横浜地方裁判所 昭和43年(行ク)3号 決定 1968年10月04日
申立人 株式会社東洋物産
右代表者代表取締役 趙鏞客
右訴訟代理人弁護士 高林茂男
同 小林嗣政
被申立人 鶴見税務署長 藤村勝義
右指定代理人 朝山崇
<ほか三名>
主文
被申立人が昭和四一年一〇月二八日付鶴法特更第三三一号をもって申立人に対して発した法人税額等の更正通知書および加算税の賦課決定通知書にもとづく自昭和三九年一〇月一日至昭和四〇年九月三〇日事業年度分(確定)の法人税についての法人税額等の更正および加算税の賦課処分にもとづいて被申立人が申立人に対してなした滞納処分の続行は本案判決が確定するまで停止する。
申立費用は被申立人の負担とする。
理由
一、申立の趣旨および理由の要旨
別紙(一)、(二)記載のとおりである。
二、被申立人の意見
別紙(三)記載のとおりである。
三、当裁判所の判断
(一) 被申立人は課税処分の取消訴訟を本案としてこれと全く別個の処分である滞納処分の続行の停止を求めることはできないと主張する。
行政事件訴訟法二五条にいわゆる執行停止とは、本案訴訟の目的である当該行政処分の効力の発生を阻止するためにのみ限定して解すべきものではなく、同一行政庁が行う関連した一連の行政処分であって当該行政処分を前提とし、必然的に後続してなされるべき行政処分がある場合、その処分の効力の発生を阻止することをも含むものと解するのが相当であって、本件の場合も申立人の求める課税処分の執行停止とは滞納処分の続行の停止に外ならないというべきであり、右滞納処分は本案たる課税処分を前提として、必然的に後続してなされる行政処分というべきであるから、これの執行停止を求める本件申立は適法である。
(二) つぎに被申立人は、本件申立には、回復困難な損害を避けるための緊急の必要性がないと主張する。
なるほど本件不動産については、国税徴収法に定める公売処分の着手がされていないけれども、本件疏明資料によれば、被申立人は昭和四二年一月一六日付をもって本件不動産につき滞納処分による差押をし、昭和四三年三月二日には申立人に対し公売予告通知書を発したことが認められ、してみれば日ならずして公売処分による換価がなされることが予想されるのであって、右換価を防ぐためには公売公告後に執行停止をすれば足りるとはいえず、差押がなされいつでも被申立人において公売による換価ができるにいたった段階ですでに右停止を求める緊急の必要性があるというべきである。
また本件不動産につき公売処分が続行され、これが公売されるにいたっても、必ずしも原状回復あるいは金銭賠償が全く不能とはいえないにしても、その回復が容易でないことが推察でき、しかも不動産の価額の変動の激しい現在本件不動産が公売された場合には、申立人に回復し難い損害の生ずる虞れがあるということも明らかである。
四、結論
よって、申立人の本件申立てを正当として認容し、申立費用につき民事訴訟法八九条を適用して主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 大久保敏雄 裁判官 田中弘 東條宏)
<以下省略>