大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

横浜家庭裁判所小田原支部 昭和58年(家)1813号・昭58年(家)1814号

主文

本件各申立を却下する。

理由

本件申立は、事件本人に対する禁治産宣告及びそれが認容されない場合の準禁治産宣告を求めるものである。

まず、禁治産宣告の申立について検討すると、事件本人について、昭和52年1月24日に禁治産宣告がなされたが、同58年9月9日、「事件本人は、脳性小児麻痺を有する心身障害者であり、中等度すなわち軽愚の下位にある精神発達遅滞者であって、自他の財産の判別は可能であるが、単独で自分の財産を管理する能力は不十分であるものの、日常生活において他人の介護を必要とするほど重篤な障害ではない」ことを理由として同宣告を取り消す審判があったことは、関係記録上明らかである。そして、これらの審判の資料となった鑑定人秋元正一及び同辺見和夫(2通)作成の各精神鑑定書によると、両鑑定人の鑑定は、事件本人の知能年齢が8歳程度であって、特に、日常生活に関係の深い面についての能力において比較的良好であるという点においてはほぼ一致しており、その他上記各審判事件の各資料をも参酌すると、少なくとも上記禁治産宣告取消の審判時においては、事件本人は法律行為の効果を判断する精神能力が減弱していたとはいえ、これを全く欠いた状態、すなわち心神喪失の常況にあったものではないことが認められるので、上記禁治産宣告取消の審判は正当であったというべきである。そして、その審判時から現在までの事件本人の精神能力の変化について判断すると、上記辺見和夫作成の精神鑑定書(2通)などによれば、事件本人は、その疾患の本質からして、加齢現象を除いて時間の経過とともにその能力が変化することは通常ありえず、したがって8歳程度の知能のままその生涯を送るであろうことが予測されており、当裁判所の事件本人及び中川悦子に対する各審問の結果もその予測が正しかったことを裏づけているので、事件本人は現在においても、心神耗弱の状態にある蓋然性は強いが、心神喪失の常況にはないものというべきである。したがって、禁治産宣告の申立は理由がない。

次に準禁治産宣告の申立の当否について判断する。上記のとおり、事件本人は現在心神耗弱の状態にある疑いが強いが、この宣告をするには、その事件としての鑑定をしなければならないものと解すべきところ、事件本人は上記辺見和夫以外の者の鑑定を受けることを拒んでおり、同人による鑑定は相当ではないので、鑑定の施行は不可能である。そして、本件禁治産宣告及び準禁治産宣告の申立は、上記禁治産宣告取消の審判後、特別の事情の変化もないのに2か月も経たないでなされたものであること、事件本人は既に2回の鑑定を受けており、その診察の際強い緊張と不安に襲われていることなどを考慮すると、事件本人が鑑定を受けることを拒否していることは精神障害者の心情としてやむをえないものともいうべきであり、以上のような事情の下においては、準禁治産宣告の申立はこれを却下すべきものである。

よって、主文のとおり審判する。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!