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横浜地方裁判所 平成8年(行ウ)9号 判決 1997年11月19日

川崎市宮前区潮見台八番四号

原告

伊東博

右訴訟代理人弁護士

縄稚登

川崎市高津区久本二-四-三

被告

川崎北税務署長 山下二三夫

右指定代理人

竹村彰

内田健文

池上照代

森口英昭

庄子衛

峰岡睦久

伊藤浩視

主文

一  原告の請求を棄却する。

二  訴訟費用は、原告の負担とする。

事実及び理由

第一請求

被告が平成六年六月二四日付けで原告の平成五年六月三日の相続税の更正請求に対してした更正すべき理由がない旨の通知処分を取り消す。

第二事案の概要

一  本件は、平成三年一月九日に死亡した伊東市蔵の七名の共同相続人の一人である原告が、同年六月二十一日、課税価格を一一億九八五一万円、納付すべき税額を四億九八一五万九四〇〇円とする相続税の申告をしたが、その後、東京地方裁判所のした判決により、伊東市蔵の元金二億一〇〇〇万円の借入金の存在が明らかになったため、右申告に係る課税価格及び納付すべき税額が過大になったとして、平成五年六月三日、国税通則法二三条二項一号に基づき更正の請求をしたが、被告により、本件判決は同号の「判決」に該当しないとして、更正すべき理由がない旨の通知処分を受けたことから、原告が、右通知処分の取消しを求めた事案である。

二  争いのない事実等(末尾に証拠等の記載のないものは当事者間に争いがない。)

1  原告は、伊東市蔵(以下「亡市蔵」という。)の共同相続人の一人であり、亡市蔵の共同相続人は、長男である原告のほか、矢澤敏子、栗原秀子、粕谷ヨシ子、伊東清治、水木君子、伊東行雄の六名(以上原告以外の六名を併せて「他の相続人」という。)である(原告及び他の相続人を併せて「本件相続人ら」という。)。

2  亡市蔵は、平成三年一月九日に死亡して、相続が開始し、本件相続人らは、相続税の申告期限内の同年六月二一日、被告に相続税の申告書(以下「本件申告書」という。)を提出した。

本件申告書には、原告分の相続税の課税価格が一一億九八五一万円、納付すべき税額が四億九八一五万九四〇〇円と記載され、また、相続税法(平成三年法律第六九号による改正前のもの。以下同じ。)一三条一項一号及び同法一四条に基づく被相続人の債務で、相続開始の際、現に存するものとして、別表3及び4のとおり記載されている。

3  東京地方裁判所は、原告が、川橋利明(以下「川橋」という。)に対し、亡市蔵の川橋に対する別紙貸付金債権目録1ないし12の借入金(以下「本件借入金」という。)について、連帯保証したとして、川橋の原告に対する右支払を求める訴え(同裁判所平成五年(ワ)第二六七一号保証債務請求事件、以下「本件訴え」という。)につき、平成五年四月二六日、原告に対し、元金の合計二億一〇〇〇万円及びそれぞれ借入金から支払済みまで、同目録1ないし8の借入元金に対する利息制限法所定の年一割五分の割合による利息及び損害金の、同目録9、10の借入元金に対する年五分の割合による約定利息及び損害金の、同目録11、12の借入元金に対する年六分の割合による約定利息及び損害金の支払を命ずる全部認容の判決(以下「本件判決」という。)をし、右判決は、平成五年五月一五日確定した(甲一号証の一、二)。

4  原告は、本件判決により、新たに亡市蔵の二億一〇〇〇万円の借入金の存在が明らかになったため、前記申告に係る課税価格及び納付すべき税額が過大になったとし、本件判決は、国税通則法(以下「通則法」という。)二三条二項一号の「判決」に当たるとして、平成五年六月二日、被告に対し、課税価格を七億六五六万五〇八九円、納付すべき税額を二億三三二六万八七〇〇円とする更正の請求をしたほか、同月三日、課税価格を二億七九一九万五五〇五円、納付すべき税額を七九五四万一六〇〇円とする再度の更正の請求をした。右再度の更正請求に係る税額等の明細は、別表一のとおりである。

5  被告は、平成六年六月二四日付けで、本件判決が、通則法二三条二項一号の判決に当たらないとして、右再度の更正の請求について、更正すべき理由がない旨の通知処分(以下「本件通知処分」という。)をし、右通知は、そのころ、原告に到達した。

本件通知処分に係る原告又は本件相続人らの相続税の課税価格及び納付すべき相続税額は、別表1「課税価格等の計算明細表」及び別表2「税額算出表」に記載のとおりであり、その算出の経緯は別紙「相続税の課税価格及び納付すべき相続税額の算出経緯」のとおりである。

6  原告は、同年八月二日、被告に対し、本件通知処分につき異議申立てをしたが、被告は、同年一〇月二四日付けで、これを棄却する決定をした(甲一三号証、一五号証)。

7  原告は、これを不服として、平成六年一一月二二日、国税不服審判所長に対し、審査請求をしたが、国税不服審判所長は、平成七年一一月一三日付けで、これを棄却する裁決をした(甲一六号証、二〇号証)。

三  争点

本件の争点は、本件判決が、通則法二三条二項一号の「申告に係る税額等の計算の基礎となった事実に関する訴えについての判決」に当たるかどうかである。

これについての当事者双方の主張は以下のとおりである。

(被告の主張)

1 通則法二三条二項一号は、「申告、更正又は決定に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実に関する訴えについての判決(判決と同一の効力を有する和解その他の行為を含む。)により、その事実が当該計算の基礎としたところと異なることが確定した」場合には、更正の請求ができると規定する。右規定は、申告時には予想し得なかった事態その他やむを得ない事由が申告後に生じたことにより、遡って税額等の減額等をすべきこととなった場合には、これを税務署側の一方的な更正の処分に委ねることなく、納税者側からも更正の請求ができることとして、その権利救済を拡充したものである。そして、右の趣旨からすれば、同号の「和解」とは、当事者に権利関係についての争いがあり、確定申告時には、その権利関係の帰属が明らかになっていなかった場合に、その後、当事者がした和解により、確定申告当時の権利関係とは異なる権利関係が生じたような場合をいうものと解される。したがって、同号の「判決」もこれと同義に解すべきであり、当事者が、もっぱら税金を免れる目的で、馴れ合いによって得た合理的・客観的根拠を欠く判決は、同号の「判決」には当たらないというべきである。

2 しかるに、本件判決は、以下のとおり、原告が、川橋との間で、本件借入金が架空のものであるにもかかわらず、これが実在するかのように装い、馴れ合いによって得たものである。

本件訴えにおいて、提出された本件借入金に係る借用証書等には、以下のように、その作成について不自然な点がある。

別紙貸付金債権目録1の借入金に係る昭和三一年一二月二二日付けの借用証に使用された罫紙は、右作成日付後の昭和四一年二月以降に販売されたものであり、右借用証は、右日付けに作成されたものではない。原告は、右借用証は、川橋が備え忘れのため、借入後に作成したものであるとするが、借入のときから九年以上も経た後に借用証を作成するというのは不自然である。

同目録4の借入金に係る昭和四二年三月一九日付け金銭借用証書に貼付された収入印紙は、右借用証書の作成日付後の昭和五〇年四月一日以降に発行されたものであり、右借用証書は、右日付けに作成されたものではない。

また、原告は、同目録1の借入金に係る平成元年一二月二〇日付け債務承認証は、亡市蔵が、自宅近くの喫茶店で、同目録4の借入金に係る平成二年三月一〇日付け債務承認証は、自宅でそれぞれ作成し、川橋に差し入れたものであるとするが、亡市蔵は、平成元年一二月七日から平成三年一月九日に死亡するまでの間、川崎市の鶴川厚生病院に入院していたのであるから、債務承認証を作成することは不可能である。

同目録5の借入金に係る平成三年五月二〇日付け債務承認証には亡市蔵の署名・押印があるが、右日付けには、同人はすでに死亡しており、右債務承認証は、右日付けに作成されたものではない。

同目録10ないし12の借入金に係る昭和五六年八月二六日付け、同年一一月二九日付け及び昭和六〇年三月二〇日付けの各金銭消費貸借契約証書には、貸主の住所として、「茨城県つくば市」との記載があるが、同市は、昭和六二年一一月三〇日の市制施行により新たに設置されたものである。

また、原告は、平成六年四月七日、被告係官に対し、次のとおり述べている。

原告は、本件借入金の授受に一度も立ち会ったことがなく、亡市蔵が、借り入れた金員を自宅に持ち帰ったのを見たり聞いたりしたこともない。

本件借入金に係る金銭借用証書等の中には、別紙1のとおり、借主欄の署名が亡市蔵本人のものではないものや、亡市蔵本人の署名かどうか判然としないもの、別紙2のとおり、連帯保証人欄の署名が、原告本人のものではないものがある。また、別紙貸付金債権目録4の借入金に係る昭和四二年三月一九日付け金銭借用証書の連帯保証人欄の原告の妻伊東和子の署名は、本人によりされたものではない。

また、亡市蔵の共同相続人の一人である矢澤敏子は、平成六年五月三一日、被告係官に対し、次のように述べている。

本件借入金の存在は全く知らなかったことで、本件判決後、原告から、本件借入金は相続税を軽減するためにでっち上げた架空のものであると説明され、口裏合わせのため、税務署に対し、相続財産を整理しているときに本件借入金に関するメモが見つかったなどと虚偽の申述をするよう依頼された。

さらに、本件借入金については、以下のとおり、不自然、不合理な点が多々ある。

本件借入は、昭和三一年一二月から昭和六〇年三月まで一二回にわたり行われ、元金の合計額は二億一〇〇〇万円と高額であるにもかかわらず、借入金の使途は不明であり、本件訴えが提起されるまでの間、元金の返済は一切されていない。また、本件借入金のうち、別紙貸付金債権目録1ないし8の借入金の約定利息は月三分(年率三六パーセントに相当)と極めて高率で、利息制限法所定の制限利率を大きく超過するものであるし、債権者の川橋は、右のように高額の貸付であるにもかかわらず、何らの担保手段も講じていない。

本件借入金は、元本に利息、遅延損害金を加えた総額が一〇億円を超えるものであり、債権者の川橋としては、原告のみを相手に支払を求めるより、本件相続人ら全員に対し支払を求めた方が、債権の回収を図る上で有利であることは明らかであるにもかかわらず、川橋が原告のみを被告として本件訴えを提起したことは、不自然である。

原告は、本件訴えに対し、「請求原因はすべて認めるが、現在、直ちには支払えない。」との答弁書を提出するのみで、口頭弁論期日に出席せず、そのため、裁判所は、口頭弁論を一回開いたのみで、判決に至っており、原告は、通常予想される攻撃・防禦の手段を全く尽くしていない。

以上のことからすると、原告は、本件借入金が実在しないものであるにもかかわらず、もっぱら相続税の負担を軽減する目的で、架空の金銭借用証書等を作成し、これが実在するかのように装い、その支払を命ずる判決を得たものであり、本件訴えが、原告が当初から予定した判決を得るために提起された馴れ合い訴訟に当たることは明らかである。

原告は、本件借入金が存することは、争う余地がなかったので、無駄な抗争をしなかったもので、馴れ合い訴訟ではないと主張する。しかし、原告は、本件借入金に係る金銭借用証書等の借主欄、連帯保証人欄の署名に、それぞれ、亡市蔵、原告(ないし伊東和子)本人のものでないものがあることを知っており、また、本件借入金の授受に一度も立ち会っておらず、亡市蔵が借入れた金員を自宅に持ち帰ったのを見たり聞いたりしたこともないというのであるから、原告が、本件訴えにおいて、本件借入金の存在を争っていないというのは、考え難いことというべきである。

また、仮に本件訴えが馴れ合い訴訟ではないとしても、前述した通則法二三条二項の趣旨からすれば、同項一号が適用されるのは、納税者が申告時に税額等の計算の基礎とした事実と異なる事実が、その後、判決によって確定した場合であり、申告時にすでに明らかであった事実が、判決によって確認されたに過ぎない場合は含まれないというべきである。原告は、亡市蔵の相続が開始した平成三年一月九日の時点で、本件借入金の存在を知っていたのであり、右借入金の存在が、本件判決によってはじめて明らかにされたものではない。すなわち、本件判決は、申告時からその存在に争いのなかった借入金について、連帯保証人である原告に支払を命じたものに過ぎず、通則法二三条二項一号の「判決」には当たらない。

原告は、本件判決がされるまで、本件借入金を自らの債務とは認識していなかったため、相続税の申告に際し、これを控除すべき債務として申告しなかったもので、本件判決により、申告時に予想しえなかった事由が生じたとする。しかしながら、前述した通則法二三条二項の趣旨からすれば、申告時に予想し得なかった事由とは、納税者の責に帰すことができない客観的・合理的事由をいうと解すべきである。そして、原告は、本件借入金に関する債務の帰属ないしこれが相続税から控除されるべきものであることについて、単に誤解していたというに過ぎないから、右の事由に当たらないことは明らかであり、原告の主張は理由がない。

以上により、本件判決は、いずれにせよ、通則法二三条二項一号の「判決」には該当せず、本件は、同号に基づき更正の請求をすることができる場合には当たらないから、本件通知処分は適法である。

(原告の主張)

通則法二三条二項は、納税者において、申告時に予測し得なかった一定の事由が、後発的に生じた場合に、例外として、同条一項により更正の請求ができる期間を経過した後であっても、更正の請求を認め、納税者の救済を図ったものであるから、同条一項の例外として更正の請求が認められるには、同条二項各号の事由に形式的に該当するだけでなく、右事由が、納税者に同条一項の期間経過後も更正の請求を認めるに足りるだけの客観的、合理的根拠のあることを要する。そして、同条二項一号についても、当事者が、もっぱら税金を免れる目的でした馴れ合いの和解等、客観的、合理的根拠のないものは、同号の「和解」に含まれないと解されており、右の理は、判決についても同様であるが、本件借入金は、以下のとおり実体を伴うものであり、本件訴えは、馴れ合い訴訟には当たらない。

亡市蔵は、川橋の父である川橋利彦(以下「利彦」という。)と部落開放運動や土地開発事業を通じて旧知の関係にあったところ、利彦と共同で、亡市蔵の所有する土地を造成し、その上に食肉冷凍用の倉庫を建設する事業を計画し、昭和三〇年ころ、利彦の事業を引き継いだ川橋から、事業資金として、本件借入をすることとなった。右事業は、会社を設立して、双方から役員を出し、利益を折半する予定で進められ、昭和三四、五年ころには、具体的に倉庫の建築を始める予定であった。ところが、亡市蔵の借入額が一億円に至っても、事業は具体化しなかったので、川橋は、不審感を抱いたが、もともと信用貸しで始めた事業でもあり、以後も亡市蔵の求めに応じて貸付けを行ってきた。本件借入金は、川橋と亡市蔵とのこのような関係によるもので、実体を伴うものであること明らかである。

そして、個々の借入は、以下の経緯でされた。

別紙貸付金債権目録1の借入金は、亡市蔵が川橋に依頼して現金で借り受けたものであり、原告は、右契約に立ち会っていない。

被告は、右借入金の借用証書(甲二号証の一)の作成日付は、契約日と同じであるのに、右借用証書の罫紙の発行日がこれより後であるのは不自然であるとする。しかし、右借用証書は、川橋が契約後、備え忘れのため、たまたま手許にあった罫紙を利用して事務員に作成させたものであり、不自然ではない。

そして、亡市蔵は、右借入金について、貸主の川橋から、弁済期前から支払の請求を受けていたところ、その度に、「決して迷惑はかけない。自分の所有する土地で代物弁済して支払う。」などといって、支払の猶予を求め、その後、二度にわたり、債務承認をしていたもので、これにつき、平成元年一二月二〇日に、自宅近くの喫茶店で、同日付けの債務承認証(甲二号証の二)を作成し、これを川橋に差し入れた。

同目録2の借入金は、亡市蔵が、原告と二人分の印鑑を持参し、金銭借用証書(甲三号証の一)の借主欄及び連帯保証人欄にそれぞれ自分と原告の署名押印をして、借り受けたものである。右借入金につき、亡市蔵は、弁済期に川橋から支払の請求を受けたが、支払の猶予を求め、その後、二度にわたり債務承認をした。そして、二度目の債務承認をした際に、債務承認の事実を確認し、必ず返済する旨約して、川橋に同日付けの債務承認証(甲三号証の二)を差し入れたものである。

同目録3の借入金も、同様に、亡市蔵が原告と二人分の印鑑を持参し、金銭借用証書(甲四号証の一)の借主欄及び連帯保証人欄にそれぞれ自分と原告の署名押印をし、現金で借り受けたものである。亡市蔵は、右借入金についても支払の猶予を求め、その後、二度にわたり債務承認をしたが、二度目の債務承認をした際に、川橋の求めにより、亡市蔵及び原告の押印をした債務承認証(甲四号証の二)を差し入れた。

同目録4の借入金は、亡市蔵が、東京都内において現金で借り入れたもので、同日付けで、亡市蔵を借主、原告とその妻和子を連帯保証人とする金銭借用証書(甲五号証の一)を作成した。このとき、和子の印鑑を持参しなかったため、借用証書に同人の押印はされていない。

被告は、右借用証書の作成日付がこれに貼付された収入印紙の発行日より前であることは不自然であるとする。しかし、当初、右借用証書を作成した際には、収入印紙を貼付しなかったが、そのままにしておくと、印紙税法違反となるため、後日、川橋が有り合わせの収入印紙を貼付したものであり、不自然ではない。なお、亡市蔵は、弁済期に右借入金の返済ができず、川橋に支払の猶予を求め、その後、二度にわたり債務承認をし、二度目の債務承認をした際、自宅で、亡市蔵と原告の署名押印をした債務承認証(甲五号証の二)を川橋に差し入れた。

同目録5ないし8の各借入金は、亡市蔵が川橋からそれぞれ現金で借り入れ、川橋において、右の四口の借入金を合わせて一通の借用証書(甲六号証の一)を作成したものである。右四口の借入金についての債務承認証(甲六号証の二)は、時効中断のため、原告が作成し、川橋に差し入れたものである。このとき、亡市蔵はすでに死亡していたが、生前、右債務を承認して川橋に支払の猶予を求めていたので、原告が、亡市蔵と原告の名前を期した債務承認証に、押印し、川橋に差し入れた。

同目録9の借入金は、亡市蔵が、川橋に依頼して借り受けたもので、川橋の用意した金銭借用証書(甲七号証の一)に亡市蔵が借主、原告が連帯保証人として、それぞれ署名押印した。利息が年五分と低率となっているのは、右借入のころから、亡市蔵が本件借入金の利息として、三〇万円ないし五〇万円を二、三回にわけて支払ったことによるものと考えられる。亡市蔵は、右借入金についても、弁済期に返済できず、支払猶予を求め、その後、債務承認をし、川橋に債務承認証(甲七号証の二)を差し入れた。

同目録10、11の借入金は、それぞれ、川橋が用意した金銭消費貸借契約証書(甲八、九号証)に亡市蔵が借主、原告が連帯保証人として署名し、現金で借り受けたものである。なお、特約時効で定めた公正証書を作成する予定であったが、結局、作成しなかった。

同目録12の借入金は、亡市蔵が川橋に電話で、事業資金が不足しているので、三〇〇〇万円貸してほしいと申し入れたが、川橋が急遽、一〇〇万円が必要となったので、借入金額を二九〇〇万円とし、その旨の金銭消費貸借契約証書(甲一〇号証)を作成した。前同様に、特約時効で定めた公正証書を作成する予定であったが、結局、作成しなかった。

被告は、本件借入金の使途が不明であることや、本件訴え提起に至るまで元本の返済がされていないことが不自然であるとする。確かに本件借入金の使途は明らかではないが、亡市蔵が前記事業の資金として用いたものと考えられる。また、元本の返済がされていないのは、前述のように、亡市蔵と川橋が共同事業者の関係にあり、亡市蔵が、本件借入金を個人的な信用において借り入れたという事情があったからである。

また、本件借入金の利息も、高利貸しから融資を受けることを考えれば、著しく高率とはいえず、担保権を設定しなかったことも、双方とも、最終的に、亡市蔵所有の土地で代物弁済をすれば足りると考えていたからであり、不自然とはいえない。

川橋が原告のみを被告として本件訴えを提起したのは、原告が亡市蔵の長男で、遺産分割により、亡市蔵が所有していた土地のほとんどを取得したためと考えられる。そして、相続時には、地価が高額であったため、これらの土地を売却すれば、借入金の返済は容易で、川橋としても、法的措置をとるつもりはなかったが、原告が相続税の支払のため相続により取得した土地のすべてに抵当権を設定したため、その売却が難しくなり、また、地価が下落したこともあって、連帯保証人である原告に対し、訴えを提起し、本件借入金の存在を明確にしようとしてものと考えられる。

原告は、本件判決後、他の相続人に対し、本件借入金は架空のものであると話したことはない。

被告は、本件訴えにおいて、原告が、何ら攻撃防御の手段を尽くしていないことから、本件訴えが馴れ合いによるものであるとする。しかし、原告は、提出された書証等から、本件借入金の存在を争う余地がないことから、これを認めたに過ぎず、このような場合に、攻撃防御方法を尽くしていないからといって、馴れ合い訴訟であるとはいえない。

以上のとおり、本件借入金が実在するものであることは明らかであり、本件判決は、原告が馴れ合いにより得たものではない。

また、被告は、原告は相続税の申告に際し、本件借入金の存在を知っていたから、本件判決によって本件借入金の存在が新たに明らかにされた場合には当たらず、本件判決は、通則法二三条二項一号の「判決」には該当しないとする。しかしながら、原告は、本件借入金が存することは亡市蔵から聞いていたものの、その確証はなく、また、右借入金は、あくまで被相続人である亡市蔵の債務であり、連帯保証をしていても原告自ら履行の責任を負うべきものとは考えていなかったことから、相続税の申告の際には、本件借入金を相続税から控除すべき債務として申告しなかったものである。したがって、本件判決により、申告時に税額等の計算の基礎とした事実と異なる事実が確定したというべきであり、本件判決は、通則法二三条二項一号の「判決」に当たる。

また、被告は、本件判決が、亡市蔵の主たる債務については争いがないことを前提に、原告に対し、連帯保証債務の履行を命じたに過ぎないから、本件判決により本件借入金の存在が新たに明らかにされたとはいえないと主張する。しかし、保証債務は、主たる債務に付従する性質のものであるから、本件判決は、連帯保証契約に基づく支払請求の請求原因事実として、主たる債務である本件借入金の存在についても判断したというべきである。被告の主張は理由がない。

第三争点に対する判断

一  原告は、本件判決により本件借入金の存在が明らかにされたから、これが通則法二三条二項一号の「判決」に当たると主張し、被告は、本件判決が、原告がもっぱら相続税の負担を軽減する目的で馴れ合いによって得たもので、右の「判決」に当たらないと主張するので、この点につき判断する。

通則法二三条二項一号は、その申告、更正又は決定に係る課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実に関する訴えについての判決(判決と同一の効力を有する和解その他の行為を含む。)により、その事実が当該計算の基礎としたところと異なることが確定したときは、納税者は、同条一項の規定にかかわらず、法定申告期限から一年を経過した後にも、更正の請求ができると規定する。右規定は、納税者において、申告時には予想し得なかったような事態が後発的に生じたため、課税標準等又は税額等の計算の基礎に変更をきたし、税額の減額をすべき場合に、法定申告期限から一年を経過していることを理由に更正の請求を認めないとすると、帰責事由のない納税者に酷な結果となることから、例外的に更正の請求を認め、納税者の保護を拡充しようとしたものである。右の趣旨からすれば、申告後に、課税標準等又は税額等の計算の基礎となる事実について判決がされた場合であっても、右判決が当事者がもっぱら税金を免れる目的で馴れ合いによって得たものであるなど、客観的・合理的根拠を欠くものであるときは、同条二項一号の「判決」には当たらないと解すべきである。

ところで、前記争いのない事実等に加え、証拠(甲一号証の一、二、二ないし七号証の各一、二、八ないし一〇号証、乙六号証、弁論の全趣旨)によれば、川橋は、原告に対し連帯保証契約に基づき本件借入金の支払を求める訴え(本件訴え)において、借主欄に亡市蔵名義の、連帯保証人欄に原告ないしその妻和子名義の署名押印がある金銭借用証書等の書証(甲二ないし七号証の各一、二、八ないし一〇号証)を提出したこと、これに対し、原告は、「請求原因はすべて認めるが、現在直ちには支払えない。」旨の答弁書を提出し、第一回口頭弁論期日に出頭しなかったため、右請求を認容する判決がされ、確定したことが認められる。

被告は、右金銭借用証書等は、本件借入金が架空のものであるにもかかわらず、これが実在するかのように装うために作成されたものであると主張する。そして、証拠(甲二号証の一、五、六号証の各一、八ないし一〇号証、一一号証、乙一ないし三号証、七号証、弁論の全趣旨)によれば、別紙貸付金債権目録1の借入金に係る昭和三一年一二月二二日付け借用証書(甲二号証の一)に用いられた罫紙は、右日付後の昭和四〇年二月以降に販売されたものであること、同目録4の借入金に係る昭和四二年三月一九日付け金銭借用証書(甲五号証の一)に貼付された収入印紙は、右日付後の昭和五〇年四月一日以降に発行されたものであること、同目録5ないし8の四口の借入金に係る平成三年五月二〇日付け債務承認証(甲六号証の二)には、亡市蔵名義の署名押印があるが、同人は、右日付前の平成三年一月九日に死亡していること、同目録10ないし12の各借入金に係る昭和五六年八月二六日付け、同年一一月二九日付け及び昭和六〇年三月二〇日付け金銭消費貸借契約証書(甲八ないし一〇号証)には、それぞれ、貸主である川橋の住所として、「茨城県つくば市」との記載があるが、つくば市の市制施行は、これらの日付後の昭和六二年一一月三〇日であることが認められる。

以上によれば、これらの書面は、亡市蔵本人の署名を欠いたり、その作成日付後に作成されたものであることが明らかである(乙八号証には、川橋が、被告係官に対し、これらの書面はいずれもその日付どおり作成されたものであると述べたとの記載があるが、にわかに採用し得ない。)。しかしながら、右借用証書等が、亡市蔵本人が署名していないとか、その作成日付後に作成されたものであるからといって、それだけで、直ちに、その記載に係る借入金が架空のもので、これらの書面がそれを実在するかのように装うために作成されたものであるとはいい難い。なお、乙八号証、原告本人尋問の結果によれば、平成三年五月二〇日付け債務承認証の亡市蔵の署名押印は、原告が亡市蔵に代わってしたものであることが認められる。

また、乙四号証によれば、原告は、被告係官に対し、前記借用証書等の中には、別紙1のとおり借主欄の署名が亡市蔵本人のものでないものや、亡市蔵本人のものかどうか判然としないもの、別紙2のとおり連帯保証人欄の署名が原告本人のものでないものがあり、また、昭和四二年三月一九日付け金銭借用証書の連帯保証人欄の伊東和子の署名は、和子本人のものではないと述べたことが認められ、原告本人の供述中にも、同様の部分がある。しかし、乙八号証によれば、川橋は、被告係官に対し、別紙1の各書面は、昭和五八年六月一五日付け債務承認証(甲三号証の二)、平成三年五月二〇日付け債務承認証(甲六号証の二)を除き、いずれも、亡市蔵が自ら署名したものであり(甲三号証の二は、川橋親子と亡市蔵及び原告の立会いの下で作成されたとし、甲六号証の二は、原告が亡市蔵に代わって署名をしたものであるとする。)、別紙2の書面のうち、昭和四二年三月一九日付け金銭借用証書、昭和六三年七月三〇日付け及び平成二年三月一〇日付け債務承認証は、原告自ら連帯保証人として署名し、昭和四二年三月一九日付け金銭借用証書については、連帯保証人伊東和子の署名も、原告がしたもので、その余については、亡市蔵が原告に代わって署名したと述べていることが認められる。

以上に照らせば、確かに、本件借入金に係る借用証書等の書面の中には、亡市蔵、原告、その妻和子らが本人として署名したものではないものがあることが認められるが、それがどの部分であるか、にわかに、判然としないところがあること、また、右の者らが本人として署名しなかったとしても、必ずしも不自然とはいえないと考えられることからすると、これらの書面がもっぱら架空の借入金を実在するかのように装うために作成されたものであるとにわかに断定することはできない。

また、被告は、本件借入金が架空のものであることの根拠として、原告は、被告係官に対し、乙四号証のとおり、川橋と亡市蔵との契約の場に一度も立ち会ったことがなく、亡市蔵が借り入れた金員を自宅に持ち帰ったのを見たこともないと述べたとする。しかし、乙八号証によれば、、川橋は、被告係官に対し、本件借入金一二口について、いずれも、契約日に亡市蔵に借入金を交付したとし、同目録2、3、10ないし12記載の借入金について、原告が借入金の授受に立ち会ったと述べていること、原告本人も、川橋と亡市蔵との契約に二回くらい立ち会ったことがあると供述し、借入金の授受については、見たかどうか分からないと供述していることからすれば、乙四号証を直ちに採用することはできない。

また、乙五号証には、亡市蔵の相続人の一人である矢澤敏子が、平成六年五月三〇日、他の相続人らとともに、原告に更正の請求をした理由を尋ねたところ、原告から、本件借入金は相続税を軽減するための架空のもので、口裏合わせのため、税務署に、財産の整理をしていたときに本件借入金に関するメモが見つかったなどと虚偽の申述をするよう依頼されたとの記載がある。しかしながら、原告本人は、同日、他の相続人らと、相続税の支払のため土地を売却することについて相談したが、右矢澤にそのようなことを言ったり依頼したりしたことはないとこれを全く否定する供述をしていることに照らすと、乙五号証、にわかに採用することができない。

また、証拠(甲一ないし六号証の各一、二、乙八号証、弁論の全趣旨)によれば、債権者の川橋は、本件借入金について担保権を設定していないこと、本件訴えを提起するまでの間、元本の返済はされていないこと、本件借入金のうち、別紙貸付金債権目録1ないし8については、利息が月三分と定められていること、川橋は、原告のみを被告として本件借入金の支払を求める訴えを提起しており、他の相続人らに対しては、支払を求めていないことが認められる。しかしながら、証拠(乙七、八号証、原告本人尋問の結果、弁論の全趣旨)によれば、川橋と亡市蔵は、昭和三〇年以前から、部落解放運動や土地開発事業を通じて旧知の関係にあったことが認められ、また、不動産賃貸業を営んでいた亡市蔵は、自己の所有地上に食肉用の冷凍倉庫を建築し、食肉の販売事業を行うための資金として川橋から本件借入をすることになったことが窺われる。このような事情からすれば、亡市蔵が川橋から本件借入金を無担保で借り入れ、生前、元本の返済をしていなかったとしても、直ちに不自然とまではいい切れない。なお、証拠(甲三ないし五号証の各一、七号証の一)によれば、別紙貸付金債権目録2ないし4、9の各借入金に係る借用証書には、返済条件として、土地(ないし不動産)で代物弁済するとの約定があることが認められ、川橋は、最終的には土地等で代物弁済を受ける意向であったため、亡市蔵の元金の返済を求めなかったことが窺われる。

そして、前記認定のとおり、本件借入金が川橋と亡市蔵との個人的な信用に基づくものであること、原告は、亡市蔵の長男であり、亡市蔵の相続人のうちで唯一、本件借入金の契約に立ち会ったり、借用証書等に連帯保証人として署名押印するなどしていることからすれば、本件借入金の総額が高額に及ぶものであることを考慮しても、川橋が原告のみを被告としてその支払を求める訴えを提起したことが、必ずしも不自然であるとはいえない。

以上のとおり、本件借入金については、確かに、被告が指摘するような相当の疑問点がないわけではないが、それらが全く架空のものであり、前記借用証等が、すべて、これらが実在するかのように仮装するために作成されたものであるとはにわかに断定するに至らない。そうすると、本件判決は、原告がもっぱら相続税を免れるため馴れ合いにより得たものであると認めることはできない。

二  ところで、通則法二三条二項は、前記のとおり、納税者において申告時に予想し得なかった事態が後発的に生じ、課税標準等又は税額等の基礎に変更をきたした場合に、同条一項の期間が経過していることを理由に更正の請求を認めないとすると、帰責事由のない納税者に酷な結果となることから、その救済を図った規定である。したがって、形式的には、同条二項の事由に該当するようにみえる場合であっても、納税者において、申告時に、課税標準等又は税額等の基礎に変更を生じる事由を予想し得、同条一項の期間内に更正の請求をすることにより、税額の減額等の措置を受けることが可能であった場合には、同条二項は適用されないものと解すべきである。

本件判決は、原告に対し、本件借入金に係る連帯保証債務の支払を命ずるものであるが、それが、右連帯保証債務の請求原因事実として、主債務である本件借入金の存在についても判断していることは明らかである。しかしながら、証拠(甲二ないし七号証の各一、二、一八号証、乙四号証、八号証、弁論の全趣旨)によれば、本件借入金のうち、少なくとも、別紙貸付金債権目録9ないし12については、いずれも、これらの借入金に係る金銭借用証書ないし金銭消費貸借契約証書の連帯保証人欄に、原告自ら署名押印したものであること、同目録1ないし4については、これらの借入金に係る借用証書ないし金銭借用証書の、同目録5ないし8については、これら四口の借入金に係る債務承認証の、それぞれ連帯保証人欄に、原告が自分の名前が記入されていることを認識しつつ押印したものであることが認められる。そして、前掲各証拠によれば、これらの書面は、いずれも、原告が相続税の申告をした平成三年六月二一日より以前に作成されたものであることが認められるから、原告は、右申告時にその総額を正確に把握していたかどうかはともかくとして、少なくとも、本件借入金の存在自体は認識していたものと認められる。そして、原告は、貸主が川橋であることを知っていたのであるから、原告において、川橋に尋ねるなどして、本件借入金の総額を知り、相続税の申告に際し、これを控除すべき債務として申告することは十分可能であったというべきである(なお、乙四号証によれば、亡市蔵は本件借入金に係る借用証等を保管しており、原告は、相続開始後、これらを発見したという。)したがって、本件借入金の支払を命ずる判決により、原告が申告時に予想し得なかった事由が生じたということはできず、本件判決は通則法二三条二項の「判決」には当たらない。

なお、原告は、本件借入金はあくまで亡市蔵の債務であって、自ら支払の責任を負うべきものとは考えていなかったため、相続税の申告に際し、控除されるべき債務として申告しなかったとする。しかしながら、仮に、右主張のとおりであるとしても、それは、原告が、単に右債務の相続の意味や連帯保証債務の性質を誤解していたというに過ぎず、本件借入金の存在自体を知り得なかったものではないから、本件判決により、原告の責に帰すべからざる事由が後発的に生じたとはいえない。

そうすると、被告が、本件判決が通則法二三条二項一号の「判決」に当たらないことを前提に、本件通知処分をしたことは適法である。

三  結論

以上のとおりであり、原告の本訴請求は理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 浅野正樹 裁判官 近藤壽邦 裁判官 近藤裕之)

別紙「相続税の課税価格及び納付すべき相続税額の算出経緯」

一 課税価格の合計額(別表1の順号13の「合計額」の欄の金額)

一五億六九九五万九〇〇〇円

右金額は、次の1の相続により取得した財産の総額から、2の控除すべき債務等の総額を控除した後の金額(ただし通則法一一八条一項により、本件相続人らにつき、各人ごとに課税価格の一〇〇〇円未満の端数を切り捨てた後のもの。)である。

1 相続により取得した財産の総額(別表1の順号7の「合計額」の欄の金額)

一七億七三六八万六一八四円

右金額は、本件相続人らが相続により取得した財産の総額であり、その内訳は次のとおりである。なお、以下の相続財産の価格は、本件申告書に記載された金額と同額である。

(一) 土地(別表1の順号1の「合計額」の欄の金額)

一五億七六七七万七三六九円

(二) 家屋(別表1の順号2の「合計額」の欄の金額)

一億九三一〇万六〇八一円

(三) 有価証券(別表1の順号3の「合計額」の欄の金額)

二六万八〇〇〇円

(四) 現金及び預貯金(別表1の順号4の「合計額」の欄の金額)

一一一万八七三四円

(五) 家屋用財産(別表1の順号5の「合計額」の欄の金額)

二〇万円

(六) その他の財産(別表1の順号6の「合計額」の欄の金額)

二二一万六〇〇〇円

2 控除すべき債務等の総額(別表1の順号11の「合計額」の欄の金額)

二億三七二万三二〇九円

右金額は、相続税法一三条及び一四条に基づき、本件相続人らが相続により取得した財産の総額から控除すべき債務の合計額であり、その内訳は次のとおりである。

(一) 借入金(別表1の順号8の「合計額」の欄の金額)

一億九五九三万五四八六円

右金額の内訳は別表3記載のとおりであり、本件申告書に記載されている金額と同額である。

(二) 公租公課(別表1の順号9の「合計額」の欄の金額)

五六四万八六〇〇円

右金額の内訳は別表4記載のとおりであり、本件申告書に記載されている金額と同額である。

(三) 葬式費用(別表1の順号10の「合計額」の欄の金額)

二一三万九一二三円

右費用は、葬式費用の全額であり、本件申告書に記載されている金額と同額である。

二 原告の納付すべき相続税額 四億九八一五万九四〇〇円

右金額は、相続税法一五条ないし一七条の各規定に基づき、次のとおり算出したものである。

1 本件相続人らの課税価格の合計額(別表1の順号13の「合計額」の欄の金額)

一五億六九九五万九〇〇〇円

右金額は、前記一記載の金額である。

2 遺産に係る基礎控除額(別表2の順号2の「合計額」の欄の金額)

九六〇〇万円

右金額は、課税価格の合計額から控除すべき基礎控除額であり、相続税法一五条に基づき四〇〇〇万円と、八〇〇万円に本件相続人らの人数である七を乗じて算出した五六〇〇万円との合計額である。

3 課税遺産総額(別表2の順号3の「合計額」の欄の金額)

一四億七三九五万九〇〇〇円

右金額は、右1の金額から2の金額を控除した金額である。

4 法定相続分に応ずる取得金額

本件相続人ら各人につき 二億一〇五六万五〇〇〇円

右の金額は、相続税法一六条の規定に基づき、本件相続人らが、民法九〇〇条及び九〇一条による相続分(法定相続分である七分の一)に応じて取得したとした場合の課税遺産額であり、右3の金額に、それぞれの法定相続分を乗じて算出した金額(通則法一一八条一項により、一〇〇〇円未満の端数を切り捨てた後のもの。)である。

5 相続税の総額(別表2の順号6の「合計額」欄の金額)

六億五五四七万三〇〇〇円

右金額は、右4の、本件相続人ら各人の法定相続分に応ずる取得金額に、相続税法一六条を適用して算出した金額を、本件相続人ら全員について合計した金額(通則法一一九条により、一〇〇円未満の端数を切り捨てた後のもの。)である。

6 原告の納付すべき相続税額(別表1の順号16の「原告分」の欄の金額)

四億九八一五万九四〇〇円

右金額は、右5の金額に、按分割合〇・七六(別表2の順号1の「原告分」の欄の金額を、同順号の「合計額」の欄の金額で除した割合であり、原告が本件申告書に記載した割合と同額である。)を乗じて算出した金額(通則法一一九条一項により、一〇〇円未満の端数を切り捨てた後のもの。)である。

【別表一】

平成5年6月3日申告に係る課税価格、税額等及び更正の請求による課税価格、税額等

(1)税額等の明細

<省略>

(2)相続税の総額計算の明細

<省略>

別紙

<省略>

別表1 課税価格等の計算明細表

<省略>

別表2 税額算出表

<省略>

別表3 借入金の明細表

<省略>

別表4 公租公課の明細表

<省略>

別紙1 本件借用証等記載の債務者の署名明細

<省略>

別紙2 本件借用証等記載の連帯債務者の署名明細

<省略>

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