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横浜地方裁判所 昭和47年(ワ)871号 判決 1973年5月10日

主文

被告は原告倉内敏郎に対して金二、九〇四、一三四円、原告倉内英子に対して金二、五七八、一三四円及び右各金員に対する昭和四七年七月一五日より支払ずみに至るまで年五分の割合による金員を支払え。

原告らのその余の請求はいずれも之を棄却する。

訴訟費用は全部被告の負担とする。

この判決は第一項に限り仮に執行することができる。

事実及び理由

原告ら訴訟代理人は、「被告は原告倉内敏郎(原告敏郎という)に対し金三、八六九、二〇七円、原告英子に対し金三、五四三、二〇七円及びこれらに対する昭和四七年七月一五日より支払ずみに至るまで年五分の割合による金員を支払え。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決並に仮執行の宣言を求め、その請求の原因として次のとおり述べた。

一  事故の発生

1  とき 昭和四七年一月一八日午後五時五分

2  ところ 神奈川県藤沢市鵠沼桜岡三ノ九ノ二七

3  加害車両 大型貨物自動車(ダンプ、相模一一さ、七〇九号、被告車という)

4  運転者 被告渡部富雄

5  被害者 倉内宏(亡宏という)

6  事故態様 被告が被告車を後退させた際、道路進行中の被害者倉内宏に被告車の後部を衝突させ後輪にて轢死させたものである。

二  被告の責任

被告は被告車を所有し、かつ、これが運行供用者であるから、自動車損害賠償保障法(自賠法という)第三条、民法第七〇九条により本件交通事故による損害の賠償責任を負う。

三  損害 合計金一一、九一二、四一四円

1  慰藉料 金四、〇〇〇、〇〇〇円

亡宏は原告らの長男として最愛の情を受けていたものであり、将来に多大な期待を抱いていた。本件交通事故による原告らの慰藉料は各自金二、〇〇〇、〇〇〇円を相当とする。

2  逸失利益 金七、五八六、四一四円

亡宏は当時八歳であつたから満二〇歳より満六三歳までの四三年間就労可能である。

平均賃金八五、四三三円(但し、原告敏郎の社会的地位、日本アイ・ビー・エム株式会社スタツフ・エンジニア、資産等から、亡宏が大学卒業後に就職する蓋燃性が極めて高いので、昭和四四年度賃金センサス賃金構造基本統計調査第一表のうち新大卒の平均賃金である。)を亡宏の所得とし、生活費はその二分の一とする。

そして満二〇歳までの養育費を月額金一〇、〇〇〇円として得べかりし利益から控除し現価を算出すると金七、五八六、四一四円となる。

85,433×12×0.5×16.9572-120,000×9.2151=8,692,226-1,105,812=7,586,414

従つて、右金員を原告両名は各自二分の一宛相続した。

3  葬儀費 金三二六、〇〇〇円

原告敏郎は、亡宏の葬儀費として右金員を支払い同額の損害を受けた。

4  弁護士費用 金五〇〇、〇〇〇円

原告らは、被告において本件交通事故による損害の賠償請求に応じないので、止むを得ず本件訴訟代理人らに訴訟追行を委任し、着手金一〇〇、〇〇〇円、報酬金四〇〇、〇〇〇円の支払を約し、原告両名は各自金二五〇、〇〇〇円の損害を被つた。

5  損害の填補

原告両名は、本件交通事故につ各自金二、五〇〇、〇〇〇円の保険金を受領した。

四  よつて、被告は原告敏郎に対して金三、八六九、二〇七円、原告英子に対して金三、五四三、二〇七円及びこれらに対する本件訴状送達の翌日である昭和四七年七月一五日より支払ずみに至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求めるため、本訴請求に及んだものである。

被告は適式の呼出を受けながら、本件口頭弁論期日に出頭せず、答弁書その他の準備書面も提出しないから、原告ら主張の請求原因事実を自白したものとみなす。

よつて、右請求原因事実によると、原告らの本訴請求は慰藉料と逸失利益を次のとおり認定するほか正当である。

一  慰藉料

原告ら各自に対し金一、七五〇、〇〇〇円が相当である。

二  逸失利益

1  就労可能年数 亡宏の就労可能年数を満二〇歳より満六三歳までの四三年間とする。

2  亡宏の年収 金八六一、六〇〇円(昭和四四年賃金センサス全産業男子学歴計)

3  生活費 五〇パーセント

4  養育費 満八歳から満二〇歳まで一二年間、年間金一二〇、〇〇〇円とする。

5  係数 ホフマン式係数

6  算式

金 861,600円×0.5×16.8572-金 120,000×9.2151=金 6,156,269円(円以下切捨)

7  相続 よつて原告両名は、金六、一五六、二六九円の二分の一にあたる金三、〇七八、一三四円(円以下切捨)を各自相続した。

以上のとおり、被告は、原告敏郎に対して金二、九〇四、一三四円、原告英子に対して金二、五七八、一三四円及びこれらに対する本件訴状送達の翌日である昭和四七年七月一五日より支払ずみに至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金を支払わなければならない。

よつて、原告らの本訴請求は、右の限度で正当であるからこれを認容することとし、その余は失当であるから棄却する。

訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九二条但書を、仮執行の宣言につき同法第一九六条を各適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 石藤太郎)

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