横浜地方裁判所 昭和44年(ワ)470号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決理由〕被告の過失相殺の抗弁について按ずるに、<証拠>を綜合すれば「被告車を運転していた訴外安藤秀臣(当時二八才)は本件事故発生の日より約三ケ月前(昭和四二年七月八日)に第一種普通免許証を取得したばかりであり、当日は同僚に頼まれて平常自己が使用しておらず、従つて車の癖もよく判らない被告車を、被告のお得意先にコンニャクを至急届けるため、初めて運転し急いでおり、前記藤沢県道を大和方面から藤沢方面に向け時速約五五粁で走行してきたところ、目測約一〇〇米の地点に自動車二台(外国車と貨物自動車)が並列停止していて自己の通行帯を完全に塞いでいたので対向車線の状況も十分判らない状態にあつたのに拘らず時速約三〇粁に減速してその外側の外国車の右側を対向車線に入り追越にかかつた途端にその左方から時速約五粁で同車線に入り大和方面に右折せんとする原告車を約一〇米先に発見し急ブレーキをかけたが馴れない車であつたためブレーキが十分きかず遂に衝突してしまつた。」事実が認められる。
右事実関係の下においては、被告車の運転者訴外安藤は運転歴浅く、しかも不馴れの自動車を運転していたのであるから、急いでいたとはいえ、特に慎重を期し、進路前方を二台の自動車が駐停車して自己の通行帯を完全に塞いでいる理由(例えば、駐停車車両の前方又は対向車線内に事故とか障害があるとか)車の蔭にしばしば人や車があるとかを警戒し自己も亦先行車に追従して一旦停止するか、少くとも対向車線の状況がよく判るような程度に減速又は徐行して警笛を吹鳴して追越しの安全を確保して走行する等事故を未然に防止すべき有効適切な措置を執るべき注意義務(原告本人尋問の結果によれば本件道路には白色の中心線の表示があつた事実が認められるから追越禁止の場所ではなかつたのであるが、本件の如き状態にあつて追越をすることの危険がいかに大であるかは明らかである。)があるのに拘らずこれを怠つた無謀運転をしたのであるから、同人に重大な過失があると解せらるべく、他方原告も亦外国車の運転者が手で合図をし進路をゆずつてくれたとはいえ、駐停車していた二台の自動車に遮られて自己が右折進行しようとする大和方面に向う通行帯の右側の状況は判らずその方向から追越車両が来ることも保しがたい(右のごとく追越禁止の場所ではないから)のであるから、一旦中央線の位置で停車して警笛を吹鳴する等事故の発生を未然に防止すべき注意義務があるのに右の進路譲歩の合図(場合によつては、第三者の帰責事由の競合となり、却つて極めて危険な結果を招来する惧がある。)のみに依拠しかかる注意義務を怠り漫然右折を開始したのは同人の過失といわざるを得ない(これらの点について、横浜地裁昭和四一年三月二四日判決、判例タイムズ189号一八五頁以下参照)。
しかして、右両者の過失の割合は訴外安藤の分は、原告の分はと判定するを相当とする。(若尾元)