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横浜地方裁判所 昭和41年(ワ)456号 判決 1968年4月03日

原告

甲 女

代理人

黒須弥三郎

被告

乙 男

代理人

伊達秋雄

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

(当事者の申立)

原告は「被告は原告に対し金四一五、〇〇〇円および内金一五六、〇〇〇円に対しては昭和四一年五月八日から、内金二五九、〇〇〇円に対しては昭和四三年二月八日から各支払ずみまで年五分の割合による金員の支払をせよ。訴訟費用は被告の負担とする。」旨の判決および仮執行の宣言を求めた。

被告は主文同旨の判決を求めた。

(当事者の主張)

第一、原告は請求の原因として次のとおり陳述した。

一、原告は被告に対し目下当庁に係属中である原被告間昭和四〇年(タ)第三一号および同年(タ)第八三号離婚等請求事件において、原被告間に生れた長男稔史(昭和三九年二月一八日生)の親権者を原告とする旨の判決を求めている。

二、原告は昭和三九年一二月三〇日右長男を連れて被告と別れ現在に至るまで長男と共に別居生活をしているが、被告はその間原告らの生活費を支払つてくれない。

三、原告らの別居後の生活費は左のとおりである。

(一)昭和三九年一二月三〇日から昭和四〇年一二月一一日までの約1.1カ月半の間は義兄のもとに同居していたので家賃等の負担をしなかつたから、その間の生活費は一カ月金一六〇、〇〇〇円位であつた。

(二)昭和四〇年一二月一二日原告らは肩書地に転居し、その後の生活費は一カ月金二三〇、〇〇〇円以上かかつている。

四、原告は前記別居後昭和四〇年六月二九日まで就職口がなくこの六カ月間は全く収入がなかつた。その間の生活費は金九六、〇〇〇円(一月一六、〇〇〇円の割合)で、そのうち別居の際に所持していた金三〇、〇〇〇円を差引き金六六、〇〇〇円については原告は義兄から借財をして立替えをしている。

五、更に原告は昭和四〇年六月三〇日就職後から長男稔史の養育費を左のとおり立替えている。

(一)昭和四〇年六月三〇日から同四一年一二月三一日までの一八カ月間においては一月金一〇、〇〇〇円の割合で金一八〇、〇〇〇円。

(二)その間諸物価の上昇と長男の成長にともなつて養育費は一月金一三、〇〇〇円以上を要するので、昭和四二年一月一日から同四三年一月三一日までの一三カ月においては一月金一三、〇〇〇円の割合で金一六九、〇〇〇円。以上合計金三四九、〇〇〇円

六、よつて原告は被告に対し前記金六六、〇〇〇円と金三四九、〇〇〇円の計金四一五、〇〇〇円および内金一五六、〇〇〇円(訴状請求分)については昭和四一年五月八日から、金二五九、〇〇〇円(拡張分)については昭和四三年二月八日から各支払ずみまで年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

第二、被告は答弁として次のとおり述べた。

一、原告主張の一および二の事実は認める。

二、同三および四の事実は不知。但し原告が被告方を無断家出した際原告が所持していた金は三〇、〇〇〇円ではなく、三五、〇〇〇円である。

三、同五の事実は否認する。

四、同六は争う。

証拠<省略>

理由

原告は被告に対し目下当庁に係属中の原被告間の離婚等請求事件において原被告間に生れた長男稔史(昭和三九年二月一八日生)の親権者を原告とする旨の判決を求めていることおよび原告は昭和三九年一二月三〇日右長男を連れて被告と別れ、現在に至るまで長男と共に別居生活をしているが、被告はその間原告らの生活費を支払つていないことは当事者間に争いがない。

原告は別居中の自己の生活費および子の養育費を請求しているが、まず生活費について判断する。

別居中であつても夫婦の協力扶助義務は当然には消滅しないから、婚姻費用の分担者は他方に対して生活保持に必要な費用を与えなければならないが、しかしその同居の義務違反の責任のある者が他方に対し自己自身の生活費をどの程度請求しうるか、即ち配偶者の一方が擅に別居しながら相手方に対し扶助料の請求をする場合は問題があり、判例は同居しないことが正当な事由に基づくかどうかを扶助料請求の基礎としているのであるから、右請求の前提として別居が正当とされる事情に基づくか否かをまず主張立証しなければならないと解すべきである。(なお分担の要件としてはその他の事情も考慮すべきではあるが本件ではその点は一応除外して考えることとする。)してみれば、本件においてはこの点の主張立証が原告によつて何もなされていないので爾余の点につき判断するまでもなく原告の主張は肯認し得ない。

次に子の養育費についてであるが、父母の婚姻中は、監護教育の費用は婚姻費用として父母の間で分担される。父母が別居する場合にも同様である。しかしこの場合も前述の別居の理由、扶養についての父母双方の意思、能力およびその負担の方法、またその扶養の形態が子の監護教育に最適であるか否か等の諸般の事情を考慮して定めるべきと解される。本件においては上述の事情その他これに関連する事実につき原告は何らの主張立証がないので、単に事実上原告が扶養したからといつて被告にその費用を分担させるべきと断ずることはできないので養育費についての原告の主張はその余の点を判断するまでもなく採用できない。

よつて原告の本訴請求は失当として棄却を免れないので、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり判決する。(藤原康志)

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