横浜地方裁判所 昭和30年(行モ)4号 決定 1955年10月06日
申立人 三十九名選定当事者坂本繁蔵 外二名
相手方 神奈川県収用委員会
主文
本件申立を却下する。
理由
申立人等は、昭和三十年九月二十六日相手方委員会を被告として昭和三十年三月三十日附横浜調達局長申請の土地使用裁決申請事件について、相手方委員会が同年九月十五日になした裁決の無効確認又は同裁決の取消を求める訴を提起し、且つその執行の停止を申立てた。
しかるところ、内閣総理大臣は昭和三十年十月三日、当裁判所に対して「日本国は、日本国とアメリカ合衆国との間の安全保障条約第三条に基く行政協定第二条第一項において、合衆国に対し、同条約第一条に掲げる目的の遂行に必要な施設及び区域の使用を許すことに同意し、昭和二十九年七月二十一日、日米合同委員会において本件土地が右目的のために必要な施設として合衆国の用に供することに決定されたので、日本国は本件土地をアメリカ合衆国の使用に供すべき義務があるものである。内閣総理大臣は右義務を履行するため、特別措置法に基き本件土地使用認定をなし、相手方委員会は本件土地使用の裁決をしたものである。もし裁判所の命令によつて相手方委員会のなした本件裁決の執行が停止されるときは、日本国のアメリカ合衆国に対する前示義務の履行は不可能となり、国際信義に反し、外交上困難な問題を生ずる虞なしとしない。」旨の理由を示して、右行政処分の執行は停止すべきでない旨異議をのべた。
行政事件訴訟特例法第十条第二項但書、同条第三項の規定によれば、行政処分の執行停止の申立に対して、内閣総理大臣がその理由を明示して異議をのべたときは、裁判所は、処分の執行を停止すべきことを命ずることができないことは明かである。
よつて申立人等の本件申立はいずれもこれを却下すべきものとして主文のとおり決定する。
(裁判官 山村仁 森文治 小木曾茂)
(選定者目録省略)