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横浜家庭裁判所川崎支部 平成26年(家)374号 審判 2014年7月01日

主文

一  申立人と相手方との間の当庁平成二四年(家)第一八号婚姻費用分担申立事件の審判の主文を次のとおり変更する。

申立人は、相手方に対し、平成二六年二月から当事者の離婚又は別居状態の解消まで毎月一〇日限り七万円を支払え。

二  手続費用は各自の負担とする。

理由

第一申立ての実情

申立人が、相手方に対して支払うべき婚姻費用の額を六万円に減額することを求めている事案である。

第二当裁判所の判断

一  一件記録によれば、次の事実が認められる。

・ 申立人(昭和四一年○月○日生)と相手方(昭和四一年○月○日生)は、平成二年○月○日に婚姻の届出をした夫婦であり、平成四年○月○日に長男Aが、平成七年○月○日に二男Bがそれぞれ生まれた。

・ 相手方は、平成二三年、当庁に対し、婚姻費用分担調停を申し立て、平成二四年○月○日、申立人に対し、同年○月から離婚又は別居状態の解消に至るまで毎月一〇日限り一〇万円の支払いを命じる審判がされた(以下「前事件」という。)。

・ 申立人は、平成二六年○月○日、婚姻費用分担減額調停を申し立てたが、同調停は、同年○月○日に不成立となり、審判に移行した。

・ 申立人の前事件時の平成二三年○月から平成二四年×月の四か月分の給与収入は一六一万八三四〇円であり、これを年額に換算すると四八五万五〇二〇円であった。申立人の平成二五年分の給与収入は、四二四万七三八四円である。

相手方は、a株式会社及び株式会社bで勤務しており、平成二五年の給与収入の合計は、二七一万一〇七二円である。

・ 申立人は、両親と同居し、住居費を負担していない。相手方は、二男と同居し、長男は大学の寮で生活している。また、相手方は、居住する住居の住宅ローンを支払っている。

長男及び二男の学費は、夫婦共有財産である預貯金から支払われている。

二  本件では、申立人が前事件の審判で命じられた婚姻費用分担額について、収入が減少したとして、六万円にすることを求めている。

前記認定事実によれば、前事件時と比較して申立人の収入額が減少しており、事情の変更があったものとして婚姻費用分担額の算定にあたっては考慮すべきである。

申立人の収入額を四二四万七三八四円、相手方の収入額を二七一万一〇七二円として、「東京・大阪養育費等研究会」の婚姻費用の算定表(判例タイムズ一一一一号二八五頁以下参照、婚姻費用子二人表[第一子及び第二子一五~一九歳])により算定すると、申立人が負担すべき婚姻費用分担額は、月額六万円から八万円が相当であるとされており、本件に顕れた諸事情を考慮すると、申立人が相手方に支払うべき婚姻費用分担金は月額七万円とするのが相当である。

なお、減額の始期は、本件申立時である平成二六年×月以降とするのが相当である。

三  なお、相手方は、相手方が住宅ローンを支払っている旨主張するが、住宅ローンの支払は離婚時の財産分与において清算されるべきものであるから、婚姻費用の分担額を定めるにあたってこれを考慮するのは相当でない。

また、相手方は、長男の寮費等の生活費として月額約八万円が必要である旨主張するが、上記認定のとおり、長男及び二男の学費は、夫婦共有財産である預貯金から支払っていること、上記婚姻費用の算定表において、一定額の学校教育費が考慮されていること、長男は成年に達していることを考慮すると、相手方が主張する事情は、上記の婚姻費用分担額を修正すべき事情とは認められない。

また、相手方は、手術後であり、仕事をしておらず収入はない旨主張するが、今後就労できるかは職場の繁忙度にもよるとも述べており、勤務先を退職したものではないことからすると、平成二五年と同程度の収入があるものとして婚姻費用分担額を定めるのが相当である。

四  よって、前事件の主文を上記のとおり変更することとし、主文のとおり審判する。

(裁判官 織田佳代)

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