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横浜地方裁判所 昭和63年(行ウ)32号 判決 1995年3月06日

当事者、訴訟代理人及び指定代理人の表示

別紙当事者目録及び代理人目録記載のとおり。

主文

一  甲、乙、丙、丁及び戊事件の各原告らの請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は右各原告の負担とする。

事実及び理由

第一請求

1  甲事件

(一)  被告座間市長が、同日産自動車株式会社(以下、日産自動車株式会社「日産」という。)に対し、昭和六三年二月二五日付けでした同五〇年四月一日から同五七年三月三一日まで及び同五八年四月一日から同六二年三月三一日までの各事業年度に係る法人市民税に関する更正、並びに同六三年一〇月一四日付けでした同五八年四月一日から同六〇年三月三一日まで及び同六一年四月一日から同六二年三月三一日までの各事業年度に係る各法人市民税に関する更正をいずれも取り消す。

(二)  被告日産は座間市に対し、金一〇億五一四五万七九七〇円並びに内金九億一四八万七七一〇円に対する昭和六三年三月二六日から、内金五九九七万〇二六〇円に対する同年一一月九日から、各支払い済みまで年五分の割合による金員を支払え。

2  乙事件

(一)  被告神奈川県税事務所長が、同日産に対し、昭和六二年一一月三〇日付けでした同五〇年四月一日から同五七年三月三一日まで及び同五八年四月一日から同六二年三月三一日までの各事業年度に係る法人県民税及び事業税に関する更正をいずれも取り消す。

(二)  被告日産は神奈川県に対し、金一〇四億一三〇〇万円及びこれに対する昭和六二年一二月二三日から金員を支払え。

(三)  被告横須賀県税事務所長が、同トヨタ自動車株式会社「トヨタ」という。)に対し、昭和六三年四月一五日付けでした同五三年四月一日から同五八年六月三〇日までの各事業年度に係る各法人県民税及び事業税に関する更正をいずれも取り消す。

(四)  被告トヨタは神奈川県に対し、金七四一一万円及びこれに対する昭和六三年五月一日から支払い済みまで年五分の割合による金員を支払え。

3  丙事件

(一)  被告神奈川区長が、同日産に対し、昭和六二年一二月二日付けでした同五〇年四月一日から同五七年三月三一日まで及び同五八年四月一日から同六二年三月三一日までの各事業年度に係る法人市民税に関する更正、並びに同六三年八月八日付けでした同五八年四月一日から同六〇年三月三一日まで及び同六一年四月一日から同六二年三月三一日までの各事業年度に係る各法人市民税に関する更正をいずれも取り消す。

(二)  被告日産は横浜市に対し、金一七億〇一〇七万八一九〇円並びに内金一六億一八一九万円に対する昭和六三年一月一日から、内金八二八七万三〇〇〇円に対する同年一〇月一日から、各支払い済みまで年五分の割合による金員を支払え。

(三)  被告金沢区長が、同トヨタに対し、昭和六三年三月九日付けでした同五三年四月一日から同五八年六月三〇日までの各事業年度に係る各法人市民税に関する更正処分をいずれも取り消す。

(四)  被告トヨタは横浜市に対し、金八一〇万九四一〇円及びこれに対する平成元年一〇月五日から支払い済みまで年五分の割合による金員を支払え。

4  丁事件

(一)  被告横須賀市長が、同日産に対し、昭和六三年三月一四日付けでした同五〇年四月一日から同五七年三月三一日まで及び同五八年四月一日から同六二年三月三一日までの各事業年度に係る法人市民税に関する更正、並びに同六三年一〇月二五日付けでした同五八年四月一日から同六〇年三月三一日まで及び同六一年四月一日から同六二年三月三一日までの各事業年度に係る各法人市民税に関する更正をいずれも取り消す。

(二)  被告日産は横須賀市に対し、金一二億五四〇二万〇八一〇円及び内金一一億六七八〇万〇八一〇円に対する昭和六三年三月二三日から、内金八六二二万円に対する同年一一月五日から、各支払い済みまで年五分の割合による金員を支払え。

5  戊事件

(一)  被告横須賀市長が、同トヨタに対し、昭和六三年五月一〇日付け及び同一〇月三日付けでした同五三年四月一日から同五三年四月一日から同六〇年三月三一日までの各事業年度に係る法人市民税に関する更正をいずれも取り消す。

(二)  被告トヨタは横須賀市に対し、金一二八四万円及びこれに対する昭和六三年一〇月一三日から支払い済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

アメリカ合衆国(以下「米国」という。)の内国歳入庁(以下「米国歳入庁」という。)は、甲・乙・丙・丁事件被告の日産及び乙・丙・戊事件被告のトヨタ(以下、事件名を区別する必要がない場合には、「被告日産」又は「被告トヨタ」という。)の米国における各子会社が、連邦所得税についてした自動車の販売利益の申告は、子会社に対する販売価格(移転価格)を高めに設定することにより、販売利益の配分比率を親会社である同被告らに多くし、その反面、右各子会社の利益を不当に圧縮したものであるとして、移転価格税制に関する法規を適用し、所得税の追徴処分をした。これに対し、被告日産及び同トヨタは、昭和四七年条約第六号「所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国とアメリカ合衆国との間の条約」(以下「日米租税条約」という。)二五条に基づいて、租税の経済的二重課税(なお、各子会社は米国法人で、同被告らとは別個の法人格を有している関係で、法的二重課税とはならない。)を避けるため、日本税務当局の協議を促す申立てをし、その協議の結果、在米各子会社が一定額の連邦所得税を納税し、我が国においては、同被告らが納付した法人税のうち、これに対応する分を還付する旨の合意をした。そして、この合意を受けた更正請求に基づいて被告日産及び同トヨタの各本社(本店所在地)を管轄する税務署長が、法人税の減額更正処分をして減額分を還付し(以下「本件国税処分」という。)、次いで、同被告らは、それぞれ本社、工場等の所在する県、市及び政令指定都市の区等の地方税の賦課徴収機関に対し、法人県民税、法人市民税及び事業税等の減額更正を申立て、賦課徴収機関たる日産及びトヨタ以外の各被告らは、これを受けて地方税としての法人県民税、法人市民税、事業税及びこれに対応する加算税等の減額更正処分(以下「本件更正処分」という。)をして各減額分を還付した。本件は、おおむね右のような事実関係の下において、右県、市等の市民である各事件被告らが、地方自治法二四二条の二第一項に基づく住民訴訟として、右地方税に関する本件更正処分が違法であることなどを理由に、その各処分の取り消し(同項二号)を求めるとともに、被告日産及び同トヨタに対し、右違法な更正処分により得た地方税の還付金が不当利得に当たるとしてのその返還(同項四号)を請求している事案である。すなわち、原告らは、地方税に関する本件更正処分の結果、被告日産及び同トヨタは多額の還付金を受けたが、前記のような日米政府間の協議に基づいて、我が国の税務当局が法人税の減額更正をした本件国税処分は、日米租税条約、租税条約の実施に伴う所得税法、法人税法及び地方税法の特例等に関する法律(以下「租税条約実施特例法」という。)、及び租税特別措置法等の解釈を誤ったもので、結局、本件国税処分は超法規的、政治的措置というほかないので、国税とは別の地方公共団体の課税権に基づく地方税がこれに拘束されるいわれはなく、また、本件の被告たる各賦課徴収機関は地方税法の解釈を誤るなどして、本来することのできない地方税の減額更正処分をしたから、同機関たる各被告らがした県税及び市税についての本件更正処分は当然に違法であるばかりでなく、当該各減額更正には地方税法違反等の固有の違法事由もあると主張し、前記賦課徴収機関たる被告らに対しては本件各更正処分の取り消しを、被告日産及び同トヨタに対しては、各地方公共団体に代位し、不当利得の返還請求として、右各更正処分に基づく還付金の元本及びこれに対する還付日の翌日以降の民法所得割合による遅延損害金を当該地方公共団体に支払うことを求めているものである。

二 争いのない事実等

本件更正処分に至る経緯が次のとおりであることは、その一部を弁論の全趣旨により認定したほか、関係当事者間において争いがない。

1  (各事件に共通の事実)

(一)  米国歳入庁は、昭和六〇年三月、被告日産の全額出資に係る子会社であり、被告日産の米国向け輸出用自動車を販売している米国日産株式会社(以下「米国日産」という。)に対し、同五〇年度以降の連邦所得税について、自動車の利益は親会社と子会社間で折半すべきであるのに、現実にされている配分比率は子会社の利益を不当に圧縮したものであり、米国日産は利益を実際よりも約一一億二八〇〇万ドル少なく申告したとして、これに対応する連邦所得税を追徴する仮更正処分をした。

(二)  また、米国歳入庁は、昭和六〇年三月、被告トヨタの全額出資に係る子会社であり、被告トヨタの米国向け輸出用自動車を販売している米国日産株式会社(以下「米国日産」という。)に対し、同五二年度以降の連邦所得税について、右同様に子会社の利益を不当に圧縮したものであり、米国トヨタは実際よりも約八億五〇〇〇万ドル少なく申告したとして、これに対応する連邦所得税を追徴する仮更正処分をした。

(三)  右各更正処分がされたことを受けた被告日産及び同トヨタは、我が国の国税庁に対し、昭和六一年五月、日米租税条約二五条に基づき日米税務担当間の協議を促す申立を行った。そして、日米税務当局は協議の結果、同六二年六月一一日、米国日産が同五〇年四月から同六二年三月までの一二年間に係る所得として追加して申告すべき額を約五億五〇〇〇万ドルとみなした上、米国歳入庁が米国日産から追徴すべき連邦所得税の税額を約二億七〇〇〇万ドルとし、これに関する対応的調整(我が国の内国法人と海外における親子関係等にある特殊関連会社間の取引について、そのような関係にない独立企業間の条件に引き直して、右子会社等の所得を増額させ、課税するのが「移転価格税制」であり、これに対して、右内国法人に対し、その所得を減額するため必要な減額更正処分等を施す措置が「対応的調整」である。)として、我が国税務担当局が被告日産に還付すべき法人税の額を約五七五億円とする旨の合意をし、次いで同年九月一八日、右同様に米国トヨタが同五二年度から同五七年度までの六年間に係る所得として追加して申告すべき額を約二億七〇〇〇万ドルとみなして、米国歳入庁が米国トヨタから追徴すべき連邦所得税の税額を約一億三〇〇〇万ドルとし、これについての対応的調整として、我が国税務当局が被告トヨタに還付すべき法人税の額を約二二〇億円とする合意をした(以下、右の各合意を「本件日米合意」という。)。

(四)  そして、被告日産は、本件日米合意の成立を受けて、昭和六二年八月七日、本社(本店所在地)を管轄する神奈川税務署長に対し、同五〇年四月一日から同六二年三月三一日までの一二年間の事業年度(以下、法人の事業年度については、昭和五〇年四月一日から同五一年三月三一日までの事業年度の場合を「昭和五一年三月期」のようにいう。)にわたる法人税につき合計約五七五億円の減額更正の請求をした。その結果、神奈川税務署長は被告日産に対し、同年一〇月二六日付けでその旨の処分をし、同年一一月二日同被告に同額を還付した。

(五)  また、被告トヨタも、本件日米合意の成立を受けて、昭和六二年一一月一七日、本社(本店所在地)を管轄する岡崎税務署長に対し、同五三年四月一日から同五八年六月三〇日までの六事業年度(なお、被告トヨタの事業年度の終了日は昭和五七年三月三一日までは毎年三月三一日であり、その後の各年六月三〇日であるから、同五七年四月一日以降は、同日から同年六月三〇日までについてはこれが一事業年度となり、その後、同年七月一日から同五八年六月三〇日までが一事業年度となる。)にわたる法人税につき合計二二七億七九六〇万円の減額更正の請求をした。そして、岡崎税務署長は被告トヨタに対し、同六三年二月五日付けでその旨の処分をし、その後、同被告に同額を還付した。

(六)  法人税についての右減額更正に引き続き、被告日産は、事業所の所在する都府県に対しては法人都府県民税及び法人事業税の減額更正の請求を、また、同じく事業所の所在する市町村に対しては法人市町村民税の減額更正を請求した。そして、被告日産は法人都府県民税として合計約二二七億五〇〇〇万円、法人市町村民税として合計約七八億三三〇〇万円、合計約三〇五億八三〇〇万円の還付金を受けた。しかも、右減額更正は昭和五九年三月期、同六〇年三月期及び同六二年三月期については、暫定的処分として行われたものであったため、同六二年八月以降更に、右各年度に関する追加的処分として被告日産は、国税で約四〇億円、地方税で約二〇億円の減額更正を受けた。

(七)  法人税についての前記減額更正に引き続き、被告トヨタは、事業所の所在する都道府県に対しては法人都府県民税及び法人事業税の減額更正の請求を、また、同じく事業所の所在する市町村に対しては法人市町村民税の減額更正を請求した(以下、各税について区別する必要がない場合は、「法人地方税」ともいう。)。そして、被告トヨタは法人都府県民税として合計約九二億六九〇〇万円、法人市町村民税として合計約二四億三六〇〇万円、合計約一一七億〇五〇〇万円の還付金を受けた。しかも、右減額更正は、暫定的処分として行われたものであるため、更にその後、前記右各年度に関する追加的処分として被告トヨタは、国税で一二〇億円、地方税で約六〇億円の減額更正を受けた。

(六)  甲ないし戊事件の原告らは、それぞれの所在地である座間市、神奈川県、横浜市及び横須賀市の各監査委員に対し、座間市長、神奈川県税事務所長、横須賀県税事務所長、神奈川区長、金沢区長及び横須賀市長のした右地方税の減額更正処分の取り消し、並びに被告日産及び同トヨタに対する不当利得の返還請求に関する各是正処置を求める監査請求をしたが、いずれも理由なしとされた。

2  (各事件に固有の事実)

(一)  甲事件

(1) 甲事件原告らは、神奈川県座間市の住民である。

(2) 被告日産は、同座間市長に対し、昭和六二年一二月二五日付けで同五一年三月期分から同六二年三月期分までの各法人市民税について減額更正の請求をした。同座間市長は同六三年二月二五日付けで同五一年三月期から同五七年三月期及び同五九年三月期から同六二年三月期までの各法人市民税について本税で総額九億八七三七万一六一〇円を減額し、これに対応して加算金を総額五四一万一六〇〇円減額する旨の更正を行い、同年三月二五日付けで合計九億九一七八万三二一〇円を還付した。その後、被告日産は同座間市長に対し、同六三年八月八日に同五九年三月期、同六〇年三月期及び同六二年三月期に関する追加減額更正を請求し、同座間市長は六三年一〇月一四日付けで右三か年度の法人市民税合計五九九七万〇四一〇円減額する旨の更正を行い、同年一一月八日付けでこれを還付した。

(二)  乙事件

(1) 乙事件原告らは、神奈川県の住民である。

(2) 乙事件被告神奈川県税事務所長及び同横須賀県税事務所長は、神奈川県県税条例四条より、神奈川県知事から同県の徴収金の賦課徴収に関する事務の委任を受けている。

(3) 被告日産は、同神奈川県税事務所長に対し、昭和六二年一一月二五日付けで同五一年三月期から同六二年三月期分までの法人県民税及び事業税の各減額更正を請求した。同事務所長は同年一一月三〇日付けで法人県民税を一六億五八七〇万円、事業税を八七億五四三〇万円各減額する旨の更正を行い、同年一二月二五日に合計一〇四億一三〇〇万円を還付した。

被告トヨタは、同横須賀県税事務所長に対し、昭和六三年二月二九日付けで同五三年四月一日から同五八年六月三〇日までの六事業年度の法人県民税及び事業税の減額更正を請求した。同事業所長は同六三年四月二五日付けで法人県民税について一一〇七万円、事業税について六三〇四万円減額する旨の更正を行い、同月三〇日に合計七四一一万円を還付した。

(三)  丙事件

(1) 丙事件原告らは、神奈川県横浜市の住民である。

(2) 丙事件被告神奈川区長及び同金沢区長は、横浜市市税条例二〇条二項により、横浜市長から同市の徴収金の賦課徴収に関する事務の委任を受けている。

(3) 被告日産は、同神奈川区長に対し、昭和六二年一二月一九日付けで、同五一年三月期から同六二年三月期分までの法人市民税の減額更正を請求し、同区長は法人市民税を一六億一八一九万円減額する旨の更正を行った。その後、被告日産は、同神奈川区長に対し、同六三年八月一〇日付けで、同五八年三月期、同五九年三月期及び同六一年三月期の追加減額更正を請求し、同区長は合計八二八七万三〇〇〇円減額する旨の更正を行い、同六二年一二月二四日及び同六三年八月二九日に右各減額分を還付した。

被告トヨタは、同金沢区長に対し、昭和六三年二月二九日付けで同五三年四月一日から同五八年六月三〇日までの六事業年度の法人市民税の減額更正を請求し、同区長は法人市民税について八〇〇万円減額する旨の更正を行い、同六三年四月三〇日にこれを還付した。

(四)  丁事件

(1) 丁事件原告らは、神奈川県横須賀市の住民である。

(2) 被告日産は、同横須賀市長に対し、昭和六二年一二月二五日付けで、同五一年三月期から同六二年三月期分までの各法人市民税の各減額更正を請求した。同市長は同六三年三月一四日付けで同五八年三月期を除く右各期の法人市民税について、合計一一億六七八〇万〇八一〇円(本税減額分一一億六二五五万九九一〇円、延滞金減額分五二四万〇九〇〇円)減額する旨の更正を行い、同月二二日にこれを還付した。その後、更に、同日産は、同市長に対し、同六三年八月八日付けで、同五九年三月期、同六〇年三月期及び同六二年三月期の各法人市民税の追加減額更正を請求し、同市長は同年一〇月二五日付けで右法人市民税合計八六二二万円減額する旨の更正を行い、同年一一月四日にこれを還付した。

(五)  戊事件

(1) 戊事件原告らは、神奈川県横須賀市の住民である。

(2) 被告トヨタは、同横須賀市に対し、昭和六三年三月二六日付け及び同年七月一八日付けで、同五四年八月期までの法人市民税の減額更正を請求し、同市長は同六三年五月一〇日付け及び同年一〇月三日付けで、一二二二万円及び六二万円減額する旨の更正を行い、同年五月一八日及び同年一〇月一二日に右各減額分を還付した。

三 争点

1  原告らの主張

(一)  本件国税処分の無効性・違法性

本件における各法人県民税、事業税及び法人市民税(以下「本件法人地方税」ともいう。)に関する本件更正処分は、国税たる法人税の額について税務官署の更正を受けたことに伴うものとして、地方税法三二一条の八の二、同法五三条の二、同法七二条の三九により、法人税により、法人地方税の減額更正としてされたものである。

すなわち、地方税法三二一条の八の二は、「前条第一項から第三項までの申告書を提出した法人は、当該申告書に係る法人税割額の計算の基礎となった法人税の額について国の税務官署の更正を受けたことに伴い当該申告書に係る法人税割額の課税標準となる法人税額又は法人税額が過大となる場合には、国の税務官署が当該更正の通知をした日から二か月以内に限り、自治省令の定めるところにより、市町村長に対し、当該法人税額又は法人税割額につき、第二〇条の九の三第一項の規定による更正の請求をすることができる。」と規定し、同様に同法五三条の二は「課税標準となる法人税額」の変更があった場合(県民税)、同法七二条の三九は「課税標準である所得」に変動があった場合(事業税)に、それぞれ特例として更正請求ができる旨を規定している。

しかしながら、以下のとおり本件更正処分の前提となった本件国税処分は無効又は違法であり、そうでないとしても右更正処分にはそれぞれ固有の違法事由である。

(1) 日米租税条約上の合意の不存在について

(1) 前記二・1・(一)ないし(七)のとおり、被告日産及び同トヨタの国税庁に対する、日米租税条約二五条に基づく日米税務当局間の協議を促す申立により、日米税務当局は、昭和六二年六月一一日及び同年九月一八日にそれぞれ被告日産及び同トヨタから追徴すべき連邦所得税額と、これに関する対応的調整として、我が国税務当局が右被告らに還付すべき法人税額についての本件日米合意がされ、これに基づいて、本件国税処分がされた。

(2) しかしながら、本件国税処分の前提となった右合意は、国税通則法施行令六条一項四号(租税条約に規定する権限のある当局間の協議による合意が成立した場合に、期限後の更正請求による更正を認めた規定)の要件を欠き、日米租税条約所定の合意とはいえない。

すなわち、我が国においては、従前、親子会社等の特殊関連会社間における取引価額(移転価格)について、脱税防止等の観点から税務当局が企業全体の総所得を見直した上で必要な課税処分をすることができるという税制(移転価格税制)は採用されておらず、昭和六一年三月になって、租税特別措置法六六条の五が新設されて、我が国においても移転価格税制が採用されたのであり、しかもこれは、同年四月一日以降に開始する事業年度について適用されるものである。また、同年に租税条約実施特例法の七条が追加されて対応的調整が認められることになったが、減額更正処分を求め得る期間については規定しなかった。更に、日米租税条約一一条1項は、条約締結国の一方が移転価格税制を適用できるとしているが、その場合に他方が対応的調整をすべきことまでの合意はされていない。したがって、我が国の法制上、租税特別措置法六六条の五及び租税条約実施特例法七条により対応的調整として減額更正処分ができるのは同六一年度以降の所得に関してだけであり、租税条約実施特例法七条が施行(同六一年四月一日)される以前は、移転価格課税に基づく対応的調整を行うことができるという国内法令は存在しなかったことになるから、日本政府は、右施行以前に遡る減額更正の合意をする権限を有していなかった。

仮に日本政府が右合意をする権限を有していたとしても、本件日米合意をしたのは大蔵大臣であるところ、国税通則法施行令六条一項四号は租税条約に規定する権限のある当局間の協議による合意成立の場合には、期限後でも更正の請求をすることを認めているものの、国税の賦課権が消滅(法定納付期限から五年。国税通則法七〇条)した年度分の法人税については、大蔵大臣といえどもこれについて対応的調整を協議することはできないから、賦課権の消滅した法人税についての右権限を有していない。

また、以下のとおり、日米租税条約一一条一項は、条約締約国の一方が移転価格税制を適用できるとしているが、その場合に相手国が対応的調整を行う旨の規定を排除しているから、我が国の税務当局が内国法人に対し対応的調整を行わず当初の課税処分を維持しても、日米租税条約二五条一項(一方の締約国の居住者は、この条約に適合しない課税を受けるなどした場合は、法令に基づく救済手段とは別に権限のある当局に、その課税を回避すべく他方国と協議するように申し立てることができる)に規定されている「この条約に適合しない課税」とはいえず、国内法人である被告日産及び同トヨタは日米租税条約二五条一項の申立をする権利を有しない。この結果が、いわゆる多国籍企業に厳しいことになるとしても、在米の子会社と我が国の親会社とは法的には別個の法人であるから、厳密な意味での「法的二重課税」とはならない以上、やむを得ないのである。

更に、日米租税条約二五条二項は「両締約国の権限のある当局は、両締約国の間で統一することについて合意するよう努めるため協議することができる」と規定し、協議事項の一つとして「一方の締約国の居住者と、これに関連するものとの間における所得の配分」をあげているが、これは、移転価格税制を採用していない我が国が対応的調整を約束することは一方的に義務を負担することになることから、その制度化を将来に向かっての継続的協議事項としたものにほかならず、納税者の申立を契機としない一般的な取決めを結ぶための協議を予定したものである。そして、国税通則法二三条二項三号を受けて制定された同法施行令六条一項四号の「権限のある当局間の協議」とは、納税者の申立を契機とする協議(日米租税条約の場合は二五条一項)のみを指することは当該条項の位置づけから明らかなので、日米租税条約二五条二項をもって本件日米合意の根拠とすることはできない。なお、被告が主張するように、日米租税条約のもとになっているOECDモデル条約九条二項に相当する規定を欠く条約においても、日米租税条約二五条のような協議条項に基づき、対応的調整の在り方について協議すること自体は許されるであろうが、その協議の結果としての合意の国内法の効力は国内法自体の制約の範囲でしか発生し得ないのである。

結局、日米当局間の協議の結果、昭和六〇年以前の経済的二重課税を救済する趣旨の合意が成立したとしても、我が国においてその合意を実施することの意味は、客観的には一種の補助金の交付以上のものではなく、国税通則法所定の更正処分としての効力のもつものであり得ない。

(2) 本件国税処分の違法性の重大明白性とその承継について

本件国税処分は、課税要件の根幹に関する右(1)のような内容上の過誤が存する違法無効な処分であるから、これに準拠してされた本件更正処分も違法無効である。

仮に本件国税処分の違法性が重大明白といえる程度に達せず、その適法性について独自に審査する責任と権限が地方公共団体にあるといえないとしても、客観的に右国税処分が本件更正処分の前提行為である以上(本件更正処分は国税処分に無条件に準拠している)、その違法性は当然に承継される。

なお、住民訴訟において審理の対象に直接捉えられるのは地方公共団体の執行機関ないし職員による財務会計上の行為であることはもとよりであるが、右行為が違法かどうかは全法秩序に照らして判断されるべきであるから、裁判所の審理が本件国税処分の法的適否の判断に及ぶのは当然である。

(二)  本件更正処分固有の違法性

仮に本件国税処分が適法であったとしても、本件更正処分には、以下のとおりの固有の違法事由がある。

(1) 日米租税条約上の政府間協議の結果によって地方公共団体が影響を受ける場合には、あらかじめ大蔵大臣が自治大臣と協議をし、また自治大臣は関係地方公共団体の意見を聞くべきことが租税条約実施特例法八条に定められているが、本件においては、この手続がされていない。したがって、この手続を欠いたまま行われた本件国税処分は、地方公共団体に対する法的拘束力を有しない。

(2) 本件国税処分の結果は、当然のこととして、すべて地方税に連動するわけのものではない。すなわち、

(1) 我が国の内国法人が在外子会社との取引という形式を通じて輸出をする場合と、在外支店との勘定振替という形式を通じて輸出する場合との差は全く技術的なものであって、社会的実質においては同じである。

ところで、内国法人が後者の方式を用いた場合に、在外支店に帰属する所得の額をめぐり税務当局間の見解を異にするときは、法的二重課税が発生するから、その見解を一致させるために調整する必要が生じ(まさに本件と実質的に同一の問題であるが、これこそが租税条約二五条一項の申立の対象となる典型的な問題である。)、その調整の結果、我が国の法人税の処理上の問題として外国税額控除による見直しの必要が生ずることになる。しかし、地方税法二三条一項四号(市町村については同法二九二条一項四号)の定めるところによれば、この外国税控除の見直しの結果が地方税に影響を生ずることはない。すなわち、右規定は、法人住民税の法人税割の課税標準たる「法人税額」について、法人が現実に納付する法人税の額そのものではなく、一連の政策的な税額控除を施す前の金額をもって法人税額としているからである。

そこで、これを租税公平主義(租税中立主義)の原則に照らせば、実質的に同一の法律関係に対しては、同一の取扱いがされるべきであるから、右条項の趣旨が、法人税にかかわる対応的調整と地方税との関係にも類推適用されるべきであり、そうとすれば、法人住民税に関する本件更正処分が誤りであることは明らかにである。

(2) 右<1>の場合の課税標準が政策的税額控除を施す前の「法人税額」であるのに対して、事業税の課税標準はあくまでも当該法人の「所得」である。移転価格課税及び対応的調整によって、法人税の課税標準たる「所得」に変更が加えられるというのは一つの擬制であって、現実に所得の新たな移動はなく、単に双方の国の税額を調整する上での説明の便宜の問題にすぎない。したがって、これは事業税の課税標準としての所得に変動があったことを意味しないので、減額更正の根拠になり得ない。

(3) (租税条例主義違反)

地方税の賦課徴収や還付などはいずれも条例に直接の根拠を置くべきものであって、仮に地方税法の規定を条例において包括的に援用している場合でも、国法の改正によって条例の内容が自動的に変更されると解することはできない。しかるに、移転価格税制も対応的調整の制度も本件更正処分当時の関係地方公共団体の各条例が援用する地方税法においては、全く予想していない制度であって、もとより、条例制定権者が認識していないところであったから、本件更正処分は条例上の根拠を持たない違法な処分というべきである。

(4) 地方税法施行令六条の二〇の二は更正の請求の特例を定めているが、同じく更正請求の特例を規定する国税通則法施行令六条一項が、租税条約に規定する権限のある当局間の協議による合意が成立した場合には、期限後でも更正の請求をすることができる旨を規定しているのに対して、これに相当する規定を定めていない。したがって、たとえ租税条約に規定する当局間の協議による合意により対応的調整がされても、これによっては地方税法の更正請求をすることはできない。

(5) 移転価格税制の適用により、我が国において対応的調整として税法上の処理をすることができるとしても、発生主義の立場に立つ企業会計原則のもとでは、その処置に係る当期の特別損失として処理すべきであり、過去の事業年度に係る申告税額が遡って国税通則法二三条一項にいう「過大」となることはないので、同条二項の請求要件を欠くことになる。

2  被告らの主張

(一)  被告日産の本案前の主張

本件訴訟は、地方自治法二四二条に基づく住民訴訟であり、被告日産に対する請求は、同座間市長、同神奈川県税事務所長、同神奈川区長及び同横須賀市長がした法人市民税等に関する違法な本件更正処分により座間市、神奈川県、横浜市及び横須賀市が被った損害を回復するため、座間市等に代位して「当該行為に係る相手方」である被告日産に対して提起した不当利得返還請求事件である。

ところで、原告らは、本件更正処分について、無効確認ではなく、取り消し請求をしているのであるから、右市長等が右処分を撤回するか、これが判決で取り消されて確定するかしない限り、同処分は公定力を有しており、被告日産を含む第三者を約束するので、同被告は有効な行政処分によって法人市民税等の還付を受けたことにより、不当に利得を受けることにならない。そうである以上、被告日産に対する右請求は、不適当であって却下されるべきである。

(二)  被告らの本案についての主張

(1) (本件国税処分の法的根拠について)

(1) 租税条約が親子会社等の特殊関連企業グループを一体としてとらえる移転価格税制を採用した場合には、特殊関連企業間において必然的に経済的二重課税が発生するから、その排除方法をも採用しているものと解すべきである。この方法として、多くの場合、政府間の相互協議と合意に基づく対応的調整手続が行われているから、租税条約に移転価格課税に相当する規定と相互協議に関する条項が規定されていれば、当該条約は、移転価格税制に伴う経済的二重課税を相互協議の対象としているものと解すべきところ、日米租税条約には右の点に関する条項(二五条)があるので、同条は当然経済的二重課税に対して相互協議の申立をし得ることになる。したがって、納税者は日米租税条約二五条1項に基づき移転価格課税事案について、権限のある当局に協議の申立をすることができる。なお、同条二項は、条約の解釈適用についての協議の規定があるが、個別事案の解決をも目的としており、しかも納税者からの申立による協議を排除する旨の定めはないから、申立により経済的二重課税についても協議でき、右協議により権限ある当局が合意に達した場合は、両方の締約国は、合意に従って租税を課し、租税を還付又は控訴を行うこととし(同条約二五条四項)、国税通則法七一条二号は、権限ある当局間の協議が行われ、その申告、更正又は決定に係る課税標準又は税額等に関し、その内容と異なる内容の合意が行われたときは、当該理由が生じた日から三年間更正決定をすることができるとしているから、被告日産及び同トヨタに対する更正決定はこれに適合しており、違法の問題は生じない。

(2) 日米租税条約をはじめ諸外国が締約している租税条約が準拠しているOECDモデル条約中の移転価格課税と対応的調整に関する規定(九条一、二項)は、昭和五二年の改訂により追加されたものであるが、それ以前においても、右モデル条約には政府間の協議に関する規定があり、条約の規定に適合しない課税を受けると認められる者は、自己が居住者である締約国の権限のある当局に対して、権限ある当局間の協議の申立てをすることができ、権限ある当局は、右申立事案について、相手国と協議を行い、合意により問題を解決するものとし、合意した内容は国内法の期間制限にかかわらず、実施するように求めており(二五条一、二項)右九条の規定がない条約においても、移転価格課税の納税者は右二五条により請求されるものとされていた。それゆえ、昭和五二年の前記改訂前に締約された日米租税条約一一条に対応的調整の規定がないとしても、同条約二五条により、対応的調整をすべきであり、同条によれば、条約締約国のいずれの国の居住者もそれについての申立をすることができるのであって、被告日産及び同トヨタも同様にこれをすることができるものである。

(3) 原告らは、日米租税条約二五条二項の協議は、納税者の申立を契機としない一般的な取決めを結ぶための協議を予定したものであり、国税通則法二三条二項三号を受けて制定された同法施行令六条一項四号の「権限のある当局間の協議」は、納税者の申立を契機とする協議(日米租税条約の場合は二五条一項)のみを指すことが当該条項の位置づけから明らかであるとするが、日米租税条約二五条二項には、同条一項に定める納税者からの申立による協議を排除する旨のさだめがないので、他国において関連企業が移転価格課税を受けた場合に、自国企業の所得の減額すなわち対応的調整について納税者から申立があった場合の協議も同二項の協議に含まれるものと解すべきである。

(4) 原告らは、租税条約実施特例法七条により対応的調整をとることが初めて法的に認められたから、同条及び租税特別措置法六六条の五により対応的調整として減額更正処分ができるのは租税条約実施特例法施行後である昭和六一年度以降の所得に関してだけであり、施行日以前に遡って対応的調整する旨の規定はないとするが、日米における対応的調整の法的根拠は日米租税条約二五条であるから、租税条約実施特例法七条が存在しなくとも、対応的調整ができることは右のとおりであり、このことを明確にしたのが租税条約実施特例法七条である。したがって、同条の施行が昭和六一年四月一日からであるからといって、それ以前の所得に対する対応的調整ができないというものではない。

(2) (租税条約実施特例法八条の協議及び意見の聴取について)

原告らは、租税条約上の政府間協議の結果によって地方公共団体が影響を被る場合には、あらかじめ大蔵大臣が自治大臣と協議をし、また自治大臣は関係地方公共団体の意見を聞くべきことが租税条約実施特例法八条に定められているが、本件においては、この手続がされておらず、この手続を欠いたままされた本件国税処分は、地方公共団体に対する法的拘束力を有しないとする。しかし、同特例法八条の手続は、租税条約上地方税が対象となっているときに限って必要なものであり、日米租税条約一条において条約の対象になる日本国の租税を所得税及び法人税に限定し、地方税は対象としていないことからして、当該手続が必要でないことは明らかである。

(3) (租税条例主義違反について)

原告らは、租税条例主義違反、すなわち地方税の賦課徴収や還付などはいずれも条約に直接の根拠を置くべきものであって、仮に地方税法の規定を条例において包括的に援用している場合でも、国法の改正によって条例の内容が自動的に変更されると解することはできず、移転価格税制も対応的調整の制度も本件処分当時の各条例が援用する地方税法においては全く予想していない制度であって、もとより、条例制定権者が認識していないところであると主張するが、地方税法三条の地方税条例主義は地方公共団体の課税権実現のために必要な事項をすべて条例によらしめることを意味するものではなく、条例においてどの範囲の事項を規定すべきかについては、単にその地方公共団体が課税する税目及び地方税法が条例で定めるところによらしめている事項についてのみ規定し、その他は地方税法の規定によることも可能である。神奈川県県税条例、その他関係地方公共団体の各条例にはいずれもその旨の規定が存在しているので、右の点につき、なんらの問題も生じ得ない。

(4) (租税公平主義違反について)

原告は、国内法人が在外子会社との取引という形式を通じて輸出をするのと、在外支店との勘定振替という形式を通じて輸出するのは、社会的実質においては同じであり、内国法人が後者の方式を用いた場合に、在外支店に帰属する所得の額をめぐり税務当局間の見解を異にするときは、二重課税が発生するから、その見解を一致させるために調整する必要が生じ、その調整の結果、我が国の法人税の処理上の問題として外国税額控除の見直しの必要が生ずることになるが、地方税法二三条一項四号、二九二条一項四号の定めにより、この外国税控除の見直しの結果は地方税に影響を及ぼし得ないところ、租税公平主義(租税中立主義)の見地からすれば、実質的に同一の法律関係に対しては、同一の取扱いがされるべきであるから、右条項の趣旨は、法人税にかかわる対応的調整と地方税との関係にも類推適用されるべきであるとする。しかし、移転価格課税に伴う調整の方法として、現行法は税額調整の方法ではなく、所得調整の方法を採用したのであるから、減額された課税所得・法人税額を課税標準とするすべての租税、すなわちここで問題となっている法人地方税にも影響を及ぼすのは当然というべきである。

(5) (事業税にかかわる本件更正処分の違法性について)

原告は、事業税の課税標準は当該法人の「所得」(地方税法七二条の一四)であり、移転価格課税及び対応的調整によって、法人税の課税標準たる「所得」に変更が加えられるというのはあくまでも一つの擬制であって、現実に所得の移動はなく、単に双方の国の税額を調整する上での説明の便宜の問題にすぎないから、事業税の課税標準としての所得につき更正処分があった場合に事業税についても更正処分をなすべき旨の規定(地方税法七二条の三九)は、客観的所得に異動がない場合は適用されないので、減額更正の根拠にはならない旨を主張する。しかし、本件更正処分は本件国税処分により、「課税標準となる法人税額」、あるいは「課税標準である所得」が減少(変更)したことによりされたものであることが明白であって、その変更の原因は問うところではなく、しかも日米租税条約に基づく日米政府間の合意による対応的調整を除外するものではないことは条文上(地方税法二三条一項、二四条一項、五五条一項、七二条の一二、七二条の一四の一項、七二条の三九第一項)明らかである。

第三当裁判所の判断

被告日産の本案前の主張について

被告日産は、本件訴訟が、地方自治法二四二条の二に基づく住民訴訟があり、同被告に対する請求は、同座間市長、同神奈川県税事務所長、同神奈川区長及び同神奈川市長のした違法な法人市民税等の減額更正処分により座間市、神奈川県、横浜市及び神奈川市が被った損害を回復するため、座間市等に代位して「当該行為に係る相手方」である同日産に対して提起した不当利得返還請求事件であり、しかも原告らは、被告座間市長らに対して右法人市民税等の減額更正処分の取り消し請求をしているのであるから、右取り消し請求が確定するまでは同処分は公定力を有していることになり、それゆえ右減額更正処分は右市長らにより撤回されるなどしない限り、同日産を含む第三者に対して拘束力を有するので、結局、被告日産は有効な行政処分によって法人市民税等の還付を受けたことになるから、被告日産に対する右請求は、そもそも不敵法である、と主張している。

しかしながら、地方自治法二四二条の二は地方公共団体の住民がそ機関又は職員の違法な財務会計上の行為又は怠る事実の是正、適正化を求めて訴訟を提起することを認める制度であり、同条の二第一項四号は、地方公共団体がその長等の職員等に対して有する実体上の損害賠償請求権等を住民が代位行使することを認めるものであるから、地方公共団体の住民が、行政処分の違法を理由として同条の二第一項四号所定の住民訴訟を提起する場合には、必ずしも同項二号によって当該処分の取り消し又は無効確認の請求をすることを要せず、同四号所定の代位請求をすることができると解すべきであり、その意味で被告日産が主張する公定力の問題は生じず、しかも、原告らは、被告日産に対する右請求において、右減額更正処分の違法事由のみならずその無効事由も主張しているのであるから、被告日産の右主張は採用できない。

二 本件日米合意について

原告らは、前記第二・二・1の(一)ないし(三)のとおりの経緯により成立した本件日米合意の適法性、有効性を争うので、まずこれを検討する。

1  いずれも税法学を専攻する北野弘久教授と金子宏教授のこの点に関する見解は、それぞれ次のとおりである。

(一)  北野教授の見解(甲事件の甲三六ないし三八号証、本件における証人としての供述)

一般的に租税条約は、当該条約上特段の規定が存在しない限り法的二重課税の排除を建前としているが、本件でも同様であって、親子会社等の特殊関連企業について規定する日米租税条約一一条には、各国の租税条約のモデルとなるものとして作成された条約案であるOECDモデル条約のような移転価格課税と対応的調整に関する規定(九条一、二項)は存在しない。また、相互協議について規定する日米租税条約二五条には、同モデル条約のような「成立したすべての合意は、両締約国の法令上のいかなる期間制限にもかかわらず、実施されなければならない」という強い調子の規定は存在しない上、我が国は意図的に対応的調整規定の条文化を留保した経緯もあり、更に加えて、昭和六一年の租税特別措置法、租税条約実施特例法の各改正により移転価格税制及び対応的調整規定が導入されるまで、それらの点に関する国内法的整備が全く行われてなかったから、右各改正法が施行された同年四月一日までは、米国歳入庁が我が国の内国法人の現地子会社に対して増額更正処分をしても、我が国では対応的調整をすることが法的に予定されておらず、その結果、経済的二重課税が生じても法的にはやむを得ない。

(二)  金子教授の見解(乙・丙・戊事件の各丁一号証)

国際的経済活動の活発化により国際的移転価格の問題が生じ、各国で移転価格税制が適用され、経済的二重課税が生じるとともに、その排除が租税条約の最重要目的となり、その解決方法として、権限のある当局間の協議及び合意の手続と、その合意に基づく対応的調整の手続きとからなる相互協議が用いられている。そして、この相互協議制度は、OECDモデル条約だけでなく我が国が締結しているものも含めて、すべての租税条約に規定されているが、相互協議には、当該条約の規定に適合しない課税について納税者からの申立に基づいて行われるもの(個別事案協議)、当該条約の解釈又は適用に関するもの(解釈適用協議)、当該条約に定めのない場合に二重課税を除去するためのもの(立法的解釈協議)がある。日米租税条約では二五条において、相互協議として個別事案協議と解釈適用協議が規定されているが、租税条約も最重要目的は二重課税の排除であるから、個別事案協議の「当該条約の規定に適合しない課税」という要件を広く解し、法的二重課税のみならず経済的二重課税もこれに含まれると解することもでき、その場合には、立法的解釈協議の対象事項と考えられている事項の多くは、個別事案協議の対象に含まれることになるから、立法的解釈協議についての明文の規定がなくても、実際上はそれほど不都合はないといえる。個別事案協議と解釈適用協議とは要件等が異なるが、前者においては条約の解釈・適用が問題となることが多く、後者は個別事案をきっかけとして、あるいは個別事案に関連して行われることが少なくないから、両者は部分的に重なり合い、解釈適用協議において、条約の解釈・適用に関して生じる疑義等の解決と合わせて個別事案の解決が計られることもある。移転価格税制の適用については、日米租税条約二五条二項二号に規定されている「一方の締約国の居住者とこれと関連を有する者との間における所得又は所得控除、税額控除その他の租税の減免の配分」が問題となることが多いから、日米間の移転価格税制をめぐる紛争においては、解釈適用協議がその解決のために役立つことが少なくない。なお、解釈適用協議については、個別事案協議の場合と異なり、関係者に協議申立権は認められないが、関係者が自己に関する事案な解釈適用問題を含んでいるとして陳情の意味で事実上の申立をすることは可能であり、それが協議の必要がある問題であれば権限のある当局は協議を開始することになるし、これが認められないとすべきではない。

2  右のとおりとすると、原告らの主張は、金子教授の所説に反し、北野教授のそれに符合するものであるが租税条約が移転価格税制を採用している場合には、いわゆる親子会社等の関係にある特殊関連企業間において必然的に経済的二重課税が発生するのであるから、その排除方法が条約上明文をもって規定されていないとしても、明らかにこれを放置していると解されるような場合でない限り、その排除についての方法も採用されていると考えるべきである。原告らは、北野教授の所説同様、明文がない限り、このような事態が生じてもやむを得ないとするが、右のような事態は明らかに不合理な状態であり、それにもかかわらず、当該条約の解釈適用について、その点を明文で直接規定する条項が存するか否かという形式的な理由により、他に容易にこれを回避することができる解釈方法であるのに、あえてこれを採用しようとしないというのは、いささか硬直的な見解であり、たやすくくみすることはできない。

そして、右排除の方法として、多くの場合、政府間の相互協議と合意に基づく対応的調整手続が行われているから(前掲の各丁一号証)、当該租税条約に移転価格課税に相当する規定と相互協議に関する条項が規定されていれば、右条約は、移転価格税制に伴う経済的二重課税をも相互協議の対応としているものと解するのが相当であり、日米租税条約にこの条項(二五条)がある以上、同条約においては当然経済的二重課税に対しても相互協議の申立をし得ると解すべきである。

したがって、納税者は、一方締約国の居住者が約定に適用しない課税を受けるなどした場合には、法令に基づく救済手段とは別に、権限ある当局にその課税を回避すべく他方国と協議するように申し立てることができる旨の日米租税条約二五条一項、もしく解釈適用協議について規定する同条二項に基づき、移転価格課税事案について、権限のある当局の協議を促す申立ができるものと解される。

また、日米租税条約をはじめ諸外国が締約している租税条約が準拠しているOECDモデル条約には、その九条に移転価格課税と対応的調整に関する規定があるが、これは昭和五二年の改訂により追加されたものであり、日米租税条約を含めてそれ以前に締約された条約には同趣旨の規定はなかったが(この点は争いがない)、右の追加以前から同モデル条約には、二五条に政府間の協議に関する規定があり(甲ないし戊事件の各甲二号証)、条約の規定に適合しない課税を受けると認められる者は、自己が居住者である締約国の権限のある当局に対して、権限ある当局間の協議を促す申立をすることができ、権限ある当局は、右申立事案について、相手国と協議を行い、合意により問題を解決するものとし、合意した内容は国内法の期間制限のいかんにかかわらず、実施されなければならない旨が定められており、前記九条の規定がない場合においても、移転価格課税の納税者は右二五条により救済されるものと解することができるので(乙・丙・戊事件の各丁一号証)、これと同様に、日米租税条約一一条に対応的調整の規定がないとしても、同条約二五条により、対応的調整をすることが可能というべきところ、同条によれば、条約締約国のいずれの国の居住者もそれについての申立をすることができると解することができる。したがって、被告日産及び同トヨタも、日米租税条約二五条の申立をすることができるのである。なお、被告日産及び同トヨタが経済的二重課税を受けたとして、我が国の税務当局に対応的調整のための協議申立をすることが可能であるとした場合、それが日米租税条約二五条の一項に基づくものか、二項に基づくものか疑義がないわけではないが、要は日米租税条約の主たる目的が、所得に対する租税に関する二重課税の回避にあり、その方法として前記金子教授のいう個別事案協議(二五条一項)と解釈適用協議(二五条二項)とがあるとしても、それが右目的達成のために相互に関連することが明らかである以上、二五条一項又は二項のいずれによる申立も可能であるとみて差し支えない。

ところで、原告らは、日米租税条約二五条二項の協議は、納税者の申立を契機としない一般的な取決めを結ぶための協議を予定したものであり、国税通則法二三条二項三号を受けて制定された同法施行令六条一項四号の「権限のある当局間の協議」とは、納税者の申立を契機とする協議のみを指すことは当該条項の位置づけから明らかであるとするが、右二五条二項には、同条一項に定める納税者からの申立による協議を排除する旨の定めはなく、それゆえ二五条二項の協議には、他国において関連企業が移転価格課税を受けた場合に、自国企業の所得の減額すなわち対応的調整について納税者から申立があった場合の協議をも含むものと解するとしても問題はない(なお、同項は、解釈適用についての協議の規定であるが、その目的は個別事案の解決であることは明らかであるから、納税者からの申立による協議を排除すべき理由はなく、申立により経済的二重課税についても協議できることは、右のとおりである。)。

3  次に、原告らは、移転価格課税に基づく対応的調整は、昭和六一年四月一日施行の租税条約実施特例法の改正法七条により初めて法的に認められるに至ったのであるから、同条及び租税特別措置法六六条の五により対応的調整として減額更正処分ができるのは右改正法施行後である昭和六一年度以降の所得に関してだけであり、施行日以前に遡って対応的調整をすることはできないとするが、前述のとおり、日米における対応的調整の法的根拠は日米租税条約二五条に求めることができ、租税条約実施特例法七条が存在しなくとも、対応的調整を行うことは可能であり、右七条は、このことを明確にした規定であると解し得るから、同条の施行が昭和六一年四月一日からであるからといって、それ以前の分に対する対応的調整ができないというものでないことは明らかである。

4  そうすると、本件日米合意の適法性・有効性を争う原告らの主張はいずれも理由がなく、同日米合意は適法かつ有効に成立したものというべきである。

三 本件国税処分について

日米租税条約二五条四項によれば、権限ある当局が以上のような協議により合意に達した場合、両方の締約国は、合意に従って租税を課し、租税の還付又は控除を行うこととされ、また国税通則法七一条二号、同法施行令六条一項四号は、権限ある当局間の協議が行われ、その申告、更正又は決定に係る課税標準又は税額等に関し、その内容と異なる内容の合意が行われたときは、当該理由が生じた日から三年間更正決定をすることができ、一般的な更正の期間制限は適用されないとしているのであり、本件においては、前記第二・二・1の(三)ないし(五)のとおり、日米税務当局が、昭和六二年六月一一日及び同年九月一八日、被告日産及び同トヨタの米国における追加申告所得及び連邦所得税の税額とその対応的調整についての本件日米合意をし、それに基づき神奈川税務署長及び岡崎税務署長が被告日産及び同トヨタに対する本件国税処分をしたものであるところ、右日米合意の適法性・有効性を認め得ることは前記二のとおりである。

そうすると、本件日米合意に瑕疵があるがゆえに、本件国税処分も違法無効であるとする原告らの主張は理由がないことになる。

なお、原告らは、本件国税処分の違法を前提に、それが本件更正処分に承継されると主張することが、右国税処分と本件更正処分と本件更正処分とはそれぞれ別個の機関によりされた別個の処分であるから、同更正処分の取り消し請求においては、当該更正処分それ自体の違法事由をまず問題にすべきであり、地方自治法上の住民訴訟である以上、その制度目的からして、予算執行の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵がその更正処分にあると認められる場合でない限り、両者を直接結合して違法性の承継を認めるべきであるとするわけにはいかず、この点は、被告日産及び同トヨタに対する代位請求においても同様に解すべきである。また、被告らは、本件の住民訴訟においては、地方公共団体の権限に属しない本件国税処分の適否は、その判断の対象とはなり得ないとするが、国税処分による法人税の税額を課税標準とする本件更正処分ついて、予算執行の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵があると認められる場合には、直接ではないとしても右国税処分が審理の対象とされることもあり得ないわけのものではないと解される。

四 本件更正処分について

原告らは、仮に本件国税処分が適法であったとしても、本件更正処分には固有の違法事由があるとするので、以下、この点に関する原告らの主張について検討する。

1  (租税条約実施特例法八条による協議及び意見聴取手続の不履行について)

本件国税処分の前提をなす本件日米合意について、租税条約実施特例法八条所定の協議及び意見聴取手続がとられていないことは明らかであるが(弁論の全趣旨)、日米租税条約一条は、同条約の対象になる我が国の租税を所得税及び法人税に限定し、地方税をこれに含めていないこと、更に租税条約実施特例法八条の「協議又は合意の内容が地方公共団体が課する租税に係るものであるときは、あらかじめ自治大臣と協議し、その結果に基づいて、これをすものとする」という規定方法からすると、同条の手続は、単に右条約に基づく協議等が地方税にかかわりがあるというだけではなく、地方税が直接その協議等の対象となるときに限り必要なものであると解するのが相当であることなどからすれば、本件においては、これが必要でないことは明らかである。

2  (租税条例主義違反について)

原告らは、地方税の賦課徴収や還付などはいずれも条例に直接の根拠を置くべきであって、仮に地方税法の規定を条例が包括的に援用している場合でも、国法の改正によって当該事例の内容が自動的に変更されると解することはできない上、移転価格税制も対応的調整の制度も本件更正処分当時の各条例が援用する地方税法においては全く予想せず、条例制定権者も認識していないところであったから、同更正処分は租税条例主義に違反すると主張する。

しかしながら、地方税法三条の規定する地方税条例主義は、地方公共団体の課税権実現のために必要な事項をすべて条例によらしめることまでを意味するものでなく、条例においてどの範囲の事項を規定すべきかについては、その地方公共団体が課する税目や、地方税法が条例で定めるところとしている事項についてだけ規定した上、その他は地方税法の規定によるとすることもできると解されるのであり、座間市市税条例、神奈川県県税条例、横浜市市税条例及び横須賀市市税条例には、いずれもその旨の規定が存在しているから、この点に関する原告らの右主張も理由がない。

3  (遡及的調整について)

原告らは、本件において、移転価格税制の適用により、我が国において対応的調整として税法上の処理をすることができるとしても、発生主義の立場に立つ企業会計原則のもとでは、その処置に係る当期の特別損失として処理すべきであり、過去の事業年度に係る申告税額が遡って国税通則法二三条一項にいう「過大」となることはないので、同条二項の請求要件を欠くとするが、租税条約実施特例法七条一項の規定の文言に加えて、対応的調整としては、外国で増額された所得に見合う額を遡及することなく、進行年度において一括して調整する方法をとることも可能ではあるが、該当事業年度の適用税率に差異等がある以上、外国で調整の対象とされた取引が現実にされた事業年度にまで遡及して調整するのが、より相当と解されることからすれば、このような方法をとったことが違法となるものではない。

なお、原告らは、国税の更正請求の特例を規定する国税通則法施行令六条一項が、租税条約に規定する権限のある当局間の協議による合意が成立した場合には、期限後でも更正の請求をすることができる旨を定めているのに対し、地方税についての右特例を定める地方税法施行令六条の二〇の二には、これに相当する規定がないから、たとえ日米租税条約に規定する当局間の協議による合意により対応的調整がされても、そのことによって地方税法上の更正請求をすることができないと主張するが、右のとおり遡及的調整をすることができる以上、地方税法施行令の右規定により、対応的調整に基づく右更正請求ができることに疑問はない。

4  (本件国税処分と本件更正処分との関係について)

原告らは、地方税制度の上で、国税たる法人税の額それ自体が地方税の課税標準とされ、法人税の更正に連動して地方税を更正し得るとされている場合でも、法人税の更正が政策的配慮でされる場合にまで地方税がこれに連動して更正される必然性は存しないところ、本件においては、日米税務当局の合意により課税の見直しをしているが、これは日米両国政府間における利害調整のためにされた技術的手法にすぎないから、これがなされたとしても、住民税法人割の課税標準たる「法人税額」、並びに事業税の課税標準たる当該法人の「所得」(地方税法七二条の一四)に現実の変動が生じたとはいえないから、いずれも減額更正の根拠にはならないとする。

しかしながら、本件更正処分は本件国税処分により、「課税標準となる法人税額」、あるいは「課税標準である所得」が減少(変更)したことによりされたものであることが明白であって、しかも、その変更の原因は問うところではないと解される上、これが日米租税条約に基づく日米政府間の合意による対応的調整を除外するものではないことは条文上(地方税法二三条一項、二四条一項、五五条一項、七二条の一二、七二条の一四の一項、七二条の三九第一項)も明らかというべきである。なお、この説示に反する原告らの主張は、租税公平主義の見地からそれを含め、すべて独自の見解に基づくものであって、いずれも採用できない。

第四結論

以上の検討結果によれば、原告らの請求は、その余の点を判断するまでもなく理由がないから、いずれもこれを棄却することとし、訴訟費用の負担について、行政事件訴訟法七条、民事訴訟法八九条、九三条を適用して、主文のとおり判断する。

(裁判官 秋武憲一 裁判官 小河原寧 裁判長裁判官尾方滋は、転補のため署名捺印することができない。裁判官 秋武憲一)

別紙当事者及び代理人目録

神奈川県座間市東原三丁目二一番二九号

甲事件原告 齊藤秩

同市緑ヶ丘五丁目二番一八号

同 星野延幸

同市相模が丘三丁目三七番六号

同 佐藤一

同市ひばりが丘五丁目八〇番地

同 古賀輝夫

同市東原四丁目一一番一三号

同 大塚辰美

同市ひばりが丘二丁目七八番二四号

同 近藤友昭

横浜市西区岡野一丁目一五-一六

乙事件原告 秋山林一

神奈川県藤沢市片瀬三丁目二番七号

同 甘糟信行

横浜市磯子区滝頭二-三-四

同 石井馨

神奈川県鎌倉市岩瀬一-二六-一〇 グランバトー二〇三号

同 斉藤悦子

横浜市神奈川区新子安一-四四-二

同 清水和助

神奈川県大和市深見三八一八-一〇

同 菅原昭二

横浜市保土ヶ谷区霞台八八

同 高根沢実

神奈川県川崎市川崎区藤崎一-一一-一六

同 塚原信介

横浜市磯子区森五-一二-一七

同 土志田公佳

神奈川県川崎市川崎区中島一-一〇-一〇

同 中島弘子

横浜市瀬谷区東野九五-一三

同 藤島暎弘

神奈川県藤沢市大庭三八七四

湘南ライフタウン藤沢西部団地一-三-三一一四

同 三浦利男

神奈川県三浦市晴海町六-一〇

同 宮川勝

横浜市港北区仲手原二-四一-三

同 山岡英昭

神奈川県相模原市大野台一-二四-一五

同 渡部三郎

横浜市戸塚区汲沢町四九〇番地の一 汲沢西団地三一〇七

丙事件原告 川崎宏

同市磯子区上町一一-三-二〇四

同 吉野弘一

同市鶴見区馬場二-二七-一

同 服部昌司

同市港北区太尾町四一〇

同 沢村しづ子

同市西区東久保町四-八

同 小紫涙子

同市保土ヶ谷区上菅田町一六一

同 福田幸江

同市旭区左近山団地二-三-一〇四

同 水野雅信

同市瀬谷区橋戸二-二三一-四〇一

同 市川源次郎

右同所

同 市川弘子

同区瀬谷区三丁目一六-二三

同 高橋勝也

同市南区大岡四-一五 B-五〇二

同 立川良子

同市磯子区西町一二-二二 DM八一四

同 安部恵美子

同市港南区野庭町六六二-E-一-一〇三

同 市川康太郎

同市戸塚区上倉田町三七一 上倉田団地九-五〇四

同 川又里子

同区南舞岡四-二四-三

同 滝沢実

同区原宿町一一五一-六 B-四-二〇四

同 泉理人

同市泉区下飯田町八〇一-三

同 森田謙一

同区上飯田町二六一九 いちょう団地三二-七一一

同 金原徹

同市栄区小菅ヶ谷町二八〇四-一九二

同 武田好弘

神奈川県横浜市鴨居二丁目四六番一七号

丁・戊事件原告 岸謙一

同鴨居二丁目七一番一四号

同 大須賀寛

同市佐野町六丁目二五番地グリーンテラスC

同 古沢文男

同市長沢一四八〇番地

同 井坂勝哉

同市舟倉町六三二番地の二

同 片野正次

同市平作二丁目二一番一号

同 佐藤淑子

同市衣笠栄町一丁目五五番地

同 住吉志津

右同所

同 斉藤冨美子

右同所

同 小林政子

甲・乙・丙・丁・戊各事件訴訟代理人弁護士

山内忠吉

同 根岸義道

同 増本一彦

同 根本孔衛

同 杉井厳一

同 畑谷嘉宏

同 滝本太郎

同 岡村共栄

同 岡村三穂

同 大川隆司

同 陶山圭之輔

同 小野毅

同 平岩敬一

同 山本英二

同 輿石英雄

同 谷口隆良

同 谷口優子

同 宮田学

同 関一郎

同 本田敏幸

同 宇津泰親

同 三浦守正

同 小林奬啓

同 武下人志

同 木村和夫

同 林良二

同 佐藤嘉記

同 猪俣貞夫

同 鈴木裕文

同 黒田和夫

神奈川県座間市入谷一丁目三〇六七番地

甲事件被告 座間市長

星野勝司

右訴訟代理人弁護士 堀家嘉郎

同 石津廣司

横浜市神奈川区宝町二番地

甲・乙・丙・丁事件被告

日産自動車株式会社

右代表者代表取締役 久米豊

右訴訟代理人弁護士 松崎勝

同 田邉博通

横浜市神奈川区広台太田町三番八号

乙事件被告 神奈川県神奈川県税事務所長

添田忠志

神奈川県横須賀市日の出町二丁目九番地

同 神奈川県横須賀県税事務所長

米山光昭

右各指定代理人 新堀敏彦

同 大塚景久

同 関澤照代

同 平松博

同 武井政二

同 時田敏彦

同 近藤晃

同 中村登

同 植野秀

愛知県豊田市トヨタ一番地

乙・丙・戊事件被告 トヨタ自動車株式会社

右代表者代表取締役 豊田章一郎

右訴訟代理人弁護士 今中幸男

神奈川市神奈川区広台太田町三番八号

丙事件被告 横浜市神奈川区長

原克己

横浜市金沢区泥亀二丁目九番一号

同 横浜市金沢区長

西郷匡美

右各訴訟代理人弁護士

村瀬統一

神奈川県横須賀市小川町一一番地

丁・戊事件被告 横須賀市長

沢田秀男

右訴訟代理人弁護士 中山明司

同 大友秀夫

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