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横浜地方裁判所 昭和53年(ヨ)441号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【説明】

宇徳陸運労組と被申請人間に成立した労働協約中のユニオン・シヨツプ条項は、次のとおりである。

第七条 会社の従業員は、組合員でなければならない。但し会社と組合が協議の上認めた者を除く。(了解事項)この協約でいう従業員とは運転職、整備職及び給油職にある者をいう。

第八条 組合が組合員を除名した場合又は組合員が組合を脱退した場合は、組合は除名又は脱退の理由を付して会社に通告し、会社は本人より事情を聴取し、除名又は脱退の日をもつて解雇する。

【判旨】

三そこで、右二認定の事実に基づいて、以下本件解雇の当否につき判断する。

1 上述二の2のとおり、宇徳陸運労組と被申請人間で昭和五二年七月一八日締結された労働協約第七条、第八条にはユニオン・シヨツプ条項が規定されているところ、被申請人は右第八条に基づいて本件解雇をなしている。

ところで、被申請人は第八条にいう「組合が組合員を除名した場合又は組合員が組合を脱退した場合は」との該当事由について、第一次的には宇徳陸運労組の申請人に対する除名行為を、第二次的に申請人の脱退行為を挙げているが、しかし本件においては脱退の日時が除名の日時に先行するものであるから、脱退が即時にその効力を有し、申請人が同労組員たる地位を失なう以上、それ以降は論理的に除名の問題は生じないものと解せられるので、まず脱退の効力の有無について検討する。

上述二の3によれば、申請人はかねてより宇徳陸運労組執行部の路線、運営方法に不満を抱いていたところ、昭和五三年三月三一日たまたま「五三年度労働災害防止法(案)」を示されたのを契機として、同労組を脱退し、新たに全港湾横浜支部に加入する決意を固め、同日脱退届を作成してこれを全港湾横浜支部三上組合員を介して同年四月三日宇徳陸運労組に提出したものであり、これによれば同日をもつて脱退の効力は生じ、申請人は同労組の組合員たる地位を失なうに至つたものというべきである。

なお、被申請人は、同労組の路線は相当で運営方法は民主的であり、申請人の脱退理由には正当性がなく、かえつて申請人こそが同労組内にあつて非協力的態度を固持し孤立化していたものであるとして、申請人を論難しているが、しかし労働組合の路線、姿勢が相当であるか否か、その運営方法が民主的であるか否かということは、現今のように価値観が多様化しているときは、そのよつて立つ基盤如何によつて見解を異にする場合があり得るものであり、これに組合員個々の思想・信条の自由、さらには組合加入・脱退の自由が尊重されねばならないことを併わせ考えると、被申請人の指摘するような事由をもつては、いまだ脱退の効力に消長を及ぼし得るものではない。

してみると申請人は昭和五三年四月三日をもつて宇徳陸運労組を脱退し、その組合員たる地位を失なつたものであるから、同月五日になされた申請人の除名決議はそれ自体法律的には無意味、無価値なものと評価せざるを得ない。

なお付言するに右の点を仮に留保しても、<証拠>によれば、宇徳陸運労組の組合規約第六四条には、除名に付し得るには、当該組合員が権利の一時停止を二回以上受けたことがその要件として規定されているところ、<証拠>によれば、申請人は一度も権利の一時停止の処分を受けたことがないことが認められるので、この点からも本件除名はその効力無きものというべきであるから、いずれにしても本件除名は解雇の根拠事由とはなし難いというほかはない。

2 そこで、進んで、申請人の脱退を理由とする本件解雇の効力の有無について考察する。

前記二認定のとおり、申請人は多数組合である宇徳陸運労組の方針に従えないとして同労組を脱退して少数組合である全港湾横浜支部に加入したものであるが、かような場合に宇徳陸運労組と被申請人が締結しだ本件ユニオン・シヨツプ条項の適用の当否について検討する。

惟うに、企業内に複数の労働組合が併存している場合には、それらが自主性を具備した組合であるかぎり、組合員数の多少にかかわらず、いずれも憲法二八条にうたう団結権が保障せられるべきであり、そして正当なる競争の原理によつて、より良き組合が拡大、発展すべき筋合のところであるから、使用者が組合間の勢力関係につき現状固定化に助力したり、ことさらに少数組合の浸透に消極的作用を営なむことは当を得ないものであり、これに個々の労働者の組合選択の自由、組合への加入、脱退の自由が尊重せられるべきことを併わせ考えると、使用者と多数組合間において締結されたユニオン・シヨツプ協定の効力は、他の組合員に及ばないことは勿論、多数組合の方針に従えないとして脱退し、他の組合に加入する者についてもその適用は許されないものと解するのが相当である。

これを、本件についてみれば、申請人の脱退については本件ユニオン・シヨツプ条項はその効力を及ぼし得ないものと解するのが相当であるので、右条項の適用を前提とする本件解雇は、無効のものというべきである。

してみると、本件解雇の意思表示にもかかわらず昭和五三年四月九日以降も申請人と被申請人間の雇用契約関係は存続し、申請人は被申請人の従業員たる地位にあることとなる。

(本田恭一)

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