横浜家庭裁判所 昭和52年(少)5081号 決定 1977年12月02日
少年 T・I(昭三一・九・一三生)
主文
この事件については審判を開始しない。
理由
(通告の事実)
少年は、昭和五〇年一一月二六日横浜家庭裁判所において、保護観察処分の決定を受け、以後横浜保護観察所において保護観察中の者であるが、
(一) 昭和五二年四月頃から家族の者に対して殴る、蹴る、物を投げつける等の行為をくり返すようになり、そのうえ、昭和五二年九月六日午後九時頃裁ち鋏みを逆手に握つて妹に対し「お前を殺してやる、片端にしてやる」等の暴言をはき、とびかかろうとするなどの乱暴な行為をし、母及び妹は本人を恐れて野宿し、妹は更に友人宅を外泊するようになるに至らしめ、
(二) 更に本人は昭和五二年四月頃より、一定の職業に定着せず友人宅等に転々と外泊を続け、たもので、その性格、環境に照らして、将来罪を犯し又は刑罰法令に触れる行為をする虞がある。
(法令の適用)
少年法三条一項三号イ、ロ
(審判不開始決定に付した理由)
少年は昭和五〇年一一月二六日当庁で保護観察処分に付されたものであるが、外泊をしたり家庭内で暴力を振うことから昭和五二年一〇月一一日横浜保護観察所長より犯罪者予防更生法四二条一項の通告が当裁判所になされている。右同日少年は任意同行により裁判所に出頭し、事情を聴取されたところ、観護措置をとる迄の必要は認められないとして即日帰宅になつているが、以後の生活態度も裁判所に通告されたことが契機となつて目立つて改善されたことがうかがわれる。
すなわち、それまでのディスコ店員や飲食店員などを転々としていたのとは異なり、一〇月一九日からは洋服店に勤務するようになり、家庭内暴力もおさまつているし、少年自身が自分の立場を自覚して行動するのに応じ保護者も少年を頼りにするといつたように変つてきた。
保護観察は一一月二五日に終了したものの、少年は既に二一歳でもあるので、新たな保護処分の必要はないと思われ、観察官及び裁判所調査官が充分訓戒していることも考慮し、少年法一九条一項を適用して主文のとおり決定する。
(裁判官 古川行男)