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横浜地方裁判所 昭和58年(行ウ)19号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【説明】

「一 請求の原因

1 被告は、原告に対し、昭和五七年九月一日付けで、別紙物件目録記載の土地(以下「本件土地」という。)の共有持分二分の一(以下「本件共有持分」という。)について、税額を四〇万五一六〇円とする本件賦課決定をした。

原告は、同年一〇月二五日、本件賦課決定を不服として、神奈川県知事に対し、審査請求をしたところ、同知事は、昭和五八年四月一一日付けで、右審査請求を棄却する旨の裁決をした。

2 しかしながら、本件賦課決定は、原告が昭和五七年三月一日、訴外小林隆(以下「隆」という。)から、本件共有持分を取得したとしてなされたものであるところ、原告は、右日時に隆から右持分を取得したものではないから、本件賦課決定は違法である。

よつて、原告は、本件賦課決定の取消しを求める。

二 請求の原因に対する認否

1 請求の原因1の事実は認める。

2 同2のうち、被告が、昭和五七年三月一日に原告が隆から本件共有持分を取得したとして本件賦課決定をしたことは認めるが、その余の事実は否認する。

三 被告の主張

隆は、昭和三五年一〇月七日、訴外東急不動産株式会社(以下「東急不動産」という。)から、その所有する本件土地を買い受け、同五七年三月一日、原告に対して、本件共有持分を贈与したものである。

したがつて、本件賦課決定には原告主張の違法は存しない。

四 被告の主張に対する認否及び反論

1 被告の主張のうち、東急不動産がもと本件土地を所有していたこと及び昭和三五年一〇月七日、隆が同会社から同土地を隆名義で買い受けたことは認めるが、その余の事実は否認する。

2 本件土地は、外形的には、東急不動産から隆が単独で買い受けたことになつているが、真実は、原告が、右売買代金九一万七一三六円のうち五〇万円を出指し、隆と共同して、本件土地を買い受けたものである。

3 仮に、右事実が認められないとしても、原告と隆は隆が東急不動産から本件土地を買い受けた場合には、同土地を両名の共有とする旨合意していた。

したがつて、隆が昭和三五年一〇月七日に東急不動産から本件土地を買い受けると同時に、原告は、本件共有持分を取得したものである。

【判旨】

一請求の原因1の事実及び同2のうち、原告が昭和五七年三月一日、隆から本件共有持分を取得したとして本件賦課決定がなされたことは、いずれも当事者間に争いがない。

二被告は、隆が東急不動産から本件土地を買い受け、その所有権を取得した旨主張し、原告は隆と共同して買い受け、本件共有持分を取得した旨抗争するので、判断する。

1 前記争いのない事実に加え、<証拠>によれば、次のとおりの事実が認められる。

隆は、原告の母の再婚の夫であり、昭和三五年ころは東京都交通局に勤務していたこと、東急不動産は、同三五年九月ころ、その所有する本件土地を含む一帯の土地上に建物を建て、いわゆる土地付き建物を分譲するに当たり、申込者が多数のところから、抽選でこれを分譲する方式をとつたこと、同会社による分譲申込受付に対し、隆の申込みが当選して同人が本件土地、同土地上の建物(以下「本件建物」という及び附帯施設(以下「本件土地等」という。)を代金一五二万九四三六円(ただし、土地分は九一万七一三六円、建物分は五四万円)で分譲を受けられることとなつたものであり、原告が同会社に対し、本件土地のみは隆との共同買受けである旨述べたことはなく、同会社としても申込名義人以外の者が買受人となることは認めていなかつたこと、同三五年一〇月七日に作成された本件土地等についての東急公庫融資住宅分譲契約書(甲第二号証)には、買受人欄に隆の署名捺印があること、同契約書を取り交わす際には隆とその妻が立ち会つたが、原告はこれに立ち会つていなかつたこと、東急不動産から隆に対し、同三六年三月二九日受付の同三五年一〇月三日売買を原因とする本件土地等の所有権移転登記が経由されていること、同会社から本件土地等を買い受けたことによる不動産取得税及び固定資産税は隆名義で納められてきたこと、同四九年ころ国道を拡幅するに当たり、本件土地の一部がその用地として買収された際、横浜市から隆に対して補償金が交付され、隆がこれを取得していたこと、隆が同三六年五月二四日、住宅金融公庫から五三万円を借り受けるにつき本件土地等に抵当権を設定したほか、同人が同四九年三月二九日、訴外株式会社横浜銀行(以下「横浜銀行」という。)から一〇〇万円を借り受けるについても同土地等に抵当権(以下「第一抵当権」という。)を設定し、更に、同人の訴外有限会社松屋に対する債務についても、同五七年一月一一日、同土地に極度額を二〇〇万円(同年二月一〇日、三〇〇万円に変更)とする根抵当権(以下「本件根抵当権」という。)が設定されたが、これらはいずれも隆の一存でなされたこと、原告が同四九年三月二九日に一八〇万円、同五〇年三月一四日に一〇〇万円をそれぞれ横浜銀行から借り受け、本件土地等に抵当権(以下、それぞれ「第二抵当権」、「第三抵当権」という。)がそれぞれ設定された際にも、隆がこれに同意し、物上保証人となつたものであること、しかも、右第一ないし第三抵当権は、本件土地上に原告名義の鉄筋コンクリート造二階建の建物を建築するために設定されたものであるが、右新築建物が居住し、本件建物には原告ら家族が居住していること、以上の事実が認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

右認定事実によれば、隆が東急不動産から本件建物のみならず、本件土地をも買い受け、これが所有権を取得したものと認めるのが相当である。

もつとも、<証拠>に認められる甲第三号証の一、二及び原告本人尋問の結果によれば、原告は、前記東急不動産の土地付建物の分譲に当たり、本件土地等とは別口の土地付建物の分譲申込みをしたが当選しなかつたこと、昭和三五年一〇月六日、原告名義で訴外芝信用金庫から、同金庫に対する二〇万円の定期預金に質権を設定し、隆及び訴外前川恒吉を連帯保証人として、四〇万円を借り受け、原告の手持金一〇万円と合わせて合計五〇万円が本件土地等の購入代金一五二万九四三六円の一部に充当されたこと、隆が東急不動産から買い受けた本件に原告も居住してきたことを認めることができ、右認定に反する証拠はない。

しかしながら、原告が本件土地等の購入代金の一部を負担し、かつ、購入した家屋に居住したからといつて、そのことだけから隆と並んで売買契約の当事者であり、東急不動産との本件土地等の売買契約に基づいて本件土地のみの共有持分を取得したものとは認めることができない。したがつて、この点についての原告の主張は採用することができない。

更に、原告は、隆が東急不動産から本件土地を買い受けた場合には、これを原告と隆の両名の共有とする旨の合意があつた旨主張するが、かかる合意の存在を認めるに足りる証拠がないのみならず、隆が東急不動産から本件土地等についての所有権移転登記を経由して以来二十有余年にわたり、原告主張の合意に基づく登記手続さえも放置し、これを顧みなかつたことは原告の主張自体からも明らかであることからしても、原告の右主張は採用することができない。

三被告は、隆が昭和五七年三月一日原告に対して本件共有持分を贈与した旨主張するので、判断する。

前記認定事実に加え、前掲甲第一号証、原告本人尋問の結果によれば、隆が東急不動産から本件土地等を買い受けた後は、同人は本件土地等の所有者として振る舞い、これについては原告も気にしていなかつたところ、原告は、隆が近時、賭事に凝り、高利貸から借金をし、本件土地について本件根抵当権を設定したことから、隆が本件土地を失つてしまうのではないかとの危機感を抱くようになり、他の者と相談した結果、隆が本件土地等を購入するに当たり、原告の手持金一〇万円と原告名義の借受金四〇万円が右代金一五二万九四三六円の支払の一部に充当されており、右代金額のうち本件土地分は九一万七一三六円であつたことから、原告が本件共有持分を当初から取得したものとし、真正なる登記名義の回復を原因とする登記手続を経由した方がよい旨の助言を受け、隆の同意を得た上、本件土地につき、昭和五七年三月一日受付真正なる登記名義の回復を原因とする隆から原告に対する持分二分の一の所有権一部移転登記が経由されたこと、したがつて、原告は本件建物が隆の所有であることについては全く疑問をもつていなかつたことが認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。

右認定事実によれば、隆は昭和五七年三月一日原告に対し本件共有持分を贈与したものと認めるのが相当である。

したがつて、被告の右主張は理由があるものといわざるを得ない。

四以上によれば、結局、本件賦課決定に原告主張の違法は存しない。

よって、原告の本訴請求は理由がないからこれを棄却する。

(古館清吾 吉戒修一 須田啓之)

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