横浜家庭裁判所 昭和46年(少)848号・昭46年(少)869号
主文
少年を特別少年院に送致する。
理由
(非行事実)
少年は、
一 C(当時一八歳)外二名と共謀のうえ、昭和四四年三月二四日午後一〇時五〇分ころ、横浜市○区○沢××番地先路上において、同所に駐車中の○田○行当時(三三歳)所有の自家用普通乗用自動車一台(時価二〇万円相当)および同車に積載してあつた○田○年(当時四四歳)所有の自動製米機一台(時価二六万円相当)を窃取した。
二 前記C、NことD(当時一八歳)、E(当時一八歳)、F(当時一六歳)、G(当時一六歳)、H(当時一六歳)と同年四月一三日夕方ころから午後一一時ころまでの間、相前後して同市○区○○×丁目××番××号横浜○カ○ビ一階ナイトクラブ「○ン」に赴きゴーゴーを踊つていたものであるが、その際同店内でたまたま知り合つた○川○○子(当時一四歳)、○木○子(当時一四歳)の両女を帰りにさそい出して強姦することを共謀し、同日午後一一時ころ、FとGの両名において、甘言をもつて両女を同市○区○○×丁目×番××号先高島埠頭に繋留接岸中の鉄ダルマ船第○○×××までさそい出し、遅れて同船に少年らとともに到着したNことDにおいて、両女に対し「おまえらここでなにをしてるんだ、ここじやポリがくるといけねえから中に入れ」と声をかけ、両女を同船後部船室内に入れた後、同船室内の台所から刃渡り約二〇センチメートルの包丁一丁とまな板を持ち出し、包丁を手でまわしながら、両女に対し「おまえらだまつてひとの船に入つてきたんだから訴えられてもしようがないんだぞ、七万円持つてくるか、小指を切るかどうする、ひとりひとりこつちへこいい)等と申し向け、包丁をまな板の上に突き刺し、さらに「兄貴が一時ごろ帰つてくるが仲間を三〇人位連れてきておまえたちはそいつら皆にまわされちやうんだぞ」等と申し向けて脅迫し、いやがる○川○○子に対し衣服をぬぐことを強要し、全裸にさせたうえその反抗を抑圧し、同船室内のベットにおいて強いて同女を姦淫し、少年において、いやがる○木○子を同船室内の押し入れ内に押し込んで同女を押えつけパンティーをはぎとり、その反抗を抑圧したうえ、少年、C、Eの順序で強いて同女を姦淫した。
三 同四五年九月一七日午前零時ころ、同市○区○○○××番地先路上において、○水○(当時一九歳)外数名とささいなことから口論となり、同所にかけつけてきた○水○らの仲間の○本○出○(当時二八歳)に刃物で切りつけられ、傷害を負わされたことを根にもつて、A(当時二五歳)、B(当時三六歳位)と共謀のうえ、治療費名下に○本○出○らから金員を喝取することを企て、
(1) 同四六年一月一二日午前一二時ころ、同市○区○○町×番地喫茶店「○ン」において、A、Bの両名において○本○出○をさがし出し、同人をして○水○、○山○(当時一九歳)の両名を同店に呼び出させたうえ、両名に対しこもごも「おまえたちがやつたのか、ただじやおかない、銭ですましてやる」等と申し向けて脅迫したうえ金員を要求し、もしこの要求に応じなければ自己もしくは家族の身体、財産にいかなる危害を加えられるか知れない旨畏怖させたうえ、同日午後一時ころから午後三時ころまでの間、同所において○水○から現金三万円○山○から現金五、〇〇〇円をそれぞれ交付せしめ、もつてこれを喝取し、さらに同日午後三時過ころAから電話で連絡を受け同店にかけつけた少年をまじえ、少年においてさらに「おまえらただじやおかない、俺はどんなことをしてもおまえらを俺がされたみたいにしてやる」等と申し向けて脅迫して、さらに金員を要求し、同日午後三時過ぎころから同日午後四時ころまでの間、同所および同市○区○○町××番地○水○成方において、○水○に対し同年二月始めに二万円を、○山○に対し翌一三日に三万円、同年二月始めに二万円をそれぞれ交付する旨約束させ、もつて不法の利益をえた。
(2) 同年同月一四日午後一〇時ころ、同市○区○○町××~××喫茶店「○路」において、前記○水○、○山○両名とともに○村○(当時一九歳)、○井○一(当時二二歳)を同店に呼び出したうえ、こもごも「このまえのこと知つてんだろう、おまえらどうする、こいつらは五万払う、払えなければ家へ行つて親からもらう」等と申し向けて脅迫したうえ金員を要求し、もしこの要求に応じなければ自己もしくは家族の身体、財産にいかなる危害を加えられるか知れない旨畏怖させたうえ、○村○に対し同年一月末日に二万円、二月末日に一万五千円、三月末日に一万五千円の合計五万円を○井○一に対し同年一月末日に一万円、二月末日に二万円、三月末日に二万円の合計五万円をそれぞれ交付する旨約束させ、もつて不法の利益をえた、
ものである。
(法令の適用)
上記一の事実につき、刑法第二三五条、第六〇条
同二の事実につき同法第一七七条前段、六〇条
同三の事実のうち(1)につき、包括して同法第二四九条第一項、第二項
(2)につき、同法第二四九条第二項
(要保護性)
一 少年は、本籍地において代々漁業を営む父T・K、母T・T子の間の九人兄姉の末子に生れ、中学校入学ころから粗暴性をあらわしはじめ、中学三年生になるころには、学校内におけるいわゆる不良グループのボス的存在となり、怠学をくり返すうち、長崎家庭裁判所壱岐支部に暴行保護事件(昭和四二年一月二六日不処分)、恐喝暴行保護事件(同年七月一五日不処分)の前歴を有するに至り、その非行性を深化させ、昭和四二年三月中学卒業後数ヵ月にして家業を嫌つて家出し、兄T・Zを頼つて横浜へ出て、横浜港内の艀船員として稼働するようになつたものであるが、しだいに艀船員仲間を通じて不良交友関係を拡大させ、ついに上記一の非行を犯すに至り、当庁において身柄釈放となるや旬日余にして上記二の非行を犯し、共犯者が次々と逮捕されていくことを関知するや横浜を離れ、その所在をくらまし、ほとぼりのさめた昭和四四年一一月ころ横浜へまい戻り、再び艀船員として稼働し艀内で寝泊りしたりしながら生活するうち、上記三の各非行を犯すに至つたものである。
二 少年は横浜に出てきてからは艀船員生活を続けてきたとはいうものの、転々と船会社を渡り歩いてきたといつた状況で、ことに昭和四四年一一月ころ再び横浜へまい戻つてからは兄T・Z、姉T・M代に自分の所在を正確に知らせることもなく、転々と艀内に寝泊りしながら、放縦な生活を続けてきたものであつてその生活態度は急速に崩れをみせているといわざるをえない。
三 少年の知能は普通域(新制田中B式第一形式IQ、九七)にあるが、学力の低さ故か主観的、自己中心的なものの見方をする傾向を示し、そ年性格はかなり自己顕示的傾向をみせ、一方において粗野な短絡的原始的行動傾向が身についている面を示し、そうした性格に加えて、幼小時における躾教育の欠如からくる社会的規範意識の内面化の不充分さのため逸脱行動傾向をみせ、それに対する価値判断は少年の不良交友(交友関係にヤクザ集団の構成員が存在する)からくるゆがんだ価値感に依存する面を体得してしまつている状況下にあり、自己の犯した本件非行をことさら過小視しようとする見方を示し、その罪償感は極めて低いといわざるをえない。
四 少年の家庭環境は、本籍地で両親のみが漁業を営んでおり、両親は少年の帰宅を望んではいるものの、老齢であることと、少年自身家業を嫌つている状況にあることを考慮すれば、とうていその監護を期待できず、一方横浜において少年の監護を引受けてきた兄T・Z、姉T・M代にしても適切具体的施策は提示しえない状況にあり、少年の生活態度交友関係、就労状況等についてほとんどその関心をはらつてきた様子もみられなかつた状況にあり、その監護を期待しえないといわざるをえない。
五 こうした状況下にある少年は、本件非行の態様、少年の家庭環境、少年の性格資質、少年の生活態度、年齢等を総合考慮すると、このまま在宅処遇することはとうてい困難といわざるをえず(再非行の可能性はきわめて高いといえる)、当裁判所調査官中川晃、横浜少年鑑談所技官小川モモ子の各意見、当審判廷における少年ならびに少年の兄T・Z、姉T・M代、および附添人の各陳述を総合斟酌のうえ少年を特別少年院に収容保護し、事案の重大性を認識自覚させ、規範意識を高揚させるととともに事門的な指導訓練によつて少年の耐性を養い、性格の偏りを改善矯正し、協調性と社会的適応力を養い、他方において職業的技術を指導訓練させ動労意欲を体得させることが、その更生に資することとなると考えられる。
よつて、少年法第二四条第一項第三号、少年審判規則第三七条第一項、少年院法第二条第四項により、主文のとおり決定する。