大判例

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横浜地方裁判所 昭和46年(ワ)1484号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【説明】

訴外Aは、昭和四四年一〇月一四日午後一一時五〇分頃、横浜市内の路上で、訴外Bからたちばさみで左側腹部を突き刺され、これにより左側腹部刺創、左腎動脈切截等の傷害を負い、直ちに、同市内の病院に運ばれ、医師である被告から診療を受けたが、翌一五日午前二時五分頃、左腎動脈切截に基づく失血により死亡した。

【判旨】

<証拠>によると、被告片倉は、訴外鈴木が前示野村外科病院に搬入されるや、前示のように同訴外人の左側腹部刺創の縫合を行い、クロマイの筋肉注射のほか、点滴によりフルクトン、アドナ、トロスチン、ブリスタシンを投与し、これらの処置の終了した昭和四四年一〇月一五日午前零時三〇分頃訴外人を病室に移し、右点滴を継続していたところ、同訴外人は途中吐血し、同日午前一時五〇分頃には血圧測定不能、呼吸困難となり、被告片倉からビタカンフアを投与されたが、同日午前二時五分死亡するに至つたことが認められる。

ところで<証拠>によると、一般に血管内臓損傷の疑が濃厚となつてこれを放置しえない状態にあると患者が判断された場合、医師は、患者が手術に堪え得るとみれば直ちに開腹手術等積極的治療に着手すべきであると認められるが、同時に<証拠>によれば本件の場合かりに被告片倉において直ちに開腹手術を行つたとしても訴外鈴木の被つた前示各傷害の部位程度からすると、複数個所の動脈切断ないし損害部位に対する止血、胃貫通創の縫合と、場合によつては胃の部分切除と吻合、その後方に存在する膵切截部の処置と切截部から左方尾部の剔出、更に後腹膜下血腫内からの左腎剔出等の手術処置が必要とみられるところ、これらがすべて完全に遂行しうるかについては、その損傷の質的量的な面からみて通常極めて困難であるうえ、右手術の終了まで同訴外人が生存しうる可能性は極めて少ないことが認められるから、このことからすると被告片倉において原告ら主張のように直ちに開腹手術をしなかつたことと訴外鈴木の死亡との間の因果関係を認めることはできず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。

(清水次郎 松井賢徳 高梨雅夫)

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