大判例

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横浜地方裁判所 昭和32年(ワ)748号 判決

埼玉銀行

証拠を綜合すれば、被告桐山良一が被告大栄物産に対して負担する本件物件及び不動産の買受代金債務約百三十万円は、現実に支払われることなく、当時右両被告間において、被告大栄物産が被告桐山良一に対して負担する約百八十万円の借入金債務と対当額において相殺する旨の合意がなされたことを認めることができる。被告らは、本件物件及び不動産の前記代金は結局被告大栄物産が被告桐山に対して負担する債務の弁済に充当されたものに外ならないから、前記各売買は何ら債権者を害するものでないと主張するけれども、被告大栄物産の債務超過による支払停止に次いで、全く同一事業を目的とする被告大栄商事が、被告大栄物産と共同の役員をもつて設立され、これと略々時を同じくして本件物件及び不動産の売買がなされた後、被告大栄物産が解散したこと、そして被告大栄物産が昭和三十一年十月十二日以前において前記約束手形五通を振り出し、合計金百八十万九千百円の手形債務を負担していたというような事情の下において被告桐山良一の負担する本件物件及び不動産の買受代金債務が、同被告が役員である被告大栄物産との間において、被告桐山良一の有する貸金債権と相殺するという合意がなされたというのであるから、右各売買による代金が被告大栄物産の他の一般債権者に対する弁済に充当された場合と異り、既存債務弁済を目的としてなされたとしても、被告大栄物産と被告桐山良一との間の前記各売買は反証のない限り原告の手形債権を害するものと認めるべく、右各売買当時被告大栄物産が債務超過にあつた前認定の事実から、反証がない限り、被告大栄物産は原告を害することを知つて右売買をなしたものと認めるのを相当とする。そして、被告桐山良一が本件物件を被告大栄商事に売り渡したこと前記のとおりであつて、被告桐山良一が本件不動産買受の当時、被告大栄商事が本件物件買受当時におい何れも被告大栄商事と被告桐山良一との間の前紀各売買が原告を害することにつき善意であつたことを認めるに足る証拠はないから、被告桐山良一は本件建物につき受益者として、被告大栄商事は本件物件につき転得者として原告の右各売買の取消の効力を争い得ないものといわなければならない。

よつて原告が被告桐山良一に対して、同被告と被告大栄物産との間になされた本件建物の前記売買を取消し、同被告のため右建物につき売買を原因としてなされた所有権移転登記の抹消を求め、被告大栄商事に対して被告大栄物産と被告桐山良一との間になされた本件物件の前記売買を取消し、右物件の引渡を求める部分は正当であるとしてこれを認容し、右物件について被告桐山良一と被告大栄商事との間の前記売買の取消を認めるべき証拠はないから、原告のこの点に関する請求は失当であるとしてこれを棄却した。

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