横浜地方裁判所 昭和36年(ワ)160号 判決
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〔判決理由〕<証拠>によれば次の事実が認められる。
「原告は昭和二九年頃同人の居住する家屋の敷地内にアパートを建てそれを賃貸して家賃収入を得ようと考え、≪中略≫同年五月頃より原告が土木建築に経験のあるところから古材やセメント、砂利等をその都度購入し自ら本件建物を建築し始めその後は妻の父である左官山上房好らに手伝つてもらい、ようやく同年末頃に完成した。
その間藤沢市の計理士中西某より、原告の勤務先日本鋼管の給与と、本件建物の家賃収入を合わせると税金が多くなるが、形式上二人の共有という形にすればそれだけ税金が安くなると言われたので原告は≪中略≫収入のない母の田代えいに名義を借りることにし、その承諾があつたので原告は建築士神崎忠康を代理人とし、同年九月一六日原告と田代えいを建築主とする建築確認申請書を建築主事に提出、同主事は同年一〇月一三日右を確認した。
その後本件建物に関する税金は全て原告において支払つて来た。他方田代えいの長男である被告田代弥一は、田代えいの死亡後、原告と感情的な対立があり、田代えいが、生前前記の如き税金の関係で原告に本件建物の建築主として名義を賃していたことを知つていたところから本件建物について原告と田代えいを持分平等の共有者とする保存登記をしようと考え、昭和三二年二月二〇日頃、代書人や、三堀百太郎らに頼んで、自己の印鑑を使用し、原告及び田代えいを申請人とする本件建物の所有権保存登記申請書(甲第四号証の一)その他登記手続に必要な書類(甲第四号証の四ないし六)を原告に無断で作成してもらい、それらを藤沢出張所に提出して、本件登記をなした。」≪中略≫されば本件建物は原告の単独所有であり、本件登記のうち田代えいを共有者とする部分は真実に反することになる。
そして本件登記がなされたのは同人の死亡後であるが、かかる場合も同人の相続人たる被告らは、原告のために抹消登記手続をなす義務があるものといわなければならない。
被告らは一個の申請により原告と田代えいを共有者とする本件登記がなされているのに田代えいの部分だけが申請権限なき者の申請だから無効とするのは失当である旨主張する。しかし不動産の共有登記は不動産につき各共有者が持分の形で所有権を有することを公示するもので各共有者毎に独立の所有権(持分権)登記が存在するものであるから、各共有者の登記毎に独立の無効原因の存在することが可能である。従つて、たとい、本件登記が被告田代弥一において原告との関係においてなんらの権限がなく原告に無断で原告及び訴外田代えい両名の申請名義を使用してなした一個の申請にもとづくものであつても、既に説示したとおり田代えいが本件建物についてなんらの権利を有しない以上本件登記のうち同人を所有者とする部分は真実に反する無効の登記として抹消さるべきである。よつて被告らの主張は採用できない。(久利馨 井野場秀臣 谷沢忠弘)