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横浜地方裁判所 昭和58年(わ)59号 判決 1983年6月30日

裁判所書記官

草間五郎

本籍

神奈川県茅ケ崎市下寺尾三五八番地

住居

右同

農業

佐藤久高

昭和三年一二月二二日生

事件名

所得税法違反被告事件

公判出席検察官

奥村丈二

主文

被告人を懲役一年及び罰金二、〇〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判が確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、神奈川県茅ケ崎市下寺尾三五八番地の自宅において、農業を営むかたわら、商品取引を行っているものであるが、所得税を免れようと企て、親戚及び知人等の名義を用いて行った商品取引で取得した資金を仮名預金に預入する等の方法により所得を秘匿したうえ

第一  昭和五五年分の実際の総所得金額が九、五八五万五、三〇九円で、これに対する所得税額三、八二八万二、六〇〇円、分離課税による長期譲渡所得が一、九〇五万九、四二七円で、これに対する所得税額が三八一万一、八〇〇円であるにもかかわらず、昭和五六年三月一六日、神奈川県藤沢市朝日町一番地の一一所在の所轄藤沢税務署において、同税務署長に対し、同年分の総所得金額が二一万三、三七九円、長期譲渡所得が二、〇〇五万九、四二七円で、これに対する所得税額は雑損失控除があるため零である旨の虚偽の所得税損失申告書を提出して、申告納付期限を徒過し、もって不正の行為により、所得税四、二〇九万四、四〇〇円を免れた

第二  昭和五六年分の実際の総所得金額が七、五二〇万三、七七六円で、これに対する所得税額が四、一三三万一、九〇〇円であるにもかかわらず、同五七年三月一五日、前記藤沢税務署において、同税務署長に対し、同年分の総所得金額が四二二万三、三四一円で、これに対する所得税額は雑損失控除があるため零である旨の虚偽の所得税損失申告書を提出して、申告納付期限を徒過し、もって不正の行為により、所得税四、一三三万一、九〇〇円を免れた

ものである。

(証拠の標目)

判示事実全部につき

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する供述調書

一  被告人の収税官吏に対する質問てん末書八通

一  北宮征男(二通)、北山実、安田喜一、小島梅代、佐藤恵美子及び佐藤文江(二通)の収税官吏に対する各質問てん末書

一  収税官吏作成の告発書及び「犯則所得額(脱税額計算書)等について」と題する書面

判示第一の事実につき

一  収税官吏作成の脱税額計算書及び所得税額計算書(各昭和五五年度分)

一  押収してある昭和五五年度分の所得税の損失申告書一袋(昭和五八年押第二一二号の1)

判示第二の事実につき

一  収税官吏作成の脱税額計算書及び所得税額計算書(各昭和五六年度分)

一  押収してある昭和五六年度分の所得税の損失申告書一袋(前同押号の2)

(法令の適用)

被告人の判示第一の所為は、行為時においては昭和五六年法律第五四号脱税に係る罰則の整備等を図るための国税関係法律の一部を改正する法律による改正前の所得税法二三八条一項(一二〇条一項三号)に、裁判時においては右改正後の所得税法二三八条一項(一二〇条一項三号)に、判示第二の所為は右改正後の所得税法二三八条一項(一二〇条一項三号)にそれぞれ該当するが、判示第一の所為に関しては犯罪後の法律により刑の変更があったときにあたるから刑法六条、一〇条により軽い行為時法の刑によることとし、右各所為につきいずれも懲役刑及び罰金刑を併料したうえ、右各罰金刑に関しいずれも各情状により所得税法二三八条二項を適用することとし、以上は刑法四五条前段の併合罪なので、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により重い判示第二の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条二項により右各罪所定の罰金刑を合算し、その刑期及び金額の範囲内で被告人を懲役一年及び罰金二、〇〇〇万円に処し、右の罰金を完納することができないときは、同法一八条により金五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から三年間右の懲役刑の執行を猶予することとし、訴訟費用については、刑事訴訟法一八一条一項本文を適用して全部これを被告人に負担させることとする。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 上原吉勝)

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