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横浜地方裁判所 昭和60年(ワ)972号 判決 1995年3月30日

当事者の表示

別紙当事者目録記載のとおり

主文

一  被告は、原告全国自動車交通労働組合総連合会神奈川地方労働組合神奈川県自動車教習所労働組合都南自動車教習所支部(以下「原告組合」という。)に対し、二二〇万円及びこれに対する昭和六〇年四月二八日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  原告組合のその余の請求及びその余の原告らの請求をいずれも棄却する。

三  訴訟費用は、原告組合に生じた費用の四分の三を同原告の負担とし、その余を被告の負担とし、その余の原告について生じた費用を同原告らの負担とし、被告に生じた費用の一〇分の一を被告の負担とし、その余を原告らの負担とする。

四  この判決の第一項は仮に執行することができる。

事実

第一請求の趣旨

一  被告は、原告らに対し、それぞれ、別紙請求債権目録の請求金額の欄記載の各金額及びこれに対する昭和六〇年四月二八日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  訴訟費用は被告の負担とする。

との判決及び仮執行の宣言を求める。

第二請求の趣旨に対する答弁

一  原告らの請求を棄却する。

二  訴訟費用は原告らの負担とする。

との判決を求める。

第三請求原因

一  当事者

1  被告会社は、神奈川県座間市<以下略>で自動車教習所を経営しているものである。

2  原告組合は、被告会社の従業員を構成員とする企業内労働組合で、全国自動車交通労働組合総連合会神奈川地方労働組合(以下「自交総連神奈川」という。)及び神奈川県自動車教習所労働組合(以下「神自教労組」という。)に加盟しているものであり、本訴提起時(昭和六〇年四月一六日)の組合員数は五一名である。

3  訴訟承継前原告石川欣治は、技能指導員として被告会社に雇用され、原告組合に所属していたが、平成四年一二月二一日に死亡した。

4  原告石川雅昭は、石川欣治の有していた本件訴訟に関する権利義務を承継し、本件訴訟手続を承継した。

5  その余の原告らは、技能指導員、学科指導員、検定員、送迎バス運転手又は事務職員として被告会社に雇用されている者であり、かつ、原告組合の組合員である。

二  本件係争期間前の状況

1  被告会社の前身の都南興業株式会社(以下「都南興業」という。)は、財団法人座間農場に附属する「公認都南自動車教習所」の施設を、従業員との雇用関係を含めて承継して、昭和四三年六月に設立された会社であるが、その承継をめぐって同財団法人との間に紛争が生ずるなどして設立直後から経営が安定せず、教習所の閉鎖が噂されるようになった。このため、都南興業の従業員のうち、管理職を除く四七名全員は、昭和四五年一月、職場の安定と労働条件の改善を目指して、原告組合を結成した。

原告組合は、同年一二月、自交総連神奈川に加盟し、自交総連神奈川都南自動車教習所支部と称するようになった。

2  原告組合は、組合結成直後から、都南興業に対し、賃金、労働時間、福利厚生その他の労働条件や職場環境の改善に関する様々な要求を行い、都南興業との間で、昭和五一年七月一九日付けで、年末年始休暇中の賃金に関する労働協約(以下「年末年始休暇中の賃金に関する協定」という。)等各種の労働協約を締結して、原告組合及び原告組合員の権利の拡張を図ってきた。

そして、年末年始休暇中の賃金に関する協定に基づき、原告組合員は、年末年始の休暇中、残業手当相当分として、一日につき、過去三か月間の賃金支給総額(残業手当を含む。)を九〇で除し、さらに七で除して二を乗じて得た額の支給を受けてきた。

3  昭和五一年になって、都南興業の倒産の危機が現実化したため、都南興業のオーナーであった中山二郎は、同年七月二九日、被告会社を設立して、都南興業の事業のうち、自動車教習所の事業をその従業員との雇用関係を含めて承継させた。

被告会社の代表取締役には竹田力が就任した。

4  原告組合は、被告会社の設立に伴い、都南興業との間で締結していた各労働協約を被告会社に承継させるため、被告会社との間で、昭和五一年八月二五日付けで、(1)被告会社は、組合員の身分、労働条件、賃金、勤続年数、退職金制度及びこれまでに原告組合と都南興業が締結した労働協約のほか、原告組合と都南興業との間の一切の労働慣行を引き継ぐものとすること、(2)被告会社は、経営譲渡、合併、移転、閉鎖、廃止、名称変更又は組合員に対する解雇、身分・職種変更、配転その他の労働条件の変更を行う場合は、事前に原告組合と協議し、双方同意の下で実施するものとすることなどを内容とする労働協約を締結したほか、年次有給休暇中の賃金に関する労働協約(以下「年次有給休暇中の賃金に関する協定」という。)を、昭和五二年五月七日付けで、(1)同年四月一六日を初回として、四週ごとの土曜日を休日とする、(2)年次有給休暇を午前と午後に分けて使用した場合、これを合わせて一日とする、(3)原告組合員が就業時間中に組合活動をした場合の賃金カットは、退職金基礎算定額を基礎にして一時間につきその一七五分の一(後に一七二分の一に改められた。)をカットする方法により行うことなどを内容とする労働協約(以下「旧賃金カット協定」という。)等を締結した。

そして、年次有給休暇中の賃金に関する協定に基づき、原告組合員は、年次有給休暇中、残業手当相当分として、一日につき、過去三か月間の賃金支給総額(残業手当を含む。)を九〇で除し、さらに七で除して二を乗じて得た額の支給を受けてきた。

5  昭和五二年五月、被告会社の代表取締役が竹田から大薮禮治に代わったが、大薮は、その在任中の昭和五三年一月から昭和五四年二月までの間に、取締役会の決議を経ないで被告会社名義で金融機関から総額で三億円を超える多額の融資を受けるなどの不明朗な経営をしたとして、同年三月の取締役会で代表取締役を解任され、後任に渡辺敏男が選任された。ところが、大薮は、右代表取締役の解任と選任の各取締役会決議は無効であると主張してその無効確認訴訟を提起し、これに対し、渡辺は、大薮を業務上横領の罪で検察庁に告訴するなどして、争っていたところ、昭和五七年一月、その紛争が決着し、中山が代表取締役に就任した。

6  原告組合と被告会社は、同年一二月二一日付けで、被告会社が原告組合に対し、厚生資金として年額一五万円を支給する旨の労働協約(以下「厚生資金協定」という。)を締結した。

7  中山は、昭和五七年と昭和五八年の各春闘時に、年中無休制を柱とする経営の合理化や、労働条件と職場環境を見直すための労働協約と就業規則の改定を原告組合に提案した。しかし、いずれも原告組合に反対されて実現しなかったことから、昭和五九年の春闘時には、右提案の内容を実現させたいと考え、その組合対策のために、昭和五八年一二月、松原義美を取締役に就任させて、その任に当たらせることとした。

三  本件係争期間中の状況

1  松原は、中山の意を受けて、就任直後、「組合対策をやるだけやって会社を潰してもかまわないという社長の腹を聞いて私は引き受けた。」と言って原告組合の役員らを恫喝し、さらに、原告組合員を二、三名ずつ役員室に呼び出し、「会社は経営が悪化している。借入金の返済が始まれば会社は赤字になってしまう。」などと虚偽の赤字宣伝を行って、被告会社の提案する合理化案を受諾して労働協約等の改定に応じるよう迫った。そして、このような個々の組合員に対する働きかけが原告組合からの抗議を受けて失敗すると、次に、原告組合の役員に対し、「執行部の人達と酒を飲んで話し合いたい。今の管理職は駄目なので組合の方から三人管理職に出してほしい。」などと言って、昇進の利益誘導をもって組合役員の抱込みを図ろうとした。

2  原告組合は、昭和五九年三月一二日付けで、被告会社に対し、同年度春闘統一要求書を提出して、賃上げを要求し、さらに、同年六月には、夏季一時金の支給を要求して、再三、団体交渉に応じるよう要求したが、被告会社は、従前の労働協約を全部廃棄し、年中無休制の導入を柱とする合理化や労働条件の切下げのための労働協約と就業規則の改定について協議に応じなければ、賃上げや夏季一時金についての交渉には応じられないとして、団体交渉を拒否し、同年の年末一時金についても同様に団体交渉を拒否して、賃上げや一時金の支給を遅らせた。

3  被告会社は、旧賃金カット協定に基づき、原告組合員が就業時間中に組合活動をした場合の賃金カット額は、退職金基礎算定額に組合活動時間数を乗じ、一七五(後に一七二に変更された。)で除して得た額としていたが(以下「旧賃金カット方式」という。)、同年四月一八日、原告組合に対し、旧賃金カット協定の解約を通告するとともに、同月二一日から、右の場合の賃金カット額は、家族手当及び通勤手当を除く一か月の基準内賃金に組合活動時間数を乗じ、一七二で除して得た額とする(以下「新賃金カット方式」という。)旨通告し、これを実施した。

4  同年五月分の賃金は、二七日が日曜日になるため、給与規定及び労働協約により、その前日の二六日に支給するものとされていたところ、被告会社は、同月二二日、原告組合に対し、原告組合が同月二六日にストライキを行うことを理由に同月二八日に支給することとする旨通告し、同日に各従業員に支給した。

5  さらに、被告会社は、同年六月二八日、組合執行部を批判する内容の文書を原告組合員に郵送し、次いで、同年七月二〇日の団体交渉の席上、まだその金額をめぐり交渉中の夏季一時金を一方的に内払すると通告したうえ、同月二四日、その趣旨の内容の文書を原告組合員に郵送して、その内払をした。

6  被告会社は、右同日、原告組合に対し、期限の定めなく締結されていた年末年始休暇中の賃金に関する協定、年次有給休暇中の賃金に関する協定及び厚生資金協定を含む一切の労働協約を同年一〇月二三日をもって解約する旨通告した。

7  被告会社は、厚生資金協定に基づく昭和五九年分の厚生資金の支払を拒絶した。

8  被告会社は、教習所の営業時間を午前八時三〇分から午後七時までとし、これを前提にして教習時間を定めているが、従業員の実働時間を七時間一〇分、終業時刻を午後五時と定めながら交替制を採用していないため、従来、原告組合との間で三六協定を締結して、原告組合員を含む従業員に対し、午後五時から二、三時間の残業を恒常的に命じていた。ところが、原告組合が、被告会社の不当労働行為について、同年八月二九日、神奈川県地方労働委員会(以下「地労委」という。)に救済の申立てをし、そのころから、残業を拒否して抗議をしていたところ、同年一二月一七日、原告組合に対し、同月二三日に期間が満了する三六協定を更新しない旨通告し、同月二四日以降、残業を命じなくなった。そして、昭和六一年七月六日まで三六協定の締結を拒否し続けた。

9  被告会社は、昭和五九年一二月一七日、同月二四日以降は、三六協定がなくなるので、年末年始休暇中及び年次有給休暇中の残業手当相当分を支払わない旨通告して、これを実施した。

四  不法行為の成立

以上の被告会社の一連の行為は、原告組合及び原告組合員を嫌悪し、原告組合を弱体化させる目的でしたものであって、不当労働行為に該当し、原告組合及び原告組合員に対する不法行為を構成するものである。

五  原告組合の損害

原告組合は、被告会社の右不法行為により、次の損害を被った。

1  教育宣伝費 五〇万円

組合内部の教育宣伝のための新聞やニュース、外部向けのビラ等の印刷、発行費用である。

2  原告組合員の活動費 一二〇万円

外部の労働組合その他の団体に対する支援のオルグ活動、学習会への参加及び弁護士との打合せに要した費用である。

3  無形の損害 五〇〇万円

4  弁護士費用 二二八万円

不当労働行為救済の申立てと本訴の提起、追行に要した弁護士費用である。

六  新賃金カット方式による賃金カット額との差額

旧賃金カット協定の解約は、請求原因四記載のとおり不当労働行為に該当するものであって、無効である。また、仮に右解約が有効であるとしても、同協約は、従業員の賃金計算に関するもので規範的効力を有するから、新たに協約が締結されるまで、右協定の効力がいわゆる余後効として存続しているものである。したがって、被告会社は、旧賃金カット方式により賃金カットをしなければならないところ、これより不利益の新賃金カット方式により賃金カットをしたから、その差額を支払うべきである。

昭和五九年五月分から昭和六一年三月分までの間のその差額は、別紙請求債権内訳表の請求債権1の項記載のとおりである。

七  個人原告らの損害

1  三六協定の締結拒否による損害

被告会社が三六協定の締結を拒否しなければ、原告組合員は、昭和六〇年一月から昭和六一年三月まで従前のとおり残業をすることができ、その間に別紙請求債権内訳表の請求債権2の項記載のとおり残業手当の支払を受けることができたところ、被告会社から三六協定の締結を拒否され、残業が命じられなかったことにより、右手当の支払を受けることができず、同額の損害を被った。

2  年次有給休暇及び年末年始休暇中の賃金算定方式の変更による損害

原告組合員が従前のとおり残業を行い、右の算定方式を変更しなければ、原告組合員は、実際に支払を受けた賃金のほかに、昭和六〇年一月から同年一二月までの年次有給休暇中の分として、別紙請求債権内訳表の請求債権3の項記載のとおり賃金の支払を受けることができ、昭和五九年一二月二九日から昭和六〇年一月四日までの年末年始休暇中の分として、同表の請求債権4の項記載のとおり賃金の支払を受けることができたところ、右三六協定の締結拒否と賃金算定方式の変更により、右各賃金の支払を受けることができず、同額の損害を被った。

3  審問傍聴のための欠勤による賃金カットの損害

原告組合員は、右不当労働行為を糾弾するために、ストライキをして、原告組合が申し立てた前記不当労働行為救済申立事件についての地労委の審問を傍聴した。

右ストライキにより原告組合員が、昭和五九年一〇月から昭和六一年二月までの間に受けた賃金カットの額は、別紙請求債権内訳表の請求債権5の項記載のとおりである。

右賃金カット額は、被告会社の右不法行為と相当因果関係のある損害である。

4  慰謝料

原告組合員は、被告会社が三六協定の締結を拒否したこと等により、賃金の減少を余儀なくされ、経済的に困窮し、精神的に多大の苦痛を受けた。右精神的苦痛に対する慰謝料の額は、別紙請求債権内訳表の請求債権6の項記載のとおり各一〇万円が相当である。

八  まとめ

よって、原告組合は、被告会社に対し、昭和五九年分の厚生資金一五万円と右五の1ないし4記載の損害八九八万円との合計九一三万円及びこれに対する本件訴状送達の日の後である昭和六〇年四月二八日から支払済みまで年五分の割合による遅延損害金の支払を求め、個人原告らは、被告会社に対し、右六記載の新賃金カット方式による賃金カットとの差額相当の賃金と右七の1ないし4記載の損害との合計額及びこれに対する本件訴状送達の日の後である右同日から支払済みまで年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

第四請求原因に対する被告会社の認否及び主張

一1  請求原因一の1、3及び5記載の事実は認める。

2  同2及び4記載の事実は知らない。

二1  請求原因二の1記載の事実中、原告組合に関する部分は知らない。その余は認める。

2  同2ないし5記載の事実は認める。

3  同6記載の事実は否認する。

4  同7記載の事実中、中山が原告組合対策の目的で松原を取締役に就任させたことは否認し、その余は認める。

三1  請求原因三の1記載の事実は否認する。

2  同2記載の事実中、被告会社が団体交渉を拒否して賃上げや一時金の支給を遅らせたことは否認し、その余は認める。

被告会社が年中無休制の導入を提案したのは、被告会社の教習料金が神奈川県下で一番高くなっている現状において、教習料金の値上げをしないで収益を上げ、賃上げの原資を得るためには、日曜祝日等も営業せざるを得なくなったからであるが、被告会社は、従業員の労働条件に配慮し、勤務時間を現状より長くしないことを条件とする旨を申し入れていたものである。また、被告会社が労働協約と就業規則の改定を提案したのは、労働協約については、長年の間に項目ごとに多数締結されて複雑になっているうえ、古くて現状に適合しないものもあり、就業規則についても、現状に適合しない規定があるので、これらを整備する必要があったからである。

いずれの労働組合においても、必要があって会社が労働協約や就業規則の改定を申し入れたならば、賛成であれ、不満であれ、必ず団体交渉や労使協議会の席に着いて協議に応ずるものである。ところが、原告組合は、被告会社が、昭和五九年四月一八日に賃金カット方式の変更を含む労働協約の改定について協議を申し入れているのに、同年七月二四日までの三か月間はただの一度も交渉に応ずることはなかった。その後も一年以上にわたって形式的な団体交渉を繰り返すだけで、その間、労働協約等の改定に反対して、連日のように就業拒否を続けていたものである。

3  同3ないし7記載の事実は認める。

被告会社においては、従前、経営者の交替等の時期に、組合の圧力に押されて締結させられた労働協約により、原告組合員については、就業時間内に一方的に組合活動と称して職場を離脱しても賃金を失わないものとされていた。しかし、組合活動や争議行為のために就労しないのに賃金を支払うことは、組合に対する経費援助になり、労働組合法上許されないから、被告会社は、これを是正するために、旧賃金カット協定の解約を通告したものである。

本来、右協約は、解約をするまでもなく無効であるが、仮にこれが有効に成立したものであるとしても、所定の予告期間を経過した日をもって、効力を失ったものというべきである。

また、厚生資金協定は、原告組合がスポーツ大会の賞品代が欲しいと申し入れてきたことが発端で締結されたものであるが、被告会社は、原告組合に対し、使途についての領収書の提出を求めたところ、原告組合から拒否されたため、使途の明確でないものは組合の経費援助になるので支払えないと言って拒絶したものである。

4  同8記載の事実中、被告会社が午後五時以降の残業を命じなくなったことは否認し、その余は認める。被告会社は、三六協定を締結しなくても、法内の午後五時から午後六時までは残業を命じていた。

いずれの自動車教習所においても、顧客である教習生に、あらかじめ数日の間隔を置いて期日を予約してもらい、それに従って教習を行っている。教習は六か月以内に終了しないと無効になるという制約があるため、教習生も、計画的に期日を予約して、期限内に卒業することができるようにしている。こうしたことから、自動車教習所にあっては、争議行為をする場合には、教習生に迷惑をかけることのないよう、三日ないし五日前に予告するのが慣行となっている。

ところが、原告組合は、被告会社との間に三六協定を締結していたにもかかわらず、どのような目的で、いつスト権を確立したのかもわからない状況で、突然「只今よりスト」「職場放棄」と称して、昭和五九年四月一三日から連続的に残業を拒否し、さらに、同年七月二四日から一か月間の三六協定を締結しておきながらこれを無視して連続的に残業を拒否し、さらに、同年八月二四日から一か月間の三六協定を締結しておいて、その一か月間全部残業を拒否した。

このため、被告会社は、教習生、とりわけ昼間働いて夜間に教習所に通う教習生に対して多大の迷惑をかけ、信用を失墜してしまったので、同年一〇月から夜間の教習を中止し、これに伴い三六協定の更新を行わないことを決めた。その際は、原告組合が残業時間帯については極力争議行為の対象にしないと約束したので、夜間教習を続けることとして、夜間の教習生を募集し、三六協定もさらに同年九月二四日から同年一二月二三日まで更新していたところ、原告組合は、同年一一月から一二月にかけて、再び連続的に残業を拒否した。そこで、これ以上教習生に迷惑をかけることはできないと考えて、夜間教習を中止することとし、三六協定の更新をしなかったものである。

5  同9記載の事実は認める。

四  請求原因四、五記載の事実は否認する。

原告らは、自ら好き放題に職場を放棄しながら、被告会社の役員の自宅前に宣伝カーを持ち込んで、大声でいわれなき中傷や罵詈雑言を浴びせたり、同様のビラを近隣の家の郵便受けに投函したり、電柱に貼ったりして、役員とその家族の人格を傷付け、家庭生活の平穏を侵す行動をとってきた。原告組合が損害と主張する教育宣伝費と活動費は、このような、被告会社の役員の自宅にまで押しかけ、数を頼んで暴力的な行為をするために要した費用なのである。

五  請求原因六記載の事実中、昭和五九年五月分から昭和六一年三月分までの間の新賃金カット方式による賃金カット額との差額が別紙請求債権内訳表の請求債権1の項記載のとおりであることは認め、その余は否認する。

六  請求原因七記載の事実は否認する。

第五被告会社の主張に対する原告らの反論

仮に、当初は、原告組合の残業拒否の争議行為への適法な対抗手段として三六協定の締結を拒否したものであったとしても、原告組合は、昭和六〇年に入って間もなくから、再三にわたり、営業時間を午後七時までの正常な時間に戻すよう申し入れ、同年六月六日には文書をもって正式に右の申入れをしているのであるから、この申入れを受けた後においては、もはや被告会社の三六協定の締結を拒否した行為は適法性を失い、違法となるというべきである。

第六証拠関係

本件記録中の書証目録及び証人等目録に記載のとおりであるから、これを引用する。

理由

一  請求原因一1、3及び5記載の事実は当事者間に争いがなく、同2記載の事実及び同4記載の事実中の相続に関する部分は弁論の全趣旨により、同4記載の事実中訴訟承継に関する部分は本件記録によりこれを認めることができる。

二  本件係争期間前の状況

当事者間に争いのない事実と、(証拠略)と原告込山悟本人尋問の結果を総合すると、次の事実が認められる。

1  被告会社の前身である都南興業は、財団法人座間農場に付属する「公認都南自動車教習所」の施設を、従業員との雇用関係を含めて承継して、昭和四三年六月に設立された会社であるが、設立後、その承継をめぐる同財団法人との紛争の処理に追われるなどして経営が安定せず、自動車教習所の閉鎖が噂されるようになった。このため、自動車教習所の従業員のうち管理職を除く四七名全員は、昭和四五年一月、職場の安定と労働条件の改善を目指して、原告組合を結成した。原告組合は、同年一二月、自交総連神奈川に加盟し、以後、自交総連神奈川都南自動車教習所支部と称するようになった。

2  原告組合は、組合結成後、都南興業に対し、賃金、労働時間、福利厚生その他の労働条件や職場環境の改善に関するさまざまな要求を行い、その都度、都南興業との間で労働協約を締結した。主なものを掲げると、次のとおりである。なお、各労働協約の内容は、本件と直接関係のある部分だけを抜粋したものである。

(1)  昭和四五年五月二一日付け協約

<1> 休日に勤務した場合の割増賃金の額は、基準内賃金に基づく賃金額の五割増しとする。

<2> 毎年五月五日(子供の日)と一一月二三日(勤労感謝の日)を休日とする。

<3> 慰安旅行は毎年春と秋に行うものとし、そのうち一回は会社が費用を負担する。

(2)  同年五月二八日付け協約

指導員、整備員及び検定員の時間外労働は、月、水、木曜日は午後五時から午後八時まで、金、土曜日は午後五時から午後七時まで、総務課員の時間外労働は、月、水、木曜日は午後五時から午後七時三〇分まで、金、土曜日は午後五時から午後六時三〇分までとし、有効期間は同年四月一日から昭和四六年三月三一日までとする。なお、この協定を延長する場合は、期間満了の一か月前に双方協議してこれを行うものとし、時間外労働は双方任意で行うものであって強制されるものでないことを確認する。

(3)  昭和四六年六月付け協約

夏季休暇を二日とし、毎年三月二一日(春分の日)と九月二四日(秋分の日)を休日とする。

(4)  昭和四六年九月一日付け協約

毎週日曜日を定休日とし、時間外労働は、月、水曜日は午後五時から午後八時まで、火、木、金曜日は午後五時から午後七時までとし、土曜日は定時終業とする。

(5)  昭和四七年五月三〇日付け協約

<1> 従業員の傷病を理由とする欠勤については、年次有給休暇使用後二四日まで賃金を保障する。ただし、自己の重大な過失により発生した傷病については、その日数を減ずることがある。

<2> 夏季休暇を三日とする。

<3> 従業員が運転免許証の更新手続、住所変更の届出等法令に定める手続を行うために必要な時間は公用外出とする。

(6)  昭和四七年一一月二一日付け協約

<1> 従業員の業務上の傷病については、医療費を全額負担するとともに、労災保険による休業補償の額が平均賃金に満たないときは、その不足分を補償する。

<2> 従業員が業務上交通事故を起こして運転免許の停止処分を受け又は刑事責任を負うことになっても、従業員の身分を保障し、賃金の全額を補償する。ただし、従業員に重大な過失があった場合は、協議のうえ賃金の補償額を減額することがある。

<3> 従業員が通勤途上で死亡したときは、二〇〇万円を補償する。

(7)  昭和四八年六月付け協約

<1> 毎年五月一日(メーデー)を休日とする。

<2> 夏季休暇を四日とする。

(8)  同年七月付け協約

隔週土曜日の就業時間は、午前八時三〇分から午前一一時四五分までとする。

(9)  同年一二月二一日付け協約(協約書二通)

<1> 祝日をすべて休日とする。

<2> 年次有給休暇については平均賃金を支給する。

<3> 年末年始の休暇を一二月二九日から一月四日までとする。

<4> 昭和四九年一月から賃金を月給制とする。

<5> 従業員が私傷病により欠勤したときは、最初の三か月は賃金の法定外全額を補償し、その後三か月はその半額を補償する。傷病が法定伝染病の場合は一年間全額を補償する。

(10)  昭和四九年五月付け協約

<1> 食事手当を五〇円加算して一日二〇〇円とする。

<2> 夏季休暇を五日とする。

<3> 三六協定の有効期限を六か月とする。

(11)  昭和五〇年五月二三日付け協約

<1> 食事手当を五〇円加算して一日二五〇円とする。

<2> 給料支払日は毎月二七日とする。ただし、二七日が日曜日又は祝日のときは、その前日とする。

(12)  同年一二月五日付け協約

<1> 従業員の家族については、技能教習料金(二七時限)を半額とする。

<2> 業務上の傷病により死亡し又は後遺障害が生じた場合は同協約の定める日数分の法定外補償をする(最高は死亡し又は障害等級三級以上の後遺障害が生じた場合の二五〇〇日分で最低は障害等級一四級の後遺障害が生じた場合の一二〇日分)。

(13)  昭和五一年七月一九日付け協約

年末年始の休暇中の平均賃金の支給は同年度より実施する。

3  昭和五一年になって、都南興業は、不動産投資の失敗等による多額の負債のために倒産の危機に瀕するに至った。そこで、都南興業のオーナーであった中山は、被告会社を設立して、都南興業の営業のうち自動車教習所部門をその従業員との雇用関係を含めて被告会社に承継させた。

被告会社の代表取締役には竹田力が就任した。

4  原告組合は、被告会社設立後間もない同年八月二五日、被告会社との間で、次の内容の労働協約を締結した。

(1)  被告会社は、組合員の身分、労働条件、賃金、勤続年数、退職金制度及びこれまでに原告組合が都南興業との間で締結した労働協約のほか、原告組合と都南興業との間で行われていた一切の慣行慣例を引き継ぐものとする。

(2)  被告会社は、経営譲渡、合併、移転、閉鎖、廃止、名称変更、組合員に対する解雇、身分・職種変更、配転その他の労働条件の変更を行う場合は、事前に原告組合と協議し、双方同意の下で実施するものとする。

5  その後、原告組合は、被告会社との間で、次の内容を含む労働協約を締結した。

(1)  昭和五一年末ころ締結された協約

<1> 昭和五二年三月までの間によほどの事情の変更がない限り、半日勤務となっている隔週土曜日の一日を休日とする。

<2> 慶弔休暇の日数を、父母、妻子死亡の場合は七日とし、妻出産の場合は三日とする。

<3> 業務上の傷病により死亡し又は障害等級三級以上の後遺障害が生じた場合の法定外補償を三〇〇〇日分とする。

(2)  昭和五二年五月七日付け協約

<1> 同年四月一六日を初回として、四週毎の土曜日を休日とする。

<2> 年次有給休暇を午前と午後に分けて使用した場合、これをもって一日とする。

<3> 原告組合員が就業時間中に組合活動をした場合の賃金カットは、退職金の基礎算定額を基礎に一時間につきその一七五分の一をカットする方法により行う。

6  被告会社は、昭和五三年六月一日、従前の就業規則を廃止して新しい就業規則とこれに附属する給与規定、退職金規定を作成し、施行した。これらの規則、規定の中には次の定めがある。

(1)  従業員の就業時間は原則として次のとおりとする。

出勤 午前八時三〇分

退勤 午後五時

休憩 午前一一時四〇分から午後〇時三〇分まで

午後二時三〇分から午後二時四〇分まで

午後四時四〇分から午後五時まで

(2)  病気その他の事由によって欠勤するときは、三日前にその事由、予定日等について届け出なければならない。

あらかじめ届け出ることができないやむを得ない場合は、欠勤中あるいは出勤後直ちに届け出なければならない。この場合、欠勤当日の始業時刻までに電話で連絡しなければならない。

(3)  賃金の計算期間は、当月二一日から翌月二〇日までとする。

(4)  自己都合による欠勤があった場合の賃金は、日割計算によって支給する。

7  この間の昭和五二年五月、被告会社の代表取締役が竹田力から大薮禮治に代わったが、大薮は、昭和五三年一月から昭和五四年二月までの間に取締役会の決議を経ないで被告会社名義で金融機関から総額で三億円を超える多額の融資を受けるなどの不明朗な経営をしたとして、同年三月の取締役会で、代表取締役を解任され、これに代わって渡辺敏男が代表取締役に選任された。大薮は、右代表取締役解任、同選任の取締役会決議は無効であると主張して、取締役会決議無効確認訴訟を提起し、これに対し、渡辺は、大薮を検察庁に業務上横領で告訴した。同年一〇月、裁判所によって取締役兼代表取締役の職務執行停止、職務代行者選任の仮処分がなされ、職務代行者により被告会社は経営されていた。

このような経過を経て、昭和五七年一月、右紛争が決着して職務代行者が解任され、中山が被告会社の代表取締役に就任した。

8  中山は、多額の負債を抱える被告会社が、その返済が予定される昭和六〇年以降、赤字経営に転じることを懸念し、これに備えて、昭和五七年、昭和五八年の各春闘時において、生産性を上げるための年中無休制を柱とする経営の合理化や、労働条件や職場環境を見直すための労働協定・就業規則の改定を原告組合に提案したが、いずれも原告組合に反対されて実現せず、原告組合の主導のもとに春闘が妥結されたことから、昭和五九年の春闘時には、経営合理化と労働協定等の改定を実現させたいと考え、松原義美を取締役に就任させ、その業務を担当させることとした。

三  本件係争期間中の状況

当事者間に争いのない事実と、(証拠・人証略)の証言と原告込山悟本人尋問の結果を総合すると、次の事実が認められる。

1  松原は、中山の要請を受けて、昭和五八年一二月、被告会社の取締役に就任し、その業務全般を統括することになった。

当時、被告会社は、昭和五二年に三億八九四五万五六〇〇円であった売上高が昭和五七年には五億四二九八万円にと一(ママ)三九パーセント増加したものの、人件費も、二億二六八四万八三二六円から三億三四七〇万円に一(ママ)四八パーセント増加しており、昭和六〇年からは、従前の放漫経営から生じた債務を毎月元利合計約五〇〇万円ずつ金融機関に弁済しなければならないような状況にあった。また、入所適齢期に当たる若年層の減少も予測されていた(昭和五二年から昭和五八年までは二三〇〇名から二五〇〇名程度で推移していた入所者数が、その後、昭和五九年には二二五八名、昭和六〇年には一四四〇名に減少した。)。

ところが、昭和五八年七月時点の教習料金は、県下の自動車教習所の中では最高額で、それ以上値上げをすることは困難であったのに、従業員一人当たりの年間労働時間数は県下の自動車教習所の中では少ない方であり、指導員一人当たりの所定内平均賃金額はほぼ最高額であった。

こうしたことから、松原は、経営の悪化を防ぐためには、日曜祝日の営業により入所者を新規開拓するなどして経営を合理化する必要があり、また、近年従業員の勤務態度の乱れが目立ち、管理者の指導には従わず、むしろ管理者を軽視していて、組合の主導で会社が経営されている状況にあることを是正する必要があるので、そのためには、規定内容が抽象的で規律維持を保つことが困難な就業規則や、原告組合に一方的に有利な内容となっている労働協約を全面的に改定しなければならないと考えた。

2  そこで、松原は、昭和五八年一二月七日、組合役員に対し、就任の挨拶を行い、その中で、会社の現況や今後の経営方針等の概要を述べた後、「組合対策をやるだけやって会社を潰してもかまわないという社長の腹を聞いて私は引き受けた。」と述べて組合との対決姿勢を示し、その直後から、原告組合員を二、三名ずつ役員室に呼び出して、多額の負債を抱えているため経営状況が苦しいが、教習料金は神奈川県下で一番高くなっていてこれを値上げすることもできないので、ベースアップの原資を確保することができないと言って、来るべき春闘に対する牽制をし、同月二六日には、管理職に対し、従業員が休暇をとる場合と定時で退社する場合には三日前に届け出をさせること、九時限目に配車がない場合には退社させることを指示した。原告組合は、松原のこうした行為は、不当労働行為に当たるものであり、労働協約を無視するものであるとして抗議した。

しかし、松原は、その後の昭和五九年二月に、原告組合の事務所に数回出向き、執行部の者と酒を飲んで話し合いたい、今の管理職は能力がないので組合の方から三名管理職を出してもらいたいと言ったり、同月二五日、春闘を前にして原告組合の役員との間で話合いが行われた際にも、被告会社の経営状態は苦しいと言ってその点についての理解と協力を求めた。これに対し、組合役員は、経理を公開して説明しない以上協力することはできないと回答した。

三月一二日、原告組合は、神奈川県自動車教習所労働組合共闘会議、自交総連神奈川と連名で、年間収入を五一〇万円(一〇年勤務三九歳)以上とし、一か月の定時間内賃金を二八万円以上、年間の一時金を一七四万円以上とすること、残業廃止を目指し当面残業は一日二時間以内とすること、週休二日制を確立し、祝祭日は完全休校日とすること、年次有給休暇、年末年始休日等に対し平均賃金を支給することなどの要求を掲げた昭和五九年春闘の統一要求書を提出するとともに、同月三一日までに団体交渉に応じるよう申し入れた。

3  右申入れに基づき、三月三一日、昭和五九年度春闘についての一回目の団体交渉が行われたが、被告会社は、統一要求書に対する形式的な質問と被告会社の入所者数の状況説明を行っただけで、春闘要求に対する具体的な回答額は提示しなかった。

被告会社は、四月二日、原告組合が、都南興業時代から教習所の敷地内のポールに掲揚してきた組合旗を撤去するよう通告した。

原告組合は、これを挑発行為と受け止めて、同月五日、抗議書を提出し、同月九日、不誠実な団体交渉に抗議するとして、四月一三日に二時間の残業を拒否し、同月二〇日に終日ストライキを行う旨通告した。

被告会社は、同月一一日、年中無休制導入を柱とする経常合理化、従業員の勤務態度の乱れを是正するための管理体制の強化と労働協約等の改定を行うことが原告組合の春闘要求に応じるための前提であり、春闘問題以前に会社の体制整備について改善改革する問題があるとして、次のような改善改革事項を挙げ、この体制整備作業の進展との関連で春闘要求に対応する旨を通告した。

(1)  経営の健全化

年間総収入対年間総人件費率の改善

年間総労働時間の有効的活用

組織機構の改革

規則、規程等の再検討

(2)  職員資質の向上

指定自動車教習所職員としての認識と社会的責任の重要性の徹底教育交通違反及び事故防止と対策の充実

価値あるサービスを提供する体制の確立

幹部教育の徹底

(3)  労使関係の安定

労使関係の見直し

各種協定等の改定

勤務時間及び勤務方法等の再検討

4  四月一二日、二回目の団体交渉が行われ、松原は、総収入に対する人件費の割合が昭和五七年は七二・八パーセント、昭和五八年は七四・九パーセントに及ぶことや被告会社の経営の現状と今後の見通しを説明したが、原告組合は、代表取締役の中山が出席しないことを理由に、合理化問題についての協議を拒否し、経理内容の公表を求めた。この団体交渉の席上で、被告会社は、就業時間中の組合活動に対する賃金カットの方式を見直す旨通告した。

原告組合は、同月一三日、先に通告したとおり二時間の残業を拒否した。

被告会社は、同月一八日、会社の体制整備に関するいくつかの点につき具体的な提案をした。その中には、次のような労働協約改定案が含まれていた。

(1)  組合員の範囲は、教習所の従業員で、組合が加入を認めた者とするが、会社役員、課長以上の管理職等会社の利益を代表する者、人事、労務、経理等会社の機密事項を取り扱う者、臨時、嘱託、パート、試用期間中の者を除く。

(2)  組合活動は、法の精神に基づき、原則として就業時間外に教習所施設外で行う。ただし、必要に応じて教習所が許可した範囲に限り、就業時間中及び教習所施設内での組合活動を認める。

(3)  組合の要請に基づき教習所が許可する範囲に限り施設利用を認める。常備的な組合事務用机、什器及び組合掲示板の利用等については別に定める。

(4)  教習所と組合は団体交渉を開催しようとするときは、交渉日時、場所、人数、交渉事項を明記した文書で五日前までに相手方に通告し、通告を受けた相手方は、三日前までに諾否についてその理由を付して回答する。両者の意思が一致しないときは両者の代表者により調整する。

(5)  団体交渉事項は、次のとおりとする。

労働条件に関する事項

厚生福利に関する事項

その他右各事項に関連する事項

(6)  この協約の定める事項については争議行為を行わない。右団体交渉事項について争議行為を行うときは、その都度争議行為開始の七日前に方法、時間、参加者及びその他必要事項を文書により相手方に通告する。

(7)  教習所の保安職員、検定員、教習業務受付要員及び各施設責任者は組合の行う争議行為には参加しない。

(8)  教習所は、組合員に対する配転、出向、解雇等の必要が生じたときには、事前に組合に通告する。

(9)  教習所は、経営権の譲渡、企業の合併、閉鎖、縮小等の必要が生じたときは、事前にその概要を組合に提示して意見を求める。

同月一八日、被告会社は、原告組合に対し、従前の交渉経過と関係なく同月二〇日に終日ストライキを実施するのは法的に問題があるので、その点についての見解を示すよう申し入れた。また、同日、就業時間中の組合活動に対して旧賃金カット方式により賃金カットをすることは組合に対する経費援助となるので、同月二一日から新賃金カット方式で行う旨通告した。

5  四月一九日、三回目の団体交渉が行われ、被告会社は、就業時間中の組合活動に対する賃金カット方式を先に通告したとおり新賃金カット方式に改める旨述べ、春闘要求に対し初めて六五〇〇円の賃上げ額を回答した。これに対し、原告組合は、被告会社の提案する体制整備の問題は賃上げと切り離して別の機会に協議すべきであり、被告会社がこれに固執するならば、五、六万円賃上げしても解決しないと言って、被告会社の対応を厳しく批判した。

原告組合は、同月二〇日、先に通告した終日ストライキを行い、翌二一日、体制整備の問題とは切り離して春闘解決に努力するよう申し入れるとともに、不誠実な団体交渉に抗議するとして、同月二七日に終日ストライキを行う旨通告した。被告会社は、同月二五日、原告組合が同月九日から会社施設内の建物に「自交総連神奈川労組都南自教支部組合事務所」と掲示していることが、部外者に誤解を与え、紛争の原因になるとして、掲示の理由を明らかにするよう求めた。

6  四月二六日、四回目の団体交渉が行われ、被告会社は、現状のままでは賃上げは不可能であるので合理化案を提示したと述べたが、賃上げが不可能であることの根拠資料等を示さなかった。これに対し、原告組合は、賃上げと合理化の問題を一緒に協議することはできないので合理化案を撤回するよう要求した。

原告組合は、同月二七日、先に通告した終日ストライキを行い、被告会社は、翌二八日、被告会社が原告組合に賃上げの原資確保に関する意見や対案の提出を求めているのに、その提出もしないで二七日に終日ストライキを実施したとして強く抗議するとともに、早急に右の見解や対案を提出するよう申し入れた。

原告組合は、五月七日、不誠実な団体交渉に抗議するとして、同月一一日午後に半日のストライキを行う旨通告した。

被告会社は、同月八日、就業規則改定案を提示した。その改定案は、服務規律に関する規定を二か条から八か条に、懲戒に関する規定を三か条から一三か条に増やし、福利厚生の章から、福利厚生施設、結婚祝金、出産祝金、弔慰金、病気見舞金、災害補償金に関する規定を削除するというものであった。この服務規律に関する規定と懲戒に関する規定は、従前の規定が抽象的で従業員の服務規律の維持を図るのに不都合な面があったことから、これを詳細かつ具体的に定めて、これにより管理体制の強化を図ろうとするものであった。

7  五月一〇日、五回目の団体交渉が行われたが、交渉は進展せず、被告会社は、先に通告したとおり、四月二一日分から新賃金カット方式により賃金カットを行う旨通告した。

原告組合は、同月一一日、先に通告した半日のストライキを行い、同月一四日、春闘解決後はその見直しの協議に応じる用意があるとして、それまで労働協約と就業規則の各改定案を撤回するよう申し入れるとともに、不誠実な団体交渉に抗議するとして、同月一八日に終日ストライキを行う旨通告した。

被告会社は、同月一六日、右申入れに対し、労働協約や就業規則の改正案を撤回する意思はない旨、改定案に対する意見があれば書面で具体的に提示されたい旨及び労働条件改善のためにはまず経営体質の強化が必要であるから被告会社の提案事項につき誠実に対処するよう求める旨回答した。また、同日、被告会社は、前記就業規則改定案について、新たに始業、終業及び休憩時刻(始業は午前八時三〇分、終業は午後五時、休憩は午前一一時四〇分から午後〇時三〇分まで)、休日(週一日は休日とし、各人の休日をいつにするかは各人別に一か月前に提示する。年末年始休暇は一二月二九日から一月四日までとする。その他の休日二四日間の各人の休日をいつにするかは各人別に一か月前に提示する。)に関する規定を追加することを通告した。

8  五月一七日、六回目の団体交渉が行われ、原告組合は、会社体制整備に関する提案を撤回するよう求め、被告会社は、会社再建の根幹であるとして撤回することはできない旨回答した。原告組合は、同日、会社の誠意がない態度に抗議するとして、同月二六日に終日ストライキを行う旨通告し、翌一八日、先に通告した終日ストライキを行った。

給与規定には、賃金支払日は毎月二七日とし、当日が日曜日又は祝日のときは前日に支給する旨が定められ、労働協約上もその旨が定められており、同月は二七日が日曜日であるため前日の二六日が賃金支給日となるべきところ、被告会社は、同月二二日、原告組合が同月二六日にストライキを行うことを理由に二八日に変更する旨通告した。

右通告を受けて、原告組合は、同日、ストライキをすることを理由に二八日に変更することの根拠等を文書で明らかにするよう求め、同月二三日、被告会社の右措置は労働協約や労働慣行を無視して組合を挑発するものであるので、これに抗議するとして、同日午後六時からの最終時限の残業を拒否する旨通告して、これを行った。

同月二四日、被告会社は、会社の体制整備に関する提案のうち労働時間の見直案につき、次のような内容の基本的な見解を示し、団体交渉を求めた。

(1)  年末年始の七日を除き年中無休とし、営業時間は、月曜日から金曜日までは一〇時間、土曜日、日曜日及び祝日は七時間とする。

(2)  現行の年間労働時間(所定内一九四五時間、所定外四八四時間の合計二四九二時間)を増やさないものとし、その範囲で勤務日や勤務時間を次のとおり変更する。なお、勤務日や勤務時間を変更するに当たり、現行の賃金額を変動させない範囲で賃金体系を変更する。

<1> 技術(ママ)指導員を二班に分け、日曜日、祝日とその翌日とを交替で勤務させる。

<2> 従業員の休日は一斉方式からローテーション方式に変更し、年間の休日数は現行のとおり合計八一日(日曜日五二日、祝日一二日、土曜日一二日、夏季休暇五日)とし、この休暇を毎月六日以上組み入れた個別の勤務表により指示する。

<3> 季節により時差出勤制を導入する。

9  五月二五日、七回目の団体交渉が行われ、原告組合は、労働協約と就業規則の改定案の撤回、五月分の賃金の二六日支給、昭和五九年分の厚生資金一五万円の支給等を求めたが、被告会社は、原告組合の右要求を拒否し、原告組合が自主的に従前の労働協約を破棄すれば会社も右改定案を撤回する旨及び春闘が妥結して賃上げをする場合にこれまでは四月一日に遡って実施していたが、今回からは妥結日以降の分について実施する旨、厚生資金を支給しないのは、これが組合の経費援助に当たるからである旨を述べ、教習所の教習生待合室に組合のビラを貼らないよう要請したが、原告組合は、これからはもっと多くのビラを貼ると言って反発した。

原告組合は、同月二八日、賃金支給日を変更したことに抗議するとして、同日の通告により最終時限の残業を拒否し、同月二九日、団体交渉を拒否していることに抗議するとして、当日の通告により最終時限の残業を拒否し、六月一日午後に半日のストライキを行う旨通告した。

10  五月三一日、八回目の団体交渉が行われ、原告組合は、再度、厚生資金の支給を求めたが、被告会社は、これが組合に対する経費援助に当たるとの理由で支給を拒否した。

原告組合は、六月一日午後に先に通告した半日のストライキを行った。

被告会社は、同月五日、「厚生資金協定について会社は了解していない。協定書の社印は社長の了解なく押されたものである。五八年度は一五万円を支給したが、一年限りのものである。従前の協定書の押印に問題のあるものは取扱いを検討する。」旨通告した。

同月六日、原告組合は、不誠実な団体交渉に抗議するとして、同月八日に二時間の残業を拒否し、翌九日に終日ストライキを行う旨通告した。

11  六月八日、九回目の団体交渉が行われたが、交渉は進展しなかった。

原告組合は、先に通告したとおり、同日二時間の残業を拒否し、同月九日に終日ストライキを行い、同月一三日、文書を乱発し、挑発していることに抗議するとして、同月一六日午前に半日のストライキを行う旨通告した。

12  六月一五日、一〇回目の団体交渉が行われ、被告会社は、過去に負債がなくても来年から赤字になるような状況であるので、賃上げの原資はない旨説明し、原告組合が経理の公開を求めたのに対し、これを拒否した。

原告組合は、同月一六日午前に、先に通告した半日のストライキを行った。

被告会社は、同月一八日、原告組合が教習コース内に設置した抗議の看板を撤去するよう通告し、原告組合は、同日、不誠実な団体交渉に抗議するとして、同月二三日に終日ストライキを行う旨通告した。

被告会社は、同月一九日、原告組合が設置した前記看板を撤去し、原告組合に対し、その返還を求めるなら、同じことを繰り返さない旨の誓約書を添えて松原まで申し出るよう通告した。

原告組合は、同月二二日ころ、教習所内とその付近の電柱やガードレールに、使途不明金の返還、教習料金の引下げ、重役の退陣を求める旨を記載した複数の看板を設置した。

13  六月二二日、一一回目の団体交渉が行われ、原告組合は、夏季一時金の支給を求め、被告会社は、役員会で検討する旨回答した。また、被告会社は、紛争解決のための小委員会の設置を提案し、原告組合は、右一時金の回答如何ではこれに応じる用意のある旨回答した。

原告組合は、同月二三日、先に通告した終日ストライキを行い、同月二五日、団体交渉に誠意がないのでこれに抗議するとして、同月二九日午後に半日のストライキを行う旨通告した。

14  六月二八日、一二回目の団体交渉が行われ、原告組合は、夏季一時金の支給を求め、被告会社は、近日中に回答する旨を述べた。

同日、被告会社は、各従業員に対し、「従業員並びに御家族様」と題する書面を郵送した。その内容は、これまで週一回以上のペースで原告組合と団体交渉を行ってきたが、その交渉の経緯や概要が従業員に十分かつ円滑に伝達されているか、従業員の意向が交渉に反映されているか疑問が多く、法の定めに従い結成された社会的責任を負うべき労働組合の言動としては不可解な点が多いなどと原告組合を批判したうえ、業界や被告会社の抱える問題点を掲げ、厳しい経営環境の中で企業を存続発展させるための改善策として、<1>労働協約と就業規則の改定、経営基盤の確立、<2>規律秩序の整備、従業員の資質の向上、効率的業務の推進、<3>労使の信頼関係確立の阻害要因の除去、法律や社会通念を逸脱した各種言動の改善等を掲げて、各従業員の理解と協力を要請するというものであった。

原告組合は、同月二九日、先に通告した半日のストライキを行い、同月三〇日、被告会社の就業規則改定案に対する意見書を提出し、その意見書の中で、右改定案は組合潰しを狙い、都南興業時代から原告組合が勝ち取ってきた労働条件の切下げを狙った改悪案であるとの基本的認識を示し、各条項案に対する組合の意見を詳細に述べ、七月二日には、被告会社が各従業員に前記書面を郵送したことに抗議するとして、同月七日に終日ストライキを行う旨通告した。

同月二日、原告組合は、自交総連神奈川の下部組織の神奈川県自動車教習所支部協議会が神自教労組として独立したことに伴い、神自教労組の支部組織に編入されたが、実体は、それまでと変わるものではなかった。

同月四日ころ、原告組合は、被告会社が労働条件の切下げを狙った不当な合理化案、労働協約・規則改定案を提示したことなどを非難し、抗議先として中山と松原の自宅の住所や電話番号を記載したビラを街頭で配布し、その後も同種のビラを数回街頭で配布した。

15  七月六日、一三回目の団体交渉が行われ、原告組合は、再度夏季一時金の支給を求め、被告会社は、検討中であると回答した。

原告組合は、同月七日、先に通告した終日ストライキを行い、同月九日、不誠実な団体交渉に抗議するとして、同月一四日午前に半日のストライキを行う旨通告し、同月一〇日、教習コースに接する道路脇の擁壁に「会社は春闘一時金を早期に解決せよ。使途不明金を返還せよ。」などと記載した大きな看板を設置した。

被告会社は、同月一一日、原告組合から提出された就業規則改定案に対する意見書は、予断と偏見に基づく意見であるから受け入れられないとしたうえで、労働協約で定めた労働条件につき、別途改定見直し作業を提案しているので、これにつき再検討するよう要求し、同月一二日、原告組合が新組織に加盟した点を明らかにするよう要求した。

16  七月一三日、一四回目の団体交渉が行われ、被告会社は、夏季一時金につき来週文書で回答する旨述べたが、原告組合は、不誠実な団体交渉に抗議するとして、当日の通告により二時間の残業を拒否した。

被告会社は、同日、「会社の運営体制の整備を図り効率的運営を促進し責任体制を確立するため関係職種の執務内容の実態調査を把握するため」として、各従業員に対し、同月一六日から八月一五日までの間の執務内容を明らかにするよう指示した。

原告組合は、七月一四日午前に、先に通告した半日のストライキを行い、不誠実な団体交渉に抗議するとして、同月二一日に終日ストライキを行う旨通告した。

第一課長谷求馬は、被告会社の指示を受けて、同月一四日、教習車両内の調査を行い、同月一六日、私物や組合機関誌等が置かれていた車両の番号やその車両を保管使用している担当指導員名を被告会社に報告した。その調査は、コンソールボックス内に保管された物まで対象とされた。

17  七月二〇日、一五回目の団体交渉が行われ、被告会社は、夏季一時金について内払する旨回答したところ、原告組合は、一時金の算定方法が労働協約で定められたものと違うとして、その受取りを拒否する旨通告した。しかし、同日、被告会社は、労使交渉が難航して早期の収拾は見込めないので従業員の生活を考えて同月二四日に夏季一時金の内払をする旨を通告した。

原告組合は、同月二一日、先に通告した終日ストライキを行い、同月二三日、被告会社がビラを剥がしたことに抗議するとして、当日の通告により二時間の残業を拒否した。

被告会社は、同月二四日、原告組合に対し、「会社は四月一八日付け文書で協約改定案を示して協議を求めてきたが、現在まで具体的な交渉がなされていない。従前の協定は不都合な面が多いので、すべての協定を一一月二三日付けで解約する。無協約状態にさせないため、提案があれば実現性のある具体的で会社の立場を認めた提案をされたい。」旨通告し、各従業員に対し、夏季一時金を内払する旨通知した。

原告組合は、その内払金が、年休を査定対象に入れた歩合で計算されたものであって容認し難いものであったが、組合員の生活を考えて、その支給に応じることとしたが、同月二六日、被告会社が直接従業員に夏季一時金の内払を通知したことに抗議するとして、同月二七日午後に半日のストライキを行う旨通告して、これを行い、同月三一日、団体交渉を拒否したことに抗議するとして、八月四日に終日ストライキを行う旨通告した。

18  八月一日、一六回目の団体交渉が行われ、原告組合は、夏季一時金の残額につき支給を求めたが、被告会社は、春闘解決後でないので数字が出せない旨回答した。

被告会社は、同月二日、各従業員に対し、先に指示した実態調査についての中間報告をするよう指示した。

原告組合は、同月三日、教習所の教習生待合室の窓ガラスに、賃上げ、一時金問題が解決されていないのに会社が不当に一時金の内払をしたことを非難するとの内容の張り紙をし、同月四日、先に通告した終日ストライキを行い、さらに、被告会社が右張り紙を剥がしたことに抗議するとして、同月六日午後に二時間のストライキを行う旨通告して、これを行い、同月七日、被告会社が張り紙を剥がしたことに抗議するとして、当日の通告により一時間の残業を拒否し、先に従業員に対して実態調査の中間報告を指示したことに対し、かつてなかったことで異様な感を受けているとして、実態報告をする必要はないとの見解を伝え、同月八日、教習所検定課前のドアに「ボーナスもまともに払わずデカイ事言うな」との張り紙をした。

被告会社は、同日、実態調査の中間報告をしない従業員に対し、業務指示に従わない場合は厳正に処理する旨の警告書を交付した。

原告組合は、同月一八日、不誠実な団体交渉に抗議するとして、同月二四日午後に半日のストライキを行う旨通告し、同月二二日、神自教労組役員を交えての団体交渉を同月三〇日に行いたい旨申し入れた。

被告会社は、同月二四日、同月三〇日に予定された団体交渉に神自教労組役員が加わる理由、右団体交渉が予定されているのにその前日の同月二九日に団体交渉を行う理由、当事者同士で話合いができない理由を明らかにしなければ団体交渉に応じない旨を回答し、原告組合は、同月二四日午後に先に通告した半日のストライキを行った。

19  同月二九日、一七回目の団体交渉が行われ、原告組合は、夏季一時金について回答を求め、これが解決しない限り合理化案の協議には応じない旨述べたところ、被告会社は、春闘解決後でないと数字が出せない旨回答した。

原告組合は、同日、団体交渉を拒否したことに抗議するとして、同日から九月末日まで最終時限の残業を拒否する旨通告し、自交総連神奈川、神自教労組とともに、神奈川地方労働委員会に対し、被告会社が<1>賃金カット方式を一方的に変更して賃金カットをした行為、<2>ストライキを理由に五月分の賃金支払日を繰り延ばした行為、<3>各組合員に個別に夏季一時金の内払の通知や組合を批判する内容の通知をした行為、<4>昭和五九年分の厚生資金の支給をしない行為は不当労働行為に当たるものであると主張して、その救済の申立てを行い(後に、原告組合は、救済を求める不当労働行為として、被告会社が<5>昭和五九年年末、六〇年夏季の各一時金の支給を遅延させた行為、<6>三六協定の締結を拒否して原告組合(ママ)に残業を命じなかった行為の二点を追加した。)、八月二九日から九月末日まで毎日一時間の残業を拒否した。

原告組合は、同月三日、夏季一時金について同月七日に団体交渉をするよう申し入れたが、被告会社は、同月五日、原告組合の組織の実体が不明確であるとして、疎明資料を添えて組織の実体を明らかにするよう求め、その点を明らかにするまで団体交渉には応じない旨通告した。

原告組合は、同月七日、教習コース内に「県下一の高い教習料金で最低の労働条件、ボーナスも出せない松原君」などと記載した立看板を設置した。

同月一〇日、野口隆外四名の課長から被告会社に対し、「原告組合が九時限目の就労拒否を通告し、これに対し被告会社は、夜間教習生のための措置として日曜祭日の教習を計画し、その実施方を管理職に要請してきたが、管理職は、現在、九時限目の教習の対応で手一杯であり、日曜祭日の教習実施は原告組合に対し徒に刺激を与え、紛争を拡大させるおそれもあることから、日曜祭日の教習実施には反対である。」旨の上申書を提出したところ、被告会社は、そのころ、右上申書の内容は受け入れ難いものである旨の書面を右管理職らに手渡した。

20  九月一四日、原告組合は、再度、団体交渉を申し入れたが、同月一七日、被告会社は、原告組合に対し、組織の実体等を明らかにすれば団体交渉に応じる旨回答した。

同月一七日、被告会社は、原告吉崎博、同曽根光憲に対し、同原告らが同月一四日午後六時一〇分から午後七時まで教習コース内に自家用自動車を駐車させたことに関し、駐車させた理由等の報告を求める業務指示書を手渡したところ、同月一九日、原告組合は、右原告らに代わって、「当日午後六時一〇分から教習が実施される旨の連絡を組合員は一切受けていない。組合活動の内容について会社に報告する義務はない。右のようなことは口頭で指示すれば何の支障もなく解消されるものである。組合として回答し個々には回答しない。」旨回答した。これに対し被告会社は、右原告らに代わって回答した理由や根拠等を明らかにするよう求め、右原告らに対し、再度、右事項につき回答するよう求め、管理職らに対しても、右駐車により教習が不能となった問題について、事実の報告を求めたり、処置の仕方を非難したりする趣旨の書面を繰り返し手渡した(被告会社と管理職らとの間の以上のような書面のやり取りは一二月三日まで続いた。)。

21  九月二〇日、原告組合は、同月二一日から午後七時までの残業に応じる旨を申し入れたが、被告会社は、原告組合が残業拒否の闘争をするようになって、教習生の間に不安が広まり、夜間教習を希望する者が減少するようになったことから、夜間教習を実施しないこととして、今後三六協定を締結しない旨を通告した。しかし、同月二四日、神自教労組執行委員長の渡辺正義から、今後夜間については争議行為の対象にしないことを約束するので三六協定を締結してもらいたいとの要請を受けたため、その要請に応じて三六協定を締結した。その際、被告会社は、右の約束を書面で明らかにするよう求めたが、渡辺は、これには応じなかった。

原告組合は、一〇月二日、地労委の審問を傍聴するためとして、同月八日午後に半日のストライキを行う旨通告し、これを行い、同月九日、団体交渉を申し入れたが、同月一一日、被告会社からこれを拒否され、集会参加のためとして、二七日午後に半日ストライキを行う旨通告した。

22  被告会社は、一〇月二三日、七月二四日付けで解約予告をした労働協約を解約する旨を通告し、原告組合は、翌二四日、右に抗議するとして、当日の通告により終日ストライキを行うとともに、二七日午後に半日のストライキを行う旨通告した。

同月二四日と二五日、松原と原告込山、同鎌倉との間で話合いが行われ、松原は、月末に賃上げと夏季一時金の額を回答する旨述べたが、月末になってもその回答をしなかった。原告組合は、同月二七日午後に先に通告した半日のストライキを行った。

原告組合は、一一月二日、同月八日に団体交渉に応じるよう申し入れたが、被告会社は、同月五日、団体交渉につき正当な交渉権を有する組織であることを明らかにしていないとして、これを明らかにするまでは団体交渉には応じない旨を通告した。

原告組合は、同月六日、地労委の審問を傍聴するためとして、同月九日午後に半日のストライキを行う旨通告して、これを行い、同月一〇日、秋闘要求書を提出し、団体交渉を申し入れるとともに、正当な理由なく団体交渉を拒否し、労働協約を破棄して、組合潰しを意図していることに抗議するとして、同月一五日から二二日まで最終時限の残業を拒否する旨通告し、これを行った。

23  一一月一六日、八月二九日以来の一八回目の団体交渉が行われたが、何ら進展しなかった。

原告組合は、一一月二〇日、団体交渉を申し入れたが、同月二二日、被告会社から拒否されたので、同月二四日、再三にわたる団体交渉の拒否に抗議するとして、同月二六日から三〇日まで一時間の残業を拒否する旨通告し、これを行った。

同月二八日、原告組合員は、中山の自宅に抗議に赴いたところ、同人と面会することができなかったため、中山の自宅の周囲に、「中山社長労働者を殺す気か」「夏のボーナス出せ 中山社長」「中山二郎社長 会社に出て来て話そうよ 都南自教労組」と記載した幕を垂らしたり、貼り紙をしたりした。

原告組合は、一二月三日、被告会社に対して憤りを感じるとして、同月四日から七日まで最終時限の残業を拒否する旨通告して、これを行い、同月六日、教習所の学科教室付近に「病人の布団をはぎ取る人非人松原義美」と記載した立看板を設置し、同月八日、団体交渉を申し入れて拒否され、卑劣な会社に抗議するとして、同月一〇日から一四日まで最終時限の残業を拒否する旨通告し、これを行った。

同月一二日、原告組合は、名称を全国自動車交通労働組合総連合会神奈川地方労働組合神奈川県自動車教習所労働組合都南自動車教習所支部と変更した。

24  一二月一四日、被告会社は、原告組合員ら従業員に対し、労使間で話合いがつかないため、年末一時金の支給をすることができないので、夏季に内払した範囲内で貸付けを行う旨通告し、同月一七日、原告組合に対し、同月二三日に期限が到来する三六協定については、組合が残業拒否闘争を続けていて、更新する意味がないから、しばらく締結しないこととする旨、勤務時間は午後六時までとするが、午後五時以降の法内残業については二割五分増の賃金を支払う旨及び三六協定の失効で一日の平均賃金の額が変わるので、従前残業手当を含めた三か月の賃金総支給額を基礎にして年次有給休暇中に支給すべき平均賃金を算定していたものを、当該月の賃金総支給額を基礎にして算定することにする旨通告した。

原告組合は、同月一七日、団体交渉の拒否に抗議するとして、当日の通告により午前に一時間のストライキを行い、同月一八日、地労委の審問を傍聴するためとして、同月二一日午後に半日のストライキを行う旨通告し、同日これを行った。

そのころ、神自教労組執行委員長渡辺正義から被告会社に対し、会社のそれまでの対応の仕方に抗議するとして、原告組合と連帯して同月二一日に最終時限の残業を拒否する闘争を行う旨通告し、これを行った。

25  一二月二二日、中山、松原と原告込山、同鎌倉との間で話合いが行われたが何ら進展しなかった。同月二四日も松原と原告込山、同鎌倉との間で三六協定と一時金について話合いが行われたが、同様であった。同日以降、被告会社は、先に通告した内容に従い、午後六時以降の残業を従業員に命じなくなり、また、労働協約により年次有給休暇中及び年末年始休暇中に支給すべきものとされた平均賃金を、残業手当を含む過去三か月の賃金支給額を基礎にして算定していた額から当該月の残業手当を含まない賃金支給額を基礎にして算定した額に変更する旨通告した。

原告組合員は、就業規則上、終業時刻午後五時までで実働七時間一〇分となっているため、午後六時まで就労すると法定の労働時間の八時間を超えることになるとして、午後五時から午後六時までの就労を拒否した。

同月二六日、原告組合は、教習コース内に「賃上げ・夏のボーナス早期解決せよ」などと記載した複数の立看板を設置した。

26  昭和六〇年一月一七日、中山、松原と原告込山、同鎌倉との間で再び話合いが行われたが、なんら進展しなかった。二月ころ、数回団体交渉が行われ、原告組合は、夜間教習を再開させて業務を正常化するよう求め、被告会社は、夜間教習時間をストの対象としない旨の書面を差し入れれば三六協定を締結して残業を命じる旨回答した。しかし、原告組合は、その旨の書面の作成を拒否した。

原告組合は、三月一二日、地労委の審問を傍聴するためとして、同月一六日に終日ストを行う旨通告し、これを行った。

同月、被告会社は、団体交渉の席上で、昭和五九年の一時金として一人平均一〇〇万円を支給する旨回答したが、配分方法の点で折合いが付かず、合意するに至らなかった。

27  四月一日、被告会社は、原告組合員に対し、昭和五九年度の年末一時金の内払をする旨通知し、原告組合はこれに応じることとした。

六月六日、原告組合は、書面をもって、三六協定の締結を拒否していることを非難し、早期の業務正常化を求めたが、被告会社は、これに応じなかった。

一一月一日、被告会社と原告組合との間で、昭和五九年度の一時金の額を指導員一人当たり平均一〇〇万円とする旨の合意が成立した。

28  昭和六一年七月、被告会社は、原告組合との間で三六協定を締結し、夜間教習を復活させ、原告組合員に対し、午後五時以降の残業を命じるようになった。

四  右認定の事実に基づき、原告らの各主張について判断する。

1  各組合員に対する干渉、団体交渉の拒否、賃金支払日の変更

松原が取締役に就任した昭和五八年一二月以降、被告会社は、原告組合を嫌悪し、対決姿勢を強めていたところ、昭和五九年六月二八日、原告組合に対する不信を煽る内容の書面を原告組合員に送付し、原告組合との間で一時金について交渉中の同年七月二四日、夏季一時金を内払する旨の内容の書面を組合を介することなく直接原告組合員に送付し、これを内払することによって、原告組合員の動揺を誘い、原告組合を弱体化させようとしたものというべきであるから、被告会社の右行為は、原告組合に対する支配介入として不当労働行為に当たるものである。また、被告会社は、昭和五九年春闘の賃上げや一時金についての団体交渉において、経営合理化案や労働協約等の改定案を提示し、これについての協議と賃上げや一時金についての協議を同時に行うことに固執しているが、被告会社の提案は、その提案の根拠となる資料も示さないで、一方的に、都南興業時代から長期間にわたって形成されてきた労働協約や就業規則による原告組合や原告組合員の権利を一挙に失わせようとするものであって、到底原告組合の受け入れ難いものであること、賃上げや一時金とはその緊急度も内容も全く異なるものであることからすると、被告会社は、これを条件とすることによって賃上げと一時金に関する団体交渉を事実上拒否してその支払を遅らせてきたものというべきであるから、被告会社の右行為は、正当な理由なく団体交渉を拒否するものとして不当労働行為に当たるものである。さらに、被告会社は、給与規定と労働協約に、賃金は、賃金支払日が日曜日又は祝日に当たる場合は前日に支払う旨定められているから、同年五月分の賃金は、日曜日の二七日の前日である二六日に支給しなければならないところ、原告組合が同日ストライキをすることを理由に、二八日に支給することとし、これにより、原告組合員の動揺を誘い、原告組合を弱体化させようとしたものというべきであるから、被告会社の右行為は、原告組合に対する支配介入として不当労働行為に当たるものである。

2  旧賃金カット協定の解約と新賃金カット方式の実施

給与規定には、自己都合による欠勤の場合は日割計算により賃金カットする旨が定められているが、旧賃金カット協定においては、原告組合員が組合活動を理由に欠勤した場合には、どのような組合活動であっても退職金基礎算定額(基準内賃金額よりも四割前後低額となっている。)を基礎に時間割で賃金カットをするものとして、原告組合活動を理由とする欠勤の場合を特別に有利に取り扱っていた。しかし、組合活動による欠勤の不利益は本来組合が負担すべきものであるから、その一部を被告会社が負担することになる旧賃金カット協定による賃金カットは、原告組合に対する継続的な経費援助の性格を有するものである。旧賃金カット協定が締結されてから昭和五九年四月までの間に実際に支給されたその差額がいくらになるかを明らかにする証拠はないが、本訴請求にかかる昭和五九年五月分から昭和六一年三月分までの差額だけでも約四四四万円に達することを考えると、旧賃金カット協定による経費援助の額は、原告組合の規模に照らして決して小(ママ)額ではなく、労働組合法二条二号ただし書、七条三号ただし書で経費援助が許容される場合と同視し得るものではない。このような経費援助は、それにより、現実に組合に対する支配介入の結果が生じたかどうか、使用者の主導によってなされたものであるかどうかにかかわりなく法の禁ずるものというべきである。

被告会社がした旧賃金カット協定の解約は、原告組合の弱体化を狙った面のあることは否定し難いものの、これが組合に対する経費援助という違法行為を止めることを内容とするものであることにかんがみると、この解約をもって組合に対する支配介入の不当労働行為であるというのは相当ではない。また、個人原告らは、違法な経費援助となるこの差額金を請求することはできないといわなければならない。

3  厚生資金の打切り

原告組合に対する金銭の給付が法の禁ずる経費援助に当たるかどうかは、その支給の名目ではなく、実質から判断すべきところ、(証拠略)によれば、厚生資金協定は、その締結時、原告組合が、使途を特定せずに一〇〇万円の支給を要求し、被告会社からの、具体的に厚生目的に使用することを明らかにしてその領収書の提出があったときに支払うようにすべきであるとの提案を断り、その要求を押し切る形で、使途を特定せずに支給することにして締結されたものであり、原告組合は、昭和五八年分、昭和五九年分のいずれについても使途を明確にしていないものであると認められるから、厚生資金協定による給付金は、名目は厚生資金であるが、実質は原告組合の運営のための経費に充てられるものであって、原告組合に対する経理(ママ)援助の性格を有するものである。したがって、旧賃金カット協定の解約について述べたのと同じ理由で、この解約をもって組合に対する支配介入の不当労働行為であるというのは相当でなく、また、原告組合は、昭和五九年分の厚生資金一五万円の請求をすることはできないといわなければならない。

4  三六協定の締結拒否

被告会社は、昭和五九年九月の原告組合による残業拒否闘争により夜間教習生に迷惑をかけたため、さらに、迷惑をかけて一層信用を失うことを懸念して(現に、夜間教習を実施しなかったこと等により昭和六〇年は入所生徒数が激減した。)、残業で行っていた夜間教習を中止し、三六協定の締結を拒否したところ、神自教労組執行委員長の渡辺正義から、夜間教習時間帯を争議行為の対象にしないことを約束するから夜間教習を再開してもらいたいと要請された。その際、その約束を書面化するよう要求し、同人から断られたが、その口約束を信じて、夜間教習を始めることとし、三六協定を更新した。ところが、原告組合が、再び、その直後から残業拒否の争議行為を行ったため、被告会社は、従前にも増して教習生に迷惑をかけ、信用を失う結果になった。こうしたことから、被告会社は、昭和五九年一二月に三六協定の締結を拒否したものであり、その後、昭和六〇年に入って、原告組合が、夜間業務を実施するよう要求した際にも、夜間教習時間帯を争議行為の対象としないことを書面で約束するよう要求したが、原告組合から拒否されたため、夜間教習を再開することをためらい、三六協定の締結を拒否したものである。三六協定の締結を拒否すれば、都南興業時代から恒常的に残業をして残業手当の支給を受けてきた原告組合員に対して、経済的な打撃を与える面があることは否定し難いけれども、被告会社が三六協定の締結を拒否した前記事情にかんがみると、被告会社に原告組合に対する支配介入の不当労働行為意思があったとは認め難く、したがって、これが不当労働行為として不法行為を構成することを前提とする個人原告らの残業手当相当額の損害賠償請求も理由がないといわなければならない。

5  休暇中の賃金の算定方法の変更

年次有給休暇中の賃金に関する協定及び年末年始休暇中の賃金に関する協定には、その休暇中に平均賃金を支給する旨の定めがあるだけで、その平均賃金の算定方法は明らかでなく、その休暇中に原告ら主張の残業手当て(ママ)相当額を支給する旨の定めはない。しかし、被告会社にあっては、長年にわたって、原告ら主張の算定方式により算定された額が支給されており、これは各従業員に対する賃金補償として定められたものであるから、被告会社と各従業員との間の労働契約の内容となっていたものというべきである。したがって、三六協定を締結していないというだけの理由で一方的に原告組合員に不利益に変更する旨通告してそれを実施した被告会社の右行為は、先に認定した経緯に照らすと、これにより原告組合員の動揺を誘い、原告組合を弱体化させようとするものというべきであるから、組合に対する支配介入として不当労働行為に当たるものである。

五  不法行為による原告組合の損害

1  教育宣伝費、活動費

原告組合は、被告会社の不当労働行為により、教育宣伝費と活動費の損害を被ったと主張するが、その費用の具体的内容についての主張立証がないから、その費用と不当労働行為との関係は明らかでなく、したがって、この点で右主張は理由がない。

2  無形の損害

原告組合は、被告会社の右不当労働行為により、組合員の動揺を生ずるのを防ぎ、組合の団結を維持するためにさまざまな対応を迫られるなどして、無形の損害を受けたことが認められる。不当労働行為の態様やこれへの原告組合の対応の仕方その他諸般の事情を考慮し、その損害の額は二〇〇万円をもって相当と認める。

3  弁護士費用

原告組合は、被告会社の右不当労働行為によって侵害された権利を回復するために、同原告の訴訟代理人に右救済の申立てと本訴の提起を委任した。事案の内容にかんがみ、その弁護士費用のうち二〇万円をもって右不当労働行為と相当因果関係にある損害と認める。

六  不当労働行為による個人原告らの損害

1  休暇中の賃金の算定方式の変更による損害

先に述べたように、年次有給休暇及び年末年始の休暇中に原告ら主張の算定方式により算定された額の残業手当相当額を支給することは、労働慣行により原告組合員の労働契約の内容となっているというべきであるから、合理的な理由もないのに被告会社がこれを一方的に不利益に変更して支給する行為は違法であるが、従前の算定方式によっても、その算定基礎額は、過去三か月間の実際に支払われた残業手当を含む賃金総額であるところ、個人原告らは、三六協定を締結していたならば支払われたであろう残業手当を含めた額が算定基礎額であると主張していて、その実際に支払われた賃金総額がいくらであるかを具体的に立証しない(三六協定を締結しないことが違法でないことは先に判断したとおりであるから、これが締結されていたならば得られたであろう残業手当の額を含めた額を算定基礎とするのは相当でない。)。したがって、右損害の主張は、この点で理由がない。

2  審問を傍聴するために欠勤したことによる損害

前記不当労働行為救済申立事件についての地労委の審問を傍聴するためストライキをして賃金カットされた賃金は、右不当労働行為と相当因果関係にある損害とはいえないから、右損害の主張は、この点で理由がない。

3  慰謝料

原告組合員は、被告会社が三六協定の締結を拒否して残業を命じなかったことにより経済的に大きな打撃を受け、精神的苦痛を受けたと主張するが、三六協定の締結を拒否した行為が違法でないことは先に述べたとおりであるから、右損害の主張は、この点で理由がない。

七  結論

以上の次第で、原告組合の請求は、無形の損害と弁護士費用の損害の合計二二〇万円とこれに対する不法行為後の昭和六〇年四月二八日から支払済みまで年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し、その余を棄却し、個人原告らの請求は、全部理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき、民事訴訟法八九条、九二条、九三条を、仮執行の宣言につき、同法一九六条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小林亘 裁判官 飯塚圭一 裁判官 柳澤直人)

当事者目録

原告番号10と36は欠番

1原告 全国自動車交通労働組合総連合会神奈川地方労働組合神奈川県自動車教習所労働組合都南自動車教習所支部

右代表者支部長 石井猛

2原告 井上則保

(ほか四八名)

右原告ら訴訟代理人弁護士 林良二

同 三浦守正

(ほか八名)

右林良二訴訟復代理人弁護士 鈴木裕文

同 藤田温久

同 高橋宏

被告 株式会社都南自動車教習所

右代表者代表取締役 小川直樹

右訴訟代理人弁護士 山田有宏

同 丸山俊子

同 松本修

請求債権目録

<省略>

請求債権内訳表

<省略>

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