横浜家庭裁判所 平成8年(家)2140号 1996年9月05日
主文
本件申立てを却下する。
理由
1 本件は、申立人が、別添書面(ただし、写しである。)につき、亡高田英子の遺言であるが、遺言執行者の定めがないとして、その選任を求めるものである。
2 しかし、本件記録のほか、別件記録(当庁平成8年(家)第××××号遺言書検認申立事件記録)によれば、別添書面は、高田英子が申立人あてに昭和49年6月19日ころ以降に郵送した封書中に同女の書簡とともに同封されていた書面であり、標題自体譲渡証と明記され、その内容も同女が死亡したとき同女の妹である申立人に同女所有の物件を譲渡するというものであるから、これが遺言であると認めることは困難である。申立人は、これが遺言に当たらないとしても、死因贈与を証する書面であり、民法554条で死因贈与につき遺贈に関する規定が準用されていることを根拠に、遺言執行者の選任を求めるもののようであるが、贈与者と受贈者間の契約である死因贈与につき、それが書面によった場合にだけ、書面によらない場合と異なり(この場合にその履行を遺言執行の方法によるべきであるとする理由はまったくない。)、単独行為である遺贈に準じ、遺言執行の方法により履行するのを相当とするというだけの根拠に乏しい。
よって、本件申立ては理由がないので、主文のとおり審判する。
(別添書面)
譲渡証
高田英子所有の物件其の他のものは、本人死亡の際は、妹高田敏子に譲渡する。
昭和四十九年六月十九日
午前二時二時分
本人記す
高田敏子様
高田英子