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横浜家庭裁判所 平成4年(少)6489号 決定 1992年9月18日

本人 E・N(1972.11.15生)

主文

少年を医療少年院に送致する。

理由

(非行事実)

少年は、平成4年8月27日午後2時5分ころ、神奈川県秦野市○○××番地所在○○店において、同店店長A管理にかかるビデオデッキ2台(時価合計15万9600円相当)を窃取したものである。

(法令の適用)

刑法235条

(処遇の理由)

少年は、平成元年6月末ころ、徴兵を免れるためにヴェトナムを密出国し、同年7月初めに本邦に上陸、一時庇護許可を得て大村難民一次レセプションセンターに収容された。その後、愛知県瀬戸市所在の赤十字「希望の家」収容を経て平成2年6月20日から平成3年1月末ころまで東京都品川区所在の国際救援センターにおいて日本語教育等を受けた。同年1月末に同センターを出て就職したが、その後もたびたび同センターに顔を出し無断で室内に入ったり、薬物(ブロン)の乱用等がみられた。同年4月及び10月に窃盗事件を敢行して補導され、いずれの時も同センターがその身柄を引き取ってきた。平成4年4月ころ、そのころ勤めていた自動車工場を解雇され、無為徒食の生活を送るようになり、所持金が無くなったことから前件事件を惹起し、逮捕・勾留、入鑑を経て同年7月15日東京家庭裁判所において横浜保護観察所による保護観察処分を受けた。しかし、少年は一度も保護観察所に出頭せず、無為徒食の生活を続け、今回の事件惹起に至ったものである。

少年は事件自体は認めているものの、客観的事実と相違する供述も多く、反省の態度は薄いと判断せざるをえない。

少年の父母兄弟はヴェトナムに在住しており、一緒に日本に渡ってきた叔父家族は既にアメリカに渡っており、日本国内には少年の親族等少年を保護監督する者はいない。

少年にとって、言葉、文化等の相違のある日本での生活が厳しいものであったことは容易に想像される。しかしながら、少年には基本的に困難に立ち向かっていこうとする意欲が乏しく、困難に直面すると、安易にこれから逃避しようとする傾向が顕著に認められるのであり、このような性格傾向が前件及び本件非行につながっているものと認められる。

なお、少年はB型肝炎に罹患していることが判明している。

以上のような、本件非行の内容、非行に至る経緯、少年の保護環境及び性格傾向等に照らすと、少年についてはもはやその自覚による社会内での更生を期待するのは困難といわざるをえない。したがって、少年を当面(B型肝炎に対する医療措置が終了するまで)は医療少年院に送致することとし(医療措置終了後は中等少年院に移送するのが相当である。)、そこでの系統的な矯正教育により、前記のような少年の有する問題点の改善をはかり、あわせて遵法精神及び勤労精神を身につけさせることが必要であると思料される。

よって、少年を医療少年院に送致することとし、少年法24条1項3号、少年審判規則37条1項を適用して主文のとおり決定する。

(裁判官 大澤廣)

編注 抗告審 東京高裁4.10.16 抗告棄却

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