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横浜地方裁判所 昭和60年(ワ)1973号 判決 1991年9月13日

第一、第二事件原告

小宮利雄

第一、第二事件原告

小宮義正

右両名訴訟代理人弁護士

川島仟太郎

第一事件被告

稲嶺盛一

右訴訟代理人弁護士

山内忠吉

第一事件被告

鈴木竹蔵

第二事件被告

秋元義明

右両名訴訟代理人弁護士

箕山洋二

第二事件被告

秋元武

右訴訟代理人弁護士

長谷川武雄

右訴訟復代理人弁護士

中野博士

第二事件被告

石川寿美子

右訴訟代理人弁護士

佐伯剛

右訴訟復代理人弁護士

小賀坂徹

主文

一  原告らの請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告らの負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告秋元義明は、原告らから金七六万二七九二円又は裁判所が決定する額の金員の支払を受けるのと引換えに、原告らに対し、別紙第一物件目録(二)記載の建物を収去して別紙第二物件目録記載(二)記載の土地を明渡せ。

2  被告秋元武は原告に対し、別紙第一物件目録(三)記載の建物を収去して別紙第二物件目録(二)記載の土地を明渡せ。

3  被告秋元義明及び同秋元武は原告らに対し、連帯して昭和六〇年七月一日から1、2項の土地の明渡済みまで一か月金五万円の割合による金員を支払え。

4  被告稲嶺盛一は原告らに対し、別紙第一物件目録(一)記載の建物を収去して別紙第二物件目録(一)記載の土地を明渡し、かつ、昭和六〇年七月一日から右明渡済みまで一か月金三万円の割合による金員を支払え。

5  被告石川寿美子は、原告らから金五四万七一〇六円又は裁判所が決定する額の金員の支払を受けるのと引換えに、原告らに対し、別紙第一物件目録(五)記載の建物を収去して別紙第二物件目録(四)記載の土地を明渡し、かつ、昭和六〇年七月一日から右明渡済みまで一か月金五万円の割合による金員を支払え。

6  被告鈴木竹蔵は原告らに対し、別紙第一物件目録(四)記載の建物を収去して別紙第二物件目録(三)記載の土地を明渡し、かつ、昭和六〇年七月一日から右明渡済みまで一か月金四万五〇〇〇円の割合による金員を支払え。

7  訴訟費用は被告らの負担とする。

8  仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

主文同旨

第二  当事者の主張

(被告秋元義明・同秋元武・同稲嶺盛一関係)

一  請求原因

1(一) 原告らの先代訴外小宮藤吉(以下「藤吉」という。)は、別紙第二物件目録記載(一)ないし(四)の各土地(以下「本件各土地」という。)を所有していた。

(二) 藤吉は昭和四四年一月六日死亡し、藤吉の長男である訴外小宮藤義(以下「藤義」という。)が本件各土地の所有権を相続により取得した。

(三) 藤義は昭和六〇年七月一日原告らとの間に、藤義が原告らに本件各土地の持分各二分の一を贈与する旨合意した(以下右の合意を「本件贈与契約」という。)。

2 本件(一)賃貸借契約

藤吉は、昭和四〇年五月一日、被告秋元義明(以下「被告義明」という。)との間で、別紙第一物件目録(一)記載の土地(以下「本件(一)の土地」という。)及び同目録(二)記載の土地(以下「本件(二)の土地」という。)について、次のとおりの約定の賃貸借更新契約を締結した(以下「本件(一)賃貸借契約」という。)。

目的 建物所有

期間 昭和四〇年五月一日から同六〇年六月三〇日まで二〇年間

賃料 一か月金四〇〇〇円(二年毎に改定)

3 無断転貸による解除

(一) 被告義明は被告稲嶺盛一(以下「被告稲嶺」という。)に対し、本件(一)の土地を転貸した。

(二) 被告義明は、昭和四二年四月ころ被告秋元武(以下「被告武」という。)に本件(二)の土地のうち北側部分を転貸した。

(三) 原告らは被告義明に対し、本件訴状をもって本件(一)賃貸借契約を解除する旨の意思表示をし、右意思表示は昭和六〇年八月一三日同被告に到達した。

4 更新拒絶

(一) 藤義は被告義明に対し、昭和五九年九月八日被告義明に到達の書面で本件(一)賃貸借契約の更新を拒絶する旨の意思表示をした。

(二) 原告らは被告義明に対し、本件(一)、(二)各土地の使用継続について遅滞なく異議を述べ、右意思表示は昭和六〇年七月六日同被告に到達した。

(三) 正当事由

右更新拒絶及び異議は、いずれも次のような正当事由に基づくものである。

(1) 原告側の事情

(イ) 原告小宮利雄の自己使用の必要性

原告小宮利雄(以下「原告利雄」という。)は、居宅を保有せず、約二三年間にわたり兄藤義方の六畳一間の納屋で不自由な生活をしてきたが、既に満七〇歳となり体力の衰えも著しく、今後同様の生活を続けることには限界があるうえ、平成元年七月一〇日婚姻したので、家族生活の拠点として、本件各土地上に四階建の共同住宅を建設し、これを賃貸マンションとし、一階に居宅兼管理室を設けて居住する予定である。

原告利雄にとって、本件各土地が唯一の財産であり、老後の生活を維持するためには、右賃貸マンションからの賃料収入によるほか手段がない。

なお、原告利雄は被告らに対し、被告らの生活拠点の補償として、右マンションに優先的な順位及び有利な条件で住み替えを認めることを提案し、被告らの利用条件についても柔軟な対応を惜しまない用意がある。

(ロ) 長期間にわたる明渡請求

原告利雄は被告らに対し、昭和二一年八月ころから四〇年以上にわたり、自己利用のため本件各土地の明渡請求を続けてきた。

すなわち、原告利雄は被告義明及び被告石川寿美子(以下「被告石川」という。)に対し、昭和四〇年五月一日の賃貸借期間満了の際、本件各土地の明渡を請求したが、その際、被告らが最後の更新を懇願し、「原告らに必要ある場合はいつでも本件各土地を明渡す。」旨の誓約書(以下「本件誓約書」という。)を作成したので、やむなく本件(一)、(二)各賃貸借契約を更新したものであり、昭和四九年一二月七日、本件誓約書に基づき右被告らに対し本件各土地の明渡を請求し、昭和五一年一一月から一二月にかけても同様の請求を続けた。

(2) 被告義明側の事情

(イ) 被告義明

被告義明は、住民票を本件各土地の所在地に置いたまま、昭和五二年以降、横浜市中区寿町三丁目所在の同被告所有建物に家族全員で居住して大衆食堂を経営し、本件(二)の建物のほかに、横浜市中区寿町及びその近隣に土地・建物を所有している。

また、被告義明は本件(一)の土地を被告稲嶺に、本件(二)の土地の北側を被告武にそれぞれ無断転貸しているほか、本件(二)建物を第三者に賃貸しているから、被告義明にとって本件(二)の土地は単に収益を挙げるためのものであり、生活を維持する自己使用の必要性はない。

(ロ) 被告武

被告武は、横浜市南区万世町一丁目に土地・建物を所有して、同所に居住し、本件(二)の土地上の共同住宅は第三者に賃貸して収益を得る目的でのみ使用されている。

また、被告武は、昭和二二、三年ころ地代の徴収に訪れた原告利雄を短刀で脅したり、昭和五〇年一月二六日には領収書を原告利雄から強引に奪取してこれを破棄したりする等、賃貸人に対して極めて粗暴かつ背信的な言動がある。

(3) 更に、右の事情に加えて、原告らは平成三年七月一二日の本件第四一回口頭弁論期日において、更新拒絶の正当事由を補完する立退料として、これまでの長年に亘る低賃料・更新料不払・本件誓約書違反等の事実を考慮し、主として建物収去の補償費として家屋課税台帳記載の各評価額を基準として、被告義明に対し金七六万二七九二円又は裁判所が決定する額の金員を提供する旨申し出た。

5(一) 被告稲嶺は、昭和三六年七月ころから、本件(一)の土地上に本件(一)の建物を所有して本件(一)の土地を占有している。

(二) 被告武は、昭和四二年四月から、本件(二)の土地上に本件(三)建物を所有して本件(二)の土地を占有している。

6 本件各土地の昭和六〇年七月一日以降の賃料相当額は、本件(一)の土地が一か月金三万円、本件(二)の土地が一か月金五万円である。

7 よって、原告らは、

(一) 被告義明に対し、本件(一)賃貸借契約の終了に基づき、原告らから金七六万二七九二円又は裁判所が決定する額の金員の支払を受けるのと引換えに、本件(二)建物を収去して本件(二)の土地の明渡を求めるとともに、本件(一)賃貸借契約終了の日の翌日である昭和六〇年七月一日から明渡済みまで被告武と連帯して一か月五万円の割合による損害金の支払を、

(二) 被告武に対し、本件(二)の土地の所有権に基づき、本件(三)建物を収去して本件(二)の土地の明渡を求めるとともに、不法占有に基づく損害賠償として、占有開始の後の日である昭和六〇年七月一日から右明渡済みまで被告義明と連帯して一か月金五万円の割合による損害金の支払を、

(三) 被告稲嶺に対し、本件(一)の土地の所有権に基づき本件(一)建物を収去して本件(一)の土地の明渡を求めるとともに、不法占有に基づく損害賠償として、占有開始の後の日である昭和六〇年七月一日から右明渡済みまで一か月三万円の割合による損害金の支払を、

それぞれ求める。

二  請求原因に対する認否

(被告義明の認否)

1  請求原因1の事実のうち、(一)、(二)は認め、(三)は不知。

2  同2のうち、契約日及び契約当事者の点、賃貸期間が二〇年であるとの点、及び目的・賃料額の点は認める。被告義明と藤吉は、昭和四〇年五月五日、藤義と被告義明・同武両名の先代訴外亡秋元元次郎(以下「元次郎」という。)との間の賃貸借契約を更新する旨合意したものであるが、その際、被告義明は、元次郎の遺産分割協議が終了するまでの間における相続人代表の立場で右契約をしたものである。

また、本件(一)・(二)各土地の賃借人は、以下のとおり、被告義明及び被告武の二名である。

(一) 藤吉は昭和二二年ころ元次郎に対し土地区画整理法に基づく換地前の土地で本件(一)、(二)の各土地に該当する部分(以下「従前地(一)、(二)」という。)を建物所有の目的で賃貸し、これを引き渡した。

(二) 元次郎は昭和三〇年一一月一四日死亡し、かつ、昭和四〇年一〇月二九日、元次郎の相続人間に遺産分割協議が成立したことにより、被告義明及び同武は本件(一)、(二)の各土地の借地権を各二分の一の割合で相続した。

3  同3の事実について

(一) (一)の事実は認める。

(二) (二)の事実は否認する。

被告武は、本件(三)土地の賃借人の一人であり、被告義明からの転借人ではない。

4  同4のうち、(一)、(二)の事実は認め、その余は争う。

5  同5の事実は認める。

6  同6の事実は否認する。

(被告武の認否)

1  請求原因1の事実のうち、(一)、(二)は認め、(三)は不知。

2  同2の事実は否認する。

3  同3(二)の事実は否認する。

被告武は、本件(二)土地の賃借人の一人であり、被告義明からの転借人ではない。

4  同4のうち、(一)、(二)の事実は認め、その余は争う。

5  同5(二)の事実は認める。

6  同6の事実は否認する。

(被告稲嶺の認否)

1  請求原因1の事実のうち、(一)、(二)は認め、(三)は不知。

2  同2の事実は認める。

3  同3(一)の事実は認める。

4  同4は争う。

5  同5(一)の事実は認める。

6  同6の事実は否認する。

本件(一)の土地の賃料相当額は、一か月金二九九〇円である。

三 抗弁

1  通謀虚偽表示(被告秋元義明・同武関係)

藤義と原告らは、本件贈与契約締結にあたり、借地法上の正当事由を作出するために、真実には贈与の意思がないにもかかわらず意思があるもののように仮装した。

2  賃貸借契約(被告武関係)

請求原因に対する被告義明の認否2(一)、(二)及3(二)のとおり、被告武も本件(一)賃貸借契約に基づき賃借権を準共有するものである。

3  転貸の承諾(被告義明・同稲嶺関係)

(一) 元次郎が昭和二二年ころ、被告盛一先代稲嶺盛重(以下「盛重」という。)に従前地(一)を転貸したことにつき、藤義はそのころ承諾の意思表示をした。

(二) 藤吉は被告義明に対し、昭和四〇年五月一日、被告義明及び被告稲嶺の本件(一)の土地についての転貸借契約を承諾する旨の意思表示をした。

4  解除権の時効消滅(被告義明・同武関係)

(一)(1) 原告らは、昭和四〇年五月五日、被告義明が被告稲嶺に対し本件(一)の土地を転貸していることを確認しながら、以後これを黙認し、何ら異議を述べなかった。

(2) したがって、昭和五〇年五月五日、被告義明のために、右無断転貸を理由とする本件(一)賃貸借契約の解除権につき消滅時効が成立した。

(二)(1) 原告らは、昭和四二年四月ころ、被告義明が被告武に対し本件(二)の土地の北側部分を転貸していることを確認しながら以後これを黙認し、何ら異議を述べなかった。

(2) したがって、遅くとも昭和五二年四月末には、被告義明のために、右無断転貸を理由とする本件(一)賃貸借契約の解除権につき消滅時効が成立した。

(三) 被告義明は、右各消滅時効を援用する。

5  正当事由の成立を妨げる事情(被告義明・同武関係)

(一) 原告側の事情について

(1) 原告利雄は、大地主である兄藤義の広大な敷地内に相応の住居を構えて居住しており、被告らを立退かせてまで本件各土地を自己使用すべき必要性はない。

また、原告利雄は、長い間結婚せずに小宮家の家業である植木職を手伝ってきたものであるから、老後の生活については、兄の藤義に対し扶養を請求することが可能である。

(2) 原告らの賃貸マンション建設計画は、原告らの資産・経験・事業規模等に鑑みると実現性の低い計画であり、単なる訴訟対策に過ぎない。

(二) 被告義明側の事情

(1) 被告義明について

被告義明は、昭和四六年から横浜市中区寿町で食堂を経営し、子供が成長するまでの間便宜的に右食堂の二階に居住してきたが、右食堂は著しく劣悪な環境にあり、また親子四人で生活するには狭いことから、本件(三)の建物に移転するため、現在本件(三)の建物の賃借人との間で明渡交渉中である。

したがって、被告義明にとって本件(三)の土地の自己使用の必要性は非常に高いものである。

(2) 被告武について

被告武は、昭和六〇年一一月二七日以降、本件(四)の建物(共同住宅)の一階に居住し二階を他に賃貸している。被告武は持病の心臓病のため軽労働しかできず収入が乏しいので、被告武の生計を支えるには本件(四)の建物の賃料月額金六万五〇〇〇円が必要不可欠である。

万世町の建物は長男寛の居住用で狭小であり、交通騒音及び日照等の点で劣悪な居住環境にあるため、健康対策上からも、被告武は環境の良い本件(四)の建物に居住する必要がある。また、被告武は万世町の建物の一階店舗部分を他に賃貸しているが、右賃料は右建物のローンの返済に充当されるので、被告武の実質的収入にならない。

したがって、被告武にとって本件(三)の土地使用の必要性は極めて大きい。

四 抗弁に対する認否

1  抗弁1の事実は否認する。

2  同2の事実は否認する。

藤吉が本件(一)賃貸借契約を締結したのは被告義明であり、被告武は右契約の保証人に過ぎない。

3(一)  同3の(一)、(二)の事実は否認する。

原告利雄は被告稲嶺に対し、本件(一)の土地の使用を承諾したことはない。

4  同4の事実について

(一) (一)の(1)の事実は否認する。(2)は争う。

(二) (二)の(1)の事実は否認する。(2)は争う。

5  同5は争う。

(被告鈴木竹蔵・同石川寿美子関係)

一  請求原因

1 被告義明・同武・同稲嶺関係の請求原因1のとおり

2 本件(二)賃貸借契約

藤吉と被告石川は、昭和四〇年五月一日、別紙第一物件目録(三)記載の土地(以下「本件(三)の土地」という。)及び同目録(四)記載の土地(以下「本件(四)の土地」という。)について、以下の約定で賃貸借更新契約を締結した(以下「本件(二)賃貸借契約」という。)。

目的 建物所有

期間 昭和四〇年五月一日から同六〇年六月三〇日まで二〇年間

賃料 一か月金二〇四〇円(二年毎に改定)

3 無断転貸による解除

(一) 被告石川は被告鈴木竹蔵(以下「被告鈴木」という。)に、対し本件(三)の土地を転貸した。

(二) 原告らは被告石川に対し、本件訴状をもって本件(二)賃貸借契約を解除する旨の意思表示をし、右意思表示は昭和六〇年八月一三日同被告に到達した。

4 更新拒絶

(一) 藤義は被告石川に対し、昭和五九年九月八日到達の書面で本件(二)賃貸借契約の更新を拒絶する旨の意思表示をした。

(二) 原告らは被告石川に対し、本件(三)、(四)の各土地の使用継続について内容証明郵便により遅滞なく異議を述べ、右意思表示は昭和六〇年七月六日同被告に到達した。

(三) 正当事由

(1) 原告側の事情

被告義明・同武・同稲嶺関係の請求原因5(一)のとおり。

(2) 被告石川側の事情

(イ) 被告石川

被告石川は、現在八六歳であるが、昭和五〇年七月以降は鎌倉市内の老人ホームに夫と共に入所し、昭和五七年一一月七日以降は東京都新宿区上落合の娘方に居住していたものであり、実際には本件(五)の建物にはほとんど居住していない。

本件(五)の建物は、被告石川の長男石川真太郎経営の会社事務所として使用されている。

(ロ) 被告鈴木

被告鈴木は、昭和五五年四月静岡県加茂郡東伊豆町稲取に七二坪の土地を購入し、昭和五七年四月二三日以降は、同地上に次男修名義の建物を建築して同所を生活の本拠地とし、本件(四)の建物には実際に居住していない。同建物は、被告鈴木の次男鈴木修の居宅として使用されている。

(3) 更に、右の事情に加えて、原告は平成三年七月一二日の本件第四一回口頭弁論期日において、更新拒絶の正当事由を補完する立退料として、これまでの長年に亘る低賃料・更新料不払・本件誓約違反等の事実を考慮し、主として建物収去の補償費として家屋課税台帳記載の各評価額を基準として、被告石川に対し金五四万七一〇六円又は裁判所が決定する額の金員を提供する旨申し出た。

5 被告鈴木は、昭和二九年四月八日から本件(四)の建物を所有して本件(三)の土地を占有している。

6 本件各土地の昭和六〇年七月一日以降の賃料相当額は、本件(三)の土地が一か月金四万五〇〇〇円、本件(四)の土地が一か月金五万円である。

7 よって、原告らは、

(一) 被告石川に対し、本件(二)賃貸借契約の終了に基づき、原告らから金五四万七一〇六円又は裁判所が決定する額の金員の支払を受けるのと引換に、本件(五)の建物の収去及び本件(四)の土地の明渡を求めるとともに、本件(二)賃貸借契約終了の日の翌日である昭和六〇年七月一日から明渡済みまで一か月金五万円の割合による損害金の支払を、

(二) 被告鈴木に対し、所有権に基づき本件(四)の建物を収去して本件(三)の土地の明渡を求めるとともに、不法占有に基づく損害賠償として、占有開始の後の日である昭和六〇年七月一日から右明渡済みまで一か月金四万五〇〇〇円の割合による損害金の支払を、

それぞれ求める。

二  請求原因に対する認否

(被告石川の認否)

1  請求原因1の事実は不知。

2  同2の事実は、契約締結の年月日を除いて認める。

被告石川と藤吉の間で本件(二)賃貸借契約が締結されたのは、昭和四二年一月一七日である。

3  同3の事実は認める。

4(一)  同4(一)、(二)の事実は認める。

(二)  同4(三)は争う。

5  同6の事実は争う。

(被告鈴木の認否)

1  請求原因1の事実のうち、(一)、(二)は認め、(三)は不知。

2  同2の事実は認める。

3  同3の事実について

(一) (一)は否認する。

(二) (二)は認める。

4(一)  同4(一)、(二)の事実は認める。

(二)  同4(三)は争う。

5  同5の事実は認める。

6  同6の事実は否認する。

三 抗弁

1  通謀虚偽表示(被告鈴木関係)

被告義明・被告武・被告稲嶺関係抗弁1のとおり。

2  賃借権の譲渡承諾(被告鈴木関係)

(一) 藤吉は宮川に対し、本件(三)、(四)の各土地を賃貸していた。

(二) 被告鈴木は、昭和二九年四月八日、宮川から本件(四)の建物を買い受けるとともに、本件(三)の土地につき借地権の譲渡を受けた。

(三) 藤吉は、右借地権の譲渡を承諾した。

3  転貸借の承諾(被告石川関係)

(一) 藤吉は被告石川に対し、昭和三一年二月一九日、本件(三)、(四)の各土地を建物所有の目的で賃貸した。

(二) 藤吉は、そのころ、被告石川の被告鈴木に対する本件(三)の土地の転貸につきこれを承諾する旨の意思表示をした。

4  解除権の消滅時効(被告鈴木関係)

(一) 原告利雄は藤吉の代理人として、昭和三一年から同三二年の間ころ、被告鈴木が本件(三)土地上に建物を所有して居住していることを確認しながら、以後これを黙認し、何ら異議を述べなかった。

(二) したがって、遅くとも昭和四二年末には、被告石川のために、前期無断転貸を理由とする本件(二)賃貸借契約の解除権につき消滅時効が成立した。

(三) 被告鈴木は、右消滅時効を援用する。

5  賃借権又は転借権の時効取得(被告鈴木関係)

(一) 被告鈴木は、昭和二九年四月八日に本件(三)の土地の占有を開始してからは、右土地の使用収益を継続し、被告石川を通じて賃料の支払をしてきたほか、原告利雄に賃貸借契約の締結を請求する等の賃借の意思に基づくことを客観的に表現する行動を取り続けてきたものであるから、右占有開始時から起算して一〇年を経過した昭和三九年四月八日、被告鈴木のために本件(三)の土地の賃借権又は転借権の取得時効が完成した。

(二) 仮に、被告鈴木が占有開始時に悪意であったとしても、右占有開始時から起算して二〇年を経過した昭和四九年四月八日に、被告鈴木のために本件(三)土地の賃借権又は転借権の時効取得が完成した。

(三) 被告鈴木は、右時効を援用する。

6  正当事由の成立を妨げる事情(被告石川・同鈴木関係)

(一) 原告側の事情

被告義明・同武・同稲嶺関係抗弁5(一)のとおり。

(二) 被告石川側の事情

(1) 被告石川

被告石川は高齢であり、本件(五)の建物に居住して長男真太郎に老後の面倒をみてもらう以外に生活を維持することが不可能であるから、本件(四)の土地は被告石川にとって生活上極めて重要な拠点である。

(2) 被告鈴木

被告鈴木は身体の具合が悪く、転地療養のため現住所の東伊豆町稲取に転居したものであり、生活は専ら年金及び二男修の仕送りに頼っている。被告鈴木又は妻が死亡したり重病となった場合は、本件(四)の建物で修と同居することが介護及び経済上絶対に必要であるから、被告鈴木にとって本件(三)の土地は生活維持のため必要性が極めて高いものである。

四 抗弁に対する認否

1  抗弁1の事実は否認する。

2  同2(一)の事実は認め、(二)の事実は否認し、(三)は争う。

3(一)  同3(一)の事実は認める。

(二)  (二)の事実は否認する。

被告石川は藤吉の代理人であった原告利雄に対し、昭和三一年二月一九日の賃貸借契約締結にあたり、本件(三)土地上の建物移築の解決に責任を持ち、地主には一切迷惑をかけないことを誓約した。

4  同4は争う。

5  同5の事実のうち、被告鈴木が被告石川に対し本件(三)土地の地代を交付している事実は認め、その余の事実は否認する。

6  同6は争う。

第三  証拠<省略>

理由

第一被告義明・同武・同稲嶺関係

一本件各土地の所有権の帰属

1  本件各土地は藤吉が所有していたが、同人の死亡により藤義が本件各土地の所有権を取得したことは当事者間に争いがなく、<書証番号略>及び原告利雄の本人尋問の結果によれば、藤義は、昭和六〇年七月一日、原告らとの間で、藤義が本件各土地の持分各二分の一ずつを原告らに贈与する旨合意(本件贈与契約)したことが認められる。

2  被告らは、本件贈与契約について、右契約は、藤義が借地法上の正当事由を作出するために原告らとの間で行った通謀虚偽表示である旨主張するので検討するに、<書証番号略>並びに原告利雄本人尋問の結果によれば、藤義は自宅の敷地として横浜市戸塚区原宿に約二五〇坪の宅地を所有し、その他にも戸塚区周辺に農地・山林等合計一町五・六反の土地を所有していて、本件各土地を自ら使用しなければならないような差迫った事情はないこと、本件贈与契約は、昭和六〇年、藤義が、本訴提起に先立って本件各土地を含む横浜市南区中村町一丁目九番地四の土地の借地人の一人である訴外御原嘉作(以下「御原」という。)を被告として建物収去土地明渡の訴を横浜地方裁判所に提起した直後で、かつ本訴提起の直前になされたことが認められるけれども、他方、<書証番号略>及び原告利雄本人尋問の結果によれば、父藤吉及び兄藤義は将来原告利雄に本件各土地を贈与して独立させることを前提として、長期間にわたり同地の管理を一任していた経緯があり、本訴提起に先立って、それを実行したにすぎないことが認められる。これによれば、本件贈与契約締結の時期が本訴提起の直前であることの故をもって直ちに本件贈与が仮装であるとまでは認めることができず、他に被告らの右主張事実を認めるに足りる証拠はない。

二本件(一)賃貸借契約の成否

1 <書証番号略>、原告利雄、被告義明及び被告武の各本人尋問の各結果並びに前記一において認定した事実を総合すると、被告武・同義明両名の先代元次郎は大正年代に、従前地(一)、(二)を当時の所有者打木某から賃借して同土地上に建物を所有していたこと、昭和二〇年ころ、元次郎は従前地(一)、(二)のその当時の所有者である原告利雄先代である藤吉との間に、右土地につき昭和二〇年五月五日付けで賃貸借の更新契約を締結したこと、元次郎は昭和三一年一一月一四日死亡し、被告武・同義明を含む相続人六名が、従前地(一)、(二)の賃借権及び同地上に存在した元次郎所有の木造亜鉛メッキ鋼板葺平屋建店舗兼居宅(以下「表の建物」という。)及び木造亜鉛メッキ鋼板葺平屋建居宅(以下「裏の建物」という。)の二棟の建物の所有権を共同相続したこと、そのころ本件各土地を含む付近一帯の土地が土地区画整理法に基づく区画整理事業の対象区域となり、昭和三五年ころ旧中村町一丁目二六番の仮換地として本件各土地を含む九番四の土地が指定されたことにともない、従前地(一)、(二)も減歩されて本件(一)、(二)の土地の範囲となったこと、昭和四〇年当時被告武は、元次郎の相続人を代表して原告利雄との間で更新契約締結の交渉に当たっていたところ、原告利雄は被告武に対し、契約関係の錯綜を防ぐため賃借人を一人に限定するよう申入れたこと、当時秋元家においては、被告義明が本件(二)の土地上の家屋に永住する予定であったので、被告武は、原告利雄の右申入れを受け入れて、相続人を代表して以後本件(一)、(二)の土地の賃借人を被告義明に限定する旨原告利雄との間で合意するとともに、右仮換地指定後の昭和四〇年五月ころ、同被告の代理人として、藤吉の代理人である原告利雄との間に本件(一)、(二)の各土地について、賃貸人藤吉、賃借人被告義明、期間昭和四〇年五月一日から同六〇年六月三〇日まで、賃料月額四〇〇〇円とする本件(一)賃貸借契約を締結したことが認められる。

右事実によれば、藤吉と被告義明との間で、昭和四〇年五月五日、賃借人を被告義明とする本件(一)賃貸借契約が成立したものというべきである。

2  この点について、被告義明及び被告武は、本件(一)賃貸借契約の賃借人は被告義明及び被告武の両名である旨主張するので検討するに、成程、<書証番号略>、被告武及び被告義明の各本人尋問の結果によれば、本件(一)賃貸借契約締結後の昭和四〇年一〇月、元次郎の相続人間に遺産分割協議が成立した結果、被告義明が本件(二)の土地の南側部分に存在した表の建物を相続したほか、被告武もまた同土地の北側部分に存在した裏の建物を相続することとなった結果、被告武も本件(二)の土地を、被告義明とともに共同占有するに至ったことを認めることができる。

しかしながら<書証番号略>、並びに原告利雄及び被告武各本人尋問の結果によれば、被告武は、本件(一)賃貸借契約締結後に前記遺産分割協議が成立し、被告武もまた本件(二)の土地の共同占有者となったのであるから、本来であれば、本件(一)賃貸借契約の賃借人の名義を被告義明と連名にするよう原告側に申入れてしかるべきであるにもかかわらず、それを行った形跡がないだけでなく、藤吉又は原告利雄ら原告側に対して、被告武は、前記遺産分割協議成立後の本件(一)、(二)の土地賃貸借の相続関係及び右借地上の建物の所有関係の各変遷については特に説明をしていなかったこと、被告武は、本件(二)の土地上の表と裏の建物を建替えるべく、昭和四一年二月一五日付で本件(二)、(三)建物の建築確認申請をした際には、右申請書に、被告武が本件(二)の各土地の転借人である旨の記載のある藤吉作成名義の土地使用承諾書を添付して提出し、また昭和四九年に原告に対し被告義明名義で本件(一)、(二)の土地の地代を送付した際には、被告武において被告義明の代理人として署名した地代支払通知書を添付するなど、被告武は対外的には本件(一)、(二)の土地の転借人又は被告義明の代理人である旨表示して行動していたこと、以上の各事実が認められる。

上記認定の事実によれば、本件(一)の賃貸借契約における賃借人は、被告武と被告義明の内部関係においてはともかく、原告側賃貸人との関係においては、これを被告義明とする旨合意されていたものであることは明らかであるから、被告義明、同武は本訴において原告らに対し、賃貸人が被告義明と被告武の二名である旨主張することは許されない。

三無断転貸による解除の主張について

1  原告らが本件訴状をもって被告義明に対し、無断転貸を理由として本件(一)賃貸借契約を解除する旨の意思表示をし、右意思表示は昭和六〇年八月一三日同被告に到達したことは、本件記録上明らかである。

2  被告武に対する無断転貸の主張について

(一) 被告武が本件(二)の土地上に本件(三)の建物を所有して、本件(二)の土地を占有していることは、原告らと被告義明・同武との間に争いがない。

(二) そして、被告武において本件(二)の土地を使用していることが、原告との関係においては、被告義明の被告武に対する無断転貸に当たるとしても、被告武及び同義明の各本人尋問の結果に前記二において認定した事実を総合すると、被告武は元次郎の共同相続人の一人であり、幼少時から本件(二)の土地上に居住していた上、元次郎の死後昭和三五年ころから共同相続人間に遺産分割協議が成立した昭和四〇年一〇月二九日まで、本件(二)の土地を管理し、賃貸借契約更新手続に関与したほか、本件(二)、(三)各建物の建築確認申請手続を行っていたこと、しかも、右共同相続人の内部関係においては、前記遺産分割により、被告義明のほか被告武も本件(二)の土地上に存在する元次郎所有建物を相続して、本件(二)の土地につき賃借権を準共有するに至ったものであって、これらの事実に加えて原告ら主張の転貸により、本件(二)の土地の占有状況が著しく変更されたことはないことをも考慮すると、右転貸が本件(一)賃貸借契約における被告義明と原告らの間の信頼関係を破壊するに足りるものとまでは、未だ認められない。

3  被告稲嶺に対する無断転貸の主張について

(一) 被告義明が被告稲嶺に本件(一)土地を転貸し、被告稲嶺が本件(一)土地上に本件(一)建物を所有して同土地を占有している事実は、原告らと被告義明・同稲嶺との間に争いがない。

右の争いのない事実に、<書証番号略>並びに原告利雄(後記採用しない部分を除く。)、被告稲嶺、被告義明及び被告武各本人尋問の各結果を総合すれば、以下の事実が認められる。

(1) 被告稲嶺の亡父稲嶺盛重(以下「盛重」という。)は、大正四年ころ、訴外木村某から従前地(一)付近の土地上に存在した家屋を賃借したが、右家屋が昭和二〇年五月二九日空襲により焼失したことから、地主である藤吉の承諾なく焼跡にバラック建物を建設した。

(2) 盛重は、昭和二二年ころ右バラック建物を建替えようとしたところ、藤吉から建替後の建物の一部が、土地区画整理法に基づく換地前の土地で本件(四)の土地に該当する部分(以下「従前地(四)」という。)にかかっている旨抗議されたので、藤吉の指示に従い、かつ元次郎の同意を得て、建設中のバラック建物を元次郎の借地である従前地(一)上に移築した。かくして、盛重は元次郎から従前地(一)を転借し、以来元次郎又はその相続人に対し半年に一度の割で従前地(一)の一五坪分の地代を支払い、他方元次郎又はその相続人は従前地(一)、(二)の地代を藤吉又は原告利雄に支払ってきた。

盛重が昭和三三年八月二四日死亡したので、被告稲嶺が盛重の右転借権を相続した。

(3) 被告稲嶺は、昭和三六年ころ従前地(一)の借地に対する土地区画整理法に基づく仮換地として本件(一)の土地を指定され、昭和三六年七月ころ本件(一)の土地上に本件(一)の建物を建築し、同年一一月三〇日右建物の所有権保存登記を経た。

以上の事実が認められる。

(二) 転貸の承諾の主張について

被告稲嶺の本人尋問の結果に前記(一)で認定した事実を総合すると、盛重は昭和二二年ころ建築中のバラック建物を藤吉の指示及び元次郎の同意のもとに元次郎の借地である従前地(一)に移築させたこと、そのようにして、元次郎は藤吉に従前地(一)を使用させることになったが、藤吉は右使用の事実を知りながら、以後長期間にわたりこれに異議を述べたことはないことが認められる。原告利雄の本人尋問の結果によっても、右認定を覆すに足りず、他にこれを左右するに足りる証拠はない。

これによれば、藤吉は昭和二二年ころ、元次郎が盛重に従前地(一)を使用させることにつき、黙示の承諾を与えたものと認めるのが相当である。

4  以上のとおりであるから、原告らの無断転貸を理由とする本件(一)賃貸借契約の解除の主張は、その余の点について判断するまでもなく、理由がない。

四正当事由による更新拒絶の主張について

1  請求原因4の(一)、(二)の各事実は、原告らと被告義明・同武との間に争いがない。

2  原告側の事情

(一) <書証番号略>及び原告利雄本人尋問の結果によれば、

(1) 原告利雄は、昭和二一年戦地から復員した後小宮家の家業である山林用苗木の栽培に従事し、昭和三七年から同三八年にかけて一時、東京都新宿区内においてテレビフィルム複製の会社の経営に従事し、これに失敗してからは、現在に至るまで、藤義の自宅敷地内にある建坪三〇坪程度の二階建納屋の一階部分に居住して、再び家業の苗木栽培を手伝い、藤義から月額五万円ないし一〇万円の小遣いを受領している。

(2) 原告利雄の資産としては、本訴提起の直前に贈与を受けた本件各土地の持分を所有するのみであり、他に格別の資産もない。一方、藤義は藤吉の死後同人の全遺産を相続し、現在は横浜市戸塚区内に居宅の敷地二五〇坪及び山林一町五、六反を所有している。

(3) もっとも、原告利雄は昭和二一年ころから本件各土地に共同住宅を建築したいとの強い希望を有し、右計画実行の暁には、本件各土地の明渡に協力するよう、ことあるごとに借地人らに明渡を求めていた。殊に昭和三五年ころには、原告利雄は同所にビルディングを建設し、その中でテレビフィルム複製の事業を営むことを計画し、秋元及び御原に設計図を見せて明渡を求めたが実現せず、結局計画が頓挫したという経緯があった。また、原告利雄は、昭和四七年ころから賃貸マンション建設の計画を立て、被告義明にビル建設についての同意を求めていた。

(4) 原告利雄は、現在七〇歳であるが、平成元年七月一〇日訴外牧野かづ子と婚姻するとともに、老後に備えて兄藤義の次男である原告小宮義正と養子縁組する予定であり、本件各土地の明渡が実現すれば、今後の家族生活の拠点として、本件各土地に四階建の賃貸マンションを建設し、一階に居宅兼管理人室を設けて居住したい旨述べている。

(5) しかし、被告ら全員から本件各土地の明渡を受けたとしても、本件各土地の西側から中央部にかけて御原の借地部分が入り込んでいるため、そのままでは原告らにおいて計画中のマンション(<書証番号略>設計図表示のとおり。)を建築することはできない。そこで、昭和六〇年藤義が御原を被告として建物収去土地明渡請求訴訟を当庁に提起し、次いで原告らにおいて右訴訟に参加し、藤義の訴訟上の地位を承継したが、右訴訟において原告ら参加人敗訴の判決が確定したため、右マンション建設計画自体の実現は事実上困難となっただけでなく、本件各土地の一体利用についても著しい制限を受けることになった。しかし、御原の土地を除く本件各土地のみの利用計画については、設計図書の提出等具体的な計画の提示がない。

(6) また、原告利雄において右マンション建設資金の用意はない。そのため原告利雄は、藤義から右建設資金の拠出を得る予定である旨述べている。

以上の各事実が認められる。

(二) 原告らは、原告利雄が長年藤義方の納屋に居住し不自由な生活を送っていると主張するが、前記(一)において認定したところ、右納屋は建坪三〇坪を有する二階建の建物であることが認められるから、これを改善して原告利雄の結婚後の住居とすることも十分可能なはずであり、また、藤義が横浜市戸塚区内に宅地二五〇坪及び山林一町五、六反を所有していることからすれば、本件各土地に代えて藤義からその所有の他の土地の一部の提供を受けて原告利雄の住居を建築する方法も考えられるところであり、これらの方法が不可能であるとの立証はない。そうすると、今後本件各土地上に主張のような賃貸マンションを建設し、その一部を原告利雄の家族生活の拠点にしなければ、原告らがその住居に窮するとまでは認めることができない。

(三) さらに、原告らは、被告らが「地主に必要ある場合には何時でも明渡す」旨の誓約書を差し入れながら、原告利雄の右誓約書に基づく明渡請求を拒絶したことが、正当事由の判断に当たり考慮されるべき事情である旨主張し、確かに<書証番号略>及び原告利雄の本人尋問の結果によれば右事実が認められるが、右誓約書の記載は借地権者に不利な契約条件で借地法一一条に違反し無効であるから、正当事由の判断に当たり右事情を考慮することは相当ではない。

3  被告義明、同武側の事情

他方、<書証番号略>並びに原告利雄、被告義明及び被告武各本人尋問の各結果によれば、

(一) 被告義明は本件(二)の土地上に本件(二)の建物を所有しているほか、昭和四八年ころ横浜市中区寿町の近くに約一四坪の土地を木造平屋建てのバラック建物(以下「甲建物」という。)を取得し、次いで昭和五二年五月には寿町三丁目九番八宅地一五坪の所有権とその地上建物の持分四分の二(以下「乙建物」という。)を取得し、甲、乙両建物において労務者相手の食堂を経営している。

(二) 被告義明は昭和五三年ころまでは本件(二)建物に居住していたが、食堂経営上の必要から、昭和五三年に乙建物の二階部分に一家四人で転居し、本件(二)建物の方は昭和五七年二月以降、訴外新富貴夫(以下「新」という。)に賃料月額金八万五〇〇〇円で賃貸している。

(三) 被告義明は、現在乙建物(食堂)二階部分に親子四人で生活しているが、右二階部分は六畳一間、四畳半の板間の二室しかなく、子供二人が成長した現在では住居として手狭である。また、寿町界隈は居住環境が劣悪なため、被告義明は、新が本件(二)建物を明渡してくれれば、再び本件(二)建物に戻りたいと考えている。

(四) 一方、被告武は昭和二九年一一月一一日、横浜市南区万世町一丁目五番地所在の木造亜鉛メッキ鋼板葺二階建の店舗兼居宅を購入し、次いで昭和三八年七月二三日右建物の敷地約一五坪を取得し、その後、昭和六三年六月ころ、息子の秋元寛(以下「寛」という。)と共同して万世町所在の右建物を取り壊して、その跡地に三階建の店舗・居宅を建設し持分各二分の一の共有名義としたが、実際には右建物は寛の結婚後の住居として建設されたものであるため被告武は同所に居住せず、右建物は現在一階が貸店舗として賃料月額金一三万円で賃貸されているほかは、寛が2.3階を使用している。

(五) 被告武はかつて万世町に居住していたが、現在は本件(三)建物の一階に夫婦で居住し、二階の三部屋を月額各二万円で賃貸して賃料収入を得ている。被告武は現在六一歳であるが、パートですき焼屋に勤務し収入が月一二、三万円程度しかないため、右賃料収入は生計を支えるために必要不可欠である。

以上の事実が認められる。

4  上記認定の当事者双方の事情に基づいて、正当事由の有無を検討するに、当事者双方の本件(一)、(二)の土地を必要とする程度、態様を比較考量し、かつ、原告らが本件訴訟中において本件各土地のみの利用計画につき具体的な計画の提示がないこと等前記認定の事情を総合勘案すると、本件(一)(二)各土地については、原告らの自己使用の必要性が被告義明・同武のそれを上回るとは認めることができない。

5  立退料の提供について

原告らが正当事由を補強するものとして、被告義明に対して立退料金七六万二七九二円の提供を申出たことは、当裁判所に顕著である。

そこで、右立退料の提示が正当事由の補完として相当か否かについて検討するに、<書証番号略>によれば、右金額は平成三年三月三〇日時点における本件(二)建物に関する固定資産課税台帳中の評価額であることが認められる。しかし、本件(一)、(二)の土地に対する被告義明の借地権を喪失させることによって被る被告義明の不利益に比し、本件において、原告らの申し出た立退料の金額は少額に過ぎるから、前記認定の諸事情を考慮しても、右立退料の提供が原告の更新拒絶の正当事由を補完するものとは到底言えない。

6  以上の次第で、原告らには本件(一)賃貸借契約の更新拒絶につき正当事由がないから、その余の事実ついて考慮するまでもなく、原告らの被告義明、被告武及び被告稲嶺に対する請求は理由がない。

第二被告鈴木・被告石川関係

一藤義は、昭和四四年一月六日藤吉から本件各土地を相続し、原告らに対し昭和六〇年七月一日本件各土地の持分各二分の一を贈与したこと、右贈与が仮装譲渡とまでは認められないことは、いずれも前記第一、一において認定したとおりである。

二本件(二)賃貸借契約の成否

1  被告石川が藤吉から本件(三)、(四)の各土地を賃借していた事実は当事者間に争いがない。

2  <書証番号略>並びに原告利雄及び被告石川各本人尋問の各結果に右争いない事実を総合すると、宮川は従前から土地区画整理法に基づく換地前の土地で本件(三)、(四)の各土地に該当する部分(以下「従前地(三)、(四)」という。)を藤吉から賃借し、従前地(三)の上に本件(四)の建物を、従前地(四)の上に本件(五)の建物を所有していたが、宮川は昭和三一年二月二六日被告石川に対し本件(五)建物を従前地(三)、(四)の借地権付きで売却し、右譲渡につき藤吉から承諾を得たこと、被告石川は、昭和三二年以降、従前地(三)、(四)(昭和三五年の仮換地指定後は本件(三)、(四)の土地)の地代を支払っていたこと、原告利雄と被告石川の夫訴外石川真一郎(以下「真一郎」という。)は、昭和四二年一月一七日付で、本件(三)、(四)各土地(C区画六八坪)について、賃貸人を藤吉、賃借人を石川、賃料月額金二〇四〇円、賃借権の期間を昭和四〇年五月一日から昭和六〇年六月三〇日までとする更新契約を締結したこと、以上の事実が認められる。

3  これらの事実によれば、藤吉と被告石川の間で、本件(三)、(四)の土地につき、昭和四二年一月一七日、本件(二)賃貸借契約(更新契約)が成立したというべきである。

三無断転貸による解除について

1  被告鈴木が昭和二九年四月八日から本件(四)建物を所有して本件(三)の土地を占有している事実は、当事者間に争いがない。

<書証番号略>、原告利雄、被告石川の各本人尋問の結果によれば、以下の事実が認められる。

(一) 被告鈴木は昭和二九年四月八日、宮川から本件(四)建物を代金二七万円で購入し、翌九日その旨の所有権移転登記を経由した。右売買に際し、宮川は被告鈴木に「おりを見て地主に会わせますが、地主の承諾は得ています。」と説明したが、宮川は結局地主の承諾を得ることができなかったため、被告鈴木は右建物の敷地である従前地(三)について地主との間に直接土地賃貸借契約を締結できるまでの暫定措置として、宮川に地代を支払っていた。

(二) 宮川は昭和三一年の少し前ころ原告利雄に対し、本件(四)の建物を他に移築する予定なので、右建物の譲渡を承認してほしい旨申し入れたところ、原告利雄は土地を転貸しないという条件付きで、建物の譲渡については承諾した。

(三) その後原告利雄は、宮川の右説明に反し、右建物が従前地(三)の上に存続し、しかも、右建物に被告鈴木が居住していたのを知り、宮川に対し、被告鈴木を立ち退かせるように求めたところ、宮川は右建物をすぐ取り壊す旨回答した。

(四) ところが、宮川は右の問題を解決しないまま、昭和三一年二月二六日、被告石川に対し本件(五)の建物を従前地(三)、(四)の土地の借地権付きで譲渡した。原告利雄は、宮川が、被告石川において被告鈴木を立ち退かせる件を解決する旨述べたので、宮川の被告石川に対する右借地権譲渡を承諾した。

(五) ところで、被告鈴木は昭和三一年末に従前地(三)二八坪の昭和三二年度前半分の地代を被告石川に持参したところ、被告石川はこれを受領し、その際被告鈴木の従前地(三)の使用につき異議を述べなかった。

(六) 昭和三五年ころ付近一帯の土地につき仮換地処分が、昭和四五年ころ本換地処分がなされた結果、従前地(三)、(四)は本件(三)、(四)の土地となった。

(七) 昭和三二年以降、被告鈴木は被告石川に従前地(三)(昭和三五年仮換地指定後は本件(三)の土地)の地代を支払い、被告石川は原告利雄に従前地(三)、(四)(昭和三五年仮換地指定後は本件(三)、(四)の土地)の地代を自己の名義で支払っている。

以上の事実を認めることができる。

上記認定事実によれば、被告石川は宮川から従前地(三)、(四)の土地全体の賃借権の譲渡を受けながら、被告鈴木の従前地(三)(本件(三)の土地)の使用を容認していたものといえるから、被告石川は昭和三一年以降被告鈴木に対し、本件(三)の土地を転貸したものと評価するのが相当である。

2  解除権の時効消滅

(一) 前記認定事実に、<書証番号略>、原告利雄の本人尋問の結果を総合すれば、原告利雄は昭和三一年の少し前ころ宮川に対し、本件(四)の建物を移築する条件付きでこれを他に譲渡することを承諾したこと、ところが、宮川の説明に反し、その後も他に売却済みの右建物が本件(三)の土地上に存続し、被告鈴木が居住していることを知り、原告利雄は昭和三一年ころには宮川に対し、被告石川に土地賃借権が移転した後は被告石川に対し、被告鈴木を立ち退かせるよう求めたことはあるものの、その後は放置し、昭和五一年一一月被告石川に対し本件(三)、(四)の土地に関する賃貸借契約を他の理由により解除するまでは、被告石川に対し解除権を行使したことはないことが認められる。

(二) 右事実によれば、藤吉は昭和三一、二年ころ被告鈴木に対し、前記無断転貸を理由とする本件(二)賃貸借契約の解除権を取得したものと解せられるところ、藤吉においてこれを行使することなく経過したことは前記のとおりであるから、右解除権については、遅くとも昭和四二年末までに一〇年の消滅時効が完成したものというべきである。そして、転借人である被告鈴木が本訴において右消滅時効を援用したことは、本件記録上明らかである。

(三) そうすると、藤吉の右解除権は時効により消滅したものというべきであるから、原告利雄の被告石川に対する無断転貸を理由とする本件(二)賃貸借契約解除の主張は、その余の点につき判断を加えるまでもなく理由がない。

四更新拒絶の意思表示について

請求原因4の各事実は、当事者間に争いがない。

五正当事由の存否について

1  請求原因4の(一)、(二)の各事実は、原告らと被告石川、同鈴木との間に争いがない。

2  原告側の事情

(一) 原告側の事情は、前記第一、四2の(一)、(二)において認定したとおりであるから、これを引用する。

(二) さらに、原告らは、被告石川が「地主に必要ある場合は何時でも明渡す」旨の誓約書を差し入れながら原告利雄の右誓約書に基づく明渡請求を拒絶したことが、正当事由の判断に当たり考慮されるべき事情である旨主張し、確かに<書証番号略>によれば、右事実が認められるところではあるが、右誓約書の記載は借地権者に不利な契約条件で借地法一一条に違反し無効であるから、正当事由の判断に当たり右事情を考慮することは相当でない。

3  被告石川側の事情

<書証番号略>、証人鈴木修の証言及び被告石川本人尋問の各結果によれば、

(一) 被告石川夫妻は、昭和五〇年七月本件(五)の建物が家族全員で生活するには狭かったため、これを子供らに引渡し、自らは神奈川県鎌倉市坂ノ下三三番三号所在の県立神奈川県老人ホームに入居したが、昭和五六年ころ本件(五)建物に戻った。その後、被告石川は東京都内の病院に通院する便宜上、昭和五七年から昭和五八年までの間東京都新宿区上落合一丁目所在の二女篤代宅に住民票を移したことがあるが、生活の本拠まで上落合に移したものではなく、現在に至るまで引続き本件(五)の建物に生活の本拠を置いている。

(二) 夫を亡くした後、被告石川は本件(五)の建物の奥の一部屋に単身で居住し、右建物のその余の大部分を被告石川の長男石川真太郎(以下「真太郎」という。)が経営している有限会社アドに貸与してその事務所として使用させている。真太郎は横浜市緑区内の借家に居住しているが、被告石川には真太郎一家と同居する意思はなく、また、上落合の二女の家は二階にあり、階段を上がることができないため二女と同居するのも難しく、今後も引き続き住み慣れた本件(五)の建物に居住することを望んでいる。

(三) 他方、被告鈴木は、昭和三七年ころ小型木造船鋼船の修理等を業とする有限会社鈴竹造船所を設立し、本件(四)の建物を居宅兼事務所として使用していたが、一〇年来身体の具合が悪く、転地療養のために静岡県加茂郡東伊豆町稲取に土地を取得し、二男鈴木修(以下「修」という。)名義で建物を建築し、昭和五七年有限会社鈴竹造船所の経営を修に譲って、稲取の土地に転居した。

(四) 現在、被告鈴木は満足な会話ができない状況まで病状が悪化し、一方、いのは脳血栓等で言語障害が残り、通院加療が必要である。このため、被告鈴木及びいのの病状が更に悪化したり、一方が死亡した場合には、長女及び次女には余裕がないため、修が本件(四)の建物に引き取り介護することが必要である。

また、修は現在本件(四)の建物に居住し、かつ、被告鈴木から経営を引き継いだ有限会社鈴竹造船所の仕事場兼事務所として使用しているが、修が稲取に転居した場合、鈴竹造船所の仕事に困難をきたすことになる。

以上の各事実が認められる。

4  上記認定の当事者双方の事情に基づいて、正当事由の有無を検討するに、当事者双方の本件(三)、(四)の土地を必要とする程度、態様を比較考量し、かつ、原告らが本件各土地のみの利用計画につき具体的な計画の提示がないこと等前記認定の事情を総合勘案すると、本件(三)、(四)の各土地については、原告らの自己使用の必要性が被告石川及び被告鈴木の自己使用の必要性を上回るとは認めることができない。

5  立退料について

原告らが正当事由を補強するものとして、被告石川に対し立退料金五四万七一〇六円の提供を申出たことは、当裁判所に顕著である。

そこで、右立退料の提示が正当事由の補完として相当か否かについて検討すると、<書証番号略>によれば、右金額は平成三年三月三〇日時点における本件(五)建物の固定資産税課税台帳中の評価額であることが認められる。しかし、本件(三)、(四)の土地に対する被告石川の借地権を喪失させることによって被る被告石川の不利益に比し、本件において、原告らの申し出た立退料の金額は少額に過ぎるから、前記認定の諸事情を考慮しても、右立退料の提供が原告らの更新拒絶の正当事由を補完するものとはいえない。

5  結局、原告らには本件(二)賃貸借契約の更新拒絶につき正当事由があるとは認められないから、その余の事実を考慮するまでもなく、原告らの被告石川及び被告鈴木に対する請求は失当というほかない。

第三結論

以上の次第で、原告らの本訴各請求はいずれも理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九三条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官渡辺剛男 裁判官羽田弘 裁判官横田麻子)

別紙第一物件目録

(一) 所在 横浜市南区中村町一丁目九番地四

家屋番号 九番四の二

種類 居宅

構造 木造亜鉛メッキ鋼板葺二階建

床面積 一階 24.79平方メートル

二階 16.52平方メートル

(二)(一棟の建物)

所在 横浜市南区中村町一丁目九番地四

構造 木造スレート葺二階建

床面積 一階 72.30平方メートル

二階 72.85平方メートル

(専有部分)

家屋番号 中村町一丁目九番四の六

種類 居宅

構造 木造スレート葺二階建

床面積 一階 37.87平方メートル

二階 23.24平方メートル

(三)(一棟の建物)

所在 横浜市南区中村町一丁目九番地四

構造 木造スレート葺二階建

床面積 一階 72.30平方メートル

二階 72.85平方メートル

(専有部分)

家屋番号 中村町一丁目九番四の五

種類 共同住宅

構造 木造スレート葺二階建

床面積 一階 31.95平方メートル

二階 47.00平方メートル

(四) 所在 横浜市南区中村町一丁目九番地四

家屋番号 九番四の三

種類 居宅

構造 木造亜鉛メッキ鋼板葺平家建

床面積 25.61平方メートル

(五) 所在 横浜市南区中村町一丁目九番地四

家屋番号 九番四の四

種類 居宅

構造 木造亜鉛メッキ鋼板葺平家建

床面積 52.59平方メートル

別紙第二物件目録

所在 横浜市南区中村町一丁目

地番 九番四(換地指定前の地番二六番)

地目 宅地

地積 419.23平方メートル

(一) 右のうち、別図記載カ・ワ・ヲ・ル・カの各点を順次結ぶ直線によって囲まれる部分。

(二) 右のうち、別図記載ヨ・ト・イ・ロ・ル・カ・ヨの各点を順次結ぶ直線によって囲まれる部分。

(三) 右のうち、別図記載ニ・ホ・ヘ・ト・チ・リ・ヌ・ハ・ニの各点を順次結ぶ直線によって囲まれる部分。

(四) 右のうち、別図記載ロ・ハ・ヌ・リ・チ・ト・タ・ヲ・ル・ロの各点を順次結ぶ直線によって囲まれる部分。

別紙図面<省略>

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