横浜地方裁判所 昭和32年(ヲ)718号 決定
証拠を綜合すれば、本件不動産はもと申立人甲の実父乙の伯母の所有であつたが、昭和二十六年一月二十五日甲が同女から贈与を受け、同年二月一日その旨の登記を経由したもので、当時甲は十八才の未成年者であつたため、乙が親権者として甲に代つて登記申請手続をした事実、甲は本件不動産取得後現在に至るまで本件不動産に関する権利証を自ら所持保管していたことのないのは勿論印鑑届さえも自分でしていない事実、乙はこれまで数回に亘り直接甲名義を使用し又はその代理人名義を使用して甲所有の本件不動産につき抵当権設定登記売買予約による所有権移転請求権保全の仮登記などをし、自己の利益のためKやその他の者から金融を受け、その都度弁済して登記を抹消していた事実をそれぞれ認めることができる。一方他の証拠によると、甲は未成年当時乙の伯母から本件不動産の贈与を受けたというようないきさつから、本件不動産につきその管理は勿論抵当権設定その他の処分行為までも、一切を実父の乙に任せ、乙は右の権限に基いてこれまでも数回に亘り、前記のように本件不動産を担保に差入れたりして他から金融を受け、その都度返済していたが、昭和三十一年十月二十三日被申立人Hから金百二十万円を弁済期同年十二月二十二日利息年一割五分利息支払期毎月二十二日期限後の損害金年三割の約定で借り受けるに当つても、自己に与えられた管理処分権限に基き、右債務の担保として本件不動産につき甲名義を使用して抵当権を設定すると共に、債務を期限に弁済しないときは代物弁済として所有権を移転する旨の停止条件附代物弁済契約を締結し、その旨の各登記を経由したもので、右の各契約及び登記手続に関して作成された各甲名義の土地建物抵当借用金証書、代物弁済による所有権移転の契約証、各甲名義の土地建物抵当権設定登記申請書、土地建物所有権移転の請求権保全の仮登記申請書等は何れも乙が前示権限に基いて作成したもので、偽造文書ではないことを認めることができる。
してみると、乙が被申立人Hに対する債務の担保として甲所有の本件不動産につきなした抵当権の設定は有効であつて、甲に対しその効力を及ぼすものというべきであるから、右抵当権の設定が無効であることを前提とする申立人甲の本件異議は理由がないとしてこれを棄却した。