大判例

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横浜家庭裁判所横須賀支部 事件番号不詳 決定

少年 N(昭一九・九・二八生)

主文

本件について少年を保護処分に付さない

理由

少年の非行は差し戻し前の原決定記載のとおりである。

少年は昭和三十七年二月二十六日当裁判所において、身柄を釈放された後、不良交友を断つため父母の許を離れ、平塚市○○でクリーニング業を営む叔父○地○吉方に居を移し、その後叔父の家業の手伝を真面目にして殆ど実家に帰宅せず、たまたま帰宅しても外出せず、不良仲間と絶縁すると共に漸次仕事への興味も生じ、叔父の家族とも親しみ、環境への順応を示して来た。

併し最終処分を決定するにはなお相当期間の観察を続ける必要があると認め、四月二十八日当庁家庭裁判所調査官の試験観察に付し観察を続けて来たが、その間少年は気分的に安定の度を強め、過去の非行を反省自戒し落着いた生活態度を続け、将来も叔父方に於てクリーニング職人たる事を目標としてその仕事に励んでいる一方、叔父夫妻も親身な愛情をもつてこの少年に接しその補導に力を尽していることが調査により明らかである。

更に少年の性格上の問題点すなわち鑑別結果において、情緒不安定、自己統制不良、自己顕示性の強い軽躁型性格と指導されている点も、本件非行当時の少年の置かれていた環境と、釈放後今日まで凡そ七ヵ月間に亘る現在の環境のもとにおける少年の生活態度とを併せ考えると、少年に安定した環境さえ与えれば充分に正常な生活を営みうる程度のものでさ程深刻なものとは考えられない。

以上各般の事情を考えると、少年に対しては、もはや保護観察に付すべき事由が存しないと認められるので、少年法第二三条第二項に依り主文の通り決定する。

(裁判官 赤穂三郎)

別紙一

家裁の少年院送致決定 (横浜家裁横須賀支部昭三六・一一・二七決定)

主文

少年を中等少年院に送致する。

理由

(非行事実)

少年は

第一 友人Mの親しくしていたS子がK(当十七年)と交際していることを知つて不快に思い、昭和三十六年九月二十五日前記Mと共謀のうえ、上記交際の事実を前記Kに確かめたうえ同人に暴行を加えようと決意し、同月二十六日午後八時四〇分頃、同人を神奈川県横須賀市○○△丁目××番地所在○○小学校校庭まで呼び出し、前記事実について同人を詰問したところ、同人がMとS子が交際していることを知りながらS子に交際を申し込んだ旨答えたのでいきなり少年が右手拳をもつて上記Kの顔面を一回殴打し、続いてMが同所に赴く際拾つて所持していた角棒をもつて、Kの右大腿部を一回殴打し、更に少年が足蹴りにする暴行を加え、よつて同人に対し全治約一週問を要する右大腿挫傷並びに左顔面打撲の傷害を負わせ、

第二 同年十月二十九日午後七時頃、同市内所在の○○アイスセンター前においてH(当十七年)に対して煙草の無心をしたところ、同人が無愛想な断り方をしたのに対し、不満を抱き同所においてまずTの発意に基いて同人と相談のうえ同センター内に遊んでいたA、B、C、Dに連絡しこれを呼び出し、相互に意志を相通じ、前記H並びに同人の連れであるY(当十八年)、R(当十七年)、U(当十八年)、W(当十七年)を同センター附近の同市○○町××番地先○○公園入口附近に連行し、同所において前記Tが前記H、Y、R、U、Wに対し「お前達が五人だから俺の方も五人で喧嘩の相手になつてやる」と申し向け、更に少年が前記Hに対し「お前何か文句があるなら云えよ」と申し向け、前記A、B、C、Dを加え合計五名と共同して前記Hほか四名の傍に位置しながら、いかにも同人らの身体に対し暴行を加えるかもしれない威勢を示して同人らを脅迫し

たものである。

(適条)

第一の事実について、刑法第二〇四条、第六〇条

第二の事実について、暴力行為等処罰ニ関スル法律第一条第一項

刑法第二二二条第一項

(保護処分に付する理由)

少年の非行歴、環境については少年調査票記載のとおりであるが、少年が本件各非行を犯すに至つた遠因をその性格面についてみると、少年調査票及び鑑別結果通知書の記載からも明らかなとおり少年は七人兄弟の末子として寵愛を受け、保護者の態度が不干渉、放任に流れていたため長年月に亘つて継続された我儘な生活態度が基礎となつて刹那的且つ爆発的傾向が強度となつている。しかもかかる性格は、同年代の少年と集団を形成する場面においては、行動が率先的且つ自己顕示的となり、とりわけ顕著にあらわれ、同時に薄弱な意志に災いされて自己抑制力に欠け、ついには規範意識の醸成も不十分なものとなつている。このような性格面に着目すれば自らその矯正教育が必要となることは多言を要しないが、前同県平塚市においてクリーニング業を営む○地○吉の代人として且つ実質的に自己が少年の指導に当ることを希望して本件審判に立会つた坂倉某は殆んど具体的な指導方針を考慮していない。

少年の本件非行にあらわれた態度が単に一時的な交友関係に原因するものであれば、不良交友との絶交の機会を与えることによつてその非行性昂進を阻みうるが、とりわけ性格面に相当程度根強い問題を含んでいることが明らかとなつた以上、保護処分歴を有しないものではあるが、早期治療の趣旨から、少年に対し収容保護を加えるのが相当であると思料する。

よつて少年法第二四条第一項第三号に則り主文のとおり決定する。

(裁判官 藤堂裕)

別紙二

抗告審の決定

(東京高裁 昭三七(く)五号 昭三七・二・二二刑一〇部決定)

主文

原決定を取り消す。

本件を横浜家庭裁判所横須賀支部に差し戻す。

理由

本件抗告の要旨は、少年を中等少年院に送致する旨を決定した原決定の処分が著しく不当であるというのである。

よつて一件記録を精査し、且つ当審の事実取調の結果をも斟酌し、これらに現われた本件非行事実の態様、動機、少年の年令、性行、経歴、生活環境、家庭の事情等を総合考察するに、少年は意思が薄弱であると同時に短気粗暴であり、且つ中学校在校時代から度々不良行為があつたため警察の取調を受けた上家庭裁判所に事件を送致されたことが二回もあり、又本件各非行に当つてはいずれも必ずしも追随的な立場にあつたものともいえないが、もともと少年の従前の非行は極めてさ細なものであつたばかりでなく本件各非行もいずれも極めて軽微なものであり、又少年には両親があるが、少年の両親及び母方の叔父○地○吉等は少年を神奈川県○○市においてクリーニング業を営んでいる右○地が少年を引き取つて善導することを熱心に希望しており、少年も亦心から前非を悔いて右○地方でクリーニング業の見習をすること希望しているが、右○地方に引き取られればおのずから従来の不良仲間とも絶縁することができることになるので、適当な専門的指導者があれば、右○地の指導と相い俟つて少年を矯正することができるものと思われ、結局少年を保護観察所の保護観察に付さずに、中等少年院に送致する旨を決定した原決定の処分は著しく不当のものというべきである。

よつて、本件抗告は理由があるから、少年法第三三条第二項、少年審判規則第五〇条により、原決定を取り消し、本件を横浜家庭裁判所横須賀支部に差し戻すこととして、主文のように決定をする。(裁判長判事 加納駿平 判事 久永正勝 判事 河本文夫)

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