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横浜地方裁判所 昭和40年(ヨ)975号 決定

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【決定理由】そこで申請人等が懲戒解雇されるに至るまでの経緯を検討する。(証拠)並びに申請の全趣旨を綜合すると次の事実を認めることができる。

会社には蒔田、富岡、関内の三営業所があり、昭和三九年一一月当時各営業所毎に別個の労働組合が存した。申請人等は蒔田営業所の労働組合員であるが、同営業所の労働組合は昭和三九年一一月頃までは一組合だけで、約六〇名の組合員全員が単一組合である神自交に個人加入して、横浜タクシー支部(第一組合)と称していた。

ところで神自交は、組合規約において支部にも支部大会の開催、支部細則の制定、支部に特有な事項についての団体交渉等の権限を認めていたところ、昭和三九年一一月一〇日第一組合の臨時大会(支部大会)が開かれ、神自交の内紛にからみ、申請人等を除く組合全員が神自交から集団脱退をした。その際脱退に同調しない申請人木所、同利根川、同大熊を除名するという事態が発生し、脱退者等は会社と第一組合間に存したユニオンショップ協定に基き、右各申請人を解雇するよう会社に迫った。然し右各申請人は、神自交が単一組合である以上神自交からの脱退者は最早第一組合員でないものと考え、入院加療中で大会に参加していなかった申請人黒岩を除く申請人等で大会を継続し、申請人木所を第一組合支部長に、同利根川を副支部長に、同黒岩を書記長に、同大熊を会計部長にそれぞれ選出した。一方脱退者等は第二組合を結成したが、これは第一組合の名称を変更したに過ぎないとの見解のもとに、同月一一日頃から申請人等の就労をピケなどにより妨害する行為に出ると共に、同月一五日右ショップ協定による解雇の実施を求め、更に同年一二月九日申請人黒岩を除名して、申請人等の解雇を執拗に会社に迫った。

そのため会社は第一組合と第二組合との紛争に巻き込まれることを避け、同月一二日頃以降申請人等を待期扱いとして出勤を停止させ、いずれも別紙賃金目録記載の平均賃金の七割五分ないし八割に相当する待期手当を支給するようになった。然し申請人等は待期手当のみでは生計の維持に事欠くため、会社に対し就労妨害行為を排除して申請人等の就労を受け入れるよう求め、平均賃金の支給を請求したが、会社は組合間の紛争は組合間で解決すべきで、第二組合の就労妨害がやむまでは就労を拒絶すると主張し、専ら第二組合との団体交渉に応ずるだけであった。そして会社は、第二組合の実力行使による就労妨害行為が殆どみられなくなった昭和四〇年五月末頃以降も、出勤日に出頭して来た申請人等に対し、相変らず右のような態度をとり続けた。

他方申請人等は、第二組合の就労妨害が激しく、殆ど就労不可能であった昭和三九年一二月頃から昭和四〇年二月頃までの間、待期手当による減収分を補うため、申請外有限会社関本ショールーム、同みずほタクシー株式会社等において、臨時の運転手として時折稼働するようになり、別紙稼働目録(一)記載のとおりの各年月日に稼働して、毎月それぞれ金九、〇〇〇円を超えない範囲の収入を得ていた。これを知った会社は、申請人等の右稼働は会社に存する就業規則中懲戒解雇事由を定めた第三一条第四号(不正の行為をして従業員としての体面を汚したとき)、第一〇号(後記四項認定のとおり)、第一三号(其の他前各号に準ずる程度の不都合な行為があったとき)に該当するとして労働基準法第二〇条第三項所定の除外認定申請をなさず、申請人等を懲戒解雇にした。

そこで次に、申請人等に右除外事由即ち懲戒解雇事由が存するか否かにつき検討し、併せて本件解雇の当否を審究する。

先ず会社が申請人等に適用した就業規則の懲戒解雇規定を検討するに、(証拠)によれば、会社の就業規則第三一条第一〇号には「会社の承認を得ないで在籍のまま他に雇入れられたとき」とあるのが認められ(中略)る。

而して右規定は、二重雇傭の禁止を定めたものとみるべきところ、この規定の趣旨は、従業員が二重に雇傭されることによって会社に対する労務の提供が不能又は著しく困難となる虞があり、ひいては会社の企業秩序が阻害されることを防止するにあると解される。従って従業員が二重に雇傭された場合には、二重雇傭という外形のみにとらわれることなく、雇傭されるに至った動機及び雇傭の実体を判断して、懲戒解雇となすに相当か否かを決しなければならない。

このような見地から本件解雇をみるに、申請人等は二項認定のとおり、第二組合員の妨害で就労が困難となり、待期扱いとされ生計に窮したことから、妨害の激しかった間一時的に申請外会社等に雇傭されたもので、実力による就労妨害がやんだ後は常に会社に労務を提供していたが、会社は第二組合員の妨害を排除することなく、而も実力による就労妨害が継続している間はもとより、実力行使がみられなくなってからも終始申請人等の労務の提供を受領しないまま漫然と時を過し、傍観する態度をとり続けていたのであるから、斯かる経過に徴すれば、待期扱い中における申請人等の稼動が形式的には二重雇傭にあたるとしても、その動機において申請人等の責に帰すべきものがあるとは解し難い。また二項認定のとおり、単一組合である神自交を脱退しない申請人等は、いまだ第一組合員であること明らかであるから、第二組合員が、申請人等を除名したとしてその就労を阻止し会社にユニオン・ショップ協定の実行を求めることは許されないところであって、これは会社に対する業務妨害行為であり、会社の企業秩序を乱すものであるというべく、会社がこれを排除せず申請人等を本件解雇時まで長期間待期扱いとした点において、むしろ会社に責に帰すべき事由があったというべきである。

そうすると、前記就業規則第三一条第一〇号に基く申請人等に対する懲戒解雇は、二重雇傭の実体を判断するまでもなく、相当といえず、解雇権の濫用といわねばならない。(石橋三二 土井博子 斉藤祐三)

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