなくこれに応じず、本件税務調査時に仕入税額控除に係る帳簿等を提示しなかった。

(3) 本件更正処分及び本件賦課決定処分の適否

そこで、被告は、原告が法三〇条七項に規定する帳簿等の保存をしていなかったものと判断し、原告の消費税額の算出に当たって仕入税額控除を認めず、これを零円として本件更正処分をした。また、被告は、原告が平成三年四月期及び平成四年四月期の納付すべき消費税額につきいずれも過少に申告しており、右過少申告について国税通則法六五条四項所定の正当な理由が存在しないことから、同法六五条一項及び二項の規定に基づき、本件更正処分により新たに納付すべきこととなった税額を基礎として、それぞれ所定の計算をし、本件賦課決定処分をした。

したがって、本件更正処分は適法であり、それに付随してされた本件賦課決定処分も適用である。

(二) 原告の主張に対する反論

(1) 帳簿等の不提示と仕入税額控除の可否

法三〇条七項の仕入税額控除の要件に関する原告の主張は、要するに、仕入税額控除は課税の累積の排除という消費税の基本的性格に由来するものであるから、帳簿等の提示がない場合に仕入税額控除を認めないとすることは、このような消費税の基本的性格に反する拡張解釈であり、文理に反するばかりか、租税法律主義にも違反するというにある。

しかし、法三〇条七項が仕入税額控除に係る帳簿等の保存を仕入税額控除の要件とした趣旨は、税務調査に際し、納税者から仕入税額控除に係る帳簿等の提示を受け、課税仕入れに係る消費税額に関する申告の正確性を確認することができるようにすることにあるから、仕入税額控除が認められるためには、納税者が、税務調査に際し、税務職員に対して右帳簿等を提示することが必要であって、納税者が右帳簿等の提示を拒否した場合は、法三〇条七項が規定する帳簿等を保存しない場合に該当すると解釈できる。右のような解釈は、消費税の趣旨等を合理的に解釈して導かれるものであり、これをもって文理に反した拡張解釈であるとか、租税法律主義に違反するということはできない。

(2) 調査の適法性

被調査者には第三者の立会いを求める権利はないので、被告は、原告に対し、第三者の立会いのないところで帳簿等を提示して調査をすることを要請したにもかかわらず、原告はこれに応じなかった。そのため、被告は、帳簿等を調査することを断念せざるを得なかった。その他の点においても、被告には原告主張の調査に関する違法事由はない。

2  原告の主張

1の被告の主張はいずれも争う。

(一) 仕入税額控除の要件(「保存」)の解釈における厳格性の要請

仕入税額控除の趣旨は、課税の累積を排除するために、仕入れの段階で負担した消費税額を控除すべきであるというものである。したがって、仕入税額を控除しないとする方向での解釈は厳格でなければならず、これをみだりに拡張解釈することは、法律のないところで課税するに等しく、租税法律主義に違反する。

また、仕入税額を控除するためには、いくらの仕入れがあっていくらの税額がかかったかが分かる必要があるところ、法三〇条七項は、帳簿等の資料によりこれを明らかにするのでなければ仕入税額控除を認めないという極めて単純なことを規定したにすぎない。したがって、そこに提示という概念を持ち込むことは、明らかに拡張解釈であり、許されない。

さらに、被告は、青色申告承認の取消しの場合と同様の論理で法三〇条七項に定める帳簿等の「保存」は、帳簿等の「提示」も含むものであると主張する。しかし、青色申告承認の取消しは、青色申告者に対して与えた課税上の特典を喪失させるにすぎないのに対し、仕入税額控除の否認は、課税の累積を認め、税金の二重取りをするものであるから、課税上の特典を喪失させるのとは全く意味を異にしている。したがって、青色申告承認の取消しと消費税の仕入税額控除の否認とを同列に論じる被告のような解釈は、課税の累積を排除しようという消費税の本質から逸脱するものであるばかりか、消費税の根幹を揺るがすものであり、明文の規定なしには許されない。

(二) 本件税務調査の違法

被告税務職員が原告に対してした本件税務調査には、次のような違法がある。すなわち、被告税務職員は、原告事務所に最初に臨場するに際し、事前に何ら連絡をせず、いきなり原告事務所に臨場し、調査を開始した。このような事前連絡をしない税務調査は許されず、違法というべきである。また、被告税務職員は、本件税務調査に当たり、原告の代表取締役梅谷郁夫(以下「原告代表者」という。)が、立会人を、日常の記帳や決算等の手伝いをしてもらっている大和民主商工会(以下「大和民商」という。)事務局の西村清徳(以下「西村局員」という。)一人に絞ったにもかかわらず、西村局員の立会いの下での調査を拒否し続けた。加えて、被告税務職員は、平成四年一二月七日の調査の際、原告代表者が西村局員を退席させ、調査に協力する態度を示したにもかかわらず、原告代表者から事業概況を聴取しただけで、帳簿等の保存状況さえ調査しようとしなかった。

このように、本件税務調査には違法があるから、原告代表者が被告税務職員に対し帳簿等を提示しなかったことには正当な理由があり、したがって、これを理由に原告に仕入税額控除を認めないとすることはできない。

(三) 原告の帳簿等の保存

原告は、本件係争各期について、法三〇条八項、九項の規定する帳簿等(甲七ないし五四)を、保存期間の始期から継続的に保管、保存していた。このことは、原告が、本件税務調査の際に、これらの帳簿等を段ボール箱の中に入れ、いつでも被告税務職員が手に取って見ることができる状態に置いていたことからも明らかであり、被告税務職員も、本件更正処分等の異議申立ての審理の過程で、原告がこれらの帳簿等を保存していたことを現認している。また、被告が本件訴訟において原告提出の帳簿等について何ら反論等を加えず単に成立を不知としているのは、原告提出の帳簿等が法三〇条八項、九項の要件を充たす適正なものであり、これを原告が記録、保存していることを認めたからにほかならない。

第三当裁判所の判断

一  仕入税額控除に係る帳簿等の保存の意義

1  仕入税額控除の制度

法によれば、事業者が国内において課税仕入れを行った場合又は保税地域から課税貨物を引き取った場合には、課税仕入れを行った日又はその課税貨物を引き取った日の属する課税期間の売上げに係る消費税額から、その課税期間中に国内において行った課税仕入れに係る消費税額及びその課税期間中に保税地域から引き取った課税貨物につき課された又は課されるべき消費税額を控除すると定められている(三〇条一項)。ここに課税仕入れとは、事業者が、事業として他の者から資産を譲り受け、若しくは借り受け又は役務の提供を受けることをいい(二条一項一二号)、事業者が免税事業者や消費者から課税資産の譲渡等を受けた場合には、課税仕入れに係る支払対価(三〇条六項)の一〇三分の三(二九条)相当額が消費税額から控除されることになる。これは、法が、消費税を取引の各段階で課税すると、取引の段階の多寡により商品価値に占める税負担の割合が異なるため、取引会社間の合併を促進することなどが懸念されたため、経済に対する中立性を確保する趣旨から、前段階の取引に係る税額を控除するという、いわゆる課税の累積を排除するという方式を採用したことによるものと解される。

2  法三〇条七項の趣旨(仕入税額控除の要件)

(一) 争点の確認

ところで、法は、仕入税額控除について、事業者が当該課税期間の課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿又は請求書を保存しない場合にはこれを適用しないと定めている(三〇条七項)。原告は、この帳簿等の保存の意義について、文字どおり保存している場合に限られると主張し、被告はこれを争うので、以下、法三〇条七項の趣旨について検討する。

(二) 消費税の制度の枠組み

法は、事業者の納付する消費税について、申告納税制度を採用しており、事業者に、課税標準額、課税標準額に対する消費税額及び右消費税額から控除されるべき課税仕入れ等に係る消費税額等を記載した申告書を税務署長に提出することを義務付けているから(四五条)、税務署長等が納税者のした申告内容が正確であることを確認するためには、課税要件事実に関する資料の入手が必要不可欠であるところ、法は、消費税に関する調査について必要があるときには、税務署長は納税義務がある者等に対し、質問し、又はその者の事業に関する帳簿書類その他の物件を検査することができると定め(六二条)、質問に対する不答弁並びに検査の拒否、妨害等に対しては、刑罰をもってこれに臨んでいる(六八条一号)。

また、法は、課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿には、それが課税仕入れに係るものである場合には、イ 課税仕入れの相手方の氏名又は名称、ロ 課税仕入れを行った年月日、ハ 課税仕入れに係る資産又は役務の内容、ニ 課税仕入れに係る支払対価の額を記載することを(三〇条八項一号)、また、課税仕入れ等の税額の控除に係る請求書等には、それが課税仕入れに係るものである場合には、イ 書類の作成者の氏名又は名称、ロ 課税資産の譲渡等を行った年月日、ハ 課税資産の譲渡等の対象とされた資産又は役務の内容、ニ 課税資産の譲渡等の対価の額、ホ 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称を記載することを(三〇条九項一号)それぞれ求め、さらに、法施行令五〇条は、事業者が法三〇条一項の仕入税額控除の適用を受けるためには、仕入税額控除に係る帳簿等を整理し、帳簿についてはその閉鎖の日の属する課税期間の末日の翌日、請求書等についてはその受領した日の属する課税期間の末日の翌日から各二月を経過した日から七年間、納税地又はその取引に係る事務所、事業所等の所在地に保存しなければならないと規定している。

(三) 仕入税額控除の要件の特質

ところで、(二)のような制度を背景にして、ここで問題の法三〇条七項を見ると、この規定は、仕入税額控除の適用を受けるための要件として仕入税額を課されたことを前提としてそれについての帳簿等の保存を要求している。このうち、ここで問題とされる帳簿等の保存というのは、課税要件という観点からすると、控除する仕入税額といった直接的かつ実体的な事実ではなく、間接的かつ手続的な事実である。一般に税額を定める要件あるいは税額を控除する要件は、所得額とか経費額といった実体的なものとされるはずであるから、それと対比すると、帳簿の保存という間接的かつ手続的な事実をも要件としているのは特殊な制度ということができるわけである。仮に、ここでも直接的実体的観点を強調しようとすればできないではないのであり、例えば、仕入税額を支出したということだけを要件として、帳簿等の保存があるかどうかは一個の証明手段の有無の問題と位置づけ、他の証明手段により仕入税額を支出したということの証明ができれば、その税額控除が認められるという制度にすることも可能であるはずなのに、そうしていないことに注意する必要がある。のみならず、この三〇条七項の規定があるため、仕入税額の支出が真実存在しても、それを記載した帳簿等が保存されていない場合には、仕入税額控除が認められないことにさらに注意しておく必要がある。

(四) 帳簿等の保存を仕入税額控除の要件とする趣旨

法が標記のような付加的ながら独立の手続要件を定めた趣旨を考えるについては、税額控除を認めている他の規定が参考となる。例えば、外国税額控除(所得税法九五条、法人税法六九条)、所得税額の控除(法人税法六八条、租税特別措置法一〇条以下)、法人税額控除(租税特別措置法四二条の四以下)の制度があるところ、このうち所得税法九五条、法人税法六九条の控除については、申告書、計算明細書の他に当該控除すべき税額を課されたことの証明書を添付することが要件とされている。消費税における仕入税額控除についても、即時控除方式が採られていること(法三〇条一項)等、右の税額控除の仕組みに類似している面があるということができる。ただし、性質上仕入税額に係る添付資料が膨大なものとなり、申告する事業者にとっても課税庁にとってもこの添付方式によることが実務上困難であると考えられる。そこで、法は、前記税額控除方式におけると同種の証明書の添付を求めないで、これに代えて帳簿を保存する方式を導入し、その帳簿等については、法定の様式性を要求し、その期間も税務調査を前提とした七年間(国税通則法七〇条五項参照)としたものと解するのが相当である。

以上のような法が採用している消費税の制度内容及び関連諸規定にかんがみると、法三〇条七項が仕入税額控除の適用を受けるための要件として帳簿等の保存を要求しているのは、税務職員が税務調査において納税者の保存している右帳簿等を検査し、申告の正確性を確認することができるようにするためであると解されるのである。

また、右のとおりであるから、帳簿の保存が必要な時期は、前記の七年間のうちの税務調査があったときということになる。

(五) 「保存」の意味

(四)の趣旨からすると、税務職員が消費税の調査に当たって質問検査権を行使して、単に帳簿等が保存されていることが確認されれば、それだけで仕入税額控除が認められるわけでないのは当然であり、税務職員が保存されている帳簿等を調査し、その結果と申告書類及び計算明細書の記載内容とが一致していることを確認してから、仕入税額控除がされるわけであるから、法三〇条七項にいう「帳簿等の保存」とは、単なる物理的な帳簿等の保存をいうのではなく、税務職員による適法な帳簿等の提示要求に対しその保存の有無及びその記載内容を確認し得る状態に置くことをも含むというべきである。規定の文言は「保存」であるが、その規定が適用される状況を踏まえると、「保存」は、提示の前提としての保存であり、このことは趣旨解釈として当然に導かれるところである。

したがって、納税者が、適法な税務調査に際し、税務職員に対し帳簿等を提示することを正当な理由もなく拒否した場合には、帳簿等を保存しない場合に該当するとして、仕入税額控除の適用を受けることができないというべきである。そして、税務署長が、右のような判断に立って、仕入税額控除を認めず、更正処分をした場合は、たとえ納税者がその後の不服申立て等の手続時点では帳簿等を保存していたとの事実が訴訟の場で立証されたとしても、右処分の効力には影響がないと解するのが相当である。というのは、税務調査時点において帳簿等を保存していなかったという事実が右の更正処分の要件に該当する事実であるし、行政処分の取消訴訟において、違法性の判断の基準時は処分時と解すべきであるから、その後の時点で帳簿等を保存していたとの事実が証明されても、更正処分の適否に直接には結びつかないからである。仕入税額控除の要件として帳簿等の保存が規定されていることから、立証の面でもこのような結論が導かれるものである。実際問題としても、このように解さなければ、納税者は、更正処分後に帳簿等を補完し、これを保存していたと主張し、右処分の取消しを受けることが可能となるところ、そのような解釈は容認し難いものといわなければならない。

3  原告の主張に対する判断

(一) 原告は、消費税の基本的性格は、仕入税額を控除し、課税の累積を排除することにあるから、これを認めない方向での法三〇条七項の解釈は厳格でなければならないのであり、税務調査に際し帳簿等を提示しなかった場合も帳簿等を保存していなかった場合に当たるというようにみだりにこれを拡張して解釈することは租税法律主義に違反し、許されないと主張する。

しかし、前記のとおり、帳簿等の保存は、仕入税額の控除のための特別かつ独立の要件であり、その必要性からその内容を前記のように解釈することは合理的であり、前記の解釈が拡張解釈であるとの批判は当たらない。原告の右主張は採用することができない。

(二) また、原告は、仕入税額控除は、課税の累積排除という消費税の本質に基づくものであり、事業者の当然の権利であるから、課税上の特典を排除する青色申告の承認取消しの場合とは同列に論じられないと主張する。

法が、課税の累積排除という立場を採り、その観点から仕入税額控除を認めることにしていることは原告の主張するとおりであるけれども、法は、仕入税額控除を納税者の当然の権利として認めているのではなく、帳簿等の保存を前提としてこれを認めているのであり、また、「保存」の意義について、前記のように解釈したとしても、課税の累積排除の原則に反するものとはいえない。

したがって、原告の主張はいずれも理由がない。

4  まとめ

以上のとおり、法三〇条七項にいう帳簿等の「保存」には、その合理的解釈として、税務職員による適法な提示要求に対し、帳簿等の保存の有無及びその記載内容を確認し得る状態に置くことをも含むものであり、したがって、納税者が、税務調査に際し、税務職員に対し帳簿等を提示することを正当な理由もなしに拒否した場合には、帳簿等を保存しない場合に該当し、仕入税額控除の適用を受けることができないものというべきである。

二  本件における仕入税額控除の可否

1  本件税務調査の態様

そこで、本件税務調査において、原告が帳簿等を提示したかどうか、また提示することを理由もなしに拒否したかどうかについて検討するに、証拠(甲六三の一ないし二七、六五、六八、乙六、七、証人小檜山健、同西村清徳、同川鶴信行の各証言、原告代表者梅谷郁夫尋問の結果、弁論の全趣旨)によれば、以下の事実が認められる。

(一) 被告税務職員小檜山健(以下「小檜山係官」という。)は、平成四年八月二五日午後、本件税務調査のため、原告の本店事務所(広さは横七・四メートル、縦三・七メートル。以下「事務所」という。)に臨場したところ、原告の取締役梅谷諭一(以下「諭一」という。)が応対に出たので、税務調査に来た旨を告げ、原告代表者に面会を申し出たところ、原告代表者は不在であるというので、諭一に連絡を依頼し、原告代表者を待っていたところ、しばらくして、原告代表者が二人連れで事務所に戻って来た。そこで、小檜山係官は、原告代表者に対し、所属税務署、官職及び氏名を名乗り、本件税務調査のため臨場した旨を告げ、平成元年五月一日から平成四年四月三〇日までの間の帳簿等の提示を求め、同席している者が誰かを尋ねたところ、原告代表者は、「大和民商事務局の西村局員である。原告は、大和民商に経理を依頼しており、帳簿等も大和民商にある。今日は提示できない。」旨申し述べた。そこで、小檜山係官は、原告代表者に、民商(民主商工会をいう。以下同じ。)の関係者等第三者の調査立会いは、税理士法に抵触するおそれがあり、また、守秘義務の関係から認められない旨告げたが、原告代表者は、民商の事務局員立会いの下での調査を要求し、帳簿等を提示しなかった。そのため、小檜山係官は、調査の続行は不可能と判断し、原告代表者と次回の調査日を平成四年九月二四日及び二五日と約束して、その場を辞去した。

(二) その後、小檜山係官は、原告代表者から、平成四年九月二四日及び二五日の調査を延期してほしい旨の申立てを受けたので、原告代表者と打ち合わせをし、調査日を同年一〇月二〇日及び二一日に変更した。そして、小檜山係官は、同月二〇日午前、被告税務職員川鶴信行(以下「川鶴係官」という。)と共に原告の事務所に臨場した。小檜山係官は、その場に原告代表者のほかに西村局員ともう一名の者が同席していたので、原告代表者に対し、民商の関係者等第三者の調査の立会いのないところで帳簿等の提示をしてほしい旨告げたところ、原告代表者は、「何を用意してほしいと言われていないので、用意していない。」、「経理は大和民商に任せているので、民商の関係者に立ち会ってもらわなければならない。」などと述べ、帳簿等を提示しなかった。このため、小檜山係官は、調査の実施が困難と判断し、原告代表者に対し、調査に協力してもらえなければ取引先等についての調査を行わざるを得なくなる旨、また、次回の調査日程を早急に連絡してほしい旨告げて、川鶴係官と共にその場を辞去した。

(三) その後、小檜山係官と原告代表者は、次回調査を平成四年一二月七日及び八日にすることで了解に達した。そこで、小檜山係官は、川鶴係官と共に、同月七日午前、原告の事務所に臨場したところ、原告代表者のほかに西村局員が同席していたので、原告代表者に対し、民商の関係者等第三者の立会いのないところで帳簿等を提示してほしい旨告げたところ、原告代表者は、「経理は民商に任せているので、民商の関係者に立ち会ってもらわないと困る。」、「第三者の調査立会いができない旨の法律の規定があるのか。」などと述べ、帳簿等を提示しなかった。そして、原告代表者は、来客用机の上に置いてあった段ボールを指差して、「帳簿はここにあるんだから見ていって下さい。」などと述べた。しかし、小檜山係官らが、依然として西村局員の立会いの下での調査を拒否し続けるため、原告代表者は、西村局員に、一時事務所の奥の方に行ってくれるよう指示し、西村局員はこれに従い、事務所の奥の方に退席した。そこで、小檜山係官は、原告代表者から、原告の事業概要等を聴取したが、西村局員が退席した場所がわずか四メートル位しか離れておらず、その間は高さのないパーテーションで仕切られているだけであり、話し声も聞こえるため、それ以上の調査はしないでいたところ、一〇分ほどして西村局員が戻って来たので、再度原告代表者に、守秘義務の問題があるので民商の関係者等第三者を退席させた上で帳簿等を提示してほしい旨を告げたが、原告代表者が拒否するため、午後再度臨場する旨告げて、その場を辞去した。

その後、小檜山係官及び川鶴係官は、同日午後、再度原告の事務所に臨場した。小檜山係官は、原告代表者のほかに西村局員も同席していたので、原告代表者に対し、民商の関係者等第三者の立会いのないところで、平成元年五月から平成四年四月までの間の帳簿等を提出してほしい旨告げ、第三者の立会いができない理由として、法人税法、税理士法、国家公務員法の条文を抜粋した書面(乙六の別紙2)を示して説明したが、原告代表者はこれに応じず、従前と同様第三者の調査立会いを要求することに終始し、帳簿等を提示しなかった。そこで、小檜山係官は、このままでは帳簿調査は不可能であると判断し、原告代表者に対し、このような状況では調査を進めることができないので、税務署独自に取引先等の調査を行わざるを得なくなる旨告げて、川鶴係官と共にその場を辞去した。

(四) 小檜山係官は、平成四年一二月八日午前、被告税務職員大森寛(以下「大森係官」という。)を同行して原告の事務所に臨場し、原告代表者に帳簿等の提示を求めたところ、大和民商事務局長の田辺が臨場し、同席した。そこで、小檜山係官は、原告代表者に対し、第三者の立会いは認められていないので第三者の立会いのないところで平成元年五月から平成四年四月までの間の帳簿等の提示をしてほしい旨告げた。しかし、原告代表者は、従前と同様、第三者の調査立会いを求めることを要求し、帳簿等の提示を拒んだため、小檜山係官らは、帳簿等の調査を行うことができなかった。原告代表者は、この日も来客用机の上に段ボール箱を置いていたが、ふたは閉まっており、小檜山係官らは、その中が何かを確認することができなかった。小檜山係官は、原告代表者に対し、右のような状況では調査を進めることができず、このままでは取引先等の反面調査を行わざるを得なくなる旨、また、帳簿等の不提示は青色申告承認の取消しの要件に該当する旨告げて、大森係官と共にその場を辞去した。

(五) その後、小檜山係官は、平成五年二月一日午後、本件税務調査のため原告の事務所に臨場し、応対に出た原告代表者の妻朝代に対し、平成元年五月一日から平成四年四月三〇日までの間の帳簿等を提示してほしい旨を告げ、調査に協力するよう依頼した。しかし、朝代は、原告代表者の不在を理由にこれを拒否した。そこで、小檜山係官は、朝代に、平成五年二月四日午前一〇時ころ調査に伺う旨を告げて、その場を辞去した。

(六) 小檜山係官は、川鶴係官と共に、平成五年二月四日午前、原告の事務所に臨場し、原告代表者に第三者の立会いなしで帳簿等を見せてほしい旨依頼した。すると、間もなく西村局員が事務所に臨場し、同席したので、小檜山係官は、原告代表者に対し、民商の関係者に退席してもらった上で、平成元年五月一日から平成四年四月三〇日までの間の帳簿等を見せてほしい旨告げたが、原告代表者は、「民商の関係者がいるとなぜ調査ができないのか。」、「自分は経理のことは分からないから、民商の関係者がいるところで調査してもらわないと困る。」などと申し立てた。原告代表者は、当日も来客用机の上に段ボール箱を置いていたが、ふたは閉まっており、小檜山係官らは中を確認することができなかった。小檜山係官は、原告代表者に対し、秘密保持義務の関係から、第三者が調査に立ち会うことには問題がある旨告げ、理解を求めたが、聞き入れられず、帳簿等は提示されなかった。このため、小檜山係官は、原告代表者に対し、このような状況では調査は進められないし、帳簿等の提示がなければそれらの保存が確認できず、消費税の仕入税額の控除ができないことになる旨、また、民商の関係者に退席してもらった上で平成元年五月一日から平成四年四月三〇日までの間の帳簿等を見せてほしい旨告げたが、原告代表者はこれを拒否した。そこで、小檜山係官は、原告代表者の帳簿等の不提示の意思は明らかであると判断して、原告代表者に対し、税務署は独自の調査を進めざるを得ない旨告げて、川鶴係官と共にその場を辞去した。

以上のとおり認められる。これに対し、甲六五(西村清徳の陳述書)、六八(梅谷郁夫の陳述書)、証人西村清徳の証言及び原告代表者梅谷郁夫尋問の結果中には、原告代表者の方から小檜山係官らに対し積極的に帳簿を提示して調査をして欲しいと依頼したが、被告の係官は第三者がいないところでないと見ることはできないとして、見ようとはしなかったとか、また、被告係官は第三者の立会いを拒否する理由については説明しなかったとか、帳簿の入った段ボールのふたは開けてあったといった供述をする部分がある。この点は、最終的に被告による帳簿等の調査は至らなかったことの原因が第三者の立会いを拒否する被告の態度にある(原告)のかそれとも第三者の立会いに固執する原告の態度にある(被告)のかということに由来する相違であり、ニュアンスの相異という面もある。

そして、右のような異なる証拠のある事実は除いて、証拠上紛れなく認められる事実によっても、小檜山係官らが再三にわたり西村局員等民商の関係者が立ち会っていないところで帳簿等を提示してほしいと要求したにもかかわらず、原告代表者は、あくまで民商の西村局員らの立会いの下での調査でなければ調査に応じられないとの態度に固執し、結局、小檜山係官らは、帳簿等の保存状況を確認するなどの調査を行うに至らなかったということができる。そして、被告が原告からその帳簿等を無条件に提示されたのにこれを拒否したという事実は認められない。

2  本件税務調査における違法の有無

原告は、本件税務調査には違法があると主張するので、以下、1の事実を前提に、この点について判断する。

(一) まず、原告は、被告税務職員が最初に原告事務所に臨場した際、事前連絡をしなかった違法があると主張する。

しかし、現行税法上、質問検査権の行使である税務調査の実施に際し、事前に被調査者に通知すべき旨を定めた規定は存在せず、事前通知をするか否かは、質問検査権の行使の方法、程度、時期等と同じく、権限のある税務職員の合理的な裁量に委ねられているというべきである。したがって、本件において、小檜山係官が最初に原告事務所に臨場した際、原告に事前連絡をせずに臨場したことをもって違法とすることはできない。

(二) また、原告は、税務調査に際し、第三者の立会いを認めないのは違法であると主張する。

しかし、そもそも現行法上、税務職員が質問検査の際、第三者を立ち会わせるべき旨を定めた規定はない。また、税務調査においては、税務職員が質問検査権を行使して帳簿等の検査をし、その正確性を把握する必要があるから、その内容や保管状況について質問し、その際、被調査者の取引先等にも質問が及ぶこともあり得るところ、このような調査の場に法律上守秘義務を負わない第三者が同席していれば、税務職員として、帳簿等について十分な質問検査をすることができない。そして、税務職員が、税務調査において、第三者の退席を要求し、それが容れられない場合に調査を拒否することは、当該税務職員に委ねられた合理的な裁量の範囲内の行為と解されるところ、本件において、小檜山係官らは、正に右のような判断に立って、西村局員の立会いの下での調査を拒否した(西村局員の立ち会わない下での調査を要請した)のであるから、これをもって裁量の範囲を逸脱した違法な行為ということはできない。

(三) さらに、原告は、平成四年一二月七日の本件税務調査において、原告代表者が西村局員を退席させたから、被告税務職員においては帳簿等の記帳内容や保存状況について容易に確認できたはずであるのにこれをしなかったから違法であると主張する。

しかし、前記認定のとおり、西村局員は小檜山係官らのいるところから退席したといっても、もともと広いとはいえない原告事務所の奥の方であり、小檜山係官らがいた場所とは四メートル位しか離れておらず、しかもその間はパーテーションでさえぎられているだけで、話の内容が聞き取れるような状況であったのであるから、小檜山係官らが、守秘義務を遵守するという見地に立って、原告代表者から原告の事業内容等を聴取するにとどめ、それ以上の調査をしなかったことをもって違法ということはできない。

(四) 以上のとおり、本件税務調査に原告の主張するような違法があるということはできず、他にこれを認めるべき事由を見い出すこともできない。なお、以上のようにいうことは、結果的には第三者の立会権を認めないとの被告の意向を是認したに等しいが、それは第三者の立会権を認めるとする明文規定がない以上、法律的には当然のことである。

3  まとめ

以上によれば、原告は、正当な理由なしに税務職員による帳簿等の提示要求を拒否し、帳簿等の保存の有無及びその記載内容を確認し得る状態に置かなかったのであり、法三〇条七項に定める仕入税額控除を受けるための要件を充たさなかったから、仕入税額控除を受けられないといわなければならない。したがって、被告がした本件更正処分は適法であり、これを前提として被告がした本件賦課決定処分も適法というべきである。

なお、原告は、本件訴訟において、法三〇条八項、九項の要件を充たす帳簿等を保存していたとして、帳簿等(甲七ないし五四)を提出するが、前示のとおり、本件更正処分が適法にされたと判断される以上、後に原告が帳簿等を保存していたとことが判明したとしても、右処分の効力に影響はないから、本訴において、原告が帳簿等を保存していたかどうか、また、甲七ないし五四がこれに当たるかどうかを審理、判断する必要はないというべきである。

三  結論

よって、原告の本訴請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 岡光民雄 裁判官 近藤壽邦 裁判官近藤裕之は、転任につき署名押印することができない。裁判長裁判官 岡光民雄)

別表一

平成二年五月一日から平成三年四月三〇日までの課税期間の消費税の更正処分等の経緯

<省略>

別表二

平成三年五月一日から平成四年四月三〇日までの課税期間の消費税の更正処分等の経緯

<省略>

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