横浜地方裁判所横須賀支部 平成12年(ワ)390号 判決 2003年12月15日
甲事件原告
千代田商事株式会社
(以下「原告千代田商事」という。)
同代表者代表取締役
福西勇
他3名
乙事件原告
A野太郎
他2名
以上七名訴訟代理人弁護士
山下光
瀬古宜春
本田正士
國村武司
高橋瑞穂
松本純也
三谷淳
甲、乙事件被告
国 (以下「被告国」という。)
同代表者法務大臣
森山眞弓
同指定代理人
宮田誠司
他9名
甲、乙事件被告
宇内建設株式会社
(以下「被告宇内建設」という。)
同代表者代表取締役
宇内城一
同訴訟代理人弁護士
輿石英雄
根岸義道
栗山博史
中久木都
主文
一 被告国は、原告千代田商事に対し、一億三三六五万三六九六円及びこれに対する平成一二年八月三〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 被告国は、原告梅沢鉄構に対し、一〇三四万八九五〇円及びこれに対する平成一二年八月三〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
三 被告国は、原告B山に対し、一〇一万七八八五円及びこれに対する平成一二年八月三〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
四 被告国は、原告C川に対し、七六万七九四〇円及びこれに対する平成一二年八月三〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
五 被告国は、原告A野に対し、一二九九万五一八二円及びこれに対する平成一二年八月三〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
六 被告国は、原告D原に対し、六三万八九一〇円及びこれに対する平成一二年八月三〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
七 被告国は、原告E田に対し、九七万四三三〇円及びこれに対する平成一二年八月三〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
八 原告らの被告国に対するその余の請求及び被告宇内建設に対する請求をいずれも棄却する。
九 訴訟費用は、原告らと被告国との間においては、原告らに生じた費用の三分の一を被告国の負担とし、その余は各自の負担とし、原告らと被告宇内建設との間においては、全部原告らの負担とする。
事実及び理由
第一請求
一 被告らは、原告千代田商事に対し、連帯して、四億三一五八万七八四九円及びこれに対する平成一二年八月三〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 被告らは、原告梅沢鉄構に対し、連帯して、一一〇八万八九五〇円及びこれに対する平成一二年八月三〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
三 被告らは、原告B山に対し、連帯して、一一七万一八八五円及びこれに対する平成一二年八月三〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
四 被告らは、原告C川に対し、連帯して、一〇九万六九四〇円及びこれに対する平成一二年八月三〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
五 被告らは、原告A野に対し、連帯して、一七八八万七二〇六円及びこれに対する平成一二年八月三〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
六 被告らは、原告D原に対し、連帯して、七五万八九一〇円及びこれに対する平成一二年八月三〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
七 被告らは、原告E田に対し、連帯して、一四五万五五一〇円及びこれに対する平成一二年八月三〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
八 原告千代田商事、原告梅沢鉄構、原告B山及び原告C川と被告らとの間において、訴訟費用は被告らの負担とする。
九 仮執行宣言
第二事案の概要等
一 本件は、原告千代田商事が後記本件土地に埋設されていた爆雷を廃材として裁断処理した際に生じた爆発事故(以下「本件爆発」という。)により被害を被った原告らが、①被告国に対し、爆雷を撤去すべき義務違反等の過失があると主張して、使用者責任又は国家賠償法に基づく損害賠償を求め、②爆雷を発掘した被告宇内建設に対し、同社社員には爆雷を廃材処理業者に引き渡す際に危険物であることを報告すべき義務違反の過失があると主張して、使用者責任に基づく損害賠償並びにこれらに対する民法所定の遅延損害金(始期は爆発事故発生の日である。)を請求する事案である(なお、原告千代田商事は、被告宇内建設に対し、廃棄物処理委託契約の債務不履行に基づく損害賠償も併せて請求している。)。
二 争いのない事実等(証拠により容易に認められる事実等はその証拠等を掲記した。)
(1) 当事者
ア 原告千代田商事は、鉄のスクラップ加工処理業等を目的とする株式会社である。
イ 原告梅沢鉄構は、船舶新造修理艤装一式等を目的とする有限会社であり、原告千代田商事の隣接地に事務所、工場及びトイレの三棟の建物を有する。
ウ 原告A野は、原告千代田商事の従業員であり、本件爆発当時、原告千代田商事の工場内で作業を行っていた。
エ 上記三名以外の原告らは、本件爆発当時、原告千代田商事の工場近隣に、所有あるいは管理する自動車を駐車していた。
オ 被告宇内建設は、土木建築、舗装一式工事を主たる目的とする株式会社である。
被告宇内建設は、平成一二年六月ころ、神奈川県から、同県が所有する土地《住所省略》宅地六三六七・六四平方メートル。以下「本件土地」という。)上の建物である特別養護老人ホーム「横須賀第二老人ホーム」の除却工事(以下「本件工事」という。)を請け負った。
(2) 本件工事により、本件土地から、旧海軍の二式爆雷又は九五式爆雷が一六個ほど掘り起こされた。爆雷の重量は一個につき約一六〇キログラムであり、うち約一〇〇キログラムは爆薬である。
本件土地は、旧海軍省が昭和一六年四月一日付け買収により取得した(登記日は昭和一六年五月一七日)。当時は、旧海軍対潜学校野比第一実習所の敷地として使用されていた。
その後、本件土地は、所管換により昭和二〇年一〇月三一日付けで旧大蔵省が所有し(登記日は昭和四二年一一月一日)、昭和三〇年八月六日付け譲与により横須賀市(登記日は昭和四二年一一月一六日)、昭和四六年三月一五日付け売買により神奈川県(登記日は昭和四六年三月二四日)がそれぞれ所有権を得ている。
被告国の公務員は、本件土地を横須賀市に譲与する際に、本件土地に爆雷等の危険物が埋められていることを横須賀市に伝えなかった。
(3) 被告宇内建設が請け負った本件工事の概要は、横須賀第二老人ホームの建物とこれに付随する工作物、設備を除去し、本件土地を平坦に整地するというものである。
被告宇内建設は、建物の解体作業を有限会社金子工務店(以下「金子工務店」という。)に発注した。
解体作業に伴う廃棄物のうち、金属くずの処分は原告千代田商事が行うことになった。
(4) 金子工務店は、平成一二年七月三日から横須賀第二老人ホームの解体作業を行った。当該作業は、金子工務店の主任技術者であるA田松夫(以下「A田」という。)により行われた。
同年七月六日から本件土地中央に位置する入所棟の解体作業を開始し、その基礎解体作業と並行して、本件土地北側に位置する設備棟の建物解体作業と基礎解体作業を行った。その後、本件土地南東に位置する職員宿舎C棟の建物解体作業、本件土地北東に位置する職員宿舎B棟の建物解体作業を順次行い、同年八月二八日から、職員宿舎B棟及びC棟の基礎解体作業を行った。
同日から始まった職員宿舎の基礎解体作業のうち、基礎部分と基礎杭を切り離す作業を終えたところ、土中から爆雷が発掘された。
(5) 原告千代田商事は、平成一二年八月二九又は三〇日、本件土地から、爆雷七、八個を含む鉄くずを搬出した。ただし、爆雷が含まれていることは認識していなかった。
同月三〇日午後一時五〇分ころ、原告千代田商事が、大型の鉄くず裁断機で、本件土地から搬出した鉄くずを裁断する作業を行っているとき、本件爆発が起こった。
爆発物は、本件工事により発掘された爆雷であった。
本件爆発により、大型鉄くず裁断機の一部(約一〇〇キログラム)が約三〇〇メートル飛び、裁断機内の鉄くずが半径約七〇〇メートルの範囲に飛び散った。飛散した鉄くず及び爆風により、原告千代田商事及び周辺の工場や民家、自動車などが損壊する被害が生じた。
三 争点
(1) 被告国は、原告らに対して、a本件土地に埋設されていた爆雷を撤去して安全に処理すべきであったのに処理しなかったこと、又はb本件土地を横須賀市に譲与する際に、本件土地に埋められた危険物、その処理方法等を横須賀市に伝えるべきであったのに伝えなかったことにより損害賠償責任を負うか。
ア 原告らの主張
被告国は、自らの指示により極めて強力な兵器である爆雷を地中浅くに放置しており、そのまま放置すればその後の建物建築や撤去に伴い、あるいは掘り起こされた後に爆発して国民に損害を与えることが十分に予見できたにもかかわらず、これら爆雷を撤去して安全に処理すべき義務及び新たな土地所有者に対して安全に配慮するよう通知する義務を怠った。
したがって被告国は、国家賠償法(以下「国賠法」)一条一項又は民法七一五条に基づき、原告らの損害を賠償する義務がある。
(aについて)
被告国にとって、国民の生活の安全を保障するのが国家の務めであるから、被告国あるいは公務員の上記作為義務は、条理上当然に発生する。
そのほか、以下の法的根拠に基づいても、被告国あるいは公務員に作為義務が発生する。
① 所有者としての責任
現在爆雷を所管する機関の長は、爆雷の現在の所有者として、爆雷を安全に管理・処分する義務(具体的には、爆雷を破壊処理ないしは海中投棄して安全に処分する義務)があったにもかかわらずこれを怠った。義務の発生根拠は、所有権ないし物品管理法一、七条である。
② 敗戦に伴う連合国の命令(指令)の不履行
内務省の職務を現在承継する機関の長又は日本政府の代表者としての内閣総理大臣は、敗戦に際し、連合国側の命令(昭和二〇年九月二日「指令第一号」、同月三日「指令第二号」、同年九月二四日「日本軍より受理せる或いは受理すべき資材、需品及び装備に関する覚え書」、昭和二五年二月六日「戦時の作戦から生じた爆発物及び爆発性兵器の処理に関する覚書」)に基づき、爆雷を破壊ないしは海中投棄することにより、安全に処理する義務を負っているにもかかわらず、いまだかかる義務を履行していない。
③ 災害対策基本法上の責任
国ないしは政府の代表者としての内閣総理大臣は、国民に災害などの被害が出ないよう、防災に関し万全の措置を講じる義務があったのに怠った。義務の発生根拠は、災害対策基本法一条、二条一号、三条一項及び九条一項である。
④ 防衛庁長官の発令義務違反
防衛庁長官は、爆発物の存在が明らかな場合には、これを自衛隊に回収させ国民に被害が出ないようにする義務があるのに怠った。義務の発生根拠は、自衛隊法附則一四項である。
(bについて)
被告国(大蔵省(現財務省))は、本件土地の元所有者として、当該土地の所有権を他人に移転するに際し、又は建物の除去工事をするに際して、危険物が埋設されていること、その位置、個数、取り扱い上の注意、対処法などを通知し、注意を喚起すべき義務があるのに怠った。義務の発生根拠は、災害対策基本法等の根底にある法理念ないし条理である。
イ 被告国の主張
(ア) 原告らの主張する被告国の公務員の不法行為は、国賠法一条一項所定の公権力の行使に該当する。すなわち、仮に爆雷が被告国の公務員により埋設されたものであったとしても、私人が私人としての立場において爆雷の管理ないし処分の主体となることはおよそ考えにくいことからすれば、被告国の公務員による爆雷埋設行為は、民法に基づく財産の管理ないし処分行為と同視し得るものではないし、それが私人と全く法的に対等な立場においてされたものと解することもできない。そうだとすれば、かかる爆雷埋設行為を重要な要素ないし前提とする、埋設した爆雷を撤去ないし回収する行為及び本件土地の譲受人に対し埋設物の内容等を通知する行為を純然たる私経済作用と解することはできない。当該行為は、国賠法一条一項所定の「公権力の行使」に該当することは明らかである。
(イ) 本件においては、被告国の公務員の不作為の違法性が問題となるところ、公務員の不作為が国賠法上違法とされるためには、権限の不行使によって損害を受けたと主張する特定の国民に対する関係において、当該公務員に権限を行使すべき個別具体的な職務上の法的作為義務が存し、かつ、その作為義務に違反して権限を行使しなかったことが必要である。
原告らの主張は、公務員の特定を欠く上、その主張する危険防止措置に関する個別具体的な職務上の法的作為義務の内容及び根拠を明らかにしていないから、請求原因の特定が不十分である。
また、原告らの主張する作為義務は、結果回避義務にかかわるものに過ぎず、その前提として必要な予見義務ではない。
(ウ) 原告らの主張する法令は、以下のとおり作為義務の法的根拠となり得ない。
① 所有者としての責任
被告国は、現在の爆雷の所有者ではない。すなわち、爆雷の埋設されていた状況からすると、爆雷は本件土地に埋設することによって廃棄されたものと推認されるから、被告国は爆雷を埋設することによって所有権を放棄したことになり、爆雷は無主物に帰した。
また、爆雷は、保管すべき財産としての価値はなく、事実上管理不能な状態にあり、物品管理法上の物品には当たらないし、物品管理法は、国の物品管理に関する内部規定にすぎず、爆雷撤去義務の根拠規定とはなり得ない。
② 敗戦に伴う連合国の命令(指令)の不履行
原告らの挙げる指令、覚書等は、占領下における連合国の陸海軍ないし日本政府に対する命令を定めたものであって、そこから公権力を行使する公務員の国民個人に対する職務上の法的義務を導くことはできない。
③ 災害対策基本法上の責任
災害対策基本法は、国が防災に関し万全の措置を講ずる責務を負う旨等を規定しているにすぎず、公務員の個々の国民に対する職務上の法的義務を導き出すことはもちろん、原告らの主張するような作為義務を導き出すことはできない。
④ 防衛庁長官の発令義務違反
自衛隊法附則一四項は、不発弾等が発見された後に自衛隊が除去及び処理に関与することができるにすぎず、一般的に不発弾等を処理すべき義務を負うものではなく、まして、不発弾等が発見される前にこれを回収すべき義務を負うものでもない。
(エ) 原告らの主張する条理は、以下のとおり作為義務の法的根拠となり得ない。
条理のみで作為義務を基礎付けることはできない。
また、爆雷が爆発する具体的危険は、原告千代田商事が爆雷を鉄くず裁断機で裁断することによって初めて発生したものであって、被告国の公務員において、その具体的危険を作出したものではない。加えて、本件事実関係の下では、被告国の公務員において、爆雷の爆発を予見し、これを未然に防ぐことは不可能であったから、結果発生の予見可能性及び結果回避可能性を前提とする作為義務を認める余地はない。条理上の作為義務を基礎付ける事情は存しない。
(2) 被告宇内建設は、爆雷が爆発する危険性のある物(以下「危険物」という。)であることを認識できたか。
ア 原告らの主張
原告千代田商事は、平成一二年六月二六日ころ(ただし、契約書面上は同年七月一八日)、被告宇内建設との間で、事業者被告宇内建設、収集運搬会社金子工務店、処分会社原告千代田商事とする建設廃棄物処理委託契約を締結した。この契約は、契約書面上は、事業者が廃棄物の処分を処分会社に委託するものとされているが、実際は解体建物の鉄筋を中心とする鉄くずを処分会社が買い取ることであり、原告千代田商事は、有価物として一トン当たり三〇〇〇円で買い取る契約であった。
被告宇内建設には、原告千代田商事との間で締結した廃棄物処理委託契約及び取引慣習から、鉄くずの安全性を十分確認しなければならない注意義務がある。
被告宇内建設の従業員で本件工事現場の監督であったB野竹夫(以下「B野」という。)は、被告宇内建設が金子工務店に請け負わせた解体工事を注意深く監督していれば、本件解体現場から出てくるはずのない形状をしている爆雷が局地的な場所から掘り起こされていることを認識し、これが密閉物であるから内容物を出して安全性を確認した後でなければ原告千代田商事に引き渡してはならないことを指示できたはずである。
イ 被告宇内建設の主張
原告千代田商事と被告宇内建設との間に、直接の廃棄物処理委託契約は存在しない。被告宇内建設は金子工務店に対して建物除去、工作物等除去等の工事を請け負わせたところ、金子工務店が原告千代田商事との間で鉄くずの売買ないし処理の契約を締結した。
B野は、本件工事現場から出土したものが危険物であることの認識は全くなく、かつ、廃棄物の処理、運搬に実質的に関わっていなかったから予見可能性もない。廃棄物の処理、運搬の作業に従事していた金子工務店の従業員A田松夫(以下「A田」という。)や金子工務店の下請業者であるC山梅夫(以下「C山」という。)は、爆雷がドラム缶様の鉄塊であったため、建築に使用される物であろうと認識し、危険物であるとは認識しなかった。また、本件工事現場から爆雷が出土されることは想像できず、爆雷を現実に見たことはないから、爆雷を危険物であると認識することはできなかった。
(3) 損害
ア 原告らの主張
(ア) 原告千代田商事 合計四億三一五八万七八四九円
① ニューギロ(鉄くず裁断機)
ニューギロ本体 七四五五万二八三五円
ニューギロ基礎工事 一〇七六万九七〇〇円
レベル溶接工事 四一万一二八五円
本体受け台 一〇五万円
機械保護カバー 六四九万八一八七円
ニューギロ設備工事 一一七万五八二一円
(内訳)
〔電気設備工事 五四万二八七一円
保護カバー取付作業 一一万五五〇〇円
保護カバー塗装 三八万七四五〇円
メンテ用溶接機 一三万円〕
基礎撤去作業用ブレーカー費用 一四万二〇〇〇円
ベルトコンベア設置費用 三四万円
酸素等費用 二九万八七〇四円
作動油費用 四〇万五〇〇〇円
② 電気設備 一七〇六万二三九五円
③ 重機
ホイルローダー修理代 二二万〇六四七円
コベルコ切断機修理代 七八万〇二九〇円
コベルコマグネエース代車代 三五万円
④ トラックスケール調整 四万三〇五〇円
⑤ 事務所 一五四八万八六〇〇円
⑥ 工事関係
工場解体費用 三六〇四万一二五〇円
工場基礎工事鉄骨組みスレート張り 四五三〇万〇二八〇円
工場鉄板張り 八五七万三二五〇円
土間コンクリート 一六九一万七五〇〇円
コンクリート工事 一三九万八五〇〇円
鉄板塀工事 七九二万七五〇〇円
排水工事 五〇二万円
照明設備 三六〇万七八〇〇円
工場入口門修理 二九万九二五〇円
⑦ 営業用自動車修理代 四九万五四九五円
⑧ 営業損害(二年分) 二億〇一五一万三三四三円
(計算式)=x×二
x:過去三年(平成一〇年から平成一二年)の売上総利益の平均額
(一億二四六八万五八一五円+八九二七万五〇八五円+八八三〇万九一一五円)÷三
⑨ 近隣への見舞金立替払 五九二万四七五八円
⑩ スレート処分、片づけ費用 一二三万九三〇〇円
⑪ 弁護士費用 三五〇七万円
⑫ 控除額(保険金受取) ▲六七三二万八八九一円
(イ) 原告梅沢鉄構 合計一一〇八万八九五〇円
① 建物修理工事費用 九二〇万円
② 火災自動通報装置故障修理 二〇万八九五〇円
③ 弁護士費用 一六八万円
(ウ) 原告B山 合計一一七万一八八五円
① 車両修理費用 九二万七八八五円
② 弁護士費用 二四万四〇〇〇円
(エ) 原告C川 合計一〇九万六九四〇円
① 罹災車両所有者から得る予定の報酬相当額 一九万七六一五円
② 罹災車両所有者のレンタカー代車代(七二日) 五〇万〇三二五円
③ 罹災車両保管のための仕事量減少 一七万一〇〇〇円
④ 弁護士費用 二二万八〇〇〇円
(オ) 原告A野 合計一七八八万七二〇六円
① 整体治療費(一回五〇〇〇円×六回) 三万円
② 付添看護費 一四万四〇〇〇円
(平成一二年八月三〇日から同年九月二二日までの二四日間入院
一日当たり六〇〇〇円×二四日)
③ 入院雑費(一日当たり一三〇〇円×二四日) 三万一二〇〇円
④ 通院交通費(通院一回当たり一五〇〇円×一〇回) 一万五〇〇〇円
⑤ 弁護士費用 二五二万円
⑥ 休業損害 一四万六九四八円
(休業期間 平成一二年八月三〇日から同年一一月八日までの六八日間
一日当たりの給料の基礎額 一万〇八〇五円
したがって、一万〇八〇五円×六八日=七三万四七四〇円
このうち五八万七七九二円は労災により補填されたので、残額一四万六九四八円が損害となる。)
⑦ 後遺症による逸失利益 一〇九四万〇〇五八円
(後遺症の内容 右手関節の運動時痛、右手拇指のしびれ、右手握力の低下 後遺障害別等級表第一二級一二号「局部に頑固な神経症状を残すもの」に該当
労働能力喪失割合 一四パーセント
三二歳男子平均給与 月額三九万七七〇〇円
就労可能年数三五年のライプニッツ係数一六・三七四
したがって、
三九万七七〇〇円×一二か月×〇・一四×一六・三七四=一〇九四万〇〇五八円)
⑧ 入通院慰謝料 一三六万円
⑨ 後遺症慰謝料 二七〇万円
(カ) 原告D原 合計七五万八九一〇円
① 車両修理費 五七万八九一〇円
② 弁護士費用 一八万円
(キ) 原告E田 合計一四五万五五一〇円
① 車両修理費 五一万一〇八〇円
② レッカー代、代車費用(三〇日) 一七万三二五〇円
③ 車両装備費 四九万五一八〇円
④ 弁護士費用 二七万六〇〇〇円
イ 被告らの認否
すべて否認する。
第三当裁判所の判断
一 争点(1)について
(1) 前記争いのない事実、《証拠省略》によれば、以下の事実が認められる。
(本件土地の沿革及び爆雷の出土について)
ア 海軍省は、昭和一六年四月一日本件土地を買収し、対潜学校野比第一実習所の用地として使用し、交戦国の潜水艦を撃沈することを目的とした実習を行った。爆雷は、対潜水艦用の爆弾である。
本件土地は、県道久里浜港線(北下浦海岸通り)や国立療養所久里浜病院に近接しており、昭和二〇年一〇月三一日大蔵省に所管換となった後、昭和三〇年八月六日横須賀市に譲与され、さらに昭和四六年三月一五日、同市から神奈川県へ売却された。
神奈川県は、昭和四八年ころから本件土地上に特別養護老人ホーム「横須賀第二老人ホーム」を建築し、同ホームの用地として本件土地を使用し現在に至っている。
神奈川県は、同ホームの老朽化に伴い、同ホームを建て替えるため、平成一二年六月被告宇内建設に建物取壊工事を発注し、同被告はこれを受注した。
被告宇内建設は、同月金子工務店に対し、同工事を下請けし、金子工務店はこれを請け負った。
金子工務店は、平成一二年七月六日から老人ホームの敷地中央に位置する入所棟の建物解体作業に着手し、八月二八日から本件土地の北東に位置する職員宿舎B棟(約二〇年前に建築された)の基礎の解体作業を実施した。基礎の解体作業中、基礎部分と基礎杭を切り離す作業を終えたところ、地表面から深さ約二・四メートルの土中から切断された大量の杭の頭部分(杭頭処理材)と潰れて穴のあいたドラム缶様のもの(後に爆雷と判明)が一六個ほど出てきた。
イ 本件爆発後の平成一二年九月二八日、神奈川県は、本件土地を約四メートル掘り下げて爆雷を探査し、埋設されているすべての爆雷を処理する作業を行った。その際、上記場所とは異なる場所の本件土地から、爆雷三個と魚雷推進機部一個(直径四五センチメートル、全長三二三センチメートル)が発見された。
ウ 爆雷が、いつ、誰により、どのような命令又は指示に基づき、本件土地に埋設されたかを認定し得る証拠はない。
(軍用品の処分について)
エ 日本政府は、太平洋戦争の終戦に際して、連合国最高司令官から日本政府宛ての指令第一号、指令第二号及び日本軍より受理せる或いは受理すべき資材、需品及び装備に関する覚書により、一切の武装を解除し、一切の兵器、弾薬、爆発物、軍用装備、貯蔵品、需品等の戦争用具及び財産を連合国に引渡すべきことになった。
引き渡される軍用品のうち、戦争又はこれに類する行動に本来又は専ら使用され、かつ、平時の民需用に適さないものは破壊されることとなった。破壊作業は日本側において実施するが、連合国が命令するまで実施してはならないとされた。また、破壊の方法として、火薬類は海中投棄等の処分を行うこととされた。
オ 連合国への軍用品引渡しに当たり、内務大臣は、昭和二〇年九月二八日付け訓令により、兵器等が闇に流れたり、私腹を肥やす者があらわれないように注意すべきこととした。
また、保管及び警備の便宜上、引渡すべき軍用品は適当な場所に集積又は整理し、状況により洞窟中にあるものでさしあたり処分される見込みのないものは標識を設けて一時埋設する等の方策を講ずることとし、その際には、標識を直接一般人の注意を惹く場所に設置してはならないとされた。
カ 横須賀海軍軍需部は、昭和二〇年八月以降、久里浜、池子、南下浦上宮田、北下浦津久井、北下浦宮ノ下等の倉庫にある爆雷等の兵器を、連合国に引き渡した。
横須賀地区における連合国への軍用品引渡しは、昭和二〇年一〇月末までに全部終了の予定であったが、引渡しを受けるべき米陸軍がなかなか引取人を派遣しなかったため大分遅れた。保安隊(横須賀鎮守府特別陸戦隊が終戦後改編されたもの)解散時に兵器引渡しが終了していないところは、当該軍用品を地方警察に渡したが、引継の不良、警察力の不足等のため大分盗難にあい、事後の隠退蔵物資の原因となった。
キ 昭和二七年四月二八日、サンフランシスコ講和条約が発効して日本政府が完全に主権を回復した。これにより、連合国に引き渡されていた兵器等はすべて日本政府に返還された。
(2)ア 本件で特徴的なことは、証拠上確定することができる事実は、本件土地の地表から約四メートルの土中に爆雷一九個ほどと魚雷推進機部一個が埋設されていた、ということのみであり、これらの爆雷が、いつ、誰によって、いかなる理由により埋設されたかを確定することができないということである。
イ しかしながら、前記認定の軍用品の処分に関する取扱例及び本件土地が海軍対潜学校野比第一実習所の跡地であることに照らせば、爆雷の埋設は、終戦直後に、海軍の関係者の手により廃棄処分とする趣旨でなされた可能性が高いと推認するほかない。
ウ 爆雷の所有権が海軍省すなわち、被告国にあったことは異論がないから、爆雷を本件土地に埋設したことにより、所有権放棄の効力が生じるかが次に問題となるので、この点について検討する。
結論を先に述べれば、処分者の意図はどうあれ、爆発の危険性を帯有している爆雷については、本件のように地表から約二・四メートルないし四メートルの深度に埋設することにより所有権放棄の効力は生じないというべきである。なぜなら、本件土地の所在場所において、地表から一〇メートル以内の深度では、建物の建築や工作物の設置のために土地を掘削した場合に爆雷が地表に露出することは見やすい道理であり、このように容易に他者の手に触れ得る方法による処分を廃棄処分と認めてこれに所有権放棄の効力を付与することは爆雷の属性上認めることはできないからである。
エ 爆雷の所有者としての被告国の義務
被告国は、国民の生命、身体及び財産を災害から保護する使命を負っており(災害対策基本法一条参照)、爆雷の所有者として、爆雷の爆発により生ずる国民の生命、身体及び財産に対する被害を未然に防止すべき条理上の作為義務を負っていると解すべきである。なぜなら、爆発の危険性を帯有している爆雷を無害化の措置を採ることなく、本件土地の地表から約二・四メートルの深度に埋設すれば、将来建物の建築等に伴う土地の掘削により爆雷が地表に露出し、爆発する危険のあることは見やすい道理であり(予見可能性)、かつ、被告国に爆発による被害を未然に防止する措置、具体的には、爆雷が本件土地に埋設されている事実、あるいは、埋設されている可能性があることを窺わせる事情を記録化し、危険の存在を他者が容易に知り得る状態にすることを期待することは不可能とはいえない(結果の回避可能性)からである。そして、このことは、火薬類、武器等の危険物については、火薬類取締法等の法律で、危険の存在を知らせる方策を講ずることにより、災害を防止し、公共の安全を確保するため、所定の事項について記録化(帳簿の作成義務)すべきことが定められていることからも裏付けられる。
被告国は、上記作為義務については法令上の根拠がないと論難するが、本件は、終戦直後の混乱のさ中に爆雷を本件土地中に埋設遺棄した、という特殊例外的な事象であり、このような事案を想定した法令の制定は期待し得ないこと、しかしながら、建築工事等に伴う土地の掘削により爆雷の爆発という危険が現実化するおそれがあることに照らせば、本件は、正に法の欠缺の場合として、災害対策基本法や火薬類取締法等の基底を貫く条理に作為義務の根拠を求めるほかないと考える。
オ 本件土地の譲渡人としての被告国の責任
被告国は、容易に他者の手に触れ得る場所(本件土地の所在場所において、地表から約二・四メートルの深度の地点)に爆雷を無害化することなく埋設して爆雷を所有していたが、このような本件土地を他者へ譲渡する場合には、建物の建築等に伴う土地の掘削により爆雷の爆発という危険が現実化するおそれがあるのであるから、被告国は、前記エで述べた義務を前提とし、譲渡契約に基づく付随義務として、爆雷が埋設されている事実あるいはその可能性に係る事実を他者へ告知する義務があると解すべきである。
譲受人等が建物の建築等により本件土地を掘削する場合には爆雷が地表に露出し、爆発の危険があることは容易に予見可能だからである。
被告国は、本件土地に爆雷が埋設されていること自体を知らず、かつ、知るよすがもなかったから、対処の方法がなかったと主張する。確かに、実際問題としては、被告国が昭和三〇年八月六日に本件土地を横須賀市へ譲与(譲渡)する際に、被告国の担当者は、本件土地に爆雷が埋設されている事実を現実には知らなかったと思われるが、被告国が、前記エの義務を前提として、爆雷が本件土地に埋設されている事実、あるいは、埋設されている可能性があることを窺わせる事情を記録化しておきさえすれば、本件土地の譲渡に当たり爆雷爆発の危険性を譲受人に告知することができたのであるから、被告国は、爆雷埋設の事実を知らなかったこと及び知るよすがもなかったことを理由にその責任を免れることはできないと言わなければならない。
したがって、被告国は、被告国の担当者が、本件土地を横須賀市へ譲与(譲渡)するに当たって、譲渡契約の付随義務としての上記告知義務を怠ったことにつき、民法七一五条に基づき、原告らの被った損害を賠償しなければならない。
被告国は、爆雷が爆発したのは、原告千代田商事が鉄くず裁断機を用いて約四〇〇トンの圧力を加え、つぶした上で切断したからであり、原告千代田商事の行為により爆発の具体的危険が生じたと主張する。しかし、原告千代田商事が裁断処理したのは爆雷であることを知らなかったからであり、知らなかった原因は被告国が爆雷埋設の事実等を横須賀市に伝えなかったことに端を発するのであるから、本件爆発の責任を負うべきは被告国であり、被告国の責任は否定されない。
二 争点(2)について
(1) 前記争いのない事実、《証拠省略》によれば、以下の事実が認められる。
ア 金子工務店は、被告宇内建設から本件工事の建物除去及び廃材運搬の仕事を請け負った。
イ 金子工務店は、廃材のうち金属くずの運搬と処分を原告千代田商事に依頼した。原告千代田商事と金子工務店との間の取り決めは、原告千代田商事が、金子工務店から引き渡される金属くずを買い取り、金属くずの売買代金から金属くず以外のダスト(ゴミ)の処分費用を差し引いた金額を支払うという内容であった。
ウ 被告宇内建設及び原告千代田商事は、平成一二年七月一八日付けで、事業者を被告宇内建設、収集運搬会社を金子工務店、処分会社を原告千代田商事とする建設廃棄物処理委託契約書を作成した。契約内容は、被告宇内建設が廃棄物の収集運搬を金子工務店に、その処分を原告千代田商事に委託するというものであり、廃棄物は金属くずで予定数量六二〇・五トン、処分予定金額一八六万一五〇〇円(一トン当たり三〇〇〇円)である。また、契約上、被告宇内建設は、廃棄物の処理が適正に行われるよう、金子工務店又は原告千代田商事に対して必要な指示ができるとされ、金子工務店又は原告千代田商事はその指示に従うものとされている。
被告宇内建設は、金子工務店及び原告千代田商事に対し、廃棄物引渡しの際、「建設系廃棄物マニフェスト」を交付した。同マニフェストには、建設系廃棄物の種類、形状、荷姿等が記載されており、「備考(廃棄物の特性と取扱い上の注意、工事種別、その他連絡事項等)」欄には何も記載されていなかった。
エ 金子工務店従業員A田は、本件工事現場において、平成一二年八月二八日から、金子工務店専属の下請業者であるC山と共に、職員宿舎の基礎解体工事を行った。その手順は、①コンクリートの基礎部分と基礎杭(PC杭)をコンクリート破砕機で切り離し、基礎部分をコンクリート破砕機で解体する(解体作業)、②上記①により生じた解体材をコンクリート破砕機の傍に移動する、③解体材をコンクリートの破砕機のツメで潰す(小割作業)、④鉄筋コンクリートをコンクリート破砕機で壊し、鉄筋等の金属くずとコンクリート塊に分別する(分別作業)、⑤金属くずでかさのあるものはコンクリート破砕機のツメで潰してかさを減らし、密閉状態のものはコンクリート破砕機のツメで潰して穴を空け、内部に土砂などの金属以外の物が入っている場合は潰した上で内容物を出してからトラックに積む、という内容である。
A田及びC山はコンクリート破砕機に乗車し、A田が前記①及び②の作業、C山が同③及び④の作業、A田とC山のどちらかが同⑤の作業を行った。
オ 平成一二年八月二八日、A田が、前記エ①の作業のうち、基礎部分と基礎杭の切り離し作業を終えるころ、コンクリート破砕機のツメに挟まって、切断された大量の杭頭処理材と多数のドラム缶様のもの(後に爆雷と判明)が出土した。爆雷は、基礎部分と基礎杭切り離しのため土中で何回もコンクリート破砕機のツメでかんだため、潰されて、穴が開いていた。
A田は、地中に杭頭処理材が埋められていることはしばしばあることだと思い、そのまま作業を続けた。また、爆雷について、その形状がドラム缶様であったため、杭頭にかぶせる金属製の保護材か基礎工事の際に必要な水溜め用のドラム缶ではないかと思い、他の解体材と共にコンクリート破砕機の傍に積んだ。
C山は、前記⑤の作業として、コンクリート破砕機のツメで爆雷を潰して穴を開け、振って、内部の土砂のような物を出そうとしたが、湿り気が多く、内容物を全部出し切ることは困難であった。A田は、その様子を見て、時間と労力がかかる割に得る対価は低く、効率が悪いと考え、同月二九日に発掘した爆雷一六個ほどのうち八個は、小割、分別の作業をせず、職員宿舎B棟のそばの基礎撤去後の穴に埋め戻した。
同日ないし翌三〇日、原告千代田商事は、前記のコンクリート破砕機で潰した爆雷七、八個を、他の金属くずと一緒に、本件土地から工場に搬出した。
カ 本件爆発が発生(平成一二年八月三〇日)した後も、本件工事は続行され、A田は、翌三一日及び同年九月一日に、解体材小割・分別作業、コンクリート塊の搬出及び場内運搬作業を続行した。
キ 平成一二年九月一日、浦賀警察署の警察官は、B野とC山に対し、原告千代田商事が本件工事現場からローラーあるいはドラム缶様のものを搬出しなかったかと尋ねた。C山は、警察官に対し、一斗缶様のものを原告千代田商事の自動車に積んだと答えたため、同月四日に、長浦の自衛隊弾薬庫に保管されている本件爆発の爆発物を確認することになった。
ク 平成一二年九月二日、新聞記事に本件爆発の爆発物の写真が掲載された。
同日、A田は、上記新聞記事を見て、本件爆発の爆発物が前記オで発掘したドラム缶様のものと酷似していることを知り、B野に対し、その旨とドラム缶様のもの八個ほどを本件土地に埋め戻したことを報告した。
B野は、被告宇内建設の社長、専務及びA田の四名で、浦賀警察署に行って、前記事実を報告し、本件工事を中止した。
ケ B野、A田及びC山は、平成一二年九月四日午前中、警察官と共に長浦の自衛隊弾薬庫に行き、保管されていた本件爆発の爆発物を見た。A田は、当該爆発物が、本件工事の職員宿舎B棟の基礎解体現場から出土したドラム缶様のものと同じものであることを確認した。
コ B野は、平成一二年九月四日、神奈川県の担当者に対し、本件爆発の爆発物は、本件工事の職員宿舎B棟の基礎解体現場から出土したドラム缶様のものと同じものであることを報告した。
サ 浦賀警察署は、平成一二年九月五日、本件爆発の爆発物は、本件工事現場から搬出されたと発表した。
シ 神奈川県は、平成一二年九月二八日から、本件土地に埋設されているすべての爆雷を探査して処理する作業を行った。その際、本件土地から、金子工務店が地中に埋め戻した爆雷八個(二式爆雷六個、九五式爆雷二個)が発掘され、自衛隊により搬出、撤去された。発掘された八個の爆雷のうち三個は、コンクリート破砕機のツメで潰された状態であった。
ス 本件工事は、平成一三年一月二九日に再開され、同年二月二一日に竣工検査を受けて終了した。
(2) 以上の事実をもとに争点(2)について判断する。
前記(1)ウのとおり、被告宇内建設と原告千代田商事は、建設廃棄物処理委託契約書を作成しており、同契約の存在が認められる。この点、被告宇内建設は、被告宇内建設と原告千代田商事との間に直接の契約関係はなく、契約書は神奈川県から発注を受けた仕事であったために体裁を整える意思で作成したにすぎないと主張する。しかしながら、原告千代田商事が本件工事の廃棄物処理を担当することになった経緯が、同ア及びイのとおり、金子工務店を介するものであったとしても、被告宇内建設は、本件工事に必要不可欠な廃棄物処理を原告千代田商事に依頼することを了解し、廃棄物処理を原告千代田商事に担当させることにして、原告千代田商事との間で建設廃棄物処理委託契約書を作成したのであるから、契約書を作成した時点で、被告宇内建設と原告千代田商事との間に、廃棄物処理委託契約が成立したと認められる。したがって、被告宇内建設には、上記契約に基づき、原告千代田商事に対し、処理を委託する廃棄物が危険物等であれば、処理に当たり原告千代田商事に事故が発生しないよう、特に注意すべきことを伝える義務がある。
そこで、被告宇内建設は、爆雷が危険物であることを認識できたか否かについて検討する。
前記(1)オ及びシのとおり、A田及びC山は、爆雷を他の金属くずと同様に、コンクリート破砕機のツメで潰して穴を空け、内部の土砂等を出す作業を行っている。爆雷に穴を開けて内部の土砂を出す作業は爆発を招く危険な作業であるから、A田及びC山が爆雷であることを知り、又は爆雷かもしれないと思いながら作業を行ったとは到底考えられない。また、A田が、出土した爆雷が爆発物であることを認識していたとすれば、現実に爆発が発生した際には、それ以上、本件工事現場での解体材小割・分別作業を続けることはできないと考えられるが、同カのとおり、本件爆発後も二日間作業を続行している。実際に、同クのとおり、A田は、新聞記事により、出土したドラム缶様のものが本件爆発物であるかもしれないと知るや、B野に報告し、工事は中止された。この事実からも、A田及びC山が、爆雷を危険物であることを全く想定していなかったことが窺われる。さらに、本件爆発物が、本件土地から発掘されたものであることが判明した経緯は、同キないしサのとおりであり、A田及びC山が扱っていたものが爆発の危険がある危険物であることを知っていたことを疑わせるものではない。
以上の事実によれば、A田及びC山は、ドラム缶様のもの、すなわち爆雷が危険物であることを認識していなかったと認められる。加えて、A田及びC山にとって、本件土地に爆雷が埋設されていることは想定不可能であるし、爆雷の形状は一般人にとって明らかなものではないから、A田及びC山が、爆雷が危険物であることを認識すべきであったということもできない。
この点、原告らは、①出土した爆雷は杭頭処理材やドラム缶とは形状が全く異なること及び②局地的に一六個も埋設されていたことから危険なものかもしれないと認識、予見することは十分可能であったと主張する。
しかしながら、爆雷の形状は、《証拠省略》の写真のとおり、一見ドラム缶の形状によく似ており、爆雷の形状を知らない者が爆雷を見ても爆弾ないし爆発物であるとは認識できないこと、通常、建物の基礎付近に大量の危険物が埋設されているとは思わないから、一六個まとまって出土したことから爆発の危険があることを予見すべきであったとはいえない。
また、原告らは、③A田及びC山が、出土した爆雷を再度埋め戻したことから、爆雷に対して何らかの危惧感を持っていたと考えられるとも主張する。
しかし、A田らが再度埋め戻しをした理由は、前記オのとおり、主として経済的な事情(労力の割にペイしない)である上、前記A田らの行動は、およそ出土したドラム缶様のものが爆弾ないし危険物であると認識していた者の行動とは言い難いことに照らせば、A田らが埋め戻したことから、危険物であることを知っていたとは到底認められない。
そして、A田及びC山が、爆雷の危険性を認識せず、かつ認識すべきであったとはいえない以上、実際に爆雷を取り扱ったわけではない現場監督のB野が、爆雷が危険物であることを認識できたとは到底いえない。
よって、被告宇内建設が、爆雷が危険物であることを認識できたとは認められない。
(3) 以上によれば、被告宇内建設が、原告千代田商事に対し、廃棄物処理委託契約に基づき危険物の処理に際して注意すべきことを伝える義務を怠ったとは認められないから、その余の点について検討するまでもなく、被告宇内建設の原告千代田商事に対する債務不履行責任及び同被告の原告らに対する不法行為責任は認められない。
よって、原告らの被告宇内建設に対する請求は理由がない。
三 争点(3)について
(1) 原告千代田商事の損害 合計一億三三六五万三六九六円
ア ニューギロ(鉄くず裁断機) 合計九三〇〇万円
(ア) 《証拠省略》によれば、以下の事実が認められる。
鉄くずを裁断する機械であるニューギロ(重量一〇〇トン以上)は、本件爆発により倒壊し、カッティングの刃の一部(重量約一〇〇キログラム)が約三〇〇メートル吹き飛んだ。ニューギロ設備全体としてはほぼ全損である。
倒壊したニューギロの取得年月は平成九年一月、取得価額は九九一二万二四一〇円、平成一二年一月三一日時点の簿価は六四二九万八一二四円、ニューギロ修理の発生年月は平成九年一月、取得価額は四九〇万七五九七円、平成一二年一月三一日時点の簿価は三一八万三四三二円、ギロチンプレス設備工事他の発生年月は平成九年三月、取得価額は一二二万八八四四円、平成一二年一月三一日時点の簿価は八一万六二九五円、電気設備の取得年月は平成九年一月、取得価額は四四二万九〇〇〇円、平成一二年一月三一日時点の簿価は四三六万六一〇九円であった。耐用年数は、税法上は前三者が七年、電気設備は一五年であるが、ニューギロは実際には三〇年以上の耐用がある。
新たなニューギロを設置すると、下記の費用が必要である。
① ニューギロ本体費用
原告千代田商事は、本件爆発後、ニューギロ本体を新たに七四五五万二八三五円で購入した。
② 基礎工事費用
本来、既存の基礎を解体して新たに杭を打って基礎工事をやり直す必要があるが、原告千代田商事は、費用不足のため、既存の杭を使い、基礎の一部のみをやり直して仮復旧した。基礎工事の見積もりは一〇七六万九七〇〇円であり(内訳仮設工事二一万五〇〇〇円、杭工事三三三万二〇〇〇円、基礎工事四二四万三五〇〇円、設備工事二一二万九二〇〇円、諸経費八五万円)、仮復旧工事代金は三〇七万三九〇〇円(ただし後記事務所工事代金と併せて五七〇万円であり、事務所工事代金二六二万六一〇〇円を差し引いた額)である。
③ レベル溶接工事費用、本体受け台設置工事費用、機械保護カバー設置工事費用
レベル溶接工事とは、ニューギロを水平に保つために基礎と機械との間に鉄板を溶接する工事であり、本体受け台設置工事とは、ニューギロのバランスをとり重心を安定させるために基礎とニューギロの間に受け台を設置する工事であり、機械保護カバー設置工事とは、ニューギロの防音・防震のためのカバーを設置する工事である。
各工事の見積額は、レベル溶接工事が四一万一二八五円、本体受け台設置工事が一〇五万円、機械保護カバー設置工事が六四九万八一八七円である。
原告千代田商事は、必要不可欠な一部のみの工事をやり直し、前記三つの工事の代金として四三〇万八二三二円(二一六万一七六九円+二一四万六四六三円)を支払った。
④ 設備工事費用
設備工事には、電気設備工事(ニューギロ機械内の照明や換気扇等の電気設備)、保護カバー取付(機械保護カバーを取り付ける)、保護カバー塗装(機械保護カバーの塗装)、メンテ用溶接機設置(ギロチンにひびが入った場合などにこれを溶接して修理するメンテナンス用のアーク溶接機の設置)がある。
電気設備工事はすでに終了し、原告千代田商事は五四万二八七一円を支払った。保護カバー取付作業にはクレーン車使用の費用が必要である。その見積もりは一一万五五〇〇円であったが、原告千代田商事が操業できないために使用していないクレーン車で代替するなどして経費を節減し、実際に要した費用は四万六八三〇円であった。保護カバー塗装はすでに終了し、原告千代田商事は三八万七四五〇円を支払った。メンテ用溶接機の見積もりは一三万円であるが、取り付け未了である。
⑤ 基礎撤去作業用ブレーカー費用
ギロチン基礎工事を行うために、既存の基礎を取り除く作業が必要であり、ブレーカー付きバックホーを使用する。その費用として、一二万五九四七円を支払った。
⑥ ベルトコンベアー設置費用
切断機にたまるゴミをかき出すためにベルトコンベアーを設置するが、爆発により損壊した。現在はまだ取付未了であり、手作業でゴミをかき出している。
見積もりは三四万円である。
⑦ 酸素等及び作動油費用
酸素等は、ニューギロ設置時に溶接等する際と使用時に機械を動かす際にそれぞれ必要である。作動油は、ニューギロ本体を作動させるために必要であり、一度注入すれば五ないし一〇年間使用し、補給の必要はない。
原告千代田商事は、酸素等費用として二九万八七〇四円、作動油費用として四〇万一四一五円を支払った。
⑧ 電気設備費用
電線を流れている一〇〇〇ボルトの電気をパスを経由してキューピクル(変電設備)に引き入れ、二〇〇ボルトの電流に変換して工場内で使用する。本件爆発事故により、キューピクルが損壊し、すべての設備が損壊した。
見積もりは一七〇六万二三九五円である。原告千代田商事は、中古の部品等を使用することにより仮復旧し、仮復旧工事代金を支払った。金額は、後記工場照明設備費用と併せて六二五万一九三二円である。
(イ) 以上をまとめると次のとおりである。
① ニューギロ本体価額 七四五五万二八三五円
② 基礎工事費用 一〇七六万九七〇〇円
③ レベル溶接、本体受け台、機械保護カバー 七九五万九四七二円
④ 設備工事費用 一一〇万七一五一円
内訳
〔電気設備工事 五四万二八七一円
保護カバー取引 四万六八三〇円
保護カバー塗装 三八万七四五〇円
メンテ用溶接機設置 一三万円〕
⑤ 基礎撤去作業用ブレーカー費用 一二万五九四七円
⑥ ベルトコンベアー設置費用 三四万円
⑦ 酸素等及び作動油費用 七〇万〇一一九円
①ないし⑦合計 九五五五万五二二四円
⑧ 電気設備費用 一七〇六万二三九五円
(ウ) 仮復旧工事費について
前記のとおり、原告千代田商事は、②、③、⑧について仮復旧工事を行い、その代金を支出したが、ニューギロ設備全体としてはほぼ全損と評価し得る以上、評価額は、原則として設備を新たに設置するのに必要な費用額であり、仮復旧工事費用は、本来の損害の一部にすぎないというべきである。
(エ) 総合的考察
理論上は、補てんされるべきは全損したニューギロの再調達価額であり、前記(イ)の金額はいわば新設価額であるから、これを損害とすると、逆に原告千代田商事は本件爆発により利益を得ることになってしまい、衡平の観点からは妥当性を欠く。
そこで、ニューギロ関係の取得価額の合計は一億〇五二五万八八五一円(九九一二万二四一〇円+四九〇万七五九七円+一二二万八八四四円)、平成一二年一月三一日時点の簿価は六八二九万七八一五円(六四二九万八一二四円+三一八万三四三二円+八一万六二五九円)であること、電気設備の取得価額は四四二万九〇〇〇円、同日時点の簿価は四三六万六一〇九円であること、仮復旧工事代金は六二五万一九三二円であること、ニューギロの税法上の耐用年数は七年であるが実際には三〇年以上の耐用があること、全損したニューギロは本件爆発時新設から三年余り経過していたことに照らし、①ないし⑦は新設価額から約一割を減じた八六〇〇万円と、⑧については七〇〇万円と評価する。
イ 重機 合計一三五万〇九四四円
(ア) 《証拠省略》によれば、以下の事実が認められる。
原告千代田商事は、本件爆発当時、ホイルローダー(タイヤショベル)、コベルコ切断機(アームの先に金属等を切断する切断カッターがついている)、コベルコマグネエース(アームの先が磁石になっており、磁力で鉄くずを吸い付ける)を所有していた。
ホイルローダーはガラスが割れ、カバーが損壊した。コベルコ切断機はコンデンサが破損したほか、カバーが曲がったり破損した。
ホイルローダーの修理費用見積もりは二二万〇六四七円、コベルコ切断機の修理費用見積もりは七八万〇二九七円である。両車両につき、原告千代田商事は、必要最低限の修理をして、併せて二五万六三八〇円を支払った。
コベルコマグネエースの修理は保険で賄ったが、原告千代田商事は、修理期間中一か月間の代車代三五万円を支払った。
(イ) 以上の事実によれば、重機に関する損害は、以下①ないし③の合計額一三五万〇九四四円を相当と認める。
① ホイルローダー
ホイルローダーの修理代金として、二二万〇六四七円を相当と認める。
② コベルコ切断機
コベルコ切断機の修理代金として、七八万〇二九七円を相当と認める。
③ コベルコマグネエース代車代
コベルコマグネエース代車代金として、三五万円を相当と認める。
ウ トラックスケール調整 四万三〇五〇円
《証拠省略》によれば、本件爆発により、鉄くずの重さをトラックごとはかることのできるはかりの調整が必要になり、原告千代田商事は調整を行い、その調整費用が四万三〇五〇円であったことが認められる。
以上の事実によれば、トラックスケール調整に関する損害は、四万三〇五〇円を相当と認める。
エ 事務所 一〇〇〇万円
(ア) 《証拠省略》によれば、以下の事実が認められる。
本件爆発により、原告千代田商事の事務所建物は、天井、窓、壁が全て爆風で飛び、半壊となった。
半壊した事務所の取得年月は平成二年九月、取得価額は一五四三万六六一〇円、平成一二年一月三一日時点の簿価は九一一万三八六〇円、耐用年数は二二年である。
原告千代田商事は、仮復旧工事として、とりあえずベニヤを張り、ガラスを入れ、壁紙を張った。
修理工事費用の見積もりは、完全立替費用として一五四八万八六〇〇円である。原告千代田商事は、仮復旧工事代金二六二万六一〇〇円を支払った。
(イ) 以上の事実を総合して、事務所の再調達価額を一〇〇〇万円と評価する。
オ 工場関係 合計六一七七万九〇四〇円
(ア) 《証拠省略》によれば、以下の事実が認められる。
本件爆発により、原告千代田商事の工場は、スレートが全て吹き飛び、鉄骨は曲がり、鉄板塀が損壊し、全損した。工場は、昭和四八年六月八日前に建築されたものであり、同日付けで増築、さらに昭和四九年一二月二四日付けで一部取毀、増築されている。
固定資産台帳上は、取得年月昭和五七年二月、取得価額一六七四万円、平成一二年一月三一日時点における簿価一一〇七万八二一九円、耐用年数三五年となっている。
工場を再建するためには、既存の工場を解体撤去して再建することになる。その見積もりは、①工場解体費用三六〇四万一二五〇円、②工場基礎工事鉄骨組みスレート張り四五三〇万〇二八〇円、③工場鉄板張り八五七万三二五〇円、④土間コンクリート一六九一万七五〇〇円の合計一億六八三万二二八〇円である。原告千代田商事は、当該工場の修理をせずに、全損状態のまま、その場所で、従来通り裁断物の保管その他の作業を行っている。
また、工場敷地境界付近の鉄板塀が爆風により損壊した。鉄板塀再建費用の見積もりは、⑤コンクリート工事(基礎工事)一三九万八五〇〇円、⑥鉄板塀工事七九二万七五〇〇円の合計九三二万六〇〇〇円である。鉄板塀再建工事は未了である。
その他、⑦排水工事(工場敷地内の排水設備工事)の見積もりは五〇二万円、⑧照明設備の見積もりは三六〇万七八〇〇円である。⑦排水工事は未了である。⑧照明設備は、本件爆発当時には二〇個あった照明設備が全損したが、営業に最低限必要な六機のみを仮復旧させた。原告千代田商事は、仮復旧工事代金として、前記ニューギロ電気設備工事と併せて六二五万一九三二円を支払った。
さらに、本件爆発とその爆風により、工場敷地入口の鉄製の門の修理が必要となり、原告千代田商事は当該修理を行って、⑨工場入口門修理代金として二九万九〇四〇円を支払った。
(イ) 以上の事実によれば、工場に関する損害は、以下の合計額六一七七万九〇四〇円を相当と認める。
(前記(ア)①ないし④について)
全損した工場は、昭和四九年一二月に、従来の工場が一部取り壊されて築造されたものであり、築造後少なくとも二五年以上経過していること、平成一二年一月三一日時点の簿価は約一一〇八万円であることに鑑み、①の解体工事代金全額に②ないし④の再建築工事代金の約二〇パーセント相当額である一四〇〇万円を加算した五〇〇〇万円と評価する。
(同⑤及び⑥について)
鉄板塀再建工事は、経年により既存の鉄板塀の残存価値が低下していたことに鑑み、再建築価格見積額合計九三二万六〇〇〇円の五〇パーセントである四六六万円(一万円未満は切り捨てる)を相当と認める。
(同⑦について)
排水工事は、五〇二万円を相当と認める。
(同⑧について)
照明設備は、経年により既存の照明設備の残存価値が低下していたことに鑑み、見積額三六〇万七八〇〇円の五〇パーセントである一八〇万円(一万円未満は切り捨てる)を相当と認める。
(同⑨について)
工場入口門修理代金として、二九万九〇四〇円を相当と認める。
カ 営業用自動車修理代 四九万五四九五円
《証拠省略》によれば、本件爆発により、原告千代田商事の営業用自動車(トヨタ・ランドクルーザー)のフロントガラスが割れ、ドアがへこんで閉まらない状態となり、車軸が曲がった。修理代金見積額は四九万五四九五円であった。原告千代田商事は、同程度の中古車購入代金と上記修理代金があまり変わらなかったので、同程度の中古車を購入した事実が認められる。
以上の事実によれば、営業用自動車に関する損害は、四九万五四九五円を相当と認める。
キ 営業損害 一五〇〇万円
(ア) 《証拠省略》によれば、以下の事実が認められる。
原告千代田商事は、本件爆発により、ニューギロ設置完了までの約三か月間、全く営業することができなかった。その間、顧客が別の業者を探したことにより、失った顧客がある。営業を開始した後、新しい顧客探しをした。平成一三年末には、営業がようやく軌道に乗った。
原告千代田商事の平成一〇年から平成一五年までの毎年一月決算期の売上高、売上総利益、販売費及び一般管理費(販管費)、営業利益及び経常利益は下記のとおりである(単位万円、一万円未満切り捨て)。
年 売上高 売上総利益 販管費 営業利益 経常利益
一〇 二億三五一八 一億二四六八 一億一八二五 六四三 六五〇
一一 一億七一六五 八九二七 八四六五 四六一 三九七
一二 一億四三六五 八八三〇 九八五八 ▲一〇二七 二六
一三 一億六八四九 八七一六 九八七一 ▲一一五五 九八三七
一四 一億七三二〇 一億一四六九 一億〇八七三 五九六 三九六
一五 二億七五八一 一億五六六六 一億四六一一 一〇五四 一〇一六
本件爆発前の三年間(平成一〇年から平成一二年)の売上総利益の平均は一億〇〇七五万円、営業利益の平均は二五万円であり、本件爆発後三年間(平成一三年から平成一五年)の売上総利益の平均は一億一九五〇万円、営業利益の平均は一六五万円である。
(イ) 本件爆発による約三か月間の営業停止の影響は平成一三年一月決算期の営業損失が一一五五万円となったことに端的に現れている。
そこでこの期を除く前三期(平成一〇年から平成一二年)及び後二期(平成一四年及び平成一五年)の営業損益の平均値を算出すると三四五万円となる{(643万+461万-1027万+596万+1054万)÷5}。
つまり、本件爆発事故の前後五年間においては平均年三四五万円の営業利益が出ることになり、これに平成一三年一月決算期の一一五五万円の営業損失を加えた一五〇〇万円が本件爆発による営業損害となる。
(ウ) 原告千代田商事は、営業損害の算定に当たっては売上総利益を用いるべきであると主張するが、企業の収益性の判定に当たっては経営損益のレベルで捕捉するのが一般的であること、しかしながら、同原告の場合には経常損益のレベルではばらつきが大きく、必ずしも企業の収益性を正確に反映しているとは認められないことから、営業損益のレベルでこれを捕捉するのが妥当であること、売上総利益は販管費を見ておらず、売上高の五〇パーセント以上を占める販管費を考慮した営業損益のレベルの方が企業の収益性を正確に反映していることに照らし、営業損益のレベルで捕捉するのが相当である。
ク 近隣への見舞金、立替払 五九二万四七五八円
《証拠省略》によれば、次の事実が認められる。原告千代田商事は、本件爆発直後、爆発の原因が明らかになっていない間、加害者の立場に立たされた。そのため、近隣の住民に見舞金として、一般家庭には三万円、企業に五万円、被害車両所有者には三万円、被害が大きいときはいずれも一〇万円の総額四七七万円を支払った。また、損害が大きかった近隣の六名に対して、損害賠償責任がないことを前提に、損害額の立替払の趣旨で、六名に対し総額一一五万四七五八円を支払った。
以上の事実を前提に、近隣への見舞金及び立替払が損害と認められるか検討する。本来、原告千代田商事が、本件爆発について自らに責任がないと考える以上、見舞金、立替金ともに支払う必要はなかった。しかし、本件爆発の威力は大きく、町内会の回覧で被害調査がされるほど近隣の被害は深刻であるところ、近隣住民が、まず、爆発事故を惹起した原告千代田商事に対し責任を追及するのもやむを得ない面がある。そして、仮に原告千代田商事に責任がないとしても、半径約七〇〇メートルの範囲で鉄くずが飛散するなどの事故を起こした立場としては、近隣住民に迷惑をかけた謝罪の意味もこめて見舞いたいと思うのも不自然ではなく、上記の金額を見舞金として支払うのは、社会通念上相当といえる。したがって、見舞金の支出相当額は、本件爆発による損害であると認められる。また、修理費用相当額の立替金についても、上記同様、原告千代田商事にとっては、これだけの規模の爆発を起こしたからには、以降も近隣住民と良好な関係を維持するためには、まず原告千代田商事において修理費用相当額を立て替えようとすることも首肯でき、社会通念上相当といえる。したがって、立替金の支出相当額も本件爆発による損害であると認められる。
以上により、近隣への見舞金、立替払の費用相当の損害として、合計五九二万四七五八円を相当と認める。
ケ スレート処分、片づけ費用 一二三万九三〇〇円
《証拠省略》によれば、原告千代田商事は、スレート処分費用(工場敷地内のスレート等の廃棄物片づけ)及び片づけ費用(工場敷地外に吹き飛んだスレート等の廃棄物片づけ)、廃棄物処理費用として、合計一二三万九三〇〇円を支払ったことが認められる。
スレート処分、片づけ費用の損害として、一二三万九三〇〇円を相当と認める。
コ 以上アないしケの合計は一億八八八三万二五八七円となる。
サ 損害保険てん補 ▲六七三二万八八九一円
《証拠省略》によれば、原告千代田商事は、火災保険契約に基づき、日新火災海上保険株式会社から、保険金合計六七三二万八八九一円を受領した事実が認められる。内訳は、工場建物の保険金二四六四万円(損害額率一〇〇パーセント)、事務所建物の保険金一八二万六九二三円(損害額率七三パーセント)、什器備品の保険金二〇四六万七七〇五円(損害額率九五パーセント)、臨時費用保険金五〇〇万円、取片付費用保険金四六九万三四六三円、失火見舞費用保険金九七二万八〇〇〇円、傷害見舞費用保険金九七万二八〇〇円である。
シ よって、アないしケの合計額から六七三二万八八九一円を控除すると一億二一五〇万三六九六円となる(一億八八八三万二五八七円-六七三二万八八九一円)。
ス 弁護士費用 シの約一割 一二一五万円
セ 総合計 一億三三六五万三六九六円
(2) 原告梅沢鉄構の損害 合計一〇三四万八九五〇円
《証拠省略》によれば、①原告梅沢鉄構は、本件爆発事故現場に近い場所(《住所省略》)に事務所、工場及びトイレの三棟の建物を所有していること、②本件爆発の爆風及び飛散物により、上記建物が被害を受け、スレートや天井がはがれ落ち、事務所及びトイレは使用することができなくなったこと、③原告梅沢鉄構は、工場及び事務所のスレート張りや事務所内部の天井張り替え工事等の修理を行い、九二〇万円を支出したこと、④原告梅沢鉄構は、建物内の火災自動通報装置が故障したため、修理を行い、二〇万八九五〇円を支出したこと、以上の各事実が認められる。
以上の事実を前提に、原告梅沢鉄構の損害は、以下aないしcの合計一〇三四万八九五〇円を相当と認める。
a 建物修理工事費用 九二〇万円
b 火災自動通報装置故障修理 二〇万八九五〇円
小計九四〇万八九五〇円
c 弁護士費用 上記小計金額の約一割 九四万円
合計一〇三四万八九五〇円
(3) 原告B山の損害 合計一〇一万七八八五円
《証拠省略》によれば、①原告B山は、本件爆発当時、本件爆発事故現場に近い場所(《住所省略》)付近の路上に、所有する自動車日産グロリア一台(登録番号《省略》)を駐車していたところ、本件爆発の爆風及び飛散物により、バンパー、ルーフウィングがへこんだりはぎ取られたりする損害を受けたこと、②上記自動車の修理代金見積もりは、ディーラーでの車体修理見積もりが七一万六八三五円、カーショップでの付属品(スポイラー、ルーフウィング)の修理見積もりが一二万四九五〇円、特殊コーティング費用が八万六一〇〇円であり、合計九二万七八八五円であること、③上記自動車の修理は未了であること、以上の各事実が認められる。
以上の事実によれば、原告B山の損害は、修理代金小計九二万七八八五円及び弁護士費用九万円の合計一〇一万七八八五円を相当と認める。
(4) 原告C川の損害 合計七六万七九四〇円
《証拠省略》によれば、①原告C川は、本件爆発当時、《住所省略》において、「レイティストガレージヨコスカ」の屋号で、自動車のカスタマイズの仕事をしていたこと、②原告C川は、平成一二年八月ころ、有限会社安田工業(以下「安田工業」という。)が所有する自動車トヨタハイエースバンSロング(登録番号《省略》、以下「ハイエース」という。)を預かり、貨物車の登録を工作車の登録に変更する依頼を受けていたこと、③原告C川は、改造申請書類等を作成した上、ハイエースの車両重量を量るため、ハイエースを運転して原告千代田商事の工場敷地に赴き、トラックスケール(自動車の重さを量るはかり)で車両重量を測定していたところ、本件爆発事故に遇ったこと、④ハイエースは全損に近い損害を受けたこと、⑤原告C川は、車両重量測定後直ちに登録変更の手続を行い、本件爆発の二日後である平成一二年九月一日には、ハイエースを安田工業に引き渡す予定でいたが、本件爆発により、ハイエースを安田工業に引き渡すことができなくなり、安田工業から受け取る予定の登録変更手数料一九万七六一五円の支払を受けることができなくなったこと、⑥原告C川は、安田工業がハイエースに替わる自動車を購入する平成一二年一一月一二日までの七二日間、レンタカー代金を立替払したが、そのレンタカー代金は五〇万〇三二五円であったこと、以上の各事実が認められる。
以上の事実を前提に、原告C川の損害は、以下aないしcの合計七六万七九四〇円を相当と認める。
原告C川は、罹災車両保管のために仕事量が減少したとして一七万一〇〇〇円の損害を主張するが、罹災車両保管のためにできなくなったという仕事を具体的に主張せず、売上高が減少した事実の立証もないから、上記損害の発生を認めることはできない。
a 安田工業から得る予定の報酬相当額 一九万七六一五円
b 安田工業の代車代 五〇万〇三二五円
小計六九万七九四〇円
c 弁護士費用 上記小計金額の約一割 七万円
合計七六万七九四〇円
(5) 原告A野の損害 合計一二九九万五一八二円
ア 《証拠省略》によれば、以下の事実が認められる。
(ア) 原告A野は、本件爆発当時、満三一歳の男子である(昭和四三年九月二六日生)。
本件爆発当時、鉄くず裁断機付近で重機を操作し、鉄くずを裁断機に投入する作業をしていたところ、爆発の爆風で割れた重機のコックピットのガラスの破片が顔面や右前腕をはじめ多数の箇所に突き刺さった。
(イ) 原告A野は、右前腕に突き刺さったガラスにより神経と腱が断裂していたので、本件爆発当日である平成一二年八月三〇日、横須賀市立市民病院に入院し、神経と腱を縫合する緊急手術を受けた。また、同年九月一一日には、顔面に刺さったガラスを取り除くため、異物摘出手術を受けた。同月二二日、同病院を退院した(入院期間二四日間)。
(ウ) 原告A野は、退院後も、医師の指示により自宅療養し、同年一一月九日に仕事に復帰した。
(エ) 原告A野は、横須賀市立市民病院を退院後、一〇回の通院治療を受けた(平成一二年一〇月六日、同月一三日、同月二〇日、同月二七日、翌一一月二四日、翌一二月二二日、平成一三年一月一九日、翌二月一六日、翌三月一六日、同月三〇日)。
また、福西整体療術院において、六回の治療を受けた(平成一二年一二月五日、同月二一日、平成一三年三月三日、同月一〇日、同月一七日、同月二四日)。整体治療費用は一回五〇〇〇円である。
(オ) 原告A野は、平成一三年三月三〇日に症状が固定した。右手関節の運動時痛、右母指のしびれ、右手握力の低下等がみられる。
原告A野は、横須賀労働基準監督署から、労働者災害補償保険法により、療養・休業補償給付金四四万〇八四四円(平成一二年一〇月一六日付け一八万八〇〇七円、同年一一月三〇日付け二五万二八三七円)、療養・休業特別支給金一四万六九四八円(平成一二年一〇月一六日付け六万二六六九円、同年一一月三〇日付け八万四二七九円)、後遺障害等級第一二級一二号「局部に頑固な神経症状を残すもの」の障害補償一時金一六八万五五八〇円、障害特別支給金二〇万円、障害特別一時金四万二七四四円の支給決定を受けた。給付基礎日額は一万〇八〇五円である。
(カ) 原告A野は、右手に神経症状が残っていることにより日常生活に支障を受けるほか、長時間重機を運転することができなくなった。
現在は、原告千代田商事の子会社である有限会社福西商事に出向中であり、左手のみでできる軽作業を担当している。収入は、本件事故当時と比べて大きな減額はない。
イ 以上の事実によれば、原告A野の損害は、以下aないしmにより合計一二九九万五一八二円を相当と認める。
a 整体治療費(五〇〇〇円×六回) 三万円
b 付添看護費(六〇〇〇円×五日) 三万円
医師の指示があったことを認めるに足りる証拠はないが、手術が二回にわたり行われたこと、原告A野の妻が付き添っていたこと、受傷部位が右前腕であり日常生活上の動作に支障をきたしやすい部位であることに鑑み、一日当たり六〇〇〇円、五日分を相当と認める。
c 入院雑費(一三〇〇円×二四日) 三万一二〇〇円
d 通院交通費(一五〇〇円×一〇回) 一万五〇〇〇円
e 休業損害 七三万四七四〇円
(計算式)=x×y
x:一日当たりの給料基礎額 一万〇八〇五円
y:休業期間 六八日(平成一二年八月三〇日から同年一一月八日まで)
f 後遺症による逸失利益 九〇四万〇六六六円
(計算式)=x×y×z×w (一円未満切り捨て)
x:労働者災害補償保険法による給付基礎日額 一万〇八〇五円
y:三六五円
z:労働能力喪失率 〇・一四(一二級一二号該当)
w:就労可能年数三五年に対するライプニッツ係数 一六・三七四
原告A野は、本件爆発当時は満三一歳であったが、その二七日後には満三二歳になったことに鑑み、就労可能年数三五年を適用するのが相当である。
g 入通院慰謝料 一三六万円
原告A野が、本件爆発後、約一か月の入院及び約六か月の通院を余儀なくされる精神的苦痛を受けたことが認められ、その精神的苦痛に対する慰謝料は一三六万円とするのが相当である。
h 後遺症慰謝料 二七〇万円
原告A野は、局部に頑固な神経症状の後遺症が残ることによる精神的苦痛を受けたことが認められ、その精神的苦痛に対する慰謝料は二七〇万円とするのが相当である。
i aないしhの小計 一三九四万一六〇六円
j 労災保険てん補 ▲二一二万六四二四円
原告A野が、労働者災害補償保険法により支給を受けた療養・休業補償給付金四四万〇八四四円と障害補償一時金一六八万五五八〇円の合計二一二万六四二四円は、前記iから控除する。なお、療養・休業特別支給金、障害特別支給金、障害特別一時金については、労働福祉事業により支給されていることに鑑み控除しない。
k 控除後の小計 一一八一万五一八二円
l 弁護士費用 kの約一割 一一八万円
m 総合計 一二九九万五一八二円
(6) 原告D原の損害 合計六三万八九一〇円
《証拠省略》によれば、①原告D原は、本件爆発当時、所有する自動車マツダデミオ(登録番号《省略》)を、職場(《住所省略》)付近に駐車していたところ、本件爆発の爆風及び飛散した職場建物のガラスにより、車体やガラスに傷が付く被害を受けたこと、②上記自動車の修理代金見積もりは、五七万八九一〇円であること、③上記自動車の修理は未了であること、以上の各事実が認められる。
以上の事実によれば、原告D原の損害は、修理代金五七万八九一〇円及び弁護士費用六万円の合計六三万八九一〇円を相当と認める。
(7) 原告E田の損害 合計九七万四三三〇円
《証拠省略》によれば、①原告E田は、本件爆発当時、所有する自動車ダイハツミラ(登録番号《省略》)を、本件爆発現場付近(《住所省略》)の路上に駐車していたところ、本件爆発の爆風及び飛散物により、ボディーやフロントガラスが全損する被害を受けたこと、②上記自動車は運転できなくなったため保管場所までレッカー車で移動したこと、③上記自動車は、本件爆発の約一か月後に廃車にしたが、保管中の一か月間代車が必要になったこと、④原告E田は、レッカー代金と代車代金の合計一七万三二五〇円を支払ったこと、⑤上記自動車の車体修理代金見積もりは五一万一〇八〇円であったこと、⑥上記自動車の装備であるホイール(取得価額五万四一八〇円、経過年数二年余)、カーナビゲーション(取得価額三一万四〇〇〇円、経過年数半年)、コンポ・カーステレオ(取得価額三万円、経過年数四年)、車内テレビ(取得価額三万円、経過年数半年)、スピーカー(取得価額五万円、経過年数一五年)及びステアリング(取得価額一万七〇〇〇円、取得後二〇年)の合計四九万五一八〇円が損傷したこと、以上の各事実が認められる。
以上の事実を前提に、原告E田の損害は、以下aないしdの合計九七万四三三〇円を相当と認める。
a 車両修理費 五一万一〇八〇円
b レッカー代、代車費用(三〇日) 一七万三二五〇円
c 車両装備費 二〇万円
装備品のうち、カーナビゲーション以外はほとんど交換価値が零であること、カーナビゲーションについても中古品扱いとなることに照らし、総額二〇万円と評価する。
小計八八万四三三〇円
d 弁護士費用 上記小計の一割 九万円
四 結論
以上によれば、原告らの請求のうち、原告千代田商事が一億三三六五万三六九六円、原告梅沢鉄構が一〇三四万八九五〇円、原告B山が一〇一万七八八五円、原告C川が七六万七九四〇円、原告A野が一二九九万五一八二円、原告D原が六三万八九一〇円、原告E田が九七万四三三〇円及びこれらに対する平成一二年八月三〇日から支払済みまで年五分の割合による遅延損害金の支払を請求する部分は理由があるから、その限度で認容し、その余は理由がないから棄却することにして、主文のとおり判決する。
仮執行宣言の申立てについて
被告国については支払能力に問題がないこと、被告国に対する請求の当否については異論の余地があることに鑑み、仮執行宣言を付することは相当でないから、その申立てを却下する。
(裁判長裁判官 髙柳輝雄 裁判官 栗原洋三 戸村まゆみ)