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横浜地方裁判所 昭和49年(ソ)3号 決定 1974年3月19日

抗告人

森井利治

右代理人

加島安太郎

外二名

相手方

米山商事株式会社

右代表者

谷口栄業

主文

本件抗告を棄却する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

一本件抗告の趣旨および理由は別紙抗告状記載のとおりである。

二抗告理由一について<略>

三抗告理由二、三について

本件記録中の資料および当裁判所の職権に基づく調査によれば、抗告人を原告、相手方を被告とする藤沢簡易裁判所昭和三五年(ハ)第一二号土地所有権確認等請求事件は、昭和三六年一二月七日原告勝訴の判決の言渡がなされ、被告が控訴して横浜地方裁判所に係属したのであるが(横浜地方裁判所昭和三七年(レ)第一三号)、右訴訟記録は既に廃棄処分に付されているところ、右第一審判決原本には「昭和三九年二月一日確定、控訴取下」と付記されており、横浜地方裁判所事件簿にも右控訴事件につき「控訴取下」の記載のあることが認められる。

しかしながら<証拠略>によれば、前記控訴事件の被控訴人(本件抗告人)の訴訟代理人加島安太郎は昭和三九年一月三〇日付で訴を取下げるとともに、同日付で東京地方裁判所に右訴訟と同一の訴を提起していることが認められる。

以上によれば前記判決原本の「控訴取下」の付記および事件簿の同旨の記載は、書記官において訴の取下を控訴の取下と取違えてなした誤記であることは明らかであり、このように他の資料によつて判決原本および事件簿の記載が誤記であることが容易に判明する場合には、申立により判決確定証明書の付与処分を取消すことは何ら違法ではないというべきである。

よつて抗告理由の二、三も理由がない。

四以上の次第で本件異議申立を認容した原決定は相当であり、本件抗告は理由がないからこれを棄却することとし、民事訴訟法第四一四条、第三八四条、第九五条、第八九条を適用して主文のとおり決定する。

(柏木賢吉 山田忠治 仲家暢彦)

別紙

抗告の趣旨

一 原決定を取消す。

二 相手方の申立は却下する。

との決定を求める。

抗告の理由

一 <略>

二 仮りに右の如き当事者あるいは決定内容の不特定問題を措くとしても、本件確定証明は判決原本の記載に基いて付与されたものであつて何ら取消さるべき事由は有しない。

民訴法四九九条一項によれば判決確定証明は裁判所書記官が記録に基き付与するとされているのであるが、該判決の訴訟記録は既に廃棄処分に付されており、一方、事件記録等保存規程(昭和三九年一二月一二日最高裁規程八号)第七条によれば判決の原本には裁判の確定又は訴え等の取下げの事実を付記しなければならないとされており、従つて記録が廃棄された後は専ら判決原本の付記に基いて確定証明が付与されるべきなのである。従つて本件判決原本に付記された事項が控訴の取下と記載されているのであるから、それにより判決は確定した旨を証するのは当然である。

しかるに相手方は右原本記載の控訴取下の記載を訴の取下の誤記であり、従つて本件確定証明の付与を取消す旨主張して本件申立を為したのであるが、原本の付記が右のようなものである限り、裁判所書記官はその旨の証明書を付与せざるを得ないのであり、何ら取消しの事由は存しない。

しかるに原裁判所は右の点を看過して原決定の表示主文欄記載の決定を為したものである。

三 また仮りにそうでないとしても該判決は控訴取下により確定したものである。それは判決原本の付記によつても、また貴庁の事件簿にもその旨の記載があることによつても明らかである。いやしくも裁判所書記官が二庁において同じ誤記を重ねることは考えられないことである。

四 よつて抗告の趣旨記載の決定を求めるものである。 以上

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