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横浜家庭裁判所横須賀支部 平成12年(家)142号 審判 2000年5月10日

申立人 ●●児童相談所長 A

事件本人 B

事件本人らの保護者親権者母 E

主文

申立人が、事件本人らを児童養護施設に入所させることを承認する。

理由

1  申立ての趣旨

主文と同旨

2  当裁判所の判断

(一)  一件記録及び平成9年(家イ)第×××号事件記録によれば、次の事実が認められる。

(1)  事件本人ら保護者親権者母E(昭和○年○月○日生、以下「母」という。)は、平成4年12月24日Fと婚姻し、両者間には事件本人らが誕生したが、平成10年2月20日、事件本人らの親権者を母と定めて調停離婚し、以後母は事件本人らを監護養育してきた。

(2)  事件本人Bは、平成6年8月(生後5か月)ころから平成8年2月まで、生傷、あざ、脱水症状、けいれん及び骨折などで通院や入退院を繰返していたこと、ならびに、その後事件本人C(生後8か月)の頭部打撲及び事件本人Bの顎骨の打撲による化膿が平成8年10月医師から報告されたことから、●●児童相談所(以下「児相」という。)において母による身体的虐待が疑われていた。

(3)  事件本人Cは、平成9年1月6日(生後1年)、顔にII度の火傷を負って入院したことから、児相は、事件本人Cを一時保護するとともに、立入調査を実施し、事件本人Bにも、右目周囲の出血班、眉上の裂傷、上下3本の歯の欠損、背中両腕の打撲症・出血班等があったことから、同児を一時保護した。その後、母及び父であるFは平成9年2月20日児童福祉施設入所を同意し、事件本人Bと事件本人Cは児童福祉施設に入所した。

(4)  母は、調停中の平成○年○月○日事件本人Dを出産していたところ、平成10年2月20日の調停離婚後に、体罰は夫婦不和のストレスによるもので、離婚により原因は解消したと主張し、親権者として事件本人Bと事件本人Cの引取りを要望した。

(5)  そこで、児相では、約一年にわたり母子関係の改善調整を図り、面会、外出や外泊等も実施した上で、平成11年3月31日事件本人Bと事件本人Cにつき児童福祉施設入所から児童福祉司指導に措置変更し、母に引き取らせた。

その際、児相は、母に対し、事件本人らの保育所利用、家庭訪問の受け入れ、定期的な来所、児童精神科の嘱託医との面接の4点を条件とした。

(6)  事件本人らが利用していた保育園では、平成11年6月28日事件本人らに青あざがあることを発見したが、母は転んだものと説明した。その後も、事件本人Dを中心に事件本人らに、あざ、火傷、擦過傷、こぶ、歯形等が多数回にわたり発見された。母は、これらについて転んだものと説明し、虐待を否定していた。

(7)  母は、平成12年2月、風呂上がりの事件本人Cに対し、言うことを聞かず反抗的態度を取ったとして、はえ叩きで同児の背中や臀部を着衣の上から叩き、あざをつくった。母がはえ叩きを使った理由は、手でたたくと痛いからとのことであった。

(8)  保育園では、同月15日事件本人Cの上記あざを見つけ、連絡を受けた児相は、事件本人Cを一時保護した。また、保育園では同月28日事件本人Dのあざを見つけ、連絡を受けた児相は、事件本人Dを一時保護するとともに、事件本人Bも一時保護した。

(9)  児相は、事件本人らを児童福祉施設に入所させることを提案したが、母や祖母Gは反対した。

母は、一部に体罰の行き過ぎがあったことは認めるが、児相や保育園に対する不満を強め、児相等の関与しない自由な育児を要求しており、現在でも事件本人らを児童福祉施設に入所されることに反対し、これに同意していない。

(二)  以上の認定事実によれば、母は、長年にわたり、しつけによる体罰と称して、事件本人らに対し、身体的虐待を加えて精神的な後遺症を残し、さらにこれを基礎にして身体的・心理的虐待を続けていたものといわざるを得ず、その背景には、離婚問題や育児等のストレスがあったものと推認される。

したがって、これらの諸事情を総合考慮すると、事件本人らを母に監護させることは、著しく事件本人らの福祉を害するものであって、事件本人らの健全な精神的身体的な発育成長のためには、相当期間にわたって、事件本人らを児童福祉施設に入所させる措置を取るのが相当というべきである。加えて、事件本人らの心身の状況を考慮すれば、申立人が母に対して面会や通信など事件本人らとの交流について制限するのは当然のことであり、母は児相の指示に従うべきである。一方、児相も母に対する指導や母子関係の調整について、より一層の働きかけに努めるべきである。

(三)  よって、本件申立てを相当と認め主文のとおり審判する。

(家事審判官 石田浩二)

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