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横浜地方裁判所 昭和58年(ワ)1294号 判決

第一 不正競争防止法に基づく請求について

(原告楽陽食品の請求について)

一 原告楽陽食品の商号、商品表示、営業表示について

1 請求原因1(一)のうち、原告楽陽食品の商号、設立日時、会社の目的、代表取締役の氏名及び同原告がチルドタイプのシウマイを製造販売していることについては、当事者間に争いがない。

2 原告楽陽食品の商品表示、営業表示(請求原因1(二))について同原告がその商品に「楽陽軒」、「元祖楽陽軒」の表示を使用していることについては当事者間に争いがなく、右事実と、原本の存在及び成立について争いのない甲第六号証の一及び二、成立に争いのない乙第二七号証、同原告の商品の写真であることについて争いのない乙第一八ないし第二一号証の各二、同原告使用のシウマイの包装箱あるいはシールであることについて争いのない検甲第一、第三号証、同原告のシウマイの容器であることについて争いのない検乙第四号証の二によれば、同原告は、そのシウマイの包装箱、シール等に、販売元ないし営業を示す表示として「楽陽食品株式会社」を、商品名を示す表示として「株式会社楽陽軒」、「楽陽食品」、「楽陽軒」及び「元祖楽陽軒」をそれぞれ使用していることが認められる。

しかし、右各証拠ないし本件全証拠によつても、同原告が、その商品ないし営業を示すものとして「楽食」を使用していることを認めることはできない。

二 原告楽陽食品の表示の周知性(請求原因2)について

1 前記乙第二七号証、成立に争いのない甲第八号証、乙第一七号証の一及び二、原告ら代表者稲生英司本人尋問の結果とこれにより成立を認める甲第七号証、第一四号証の一及び二(原本の存在、成立とも)並びに被告ら代表者保坂弘次本人尋問の結果によれば、請求原因2(一)の事実(但し、現在の原告楽陽食品の年商を認めるに足る証拠はなく、ただ昭和五七年度の年商が五九億円であることが認められる。)のほか、チルドタイプのシウマイについては、昭和五八年当時全国での市場規模は約二四〇億円であり、このうち原告楽陽食品のシエアは三〇・四パーセントであることが認められる。

2 前記稲生英司本人尋問の結果とこれにより成立を認める甲第一一、第一二号証によれば、請求原因2(二)の事実を認めることができる。

3 請求原因2(三)の事実については当事者間に争いがない。

以上によれば、原告楽陽食品の前記各表示が、同原告の商品ないし営業を示すものとして、昭和四五年ころには関東、中京、関西において、同五〇年ころには全国的に周知となつたことが認められる。

三 被告らの商号、設立年月日及び代表取締役の氏名(請求原因3(一))については当事者間に争いがない。

四 被告らの商品表示、営業表示について

1 被告楽食商事の商品表示、営業表示について

成立に争いのない乙第二八号証、被告楽食商事の商品の写真であることについて争いのない乙第一八ないし第二一号証の各一、同被告の使用するシウマイの包装箱であることについて争いのない検乙第一号証、第四、第五号証の各一、前記保坂弘次本人尋問の結果によれば、被告楽食商事は、その製造にかかるシウマイの容器包装等に、発売元ないし営業を示す表示として「楽食商事株式会社」を、商品名を示す表示として「楽食」をそれぞれ使用していることが認められる。

しかし、右各証拠ないし本件全証拠によつても、同被告が「楽陽軒」、「元祖楽陽軒」の各表示をその商品ないし営業を示すものとして使用していることを認めることはできない。

2 被告楽陽軒の商品表示、営業表示について

被告楽陽軒がその製造にかかるシウマイの容器包装等に、商品を示す表示として「楽陽軒」、「元祖楽陽軒」を使用していることは、当事者間に争いがなく、前記保坂弘次本人尋問の結果、被告楽陽軒の包装箱であることについて争いのない検甲第二号証、検乙第二号証によれば、同被告が販売元ないし営業を示す表示として「有限会社楽陽軒」を使用していることが認められる。

五 被告らの商号、商品表示、営業表示の類似性について

1 原告楽陽食品の商号と被告楽食商事の商号との類似性について検討する。

(一) 原告楽陽食品、被告楽食商事の各商号のうち、「株式会社」の部分は会社の組織形態を示す普通名詞、「食品」、「商事」の各部分はいずれも一般的には会社ないし企業の業種を示す普通名詞であつて、いずれも商号を識別する機能を有するものではない。したがつて、原告楽陽食品の商号の要部は「楽陽」であり、他方、被告楽食商事のそれは「楽食」であると解される。

(二) 右「楽陽」、「楽食」がそれぞれ、「らくよう」、「らくしよく」と発音することは明らかである。両者はいずれも第一文字である「楽」が共通で、発音上も「らく」が同一である。しかし、この文字は固有名詞ではなく、特定の観念を直ちに想起するものではない。また、発音上「らくよう」の四音は比較的平板均等に発音され、他方、「らくしよく」は第三音である「しよ」にアクセントがあり比較的強く発音され、いずれにしても、両者ともに発音上「らく」の発音が中心になるわけではない。したがつて、「楽」の外観、「らく」の発音それ自体が共通であるからといつて直ちに特定の観念ないし特定の商号、会社名を想起することはない。むしろ、両者とも第二文字との結合からなる一つの単語としてそれぞれを比較するのが相当である。

そこで、「楽陽」と「楽食」との比較であるが、称呼、外観の点で両者が異なることは明らかであり、また、観念の点においても、いずれも別個の創造語であつて特定の同一の意味を想起させるものではないから、類似ということはできない。

(三) 原告らは、「楽食」が「楽陽食品」の略称であるから類似である旨主張するのでこの点について検討する。

確かに、「楽陽食品」の「楽」と「食」とを抽出すれば「楽食」となる。しかし、一般的に、ある表示が他の表示の略称とみられ、その略称によつて省略前の他の表示を想起する場合とは、その略称自体が略称ないし省略の仕方として周知である場合或いは省略前の他の表示が極めて周知な場合であると解されるところ、前記乙第一七号証の一及び二、前記保坂弘次本人尋問の結果によれば、現在、シウマイのシエアでは原告楽陽食品と被告楽食商事とは相拮抗し、若しくは被告楽食商事の方がやや上回つており、いずれがより周知であるとはいえないのであつて、少なくとも「楽食」から「楽陽食品」を連想するほど「楽陽食品」の名が「楽食商事」の名に比べて著名、周知であるとみることはできず、また、「楽陽食品」を省略する場合には「楽食」とすることの外に、「食品」の表示が一般名詞であることから「楽陽」とすることも十分考えられるので、「楽食」が「楽陽食品」の略称ないし省略の仕方として一般的なものともみられない。したがつて、「楽食」が「楽陽食品」の略称であつて原告楽陽食品の商号と類似するということはできない。

2 また、原告楽陽食品の商品、営業の表示については、前記一2でみたとおりであつて、その表示の要部はいずれも「楽陽」、「楽陽軒」であり、他方、被告楽食商事の商品、営業の表示は前記四1のとおりであつて、その表示の要部は「楽食」であるから、前記1と同様の理由により、両者は類似しない。

3 次に、原告楽陽食品の商号と被告楽陽軒の商号との類似性について判断する。

前記のとおり、原告楽陽食品の商号の要部は「楽陽」であり、被告楽陽軒の商号の要部は「楽陽軒」である。これらは、「軒」の文字、発音の有無によつて異なるのみであるが、右「軒」は食品とりわけ中華食品関係の業種を示す一般的な表示であり、商号を識別する機能を有するものではない。したがつて、被告楽陽軒の商号は同原告のそれに類似するものである。

4 また、原告楽陽食品の商品、営業表示の要部は前記のとおり「楽陽」、「楽陽軒」であり、他方、被告楽陽軒の商品、営業表示は前記四2のとおりであつて、その主要部分は「楽陽軒」とみるべきであるから、右3と同様の理由により、両者の商品、営業表示は類似する。

六 以上を要するに、被告楽食商事の商号、商品表示、営業表示は原告楽陽食品のそれと類似せず、被告楽陽軒の商号、商品表示、営業表示は同原告のそれと類似するものである。

したがつて、原告楽陽食品の被告楽食商事に対する不正競争防止法に基づく請求の趣旨1ないし3項の各請求(商号、商品表示、営業表示の各使用差止、商号抹消、損害賠償)は、その余の点を検討するまでもなくいずれも理由がない。

七 そこで、進んで、被告楽陽軒主張の商標権行使の抗弁につき検討する。

1 保坂が昭和五五年九月八日黒田宇一から「楽陽軒」の商標権を譲受けたことは当事者間に争いがなく、更に、原本の存在及び成立に争いのない乙第四号証の一ないし四、第三六号証の一及び二、成立に争いのない乙第三三号証、前記保坂弘次本人尋問の結果とこれにより成立を認める乙第一六号証の一及び二(但し、官署作成部分については成立に争いがない。)、有限会社埼玉楽陽軒の覆い紙であることが認められる乙第二五号証、株式会社横浜楽陽軒の包装紙であることが認められる乙第二六号証、前記稲生英司本人尋問の結果によれば、次の事実が認められ、他に右認定を左右するに足りる証拠はない。

(一) 梶原盛弘は、横浜市戸塚区今井町において有限会社楽陽軒(被告楽陽軒とは別個の会社である。)を経営していたが、昭和四三年倒産したため、稲生が原告楽陽軒を設立して右会社のシウマイの製造販売を引継いだ。

しかし、その直後石井某からクレームがあつたので、稲生は横浜市戸塚区原宿町に工場を移転し、原告楽陽食品の目的を変更してシウマイの製造販売を継続した。

(二) 稲生は、当初商品表示には「楽陽食品」を使用していたが、昭和四五年ころから「楽陽軒」の表示を使用し始めたところ、昭和四七年に前記梶原盛弘の弟梶原和明から右表示の使用の中止を求められた。

他方、前記今井町では現在、株式会社横浜楽陽軒(以下、「横浜楽陽軒」という。)がシウマイの製造販売を行つている。

(三) ところで、前記梶原和明は、昭和四五年一一月二五日「楽陽軒」の表示につき商標登録を得て有限会社埼玉楽陽軒を経営し、また、横浜楽陽軒に対し、昭和四八年一〇月一一日右商標権の通常使用権の許諾を与えた(同四九年五月一〇日登録)。

その後、右商標権は昭和五四年三月一九日前記黒田に譲渡されたが、右黒田は資金繰りに困つて保坂に右商標権の譲渡を申し入れ、昭和五五年五月二六日保坂が右商標権の譲渡を受けた(同年九月八日登録)。

(四) 保坂は右商標権を使用する必要がないのでしばらくそのままにしていたが、右権利の失効を免れるために、東北地方に限つて右商標を使用することとし、更に「楽陽軒」の表示を商号に用いて前記のとおり被告楽陽軒を設立し、かつ、昭和五八年一二月一〇日被告楽陽軒に前記商標権を譲渡した(同五九年四月二三日登録)。

また、被告楽陽軒は、昭和六二年七月二三日「元祖楽陽軒」の表示について商標登録を得た(同五六年一月二八日出願)。

(五) 右「楽陽軒」の商標登録による指定商品はシウマイであり、「元祖楽陽軒」の商標登録による指定商品は加工食品であるが、被告楽陽軒は、前記四2のとおり、その販売するシウマイの容器包装等に商品の表示として右「楽陽軒」及び「元祖楽陽軒」を、営業の表示として「有限会社楽陽軒」を、それぞれ使用している。

2 以上によれば、被告楽陽軒による「楽陽軒」、「元祖楽陽軒」の表示の使用は商標権に基づくものであり、右は、右認定事実から窺われるように、正当な権利の行使ということができる。

よつて、被告楽陽軒の抗弁は理由があるから、原告楽陽食品の同被告に対する不正競争防止法に基づく請求(商号、商品表示、営業表示の各使用差止、商号登記抹消)は理由がない。

(原告楽陽軒の請求について)

一 請求原因1(一)のうち、原告楽陽軒の商号、設立年月日、会社の目的については当事者間に争いがない。

二 原告楽陽軒の商品表示、営業表示について

原告楽陽軒については、本件全証拠によつても同原告が「楽陽軒」、「元祖楽陽軒」、「楽陽食品株式会社」、「株式会社楽陽軒」、「楽食」等の各表示を使用していることを認めることはできず、他に、同原告がいかなる商品表示ないし営業表示を使用しているのかを示す証拠もない。なお、成立に争いのない甲第一九号証、前記稲生英司本人尋問の結果とこれにより成立を認める甲第一三号証によれば、現在原告楽陽軒は営業活動を行つていることになるが、その真偽はともかく、右事実だけでは、同原告が商品ないし営業を示す表示としてどのようなものを使用しているか明らかではない。

三 したがつて、原告楽陽軒の被告らに対する不正競争防止法に基づく請求の趣旨1、2項記載の各請求は、その余の点を判断するまでもなく、いずれも理由がない。

第二 商法に基づく請求について

一 原告楽陽食品の被告楽食商事に対する商法に基づく請求(商号登記の抹消、損害賠償)について、同原告の商号が同被告の商号と類似するものとはいえないことは前述のとおりであるから、右請求は理由がない。

二 原告楽陽軒の被告楽食商事に対する商法に基づく請求(商号登記の抹消)を検討する。

原告楽陽軒の商号と被告楽食商事の商号とを比較すると、同原告の商号の要部は「楽陽軒」であり、他方、同被告のそれは「楽食」であり、両者は第一文字である「楽」が共通ではあるが、前記第一の五1と同様の理由により、両者は類似するものとはいえない。したがつて、原告楽陽軒と被告楽食商事の商号も類似しないから、同原告の右請求は理由がない。

三 原告らの被告楽陽軒に対する商法に基づく請求(商号登記の抹消)については、被告楽陽軒の商号が原告楽陽食品のそれに類似することは前記第一の五3に認定のとおりであり、また、同被告の商号が原告楽陽軒のそれに類似することも右説示と同一の理由により認められるから、進んで、不正競争目的について判断する。

1 請求原因4(一)(1)(保坂の職歴)、同(2)(業務提携契約)の各事実及び同(3)のうち、保坂が原告楽陽食品に在職中に被告楽食商事を設立してシウマイの製造販売を開始したこと、同人が「楽陽軒」の商標権を譲受けたことについては当事者間に争いがない。

2 前記乙第一八ないし第二一号証の各一及び二、第二七、第二八号証、検乙第四号証の一及び二、第五号証の一、原本の存在及び成立に争いのない甲第九、第一〇号証、第一八号証の一ないし五、乙第一ないし第三号証の各一、第五ないし第一四号証の各一、第一五号証の一及び二、第二九ないし第三二号証、成立に争いのない乙第一、第二号証の各二、第三号証の二及び三、第五号証の二及び三、第六号証の二、第七号証の二及び三、第八号証の二ないし四、第九号証の二及び三、第一〇号証の二及び三、第一一ないし第一四号証の各二、第一五号証の三及び四、シウマイの容器の写真であることについて争いのない乙第二二号証、第二三号証の一及び二、被告楽食商事のシウマイ容器であることについて争いのない検乙第三号証の一、原告楽陽食品のシウマイ容器であることについて争いのない検乙第三号証の二、第五号証の二、証人小林意志一の証言、前記保坂弘次本人尋問の結果によれば、保坂は、原告楽陽食品の営業部長として同原告の営業の中心的存在として営業活動を行つてきたが、昭和五一年ころ独立を決意して被告楽食商事を設立したこと、右小林もそれに伴い同原告とのシウマイの業務提携契約を解消して同被告にシウマイを納入し始めたこと、保坂はそのシウマイの容器に自己が原告楽陽食品に在職中に考案した赤箱を使用したところ、同原告からクレームがあつたので直ちに使用を中止したこと、この外に被告楽食商事が原告楽陽食品の商品を模倣したことはないこと、むしろ、同原告の側で、同被告の商品を模倣してきており、同被告の側からしばしばクレームをつけていること、保坂は、被告楽食商事に関しては「楽陽食品」ないし「楽陽軒」とは類似しない商号、商標を、いずれも商標登録を得たうえで使用していることが認められ、また、前記のとおり、保坂は被告楽陽軒の商標を、正当な商標権に基づいて使用し、その便宜のために同一名の商号の被告楽陽軒を設立したのであるから、以上の事実に鑑みると、保坂には、不正競争の目的があつたものと認めることはできない。

なお、保坂が原告楽陽食品在職中に、かつ、業務提携契約が存続中に被告楽食商事を設立したことは当事者間に争いがなく、前記甲第一八号証の一ないし五によれば、被告楽食商事は原告楽陽食品の販売先と同一の会社にシウマイを販売しているが、右事実だけから、保坂と小林との共謀による不正競争目的を認めることはできない。よつて、原告らの被告楽陽軒に対する商法に基づく請求も理由がない。

第三 結論

以上の次第で、原告らの請求はいずれも理由がないから、これを棄却する。

〔編註〕 本件における当事者の主張は左のとおりである。

第一 当事者の求めた裁判

一 請求の趣旨

1 被告楽食商事株式会社及び同有限会社楽陽軒は、いずれも、その製造にかかるシウマイの容器包装及び広告に「楽食商事株式会社」、「有限会社楽陽軒」の商号及び「元祖楽陽軒」、「楽陽軒」及び「楽食」の表示を使用し、またはこれらを使用したシウマイを販売、拡布してはならない。

2 原告らに対し、被告楽食商事株式会社は、「楽食商事株式会社」の商号につき、同有限会社楽陽軒は「有限会社楽陽軒」の商号につき、それぞれ商号登記の抹消手続をせよ。

3 被告楽食商事株式会社は、原告楽陽食品株式会社に対し、金一〇〇〇万円及びこれに対する昭和五八年七月一五日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

4 訴訟費用は被告らの負担とする。

5 第3項につき仮執行宣言

二 請求の趣旨に対する答弁

主文同旨

第二 当事者の主張

一 請求原因

1 原告らの商号、商品表示、営業表示

(一) 原告楽陽食品株式会社(以下「原告楽陽食品」という。)は、昭和三八年一〇月三日設立され、畜産物、水産物、農産物の加工及びこれらを原料とする食料品の製造並びに販売等を業とする会社である。

原告株式会社楽陽軒(以下、「原告楽陽軒」という。)は、昭和四三年四月二三日設立され、惣菜の製造及び販売等を業とする会社である。

原告楽陽食品及び同楽陽軒の代表取締役は、いずれも稲生英司(以下、「稲生」という。)である。

原告楽陽軒は、同楽陽食品と一体となつてその営業活動を行い、主としてその製造部門の一部をなしている。

原告らは、中華惣菜の中でもチルドタイプのシウマイを主として製造、販売している。

(二) 原告らは、その商品またはその営業を示すものとして、「楽陽食品株式会社」及び「株式会社楽陽軒」の各商号並びにそれらの略称である「楽食」、「楽陽軒」、「元祖楽陽軒」の表示を使用している。

2 原告らの表示の周知性

原告らの前項記載の各表示は、原告らの商品、営業を示すものとして、昭和四五年ころから関東、中京、関西において、取引者及び需要者の間に広く認識され、更に、同五〇年ころには全国的に広く認識されるに至つたものであり、特に「楽陽軒」の名を付したチルドタイプのシウマイは、日本国内において周知著名なものである。即ち、

(一) 原告楽陽食品は、昭和四四年ころから、中華惣菜、特にチルドタイプのシウマイを主として製造販売してきた。その当時は、横浜市戸塚区原宿町に本社兼工場を有し、製品の販売先は関東、中京、関西に及び、同五一年ころにはシウマイの売上が年商一二億円にのぼつていた。その後、別紙営業所一覧表及び別紙工場一覧表のとおり全国に営業所及び工場を開設し、現在、年商は八〇億円に及んでいる。

(二) 更に、原告らは、設立直後から新聞等において、また、昭和五五年ころからテレビ、ラジオ等において、その製品の広告、宣伝を行い、各年度の広告宣伝費は次のとおりである。

昭和五五年度 一億〇四五二万七五〇四円

同 五六年度 一億〇六四三万五三一五円

同 五七年度 一億〇五三三万三〇三二円

同 五八年度(但し、一月から六月まで) 一億八九〇〇万八一〇八円

(三) 原告楽陽食品は、昭和四八年八月一五日「楽陽食品株式会社」なる商標を出願(出願番号四八―一三〇六二三)し、右商標については同五〇年一二月八日出願公告(昭五〇―七五七九八)がなされ、更に同五一年一〇月一日(商標登録(登録番号一二二二七四一)された。

3 被告らの商号、商品表示及び営業表示の類似性並びに営業を害する虞れ

(一) 被告楽食商事株式会社(以下、「被告楽食商事」という。)は昭和五一年五月一八日に、被告有限会社楽陽軒(以下、「被告楽陽軒」という。)は同五八年六月一日に、それぞれ設立された会社であり、いずれも代表取締役は保坂弘次(以下、「保坂」という。)である。

被告らは、いずれも中華惣菜の製造販売を目的とする会社である。

(二) 被告楽食商事の商号「楽食商事株式会社」は、原告楽陽食品の商号である「楽陽食品株式会社」に類似する。

同被告は、右商号及び「楽陽軒」、「元祖楽陽軒」の表示を、その製造にかかるシウマイの容器包装及び広告に使用し、また、これらを包装に付したシウマイを販売しており、この結果、同被告の商品ないし営業施設、活動が右原告の商品、営業上の施設、又は活動であるとの誤認混同を生じている。

(三) 被告楽陽軒の商号「有限会社楽陽軒」は原告楽陽軒の商号と同一ないし類似である。

同被告は、右商号及びこれと類似する「元祖楽陽軒」、「楽陽軒」の表示を、その製造にかかるシウマイの容器包装及び広告に使用し、また、これらを包装に付したシウマイを販売しており、この結果、同被告の商品ないし営業施設、活動が右原告の商品、営業上の施設、又は活動であるとの誤認混同を生じている。

(四) 右(二)、(三)により、原告らは、その営業上の利益を害されている。

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