大判例

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横浜地方裁判所 昭和39年(ワ)1012号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕(一) 原告が宅地建物取引業法による神奈川県知事の登録を受けて右業を営んでいることは当事者間に争がなく右宅地建物取引業者は同法によつて宅地建物の売買、交換、賃貸借の代理または媒介を業とする者であり、商法上の仲立営業とは異なるが、商人として、商法第五五〇条第一項の類推適用により、仲介あつせんの結果売買等を成立させて委任の目的を達成した場合は当然委任者に対し報酬を請求する権利を有するものと解すべきである。そして、<証拠>によれば、神奈川県においては宅地建物取引業法第一七条に基いて県知事が報酬額を定めた規則(不動産業取引仲介手数料表)があり、宅地建物取引業者は同規則の定める限度(原告主張のとおりのもの)で報酬を請求し得る事実たる慣習が存在することを認めることができる。

従つて、被告は本件宅地売却の仲介あつせんを宅地建物取引業者たる原告に委任したのであるから、右委任に伴い売買の成立を条件として右神奈川県規則による報酬額の限度で原告に報酬を支払うべき旨の合意をしたものと認めるべく、原告は右合意による停止条件付報酬請求の権利を有するに至つたものということができる。

<中略>

(二) ところで、宅地建物取引業者の仲介手数料を定めた前記神奈川県規則は宅地建物取引業法第一七条により業者の不当な報酬を抑止する意図のもとにその最高額を明示した趣旨と解すべきであり、従つて、受任者たる業者は必ず所定額の報酬を請求し得るというものではなく、特にその報酬額を合意した場合のほかは、商法第五一二条に則り諸般の事情を斟酌し、右範囲内において相当な報酬額を定め得るものと解すべきである。

また、右規則によれば、報酬を依頼者の一方からのみ受ける場合は所定額の倍額を請求することができる旨の定めがあるが、前に認定した本件宅地売買の仲介のいきさつによると、同業者の中村忠道が買主側から依頼され、原告は売主から依頼された関係にあつて、互に相手方の契約当事者とは取引上直接関連がないから、このような場合業者たる原告は自己の依頼者からその所定額のみを請求し得るにとどまるものと解するのが相当である。

以上の理由から、本件宅地の売買価格金二三、〇〇〇、〇〇〇円について、前記規則によりまず、原告が請求し得べき最高額を算出すると、次の式により金七五〇、〇〇〇円となる。

しかし、前記認定の事実によれば本件宅地の売買において最も困難な問題である借地人その他の居住者の立退きの件は前記今井の尽力によるところが多く、原告は自らは受任後間もなく借地人葛籠貫を訪ねて立退きの意向をただしたほかは直接の交渉をせず、立退きの要求、移転料、売買価格の交渉等具体的な作業は右今井に一任して契約の成立を待つていたに過ぎないのであるから、これらの事情を考慮すると、原告の報酬はその半額である金三七五、〇〇〇円をもつて相当と考える。(深田源次)

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