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横浜地方裁判所 昭和63年(わ)1509号 判決 1989年4月19日

本店所在地

神奈川県横須賀市久里浜三丁目一一番二号

有限会社丸仲運送店

(右代表者代表取締役 森昌弘)

本籍

同市浦賀町三丁目一〇番地

住居

同市久里浜三丁目一一番二号

会社役員

森智津子

昭和一九年四月一八日生

右の者らに対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官寺西賢二、同大圖明出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人有限会社丸仲運送店を罰金二五〇〇万円に、被告人森智津子を懲役一年六月に処する。

被告人森智津子に対し、この裁判確定の日から四年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人有限会社丸仲運送店は、神奈川県横須賀市久里浜三丁目一一番二号に本店を置き、一般区域貨物自動車運送業等を目的とする有限会社(資本の総額一〇〇〇万円)であり、被告人森智津子は、同会社の取締役として同会社の業務全般を総括していたものであるが、被告人森は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、架空経費を計上するなどの不正な方法により所得を秘匿した上、

第一  昭和五八年一一月一日から昭和五九年一〇月三一日までの事業年度における被告会社の実際の所得金額が七五五九万〇〇四八円であったにもかかわらず、昭和五九年一二月二七日、神奈川県横須賀市上町三丁目一番地所在の横須賀税務署において、同税務署長に対し、欠損金額は一一九一万五二四二円であって、納付すべき法人税額はない旨の虚偽の法人税確定申告書(平成元年押第一〇二号の一)を提出し、もって、不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額三一七三万二二〇〇円を免れ、

第二  昭和五九年一一月一日から昭和六〇年一〇月三一日までの事業年度における被告会社の実際の所得金額が五八八四万三六〇四円であったにもかかわらず、昭和六一年一月四日、前記横須賀税務署において、同税務署長に対し、所得金額は零円であって、納付すべき法人税額はない旨の虚偽の法人税確定申告書(同号の三)を提出し、もって、不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額二四四〇万〇九〇〇円を免れ、

第三  昭和六〇年一一月一日から昭和六一年一〇月三一日までの事業年度における被告会社の実際の所得金額が九一四六万一六九三円であったにもかかわらず、昭和六二年一月五日、前記横須賀税務署において、同税務署長に対し、欠損金額は一万六三〇八円であって、納付すべき法人税額はない旨の虚偽の法人税確定申告書(同号の五)を提出し、もって、不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額三七九二万一一〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示事実全部について

一  被告会社代表者森昌弘の当公判廷における供述

一  被告人森智津子の当公判廷における供述

一  被告人森智津子の検察官に対する供述調書二通

一  被告人森智津子の大蔵事務官に対する質問てん末書六通

一  森昌弘の検察官に対する供述調書

一  森昌弘、武井正作、岡花宣子、金子収之(二通)、藤原節子(昭和六二年一一月一一日付)、藤間繁(二通)、金田太一こと金大植、中村環、森秀夫、森美知子、須藤久夫及び八木儀弥の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一  大蔵事務官作成の査察官報告書(六枚綴りのもの)

一  大蔵事務官作成の貨物運賃収入調査書、軽油費調査書、給料賃金調査書、厚生費調査書、退職金調査書、傭車料調査書、修繕費調査書、消耗品費調査書、租税公課調査書、事故費調査書、交際費調査書、出張旅費調査書、雑費調査書、受取利息調査書、雑収入調査書、支払利息割引料調査書、貸倒損失調査書、固定資産売却損調査書、交際費限度超過額調査書(二通)、貸倒引当金超過額調査書(二通)、貸倒引当金認容額調査書(二通)、欠損金の当期控除額調査書(二通)、申告欠損金調査書(二通)、事業税認定損調査書、その他所得調査書(二通)、現金調査書、預金調査書、未収運賃調査書、前渡金調査書、車両運搬具調査書、会員権調査書、代表者勘定調査書、短期借入金調査書、未払金調査書、(株)湘南海陸勘定調査書及び未納事業税調査書

判示第一の事実について

一  木村郁子、柳井弘、長島カズ子の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書、法人税額計算書(いずれも昭和五八年一一月一日から昭和五九年一〇月三一日までの事業年度に関するもの)及び査察官報告書(三枚綴りのもの)

一  押収してある法人税確定申告書一綴り(平成元年押第一〇二号の一)

判示第二及び第三の事実について

一  藤原節子の大蔵事務官に対する昭和六二年八月六日付及び同年一〇月二七日付各質問てん末書

判示第二の事実について

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書及び法人税額計算書(いずれも昭和五九年一一月一日から昭和六〇年一〇月三一日での事業年度に関するもの)

一  押収してある法人税確定申告書一綴り(平成元年押第一〇二号の三)

判示第三の事実について

一  渡辺友幸、松原龍夫、内田嘉八(二通)、浜野哲生、高柳美知子、長浜親夫の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一  大蔵事務官作成の脱税額計算書、法人税額計算書(いずれも昭和六〇年一一月一日から昭和六一年一〇月三一日までの事業年度に関するもの)及び査察官報告書(一〇枚綴りのもの)

一  押収してある法人税確定申告書一綴り(平成元年押第一〇二号の五)

(法令の適用)

判示第一ないし第三の各所為は、いずれも法人税法一五九条一項(七四条一項二号)に(被告会社については、さらに同法一六四条一項に)該当し、被告会社には、情状により同法一五九条二項を適用し、被告人森智津子については、所定刑中懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、被告会社については、同法四八条二項により合算した金額の範囲内で、被告人有限会社丸仲運送店を罰金二五〇〇万円に処し、被告人森智津子については、同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第三の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で、被告人森智津子を懲役一年六月に処し、被告人森智津子に対し同法二五条一項を適用して、この裁判確定の日から四年間右刑の執行を猶予することとする。

(量刑の理由)

本件は、被告会社の実質的経営者である被告人森智津子が、昭和五九年一〇月期から昭和六一年一〇月期までの事業年度にわたって、傭車料や出張旅費を水増し計上したり、あるいは退職金支払いを架空計上したりする方法で、総額二億二〇〇〇万円余の所得をごまかし、約九四〇〇万円の法人税をほ脱した事案であるが、脱税額が多額に上り、経営が苦しい一方で交際費を濫費して、経営努力を怠り、その交際費の限度超過額などに対する課税を免れるために脱税をするという悪質な事案であり、特に被告会社及び被告人森には同種の前科がありながら再び本件に及んだことに鑑みると、被告人森は納税者としての自覚に甚だしく欠けており、その刑事責任は重いといわなければならない。

しかし、被告会社は、前記の三事業年度について、各修正申告をした上、正規の税額に加えて、既に合計二七〇〇万円余の重加算税をも納付しており、公認会計士が経営の建て直しに協力し、今後の納税についても厳しく監督する旨誓っていることなどの事情もあるので、以上の諸事情を総合考慮して、主文のとおり量刑した次第である。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 上田耕生 裁判官 秋山敬 裁判官 古閑裕二)

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