横浜地方裁判所 平成9年(行ウ)52号 判決 1998年7月22日
横浜市都筑区折本町一一八三番地
原告
角田哲
右訴訟代理人弁護士
田中裕之
横浜市青葉区市ヶ尾町二二番地三号
被告
緑税務署長 鈴木福夫
右指定代理人
大圖明
同
井上良太
同
菅野勝雄
同
久保寺勝
同
石井鋼
同
佐藤謙一
同
浅見光浩
主文
一 原告の請求をいずれも棄却する。
二 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第一請求
原告の平成四年分及び平成五年分の所得税について、被告が平成八年三月八日付けでした各更正処分及び各過少申告加算税の賦課決定処分をいずれも取り消す。
第二事案の概要
被告は平成八年三月八日付けで原告の平成四年分及び平成五年分(以下「本件係争各年分」という。)の所得税について、原告がエース交易株式会社(以下「エース交易」という。)との商品先物取引により得た売買差益を雑所得と認定して各更正処分(以下「本件各更正処分」という。)及び各過少申告加算税の賦課決定処分(以下「本件各賦課決定処分」という。)をした。これに対し、原告が、右雑所得の認定は実質所得のないところに所得を認定した違法がある等として、その取消しを求めた。これが本件の事案の概要である。
一 争いのない事実等(末尾に証拠等の記載のないものは、当事者間に争いがない。)
1 商品先物取引の委託
原告は、昭和六一年二月二〇日から平成元年二月二二日にかけて、エース交易に対し、東京工業品取引所、東京砂糖取引所、東京穀物商品取引所の各商品市場における売買取引を委託し、これについて、右取引所の定める受託契約準則の規定を遵守して売買取引を行う旨の「承諾書」と題する書面等を同社に差し入れ、さらに、平成元年一一月二七日には、エース交易に対し、神戸生糸取引所及び前橋乾繭取引所における売買取引について、同取引所に定める受託契約準則の規定に従って自らの判断と責任において売買を行う旨の「商品取引所追加約諾書」を差し入れ、もって、エース交易に対し、右五商品取引所の開設する商品市場における取扱商品について個々に売買することを委託した。(乙四の一ないし一〇、弁論の全趣旨)
2 売買差益の発生
エース交易は、原告の委託に従い、右各商品取引所において取扱商品の売買を行った結果、本件各係争年分において原告に別表3ないし8の「差引損益金」欄(ただし、エース交易関係分)記載のとおりの差引損益金(取引損益金から委託手数料・取引所税・消費税を控除したもの。以下「帳尻金」ともいう。)をもたらした。(乙一、弁論の全趣旨)
3 課税処分の経緯
原告は、本件各係争年分の所得税について、雑所得を零として確定申告をしたところ、被告は、エース交易との商品先物取引(以下「本件商品先物取引」という。)及び日本ユニコム株式会社(以下「日本ユニコム」という。なお、同社は、平成七年一〇月一日付けでユニオン交易株式会社から日本ユニコムに商号を変更した。)との商品先物取引により原告が得た売買差益があり、これが原告の雑所得となるとして本件各更正処分をし、さらに本件各賦課決定処分をした。
原告は、これを不服として異議申立てをし、棄却決定を受けたので、国税不服審判所長に審査請求をしたところ、棄却の裁決を受けた。これらの経緯は、別表一及び二記載のとおりである。
4 本件更正処分の内容と原告の否認部分
平成四年分は、給与所得一〇九四万円の他、原告がエース交易及び日本ユニコムに商品先物取引を委託してその取引により生じた売買差益金から経費を差し引いた一六三万七一五七円の計算上の所得があった。その先物取引の内容は別表3、4のとおりであり、平成四年分の本件更正処分の根拠についての被告の主張は別紙「本件各更正処分の課税の根拠」一のとおりである。
また、平成五年分は、給与所得一〇九四万円(平成四年分と同額)の他、前年同様の先物取引による計算上の所得二〇四一万三八四一円からオプション取引による損失一二五万〇一四〇円を差し引いた一九一六万三六〇一円の計算上の所得があった。右の先物取引の内容は別表5から10であり、オプション取引の内容は別表11のとおりであり、平成五年分の本件更正処分の根拠についての被告の主張は別紙「本件各更正処分の課税の根拠」二のとおりである。
被告は右の利得を課税所得(雑所得)と認定して更正処分をしたが、原告は、右の利得は課税所得ではないとの立場で、雑所得が零(給与所得しかない。)であるとして確定申告をした。
二 争点
本件の主たる争点は、本件商品先物取引により原告が計算上取得した売買差益が原告の所得(雑所得)を構成するか否かであり、これについての双方の主張は以下のとおりである。
1 被告の主張
(一) 課税の対象となる所得は、人の担税力を増加させる利得のすべてを含むと解するべきである。すなわち、所得は、いかなる源泉から生じたものであるかを問わず課税の対象になるのであり、現金の形をとった利得のみでなく、現物給付・債務免除益等の経済的利益も課税の対象となり、それが合法的な利得であるか、不法な利得であるかは問わない。そして、不法な利得については、利得者がそれを私法上有効に保有しうる場合のみでなく、私法上無効であっても、それが現実に利得者の管理支配下に入っている場合には課税の対象になる。
原告は、エース交易との間の本件商品先物取引に係る委託契約に基づき、同社に商品先物取引を委託し、同社に商品取引所における商品の売買を行わせ、そのための委託証拠金を同社に預託するとともに、右取引によって得た売買差益のうち、本件各係争年分中に別表12記載の委託証拠金及び帳尻金の支払いを同社から受けていたものであるから、本件商品先物取引によって得た売買差益が原告に帰属し、原告の所得になることは明らかであり、右認定に基づいて行った本件各更正処分は適法である。
(二) なお、仮に、右売買差益を生じさせる原因となった原告とエース交易間の委託契約が無効であるとの判決等が別途下され、それに基づき原告が本件商品先物取引に係る売買差益をエース交易に返還することとされた場合には、原告は、被告に対し、国税通則法二三条二項一号の規定による更正の請求をすることによってその是正を求めることができるのであり、右のような事情の発生によって原告が不利益を受けることもない。
2 原告の主張
(一) 本件商品先物取引は、エース交易の社員の一任勘定及び利益保証の下に行われ、公序良俗に反する無効なものである。したがって、この取引により原告が計算上取得した売買差益は、原告の所得とはならない。
(二) エース交易は、本件商品先物取引において、原告を欺罔する意図の下に不法な取引を繰り返していたのであり、たまたま原告に、形式的、一時的に売買差益という形で経済的利益が生じたとしても、それ自体は計算上のものにすぎず、これについて原告がエース交易に利益の支払いを要求しても、エース交易はその支払いを拒否し続け、原告が委託した証拠金が最終的になくなるまで無益な売買を継続、反覆したものである。したがって、原告は、実際には売買差益を自由に使用、収益、処分することができなかったのであり、これについて現実の金銭の授受も行われていない。このような場合、本件商品先物取引に基づく売買差益を課税の対象とすることはできないといわなければならない。
(三) 原告とエース交易との取引は、エース交易が手数料名下で原告から金銭を詐取するという内容のものであり、利益が計上されても名義上のものにすぎず、原告に経済的な利益が帰属したとはいえないから、エース交易の手数料収入に課税すれば徴税目的は達成されたとすべきであり、敢えて原告の名目上の所得に課税する実質的な根拠はない。
第三争点に対する判断
一 本件商品先物取引による課税所得発生の有無
1 違法な取引による利得と課税所得
所得税法は、課税の対象となる所得の意義について、格別これを明らかにした規定を置いていないが、所得をその源泉ないし性質に応じて、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得、一時所得、雑所得の一〇種類に分類し、これらの所得ごとに金額を計算して、これを基礎に課税標準である総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額を計算するものとしている(二三条ないし三五条)。そして、右の一〇種類の所得の中には、山林所得、譲渡所得及び一時所得のように一時的及び偶発的に生じる利得も含まれている。しかも、同法は、雑所得以外の九つの所得のいずれにも該当しない所得を雑所得として課税の対象とする旨定めている(三五条)。さらに、所得税法は、九条ないし一一条において、担税力の薄弱性、徴収技術上の困難性、公益上ないし政策上の理由等から、多項目にわたり非課税所得を列挙しており、そのほか、租税特別措置法その他の法令は、特定の利子や給付金などを非課税所得とする規定を設けている。
右のような所得税法の規定形式、内容等からすると、所得税法は、人の担税力を増加させる利得は、その源泉の如何、形式の如河、合法性の有無を問わず、すべて所得として把握するものとし、法令等において非課税とする趣旨の規定がない限り、これを課税の対象としているものと解するのが相当である。
2 本件商品先物取引における売買差益と課税所得
ところで、商品先物取引は、将来の一定時期に物を受渡しすることを約束してその価格を現時点で決める取引であり、約束の期日以前ならば、いつでもその時点の価格で始めの取引と反対の売買を行うことによって売りと買いを相殺し、その差額を決済して取引を終了することができるという特徴を有する。そして、そのような取引を決済したことによって委託者に売買差益が生じた場合は、その売買差益は担税力を増加させる利得に当たり、これを非課税とする法令の規定も存在しないから、1に照らし、たとえその取引が商品取引員(本件の場合はエース交易)の担当者による一任勘定、利益保証等の違法な取引に基づくものであるとしても、これによる利得は委託者の「所得」に帰属し、課税の対象になるものというべきである。
もっとも、このように、違法な取引に基づく利得が課税の対象になるのは、そのような利得を現実に収受している場合であって、これを現実に収受していない場合は、原則として、課税の対象にすることはできないと解するのが相当である。というのは、そのような違法な利得を収受していない場合には、これを法律上行使して取得することは事実上不可能であり、そのようなものまで所得とみることは相当でないからである(利息制限法による未収の利息・損害金と課税の許否について、最高裁第三小法廷判決昭和四六年一一月九日民集二五巻八号一一二〇頁は同旨)。
3 本件商品先物取引における売買差益の課税所得該当性
そこで、これを本件についてみるに、商品先物取引においては、委託者は、取引を決済したことにより生じた帳尻金が利益となったときは、これを別途取引のための委託証拠金(委託者が取引の担保として預託する金員)として預託することも、現金として直接受領することもできるとされているところ、原告は、本件商品先物取引によって生じた売買差益金について、帳尻金として別表12の番号3、4、8、9、12のとおり支払いを受けている(乙一、五の一ないし九、弁論の全趣旨)。また、商品取引員は預託されている委託証拠金が預託すべき委託証拠金の額を超過する場合において委託者から超過額の返還請求があるときはこれを返還しなければならないとされているところ、原告は、余剰の出た委託証拠金について別表12の番号1、2、5から7、10のとおり返還を受けている(乙一の八から一〇枚目、一四枚目)。そして、原告はその都度エース交易宛に領収証を発行している。また、委託証拠金が不足する場合には、委託者は委託証拠金を追加支払いしなければならないとされているところ、原告は、別表13のとおり現金をもって追加の委託証拠金を預託している(乙一)。
そうすると、原告は、本件商品先物取引による売買差益の全部について、それを単に計算上だけではなく、現実に収受していると推認することができる。したがって、前記1、2で述べたところに従えば、たとえ原告とエース交易間の委託契約が第二の二2(一)で原告が主張するような理由で無効であったとしても、原告が本件商品先物取引による売買差益を収受していると認めることができる以上、これが原告の所得に該当することは明らかといわなければならない。
4 原告の主張について
(一) 原告は、第二の二2(二)で、本件商品先物取引においては、たとえ原告がエース交易に利益の支払いを要求してもエース交易はその支払いを拒否し続け、原告が委託した証拠金が最終的になくなるまで無益な売買を継続、反覆したものであって、原告は、実際には売買差益を自由に使用、収益、処分することができなかったものであるから、本件商品先物取引に基づく売買差益を課税の対象とすることは許されないと主張する。
しかし、前記3認定の事実に照らせば、原告は、取引を決済したことにより生じた売買差益を、現金として受領したり、超過した委託証拠金の返還を受けたり、不足する委託証拠金を現金で追加支払いしたりしており、取引の存続の是非を含め、売買差益を自己の支配下に置いていたというべきである。とりわけ、原告が当初は第二の二2(一)のような違法事由しか主張しておらず、第三回口頭弁論において法的論点が主であり他に主張立証がないとして結審を求めたという本件の進行に照らすと、少なくとも、「売買差益は原告の支配下になく課税所得に該当しない。」という原告のやや唐突な主張事実を認めることは困難である。したがって、いずれにしろ原告の右主張は理由がない。
(二) また、原告は、第二の二2(三)で、「原告とエース交易との取引は、エース交易が手数料名下に原告から金銭を詐取するためのものに他ならず、右取引から生じる売買差益金が計上されてもそれは名義上のものにすぎず実質的に原告が経済的利益を得たものではないから、実質課税の原則からして、このような売買差益金を課税の対象とすることは許されない。」と主張する。
しかし、エース交易が、本件商品先物取引において、手数料名下に原告から金銭を詐取したと認めるに足りる証拠はない。また、たとえ右の取引が詐欺的なものであると仮定しても、右取引の結果として現実に経済的利得及び損失が別表3から10(ただし、ここでの文脈ではエース交易関係分)のとおりに原告に生じている以上、そのとおりの所得が原告に生じていると見るべきことは前述1、2のとおりである。したがって、この点の原告の主張も理由がない。ちなみに、仮に取引が詐欺を理由に取り消され、当初移転した経済的利得及び損失の返還がなされるようなことになる場合には、事後的に更生の請求により是正が図られるので、不合理とはいえない。
なお、弁論の全趣旨によれば、原告は、エース交易との本件商品先物取引について、エース交易を被告として、当裁判所に損害賠償請求の訴えを提起し、現在係争中であることが認められるところ、仮にその訴訟で、原告とエース交易間の委託契約が無効であるとされ、原告がエース交易に対し、本件商品先物取引によって得た利益を返還しなければならなくなったとしても、原告は、被告に対し、国税通則法二三条二項一号の規定による更正の請求によってその是正を求めることができるから、それによって原告が不利益を受けることはない。
二 総所得金額と更正処分の適法性
原告は、本訴において、本件商品先物取引に関する部分を除いては、本件各更正処分の違法事由を主張せず、本訴における被告主張の金額も争わないので、原告の総所得金額は、別紙「本件各更正処分の根拠」一、二記載のとおり、それぞれ平成四年分が一二五八万二一五七円、平成五年分が三〇一〇万八六〇一円と認められるところ、本件各更正処分における原告の総所得金額は、別表一及び二記載のとおりであって、平成四年分については右一二五八万二一五七円と同額であり、平成五年分については右三〇一〇万八六〇一円の範囲内であるから、本件各更正処分はいずれも適法であり、これを前提としてされた本件各賦課決定処分も適法である。
三 結論
よって、原告の本訴請求はいずれも理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 岡光民雄 裁判官 近藤壽邦 裁判官 佐野信)
(別紙)
本件各更正処分の課税の根拠
一 平成四年分
右年分の総所得金額の算出経過は次のとおりであり、各項目別の金額の算定方法は後記1ないし3のとおりである。
給与所得の金額 一〇九四万五〇〇〇円
雑所得の金額 一六三万七一五七円
合計(総所得金額) 一二五八万二一五七円
1 給与所得の金額 一〇九四万五〇〇〇円
右金額は、原告が平成四年分の所得税確定申告書(一般用)に記載した金額である。
2 雑所得の金額 一六三万七一五七円
右金額は、原告が行った商品先物取引に係る所得金額であり、その算出根拠は以下のとおりである。
総収入金額(<1>) 四八四万四八〇〇円
必要経費の額(<2>) 三二〇万七六四三円
雑所得の金額(<1>―<2>) 一六三万七一五七円
(一) 総収入金額 四八四万四八〇〇円
右金額は、原告が平成四年中にエース交易及び日本ユニコム株式会社(以下「日本ユニコム」という。なお、同社は、平成七年一〇月一日付けでユニオン交易株式会社から日本ユニコムへ商号を変更している。)に商品先物取引を委託し、右取引により得た売買差金の金額であり(なお、本件各係争年分における商品取引の明細は別表3ないし10参照。)、その内訳は次のとおりである。なお、原告が右二社に委託した商品先物取引は、取扱商品によって貴金属等を取り扱うもの(通商産業省が所管。以下「通産グループ」という。)と農産物等を取り扱うもの(農林水産省が所管。以下「農水グループ」という。)とに分けられており、それら取引に係る損益も各グループごとに区分されているため、便宜上、以下においては、各グループに区分して記載する。
エース交易(通産グループ) 四二五万七〇〇〇円
エース交易(農水グループ) 二七万一〇〇〇円
日本ユニコム(農水グループ) 三一万六八〇〇円
合計(総収入金額) 四八四万四八〇〇円
(二) 必要経費の額 三二〇万七六四三円
右金額は、次の(1)、(2)及び(3)の合計額である。
(1) 委託手数料 三一〇万八〇〇〇円
右金額は、原告が前記(一)の総収入金額を得るに際し、エース交易及び日本ユニコムに対して支払った委託手数料であり、その内訳は次のとおりである。
エース交易(通産グループ) 二一七万〇二〇〇円
エース交易(農水グループ) 七三万四〇〇〇円
日本ユニコム(農水グループ) 二〇万三八〇〇円
合計 三一〇万八〇〇〇円
(2) 取引所税 六四〇五円
右金額は、原告が平成四年中の商品取引所における先物取引に関し取引所税法八条に基づき支払った取引所税であり、その内訳は次のとおりである。
エース交易(通産グループ) 四三四八円
エース交易(農水グループ) 一一七八円
日本ユニコム(農水グループ) 八七九円
合計 六四〇五円
(3) 消費税 九万三二三八円
右金額は、原告が平成四年中にエース交易及び日本ユニコムに支払った委託手数料に係る消費税の金額であり、その内訳は次のとおりである。
エース交易(通産グループ) 六万五一〇四円
エース交易(農水グループ) 二万二〇二〇円
日本ユニコム(農水グループ) 六一一四円
合計 九万三二三八円
3 総所得金額 一二五八万二一五七円
右金額は、前記1給与所得の金額及び同2雑所得の金額の合計額である。
二 平成五年分
右年分の総所得金額の算出経過は次のとおりであり、各項目別の金額の算定方法は後記1ないし3のとおりである。
給与所得の金額 一〇九四万五〇〇〇円
雑所得の金額 一九一六万三六〇一円
合計(総所得金額) 三〇一〇万八六〇一円
1 給与所得の金額 一〇九四万五〇〇〇円
右金額は、原告が平成五年分の所得税確定申告書(一般用)に記載した金額である。
2 雑所得の金額 一九一六万三六〇一円
右金額は、次の(一)及び(二)のとおり、原告の商品先物取引に係る所得金額二〇四一万三七四一円から有価証券オプション取引(右オプション取引に係る取引明細は別表11記載のとおり。)に係る損失額一二五万〇一四〇円を控除した金額である。
(一) 商品先物取引に係る雑所得の金額 二〇四一万三七四一円
右金額は、次の(1)収入金額から(2)必要経費の額を控除した金額であり、その計算過程は次のとおりである。
収入金額(<1>) 三四二五万四〇〇〇円
必要経費の額(<2>) 一三八四万〇二五九円
雑所得の金額(<1>―<2>) 二〇四一万三七四一円
(1) 収入金額 三四二五万四〇〇〇円
右金額は、原告が平成五年中にエース交易及び日本ユニコムに商品先物取引を委託し、右取引により得た売買差金であり、その内訳は次のとおりである。
エース交易(通産グループ) △六九万二〇〇〇円
エース交易(農水グループ) 三五六七万八八〇〇円
日本ユニコム(通産グループ) 一八五万三〇〇〇円
日本ユニコム(農水グループ) △二五八万五八〇〇円
合計 三四二五万四〇〇〇円
(注) 金額欄の△印は損失額を表す。以下同じ。
(2) 必要経費の額 一三八四万〇二五九円
右金額は、次のA、B及びCの合計額である。
A 委託手数料 一三四〇万一八六〇円
右金額は、原告が(1)の商品先物取引に係る収入金額を得るに際し、エース交易及び日本ユニコムに対して支払った委託手数料であり、その内訳は次のとおりである。
エース交易(通産グループ) 三四万〇八〇〇円
エース交易(農水グループ) 一一〇二万二〇〇〇円
日本ユニコム(通産グループ) 五七万三一四〇円
日本ユニコム(農水グループ) 一四六万五九二〇円
合計 一三四〇万一八六〇円
B 取引所税 三万六三五九円
右金額は、原告が平成五年中の商品取引所における先物取引に関し、取引所税法八条に基づき支払った取引所税であり、その内訳は次のとおりである。
エース交易(通産グループ) 五三三円
エース交易(農水グループ) 三万一九六四円
日本ユニコム(通産グループ) 一〇四三円
日本ユニコム(農水グループ) 二八一九円
合計 三万六三五九円
C 消費税 四〇万二〇四〇円
右金額は、原告が平成五年中にエース交易及び日本ユニコムに支払った委託手数料に係る消費税の金額であり、その内訳は次のとおりである。
エース交易(通産グループ) 一万〇二二四円
エース交易(農水グループ) 三三万〇六六〇円
日本ユニコム(通産グループ) 一万七一八六円
日本ユニコム(農水グループ) 四万三九七〇円
合計 四〇万二〇四〇円
(二) 有価証券オプション取引に係る雑所得の金額 △一二五万〇一四〇円
右金額は、原告が山一証券株式会社に委託して行った有価証券オプション取引より生じた損失額である(別表11)。
3 総所得金額 三〇一〇万八六〇一円
右金額は、前記(1)給与所得の金額及び同(2)雑所得の金額の合計額である。
別表一
本件課税処分等の経緯
平成四年分
<省略>
別表二
平成五年分
<省略>
別表3
(平成4年分)
エース交易(通産グループ)
<省略>
エース交易(農水グループ)
<省略>
別表4
エース交易(農水グループ)
<省略>
日本ユニコム(農水グループ)
<省略>
別表5
平成5年分
エース交易(通産グループ)
<省略>
エース交易(農水グループ)
<省略>
別表6
エース交易(農水グループ)
<省略>
別表7
エース交易(農水グループ)
<省略>
別表8
エース交易(農水グループ)
<省略>
別表9
日本ユニコム(通産グループ)
<省略>
日本ユニコム(農水グループ)
<省略>
別表10
日本ユニコム(農水グループ)
<省略>
別表11
(平成5年分)
山一証券分 オプション取引損益
<省略>
別表12
原告がエース交易から返還を受けた委託証拠金及び支払を受けた帳尻金
<省略>
別表13
原告がエース交易に対して預託した委託証拠金
<省略>