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横浜地方裁判所 平成9年(行ウ)48号 判決 1999年4月26日

原告

塚田勝子

吉井滋

被告

鎌倉市固定資産評価審査委員会

右代表者委員長

長谷川正之

右訴訟代理人弁護士

松崎勝

右指定代理人

小山博

福島保正

主文

一  原告らの請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告らの負担とする。

事実及び理由

第二 事案の内容

一  概要

鎌倉市長は、原告ら共有の別紙物件目録記載一及び二の土地(以下まとめて「本件各土地」という。)の平成九年度固定資産評価額の決定をした。これに対し、原告らは、被告に対し審査の申出をしたところ、被告は右申出を棄却する決定をした。そこで、原告らは、右決定の取消しを求めた。

これが本件事案の概要である。

二  前提となる事実(末尾に証拠の記載のないものは当事者間に争いがない事実であり、証拠の記載のあるものは主にその証拠により認定した事実である。)

1  三一〇番四〇の土地の権利関係及び現況等

(一)  権利関係

原告らは、平成七年八月三〇日、別紙物件目録記載一の土地(以下「三〇一番四〇の土地」という。)及び同目録記載二の土地(以下「三一〇番四一の土地」という。)を田村英雄(以下「前所有者」という。)から代金二二〇〇万円で買い受けた(〔証拠略〕)。

(二)  現況等

本件各土地と周辺土地との位置関係は別紙図面一のとおりである。三一〇番四〇の土地は、別紙図面二(断面見取図)のとおり南西側に上方に向けて山林の法面を形成する擁壁があり、北東側に下方に向けて別紙図面二の<一>及び<2>の擁壁(以下「擁壁<1>」のようにいう。)により階段状となっており、擁壁<1>によって支えられる部分を含む平らの土地部分(別紙図面二及び三記載のアの部分。以下「アの土地」、「アの部分」又は「ア」ということがある。)を中にし、上方に向けた斜面部分(別紙図面二及び三記載のウの部分)と下方の階段状の平面部分(別紙図面二及び三記載のイの部分。以下「イの土地」、「イの部分」のようにいうことがある。)との三つの部分からなる。

右平坦地部分(三一〇番四〇の土地のうちのアの部分)は、前所有者が昭和四五年一二月ころ建物を建築し、その敷地の用に供されていたが、平成五年一〇月二〇日に取り壊され、原告らが本件各土地を買い受けた時点では、更地であった(〔証拠略〕)。

また、三一〇番四一の土地は、別紙図面一及び三のとおり三一〇番四〇の土地の南に隣接し、西から東にかけて上から下に降りて公道に通ずる階段部分である。

本件各土地は、全体として旗竿状の形状となっている。

2  本件各土地の平成九年度の固定資産評価額

(一)  計算根拠

鎌倉市長は、三一〇番四〇の土地の平成九年度の固定資産登録価格の評価替えに当たり、固定資産評価基準(平成八年一二月二四日自治省告示第二八九号。以下「評価基準」という。)第1章第3節に基づき市街地宅地評価法により三一〇番四〇の土地付近を普通住宅地に区分し、主要な街路に沿接する宅地の申から標準宅地を選定の上、その一平方メートル当たりの価格二四万円の七割に当たる一六万八〇〇〇円を標準宅地の適正な時価(右評価基準12節の一に基づく基準年度の初日(平成九年一月一日)の属する年の前年(平成八年)の一月一日の地価公示法等による価格の7割を目途とした価格)と算定した。

その上で、三一〇番四一の土地の接する街路について、その道路形態及び環境条件を考慮し、一平方メートル当たりの路線価を一四万七〇〇〇円と付設した。

(二)  補正率

評価基準第3節の二(一)4が各筆の宅地の評点数の付設について、宅地の状況に応じ「所要の補正」ができる旨を規定しており、これを受けて鎌倉市において「固定資産評価事務取扱要領」(以下「取扱要領」という。)を定めている。

鎌倉市長は、右取扱要領に定められている補正率を用いて、三一〇番四〇の土地を別紙図面二及び三のア、イ及びウに区分し、アについては補正はしないが、イ及びウについては「取扱要領」の附票11介在山林補正率表の急傾斜地一五度以上三〇度未満の下り傾斜の補正率〇・一〇を適用した。また、三四〇番四一の土地については私道補正率〇・一五を適用した。そして、本件各土地の平成九年度の固定資産評価額を別紙四の「証明書」のとおり算定した。

3  審査の申出

原告らは、平成九年五月一日、右評価額を不服として被告に対し本件各土地の平成九年度の固定資産評価額は不当に高額であるとしてこれを適正額に改めるべき旨の審査の申出をした。

4  審査決定

右審査の申出に対し、被告は平成九年八月二七日付けでこれを棄却する審査決定をした。

三  当事者双方の主張

1  原告らの主張

アの土地の一部で擁壁<1>で支えられている部分(以下「本件係争地部分」という。別紙図面二に同名で記載した土地部分)は、地盤が軟弱で崩落の危険があることから、イの部分と同様に介在山林補正率〇・一〇を乗じて評価すべきところ、鎌倉市長が右補正率を適用しなかったのは、違法である。

その余の被告の主張には特に異論はない。

2  被告の主張

(一)  本件係争地部分の宅地性

評価基準において「宅地」の定義は特に設けられておらず、取扱要領第Ⅰ節第2の2(3)も、不動産登記事務取扱手続準則一一七条ハを準用し、「宅地」とは、建物の敷地及びその維持もしくは効用を果たすために必要な土地としている。

三一〇番四〇の土地上には、平成九年度の固定資産評価の時点では建物が存しなかったが、その数年前までは現に建物が存在した。

したがって、固定資産の評価に際し、鎌倉市長が三一〇番四〇の土地のうちの本件係争地部分を含む平坦部分(アの部分)を宅地と評価したことは適法である。

(二)  イの土地についての介在山林補正の適用と本件係争地部分についての補正不適用

(1) 固定資産の評価に当たっては、地方税法三八八条一項により評価基準によることが義務付けられており、評価基準以外の基準に基づく評価は許されない。

しかるところ、評価基準において地盤が軟弱、不安定な状態にある宅地の評価方法は特に定められていない。ただし、評価基準では、「がけ地等で、通常の用途に供することができないものと認定される部分を有する面地については、当該画地の総地積に対するがけ地部分等通常の用途に供することのできない部分の割合によって、「がけ地補正率表」(附表7)を適用して算出した補正率によって、その評点数を補正するものとする。」等とされている。

また、取扱要領附票9にも同様の規定がある。

(2) ところで、三一〇番四〇の土地のうち、傾斜角がほとんど零に近い垂直の擁壁<2>により支えられるイの部分は、がけ地補正も介在出林補正も適用し難いものである。しかし、右擁壁部分がL字型を呈し、宅地介在出林の宅地造成後の法面と類似していることから、イの土地に介在山林補正を適用することとし、その補正率は、三一〇番四〇の土地が下り傾斜地に存すること、擁壁<1>部分の強度が弱いことを考慮して、介在山林補正率表(取扱要領附表9)の急傾斜地の下り傾斜〇・一〇を適用することとされた。

これに対し、擁壁<1>部分により形成される本件係争地部分については、それ自体、平坦な宅地部分で、従前建物の敷地の用に供されていたものであるから、右補正率を適用しないこととされた。

(3) 本件係争地部分は、右のとおり評価基準及び取扱要領に従って評価されたものであり、本件各土地の固定資産評価に原告ら主張の違法はない。

四  主な争点

三一〇番四〇の土地の固定資産評価に当たり別紙図面二及び三のアの土地のうち地盤が擁壁<1>により形成される本件係争地部分(面積二七・三四平方メートル)について、

1  宅地として評価することの適否

2  介在山林補正(雑種地補正)率〇・一〇を適用しなかったことの適否

第三 争点に対する判断(証拠により認定した事実は適宜事実の前後に認定に供した主な証拠を略記する。争いのない事実及び一度認定した事実はその旨を断らない。)

一  固定資産評価の方法

市町村長は、固定資産の価格を決定するについて、自治大臣の定める評価基準によらなければならない(地方税法三八八条一項、四〇三条一項)。したがって、市町村長は、土地の固定資産評価額を決定する場合、評価基準の定める評価方法、基準に従ってこれを評価すべきものであり、当該土地の評価が評価基準の定めに従って適正にされた場合には、基準の内容が著しく不当という場合でない限り、右評価額の決定は適法というべきである。

そこで、右観点から本件係争地部分の評価が評価基準に従って適正にされたか否かについて検討する。

二  地目評価の適否

1  鎌倉市長は、本件係争地部分の地目が宅地であることを前提にその評価額を決定している。評価基準上、地目の認定については、第1章の「第1節 通則」の「一 土地の評価の基本」の項目で、(1)ないし(10)に掲げる土地の地目ごとの評価を行うものとされ、さらに土地の地目は土地の現況による旨定められているものの、宅地の定義やその認定方法に関しては格別の定めはない。

なお、「評価基準の取扱いについて」(昭和三八年一二月二五日自治乙固発第三〇号各都道府県知事宛自治事務次官通達)は、第2章の第1節の5で、「土地の地目は、土地の現況及び利用目的に重点を置き、部分的に僅少の差異の存するときでも、土地全体としての状況を観察して認定するものであること。」と定めており、取扱要領(〔証拠略〕)は、宅地の定義について、不動産登記事務取扱準則一一七条ハに従い、「建物の敷地及びその維持、もしくは効用を果たすために必要な土地」とし、その第I節の第2の1(2)で宅地の認定方法について右通達と同様の規定をしている。

2  そうすると、登記簿上の地目が山林であるような土地あるいは斜面状である土地に擁壁を設置して平面状にした場合において、その土地について固定資産評価をするときには、当該土地全体の利用状況が建物の敷地の用に供され得る状況にあるかどうかにより宅地かどうかを判断することとなると解される。

これを本件についてみると、〔証拠略〕によれば、別紙図面二及び三のアの土地部分には、昭和四六年ころから平成五年一〇月二〇日まで木造二階建家屋(床面積一階五〇・五一平方メートル、二階三九・七四平方メートル)が存し、右土地部分は一体として右家屋の敷地の用に供されていたことが認められる。

そして、本件係争地部分は、固定資産評価上、平成九年度の評価替えまで別紙図面二及び三のアの土地部分と一体として宅地として評価されてきた(〔証拠略〕)。

また、〔証拠略〕によれば、擁壁<1>部分は、本件評価額決定の時点において、一部亀裂が入る等の状態にあったことが認められるが、そのことから、右擁壁により形成される本件係争地部分がそれ自体、宅地としての利用が不可能な状態にあったとまでは認められない。

以上のとおり、評価基準上、山林に擁壁を設けて平面状にした土地については、地目評価上も通常の宅地とは別異に扱うべき旨の定めが存しないことに加え、本件係争地部分がおよそ宅地としての利用が不可能な状態にあるとまでは認められず、現に敷地の用に供されてきたものであることからすれば、少なくとも、地目評価において本件係争地部分を別紙図面二及び三のアのその余の土地部分と一体として、宅地と評価すること自体が違法であるとはいえない。

三  介在山林補正の要否

1  原告らは、本件係争地部分が斜面上に形成された崩落の危険のある土地であることから、本件係争地部分は別紙図面二及び三の擁壁<2>部分と同様に介在山林補正率〇・一〇を適用すべきである旨主張するので、以下この点を検討する。

2  「画地計算法」による「所要の補正」

三一〇番四〇の土地は市街地的形態を形成する地域であるとして「市街地宅地評価法」による評価がされているところ、この場合に、宅地の状況に応じた補正をすべき根拠としては、評価基準第1章の第3節の二(一)4に、各筆の宅地の評点数を「画地計算法」(評価基準別表第3)を適用して付設する場合に、市町村長は、宅地の状況に応じ必要があるときは「画地計算法」の附表等について「所要の補正」をして、これを適用する旨の規定がある。

これは、路線価を基礎とし、画地計算法の定める方法((1)奥行価格補正割合法、(2)側方路線影響加算法、(3)二方路線影響加算法、(4)不整形地、無道路地、間口が狭小な宅地等評点算出法)を適用して評点数を付設する場合に、右計算法によっては考慮されない画地の条件で、価格に影響を及ぼす程度が高いと認められる事項を「所要の補正」として考慮しうる旨規定したものと解される。

そして、固定資産としての大量の土地の価格を画一的基準により評価することにより大量的処理及び評価の適正を図ることが評価基準の一個の目的であることからすれば、「画地計算法」の補正率(評価基準別表第3の附表1ないし8)について「所要の補正」として考慮すべき事項は、価格に影響を及ぼす程度が大きく、これを考慮しない場合に固定資産評価の適正、均衡を失する事項をいうものと解される。この附表の中では本件に関係のありそうなものは、附表7のがけ地補正率表である。

3  取扱要領の規定

取扱要領〔証拠略〕は、前記のとおり評価基準の具体的な運用基準を定めたものであるところ、宅地の形状等に関する補正として、本件各土地の評価に多少とも関係のありそうなものとして、次のとおり規定している。

(一)  取扱要領第Ⅱ節第3の2(8)は、「宅地について、がけ地等で通常の用に供することができない部分を有する画地にあっては、その利用価値は減少するため、がけ地等がない場合を想定して求めた評点について相応の補正をする。」と規定し、附表9「法またはがけ地補正率表」において、評価基準別表第3「画地計算法」の附表7「がけ地補正率表」の場合と同様に、宅地の総面積に対する法又はがけ地部分の面積の割合及びこれらの部分の高さに応じて補正率を定めている。

また、取扱要領は、被告主張のとおり、附表11で介在山林補正を定めており、これは、内容的にはがけ地補正と競合するものであるが、緩傾斜地の場合の補正率〇・七〇(傾斜角五度未満)から急傾斜地(傾斜角三〇度以上)の場合の補正率〇・〇一まで補正率の幅を設け、土地の現況に応じ段階的評価を図ることとしている。

(二)  さらに、取扱要領第Ⅱ節第3の2(9)「その他の補正」の「ク」として、「急傾斜地崩壊補正(補正コード22)急傾斜地崩壊指定地域で、路線価に反映していない場合に限り補正率〇・九〇を乗じる。」旨の規定がある。

4  本件係争地部分と評価基準・取扱要領

(一)  前記2及び3のとおり、評価基準の「画地計算法」の附表7の「がけ地補正率」、取扱要領附表9「法またはがけ地補正率表」及び取扱要領第Ⅱ節第3の2(9)の「その他の補正」のうちの急傾斜崩壊地域補正といった扱いが用意されてはいる。

(二)  ところで、がけ地補正は、盛土、削土、土止め加工等の工事を行わなければ宅地としての通常の用途に供することのできない土地について、右工事に要する経費を考慮して当該画地の総面積に対するがけ地等の面積の比率に応じた補正を行うものである。

しかるに、本件係争地部分は、その地盤が擁壁により形成されているとはいえ、その表面は平坦地で、盛土、削土等の工事を行わなければ、通常の用途に供することができない土地ではない。したがって、本件係争地部分は、画地計算法や取扱要領が、がけ地又は法地の補正を要すべき場合として念頭に置いている土地の状況とは異なるものというべきである。

また、本件係争地部分が急傾斜崩壊指定地域内に存することを認めるべき証拠はない。

(三)  以上のことからすれば、評価基準及び取扱要領において、本件係争地部分の状況に直接当てはまる補正率の定めは存しないものというほかはない。

(四)  しかし、三一〇番の四〇の土地について、およそ全体が宅地と扱われるとすると、それが不合理なことは明かである。すなわち、別紙図面の二及び三において、ウの部分は上りの傾斜地であるから、この部分を宅地として扱うことは相当ではなく、ウの部分はまさに評価基準及び取扱要領によりがけ地として補正を施されるべきである。そして、鎌倉市長のした評価においてこの部分が介在山林として補正率〇・一が適用されているところ、この点の扱いは、合理性を有するということができ、原告も争うものではない。

ところで、アの部分とイの部分は共に、平面状の土地であるから、がけ地補正の直接の対象ではない。しかし、イの土地は、幅約二・五メートル、長さ約九メートルの帯状の土地であり、独立の宅地として利用することは事実上困難であり、しかも、アの部分から高さ約一・五メートル低くなっており、アの部分と一体として利用することもできない。このように、イの部分は、平面状ではあるものの利用勝手が極めて悪い土地である。したがって、イの部分は、平面と垂直からなる階段状ではなく、傾斜状にアの部分を支える形状になっている場合と機能的には変わらないというべきであるので、イの部分についてはがけ地として補正することが利用面からする現況に即した補正であるということができる。この考え方は、取扱要領第Ⅱ節第3の2(8)が、「宅地について、がけ地等で通常の用に供することができない部分を有する画地にあっては、その利用価値は減少するため、がけ地等がない場合を想定して求めた評点について相応の補正をする。」と規定していることと同じ考え方ということができる。

5  本件固定資産評価の内容

鎌倉市長は、本件各土地の評価替えに当たり、三通りの評価方法を検討した上、三一〇番四一の土地を私道として、私道補正を適用し、三一〇番四〇の土地は別紙図面二及び三のア、イ及びウの土地として前記のとおり三つに区分し、それぞれに必要な補正等を適用することとし、アの地目については宅地として評価し、補正率は考慮せず、ウの土地の地目については介在山林として取扱要領附表11の介在山林補正率表に従い急傾斜地(下り傾斜)の補正率〇・一〇を適用した。また、鎌倉市長は、イの部分(擁壁<2>により支えられる部分)の地目については、雑種地とした上、画地計算においてその形状がL字型の擁壁で、宅地介在山林(宅地の中に介在する法地)の宅地造成後の法地に類似する形状のものであること、右擁壁部分が下り傾斜地に存在し、状態が良くないことを考慮し、「所要の補正」として、取扱要領附表11に従い、ウの地目と同様に介在山林補正率〇・一〇を適用した〔証拠略〕。

6  本件係争地部分の固定資産評価の適否

(一)  1から4の考え方と事実関係を背景にすると、5の措置は、所要の補正を施したものとして、極めて合理的な内容を有するということができる。

すなわち、本件においてイの土地部分には、取扱要領第Ⅱ節第3の2(8)の「宅地について、がけ地等で通常の用に供することができない部分を有する画地にあっては、その利用価値は減少するため、がけ地等がない場合を想定して求めた評点について相応の補正をする。」とのがけ地補正の考え方及び同趣旨の介在山林補正の考え方を直接的又は準用的に当てはめることができる。そして、鎌倉市長は、アの部分及びイの部分の双方の形状や擁壁部分<1>の強度を考慮して、イの部分がアの部分の支えとして機能すること等に照らして、イの部分に介在山林補正〇・一〇を適用しているものである。したがって、原告らの主張に係るアの部分の地盤の強度等は、イの部分の補正率において考慮されているともいえるから、少なくとも、アの部分の状況が固定資産評価額に全く反映されていないとはいえない。

(二)  原告らは、鎌倉市長が別紙図面イの土地部分について介在山林補正率〇・一〇を適用しつつ、本件係争地部分について右補正率を適用しないのは不均衡であるかのように主張する。これは、アのうちの本件係争地部分とイの部分とが共に別紙図面二の<1><2>という擁壁により支えられている点で共通しているとの主張と思われる。

しかしながら、共通という考え方だけからすると、本件係争地及びイの土地の双方が補正されないということもあり得ることになる。これに対し、鎌倉市長が前記のような扱いをしたのは、イの土地部分をアの土地部分の支えとなる擁壁と機能的に同視したからであり、原告らの右主張とは前提を全く異にするのである。したがって、原告らの右主張は一面的な主張であって採用することはできない。

(三)  以上のとおり鎌倉市長が本件係争地部分に介在出林補正率〇・一〇を適用しなかったことが違法であるとはいえず、他には原告らの主張もないので、鎌倉市長のした本件各土地の固定資産評価額の決定に違法はない。したがって、被告が本件審査の申出を棄却したことに違法はなく、原告らの請求は理由がない。

四  結論

以上のとおりであるから、原告らの請求を棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法六一条・六五条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 岡光民雄 裁判官 近藤壽邦 近藤裕之)

別紙図面一

<省略>

別紙図面二

<省略>

別紙図面三

各筆の位置

<省略>

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