横浜地方裁判所川崎支部 昭和58年(ワ)200号 判決 1986年5月29日
原告 原田契一
<ほか一名>
右原告ら訴訟代理人弁護士 松浦基之
同 森田太三
被告 遠藤登吉
右訴訟代理人弁護士 谷口隆良
同 谷口優子
主文
一 被告は原告らに対し、それぞれ金二五万円及びこれに対する昭和五八年一月一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 原告らのその余の請求を棄却する。
三 訴訟費用は、これを一〇分し、その九を原告らの負担とし、その余は被告の負担とする。
四 この判決は原告ら勝訴の部分に限り仮に執行することができる。
事実
第一当事者の求める裁判
一 請求の趣旨
1 被告は、原告らに対しそれぞれ金二五〇万円及びこれに対する昭和五八年一月一日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は被告の負担とする。
3 仮執行宣言
二 請求の趣旨に対する答弁
原告らの請求を棄却する。
訴訟費用は原告らの負担とする。
第二当事者の主張
一 請求原因
1 位置関係等
(一) 原告原田契一(以下、原告契一という)は、別紙物件目録記載(一)の土地(以下、原告土地という)及び原告土地上に存在する同目録記載(二)の建物(以下、原告建物という)を所有しており原告原田泉(以下原告泉という)は原告契一の妻である。被告は原告土地・建物の南側に隣接する同目録記載(三)の土地(以下、被告土地という)を所有している。
(二) 原告土地及び被告土地は、小田急線よみうりランド前駅からほぼ南方に徒歩で約六分の閑静な住宅街に位置し、第一種住居専用地域、第一種高度地区に指定されている。
2 被告の行為
(一) 被告は、昭和五七年一〇月頃、被告土地上に、被告を建築主、訴外千葉清を設計者、訴外株式会社東匠ハウスを施工者として、別紙物件目録記載(四)の共同住宅(以下、本件アパートという)の建築工事に着手し、同年一二月末日頃完成した。
(二) 本件アパートは、原告建物の真南で原告土地との境界から四・五メートルの位置に、東西一九メートルにわたって建築され、右建築に際し後記のとおり八八センチの盛土が行われ被告土地と原告土地との地盤の高低差は一・〇六メートルとなり、更に被告土地の地盤面上五〇センチの高さの土台を設け、その上に軒下六メートルの高さで建築されている。そのため、本件アパートは、原告建物の南側空間を完全にふさいでしまった。
3 原告らの被害
原告土地・建物の日照、通風等の状況は、本件アパートが建築される以前においては良好であり、ただその南西側に位置する訴外寺尾宅建物により日照に若干の影響があったが、それとても冬至において午後三時以降に原告土地・建物一階の各一部分が日陰を受ける程度にとどまり、原告らの良好な生活環境に何らの障害とはならなかった。ところで、原告らはその子供四名とともに原告建物に居住しているが、本件アパートが建築されたことにより次のような被害を受けている。
(一) 日照被害
原告建物の一階南側には、東から西へ食堂、居間、和室が並んでいるが、冬至において居間、和室部分は一日中、食堂部分は午前一〇時以降一日中日陰に没し、二階部分は午前一〇時以降に至りやっと日照が確保される状態であり、また原告土地のうち庭として使用している南側部分は、その大半が終日日陰の状態となった。
(二) 眺望侵害及び圧迫感
原告らは、原告建物南側のどの部屋からも、本件アパート以外何も見ることができず、本件アパートにより眺望を侵害され、かつ圧迫感を加えられている。
(三) プライバシーの侵害
本件アパートは、その北側の窓、通路及び階段部分から原告宅の一階、二階の全部屋をのぞき見ることができる構造になっており、現に本件アパートの二階に入居している六世帯もの家族が四六時中原告宅を見下している。そして、原告らにはいずれも成長期の四人の娘があり、その居室、居間はいずれも原告建物の南側にあるため、原告ら家族のプライバシーも侵害されている。
(四) その他の被害
原告らは、将来、原告契一の別居中の母親を引き取ることが予定されているので原告建物の一階に一室を設けているが、本件アパートによって、その部屋の日照がほとんどなくなり、視界もよくないので、右母親の引取りが困難になっている。
4 被告の責任原因
被告は、本件アパートを建築し、それにより原告らに前記のとおり受忍限度をはるかに超えた被害を与えているところ、被告の本件アパートの建築は次のとおり原告らに対し不法行為を構成する。
(一) 被告の事前の認識
原告らは、昭和五七年一〇月初め、被告が被告土地の樹木を伐採し始めたので調査したところ、川崎市多摩区役所に被告を建築主として本件アパートの建築確認申請をしていることが判明した。そこで、被告に確認したところ、被告は、原告土地との境界にブロック塀を積み、四五センチメートル盛土したいが、本件アパートは右境界から五メートル離れるので原告建物は日陰にならないと説明したのであって、このように被告は、本件アパート建築による日照被害の発生を充分認識していたにもかかわらず、あえて、右説明に反した前記本件アパートを建築し、前記の被害を発生させたものである。
(二) 盛土の違法性
被告は、本件アパート建築に際し、原告土地との境界に沿って七八センチの高さのブロックを積み、被告土地側に二トントラック二〇台もの多量の土を運び入れ、右境界付近で八八センチに及ぶ盛土を行ない、被告土地を原告土地の地盤面よりも約一〇六センチ高くし、その地盤面に本件アパートを建築した。この盛土の高さは、本件アパートの南側に位置する「読売ランド社宅」の盛土の高さ三八センチの約二倍強に達する。
建物を建築するために整地をする必要がある場合に、高い部分にあわせて低い部分に盛土をしなければならない理由はなく、隣地との間に日照問題の生ずることが予測されるときには、南側土地中高い部分を削るとか、南北の高低差を中間点で均して平面にすることも検討されるべきで、南側の被告土地が原告土地よりも高い被告の場合、右の措置をとることは十分に検討される必要があった。付近土地の利用状態を見ても、盛土はむしろ行わないよう配慮されており、右被告土地の盛土の違法性は明らかである。
(三) 建物建築に伴う違法性
被告は、本件アパート建築に際し、原告らの前記被害を避けるため、次の措置を採るべきであった。すなわち、(1)被告土地中本件アパートの所在位置よりも南側の空地部分に本件アパートを建築すること、(2)建物の高さを可能の限り低くすること、(3)建物の北側の屋根を低くすること、(4)建物の二階部分の東西の長さを短かくすることである。
被告は、右(1)ないし(4)のいずれかの措置をとることにより、容易に原告らの前記被害を回避し又は大幅に軽減させることが可能であったにもかかわらず、右いずれの措置もまったく講ずることなく本件アパートを建築し、原告らに前記被害を与えたのである。結局、被告は日陰にならない旨申し向けて原告らを欺いて本件アパートの工事を進めたのである。
5 損害額
原告らは被告の右不法行為により前記3の被害を受けており、その精神的苦痛を慰藉するには、被告から原告らに対しそれぞれ金二五〇万円の支払をすることが相当である。
6 よって、原告らは、被告に対し、不法行為による損害賠償請求権に基づき、それぞれ金二五〇万円及びこれに対する不法行為の後である昭和五八年一月一日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。
二 請求原因に対する答弁
1(一) 請求原因1(一)中、原告土地・建物及び被告土地の所有及び位置関係は認め、その余の事実は不知。
(二) 同1(二)中原告主張土地につき原告主張の指定のされていることは認め、その余の事実は不知。
2(一) 同2(一)の事実は認める。
(二) 同2(二)中、本件アパートが原告建物の真南で、原告土地の境界から四・五メートルの位置に東西一九メートルにわたって建築されていることは認め、その余の事実は争う。
3(一) 同3の前文中原告が本件アパートにより被害を受けていることは否認し、その余の事実は不知。
(二) 同3(一)の事実は否認する。原告建物の日照は、冬至において、二階開口部に関しては、ほぼ六時間確保されており、一階部分については二時間位の日照であるが、これは仮に被告土地に一階建の建物が建っても生じる日陰である。そして、本件建物は行政法規に適合している。原告は、もともと自ら原告土地の南側境界からわずか三・三メートルしか離さずに二階建の原告建物を建築したものであり、被告のみに土地の有効利用を許さないと主張するのは勝手すぎる。
(三) 同3(二)の事実は否認する。自宅の前に他人の建物が建てば、見通しが悪くなることは否めないが、大都市やその近郊においては、空地があればそこに建物が建つことを予想すべきであり、原告主張の眺望侵害及び圧迫感なるものは法的保護の対象外である。
(四) 同3(三)の事実は否認する。本件アパートの原告側側面には、換気と採光のための浴室及び台所の小さな窓のみしかなく、構造上、使用方法及び使用時間から見て、これらの窓から他人の家をのぞき続けることは出来ず、まして通路部分の目の高さ付近には「目隠」用の板を取付けており、プライバシーの侵害は生じていない。
(五) 同3(四)の事実は不知。
4(一) 同4前文の事実は否認する。
(二) 同4(一)の事実のうち、前段部分は不知、後段部分は否認する。
(三) 同4(二)中、被告が被告土地と原告土地の境界にブロックを積み、被告土地の一部に盛土をしたことは認め、その余の点は否認する。被告は、被告土地付近が南から北に向かってゆるやかに下がっている傾斜地であるため、南側を多少削り、北側を埋めて平に整地したものである。
(四) 同4(三)の主張はいずれも争う。
5 同5の事実は否認する。
第三証拠《省略》
理由
一 請求原因1(一)中、原告泉が原告契一の妻であることは《証拠省略》により認められ、その余の事実は当事者間に争いがない。同1(二)中原告土地及び被告土地が第一種住居専用地域、第一種高度地区に指定されていることは当事者間に争いがなく、《証拠省略》によりその余の事実を認めることができる。同2(一)の事実及び2(二)中、本件アパートが原告土地・建物の真南で、原告土地の境界から四・五メートルの位置に東西一九メートルにわたって建築されていることは、いずれも当事者間に争いがない。
二1 そこで請求原因3の原告らが本件アパートの建築により被害を受けているか否かについて検討するに、《証拠省略》を総合すると次の事実を認めることができ、この認定を覆すに足りる証拠はない。
(一) 原告契一は、昭和五五年五月原告土地を買い求め、同土地上に自宅として木造二階建の原告建物を建築し、同年秋以来同建物に原告契一の妻である原告泉及び原告らの未成年の子四名(長女理砂、二女裕子、三女香奈、四女契子)とともに同居している。
(二) 原告契一が原告建物を建築した当時、被告土地は空地で、荒れた雑木林のような状態であり、本件アパートが建築される以前の原告建物の日照は、原告土地・建物の南西側に位置する訴外寺尾の居住する建物(別図参照)により冬至において午後二時以降一部に日陰を生じるにとどまり、原告建物の日照、眺望等の状態は良好であった。
(三) 本件アパートは原告土地・建物のほぼ真南に位置し(当事者間に争いない)、建物本体の南北の幅七・八メートル、東西の長さ約一九メートル、高さ七・七メートルの木造二階建建物でその建物本体の北壁は原告土地の境界から四・五メートルの位置にあり(本件アパートと原告土地・建物との位置関係は概ね別図記載のとおり)、アパートの建築されている地盤面は後記四で述べるとおり原告建物の建築されている地盤面よりも約一メートル高くなっている。
(四) 原告建物の日照は、被告土地に前記規模の本件アパートが建築された結果、冬至ころにおいて、一階部分については、東側の一室に午前一〇時ころまで日が射し、西側の一室(和室)に午後二時ころのわずかな時間日照がある以外、ほぼ全日日陰に没し、二階については午前一〇時ころ以降部屋の日照はほぼ確保されるが、日照が二階南側開口部に達するのは正午近くである。
(五) 本件アパートは、前記のとおり二階建で、各階六世帯が入居できる構造になっており、原告側の北側面には、階段及び各階に通路が設けられ、各部屋には通路からの出入口のほかに窓が二個あるが、右通路には目隠のため目の高さ付近にビニール製の波形板が取り付けられている。
本件アパートの入居者は大学生等独身者が多く、原告らは、前記四名の未成年の娘たちのプライバシーの問題を懸念しているが、今日までのところ、被害といえるものは生じていない。原告契一の母親は現在他所で一人住まいをしており、七四歳を越す高齢でもあり、将来は原告らと原告建物において同居する予定であるが、原告ら同様本件アパート建築の結果原告建物の日照等の状態が悪くなったことを苦にしている。
2 右各事実によれば、原告らは、被告の本件アパートの建築により、日照につき、冬至前後ころには明らかに被害を受けているものと認めることができる。しかし、その余の眺望阻害及び圧迫感、プライバシーの侵害など(請求原因3(二)ないし(四))については、本件アパートの建築以前に対比して何らかの影響の生じていることはうかがわれるが、本件全証拠によっても右は隣人としての受忍限度を超えるものとは認め難い。
三1 そこで請求原因4の被告の責任原因について検討するに、被告が被告土地と原告土地の境界にブロックを積み、被告土地の一部に盛土したことは当事者間に争いがなく、《証拠省略》によれば、次の事実を認めることができる。
(一) 被告は、昭和四〇年被告土地の所有権を取得し、昭和五七年ころ家賃収入を得る目的で被告土地上に賃貸用のアパートの建築を計画して、千葉清にその設計を依頼した。被告は、本件アパートの建築に際し、原告建物にどのような日照被害が生じるかについて具体的な検討はしなかったが、原告建物の日照、プライバシーの問題等を考慮して、本件アパートの建築位置について、建築基準法所定の北側斜線を設け、原告土地との境界からの距離を同法の制限よりも一メートル多い四・五メートルとして被告建物を建築することとし、昭和五七年一〇月二三日本件アパートの建築確認を取得した。
(二) 原告らは、昭和五七年一〇月ころ、被告土地にアパートが建築されることを他から聞き、被告に直接確認をしたところ、建築予定の本件アパートは原告土地との境界から五メートル離して建築するので日照については心配ない旨の回答があった。
(三) 被告は、そのころ、原告らから、境界に積むブロックの高さをなるべく低くするよう申入れを受けたが聞き入れず、境界に沿って被告の土地内に高さ約八〇センチのブロックを積んで擁壁を設け、南側から北側に向けてやや傾斜地になっている被告土地のうち南側部分をほとんど削ることなく北側部分に二トントラック二〇台分の土を運び入れて整地をしたうえ、本件アパートの建築に着手した。そして昭和五七年一一月中旬頃、被告が本件アパートの棟上げを行ったところはじめて原告らは本件アパートの高さに驚き、被告に対し本件アパートの設計変更あるいは建築位置の移動を申し入れたが、被告から見るべき回答がないまま工事が進行し、原告契一は当裁判所に対し建築続行禁止仮処分の申立をし、話合が行なわれたが結局まとまらず、被告は、同年一二月末日ころ当初の設計通りの位置、構造の本件アパートを完成した。
(四) 本件アパートの構造、規模については、前記二1(三)で認定したとおりであるが、その地盤及び建物の基礎についてみると、原告土地と被告土地を含む付近一帯の地形は、元来南の被告土地側から北の原告土地側に向かってゆるやかに傾斜する北斜面であり、被告が行った前記整地の結果、被告土地は前記ブロック製の擁壁を境としてその付近で原告土地よりも約八〇センチの段差で高くなっているが、それでも、なお被告土地は、被告による右整地後も北に向かってわずかに傾斜をしているから本件アパートの基礎部分の地盤は、更に右原告土地の境界付近よりも少なくとも一〇センチ程度高くなっている。そして、本件アパートは右の地盤のうえに五〇センチの布基礎コンクリートを作り、その上に建築されている。
そして、被告土地の東側に公道があり被告土地は東側のうち南半分が公道に接しているところ、被告土地の地盤はその接道部分で道路面よりも約四〇センチ高くなっている。なお、被告土地の南側に隣接する土地には、富士通ファコム株式会社の通称読売ランド社宅がある(相互の地形関係については別図参照)が、同社宅の地盤はほぼ右道路面と同じ高さである。
(五) 本件アパートは、通路部分を除く建物本体の南北の幅は七・八メートルであり、屋根の形状は合掌形でその最高部(稜線)は南北のほぼ中間に位置しており、被告土地の地盤から七・七メートルの高さにあり、屋根を除く軒高は地盤面から六メートルである。なお、本件アパートと同じく木造二階建共同住宅ではあるが建築面積がはるかに大きい前記読売ランド社宅の場合、その建物の高さが本件アパートよりも低い六・五メートルであり、かつ、屋根の北側(本件アパート側)部分を透明な材料を用いて作り北側隣地への日陰につき配慮をしている。また原告らも、原告建物の屋根の稜線を中心から南側に寄せ、北側隣地への日陰につき考慮している。
以上の事実が認められ(る。)《証拠判断省略》
2 右各事実によれば、被告は北側隣地である被告土地の日照も考慮して、原告土地境界から四・五メートルの距離をおいて本件アパートを建築していることが明らかであるが、他方、被告は、被告土地の整地に際し、南側の高地部分の土地を、東側に接する公道を基準としてそれよりもやや高い程度にまで削って北側部分に均す整地をしたとすれば、土盛の量が少なくなり本件アパートの地盤を現在よりも低くすることができたことは明らかであるし、更に、本件アパート自体の高さをもう少し低くし、屋根の頂点(稜線)を可能の限り南側に寄せ、屋根の北側部分の材料を透明なものにするなどの配慮をする余地があったことは明らかであり、被告が本件アパートの建築に際し、右の措置をとったとすれば、少なくとも、原告らの本件アパートによる日照被害は前記の程度よりも軽度であったと認めることができるところ、被告はこれを行わなかったことが明らかであって、以上の認定を覆すに足りる証拠はない(なお、原告らは、被告が原告らに対し原告建物は日陰にならない旨事前に説明し、原告らを欺罔して本件アパートの建築工事を進めたと主張するが、前記認定の事実によれば、被告は本件アパート建築に際し原告建物に生ずべき日照被害の程度について十分確認することなく安易に原告らに対し原告建物は日陰にならない旨述べていたものと認められるうえ、他方本件アパートの建築位置を定めるについては原告建物の日照等に対する配慮から原告土地の境界から四・五メートル離していることを考えあわせると、被告が故意に誤まった説明をして原告を欺罔したものとまでは認めることは困難である。また、原告は、本件アパートの位置を被告土地の南側空地部分に更に寄せ、原告土地の境界から引離して建築すべきであったと主張するが、前記のとおりすでに本件アパートについては建築基準法等の制限よりも一メートルほど多く間隔を設けていることがうかがわれるのであるから、被告にそれ以上のことを求めることはこれまた困難というほかない)。
四 そこで、請求原因5につき検討するに、右各事実によれば、原告らは被告の本件アパート建築により少なくとも冬至前後において日照につき被害を受けており、その被害の程度は受忍限度を超えているものというべきであって、被告はこれにつき責任を負うというべきところ、原告らに対する慰藉料額についてみると、大都市近郊では或る程度建物が隣地に近接して建築されることは避け難いというべきところ、《証拠省略》によれば原告契一は原告土地の南側の空地である被告土地境界に近接した三・三ないし四・四メートルの位置に自ら原告建物を建築している事実が認められるのであって、右事実を考慮するときは、原告らそれぞれに金二五万円を支払うのが相当であると認める。
五 よって、原告らの請求は被告に対しそれぞれ金二五万円及びこれに対する本件アパートの建築された後である昭和五八年一月一日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるから認容し、その余は理由がないから棄却し、訴訟費用の負担について民事訴訟法八九条、九二条、九三条を、仮執行宣言につき同法一九六条をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 澁川滿 裁判官 池田陽子 裁判官小田原満知子は転補のため署名捺印できない。裁判長裁判官 澁川滿)
<以下省略>