水戸地方裁判所 平成3年(行ウ)6号 判決 1997年4月22日
茨城県水戸市袴塚三丁目一三番一五号
原告
明治不動産有限会社
右代表者代表取締役
鈴木精一
右訴訟代理人弁護士
江橋湖三郎
茨城県水戸市北見町一番一七号
被告
水戸税務署長 鈴木茂
右指定代理人
秋山仁美
同
小尾仁
同
田部井敏雄
同
日出山武
同
星野一雄
同
武子健
同
松本隆治
同
仲村勝彰
同
小林裕一
主文
一 原告の請求をいずれも棄却する。
二 訴訟費用は原告の負担とする。
事実及び理由
第一請求
被告が、原告に対し、いずれも昭和六二年一二月二八日付でなした、昭和五八年五月一〇日から昭和五九年四月三〇日までの事業年度(以下、「昭和五九年四月期」という。)の法人税額等の更正及び重加算税賦課決定処分(審査裁決により一部取り消された後のもの)、昭和五九年五月一日から昭和六〇年四月三〇日までの事業年度(以下、「昭和六〇年四月期」という。)の法人税額等の更正及び重加算税賦課決定処分、昭和六〇年五月一日から昭和六一年四月三〇日までの事業年度(以下、「昭和六一年四月期」という。)の法人税額等の更正及び重加算税賦課決定処分、昭和六一年五月一日から昭和六二年四月三〇日までの事業年度(以下、「昭和六二年四月期」といい、以上の四事業年度を併せて「各事業年度」という。)の法人税額等の更正及び重加算税賦課決定処分並びに昭和六〇年四月期以後の法人税の青色申告の承認の取消処分をいずれも取り消す。
第二事案の概要
本件は、被告が、原告に対して行った、各事業年度分の法人税額等の更正及び重加算税賦課決定並びに昭和六〇年四月期以後の法人税の青色申告の承認の取消の各処分につき、処分の基礎となった事業所得金額ないし不動産売買取引の認定に事実誤認があり、違法であるとして右各処分の取消を求めた事案である。
一 争いのない主な事実
1 原告は、昭和五八年五月一〇日設立された不動産売買業等を営む会社である。
2 原告が、被告に対し、各事業年度の法人税について、昭和五九年四月期については青色申告書以外の申告書に、昭和六〇年四月期ないし昭和六二年四月期については青色申告書に、それぞれ別表一の1ないし4の「確定申告」欄記載のとおり確定申告したところ、被告は、昭和六二年一二月二八日付「法人税額等の更正通知書及び加算税の賦課決定通知書」をもって、各事業年度の法人税について、同各別表の「更正及び加算税の賦課決定」欄記載のとおりの各更正処分(以下、「本件各更正処分」という。)及び重加算税の各賦課決定処分(以下、「本件各賦課決定処分」という。)をし、また、同日付「青色申告の承認の取消通知書」をもって、昭和六〇年四月期以後の法人税の青色申告の承認の取消処分(以下、「青色申告承認取消処分」という。)をした。
3 原告が、昭和六三年二月二六日、被告に対し異議申立てをしたところ、被告は、同年六月二八日、各事業年度分のいずれについても棄却する旨の決定をした。そこで、原告が、同年七月二一日、国税不服審判所長に対し審査請求をしたところ、同審判所長は、平成三年六月五日、別表一の1「同裁決」欄記載のとおり、昭和五九年四月期分についてのみ一部取り消す旨の裁決をなし、右裁決は、平成三年六月二一日(ただし、弁論の全趣旨)、原告に対して送達された。
二 本件各事業年度分の税額算定等に関する当事者の主張
(被告の主張)
1 原告が取引相手と主張する法人等の事業実態について
原告は、別表二の土地に関する取引について、別表三のとおり、同表「取引当事者」欄に記載の株式会社友伸、長谷川新一、近郊都市開発株式会社、株式会社創殖、内山都市開発株式会社と、それぞれ正当な取引を行っていたものであると主張するが、右の取引相手とされている法人又は個人のほか、売買契約書上あるいは登記簿上の契約当事者とされている明治興産株式会社、葵信興産株式会社、稲野辺洋子、稲野辺紀孝、住友開発株式会社(以下これらを総称して、「ダミー業者等」という。)は、以下のとおり、法人としての事業実態が認められないもの、事業実態は存するが原告代表者の依頼等により虚偽の契約書を作成するなどして売買取引の当事者であったかのごとく仮装を行っていたと確認されるもの、原告代表者が代表取締役を兼務する原告の関係会社と認められるもの、原告代表者の親族等であり、原告は、土地の仕入れに関して、前所有者から直接購入しているにもかかわらず、前所有者と原告との間にダミー業者等を介在させ、原告がダミー業者等から土地を購入したかのように仮装して仕入金額を水増しし、また、土地の売上に関し、原告から購入者に直接売却しているにもかかわらず、原告と購入者との間にダミー業者等を介在させ、ダミー業者等に土地を売却したかのように仮装して、売上金額を除外していたものである(なお、以下にアルファベット記号大文字及び小文字で示された各土地は、別紙1「本件不動産目録」記載の各土地を示す。また、右各土地を総称して、「本件各土地」という。なお、丸付数字が付されたものは持分の符号を示す。)。
(一) 株式会社友伸について
(1) 株式会社友伸(以下、「友伸」という。)は、昭和四六年一二月二二日に不動産の売買及び賃借に関する業務を目的として設立された株式会社大秀興産が、昭和五六年九月一六日に商号を変更したものであるが、昭和五八年五月二〇日に安藤満雄が代表取締役に就任し、同月二五日に本店を港区六本木から渋谷区神南に移転した後、平成元年一二月三日に商法四〇六条の三第一項の規定に基づき解散したものとみなされている。
(2) 友伸は、右安藤が代表取締役に就任した後の昭和五八年一二月以降の事業年度については、所轄税務署長に対し法人税確定申告書を全く提出しておらず、事業活動を行っていたという事実も認められない。右安藤は、所在不明である。
(3) 原告は、A、C、Q土地の購入、B、DないしF、KないしP及びRの各土地並びにS土地のうち昭和六一年五月一四日、同年一二月二日、同六二年四月二七日の売却分について、友伸との取引であったと主張するが、原処分調査時において、被告係官に対して右各物件に係る原告と友伸との取引を証する売買契約書を提示し得なかった。
(4) 原告が友伸から購入したと主張するA土地について、同土地の元所有者であった高野修之は、被告に対し、原告と取り引きした旨答述しており、また、原告が友伸に譲渡したと主張するO土地の一部を購入した有限会社益子ガス圧接の代表取締役益子政太及びP土地の一部を購入した鈴木昭平の妻鈴木由紀子も、いずれも原告と取り引きした旨答述している。
(二) 近郊都市開発株式会社について
(1) 近郊都市開発株式会社(以下、「近郊都市開発」という。)は、不動産の売買、仲介、賃貸、管理を目的として、昭和五七年一月七日に設立され、同五八年二月一一日に本店を豊島区高田から新宿区西新宿に移転し、同六〇年一一月二五日に阿見土商事株式会社に商号を変更し、さらに、同月二八日に本店を世田谷区宮坂に移転した後、同六一年一月一八日に解散している。同社の代表取締役は、菱信興産株式会社の代表取締役でもある小田嶋克己であり、また、原告代表者鈴木精一の義妹である長谷川優子が取締役となっている。
(2) 近郊都市開発は、設立依頼法人税確定申告書を所轄税務署長に全く提出しておらず、右所轄税務署係官による実態確認調査においても、近郊都市開発が事業活動を行っていたという事実は認められない。
(3) 原告は、H土地の購入及びI土地の売却について近郊都市開発との取引であったと主張するが、原処分調査時において、被告係官に対して右各物件に係る原告と近郊都市開発との取引を証する売買契約書等を何ら提示し得なかった。
(三) 株式会社創殖について
(1) 株式会社創殖(以下、「創殖」という。)は、本店所在地を新宿区歌舞伎町に置き、不動産の売買及び売買の斡旋並に賃貸等を目的として、昭和五一年六月一七日に設立された法人である。
(2) 原告は、J土地及びS土地の一部については創殖に売却したと主張し、T土地については創殖から購入したと主張するが、原処分調査時において、被告係官に対して右各物件に係る原告と創殖との取引を証する売買契約書等を何ら提示し得なかった。
(3) 創殖の代表取締役である岩間正明は、所轄税務署長に対し、S土地の取引に関して仲介手数料を受領したことがあるに止まり、売買代金は一切受領したことがないこと、T土地及びJ土地に関して売買取引の事実はないことを答述している。
(四) 明治興産株式会社について
(1) 明治興産株式会社(以下、「明治興産」という。)は、不動産の売買、仲介、賃貸及び管理を目的として、昭和五八年二月一四日に、本店所在地を台東区上野二丁目九番二号に置き、代表取締役を原告代表者である鈴木精一として設立され、同年三月一〇日に本店を台東区上野二丁目八番七号に移転した。その後、昭和六二年四月に代表取締役を小室綾子に、同年五月に商号を株式会社津恵商事にそれぞれ変更し、本店を新宿区西新宿に移転した後、同年六月二四日に解散している。
(2) 明治興産は、設立以来法人税確定申告書を所轄税務署長に全く提出しておらず、右所轄税務署係官による実態調査においても、明治興産が事業活動を行っていたという事実は認められない。
(3) 小室綾子は、被告係官に対して、株式会社津恵商事の代表者に就任していたということは全く知らされていなかった旨、また、鈴木精一を信頼していたので、同人に印章、印鑑証明書を何度か渡したことがある旨を答述している。
(4) 原告が、昭和六〇年四月期の法人税確定申告書に添付した「取引物件一覧表」中において、原告が売却したものとして処理している土地の中には、売買契約書上、売主が明治興産と記載されているものが複数存在し、このように、明治興産の名義を記載した売買契約書に係る土地取引についても、原告の所得金額の計算上収入金額に計上されている。
(五) 菱信興産株式会社について
(1) 菱信興産株式会社(以下「菱信興産」という。)は、昭和六〇年三月八日、不動産の売買、賃貸、仲介及び管理を目的として、本店所在地を新宿区西新宿に置き、代表取締役を小田嶋克己として設立された。
(2) 原告が創殖に譲渡したと主張するj5土地について、右土地の被告主張の買主である山南商事株式会社との売買契約書上の売主は菱信興産であったが、山南商事株式会社の代表取締役である塚沢友朗は、菱信興産という会社も小田嶋克己も知らない、譲渡代金の支払いは原告の事務所で木谷譲に支払った旨答述している。
(3) 木谷譲は、原告のために、原告が締結する不動産売買契約等に際し、宅地建物取引主任として立会い、不動産売買契約書等を作成していた者である。
(4) s1-2、s2-1、L8、n6、o3、p8の各土地の売買契約書上売主はいずれも菱信興産であるが、右各土地の買主らは、実際に売主側として立ち会った者は原告又は木谷譲であったと回答している。
(六) 長谷川新一について
(1) 長谷川新一は、茨城県新治郡千代田村稲吉二〇一〇番地八一に居住し、洗濯用品の収集配達業を営んでいる者であり、原告の代表取締役である鈴木精一の妻の妹(前記長谷川優子)の夫である。
(2) 原告は、G土地については長谷川新一から購入した旨主張し、さらに同人は不動産登記簿上同土地の所有権者となっているが、同人は、同土地の取引には全く関与しておらず、原告代表者の要請により名義を貸与し、あるいは印章を貸与したものである旨答述している。
(七) 稲野辺洋子及び稲野辺紀孝について
(1) 稲野辺洋子及び稲野辺紀孝は夫婦であり、右洋子は原告代表者鈴木精一の知人である。
(2) 登記簿上、稲野辺洋子はk1土地等の、稲野辺紀孝はp1土地等の所有者となっているが、両名は、原告代表者の要請を受け実印を預けていたことがあるにすぎず、右各土地等の取引に関わったり、これらを取得した事実はない。
(八) 住友開発株式会社について
(1) 住友開発株式会社(以下、「住友開発」という。)は、原告代表者が取締役を務めている。
(2) 住友開発は、設立以来法人税確定申告書を所轄税務署長に全く提出しておらず、また、登記簿上の本店所在地に事務所等が存在しない。
(3) 住友開発は、t1及びt2土地の契約書上の買主となっているが、右各土地の会計帳簿上の仕入先は創殖、登記簿上の所有権者は小室綾子とされている。
2 原告主張の取引時期の虚偽性について
原告が友伸に売却したと主張する土地の中には、以下のとおり、原告が主張する取引時期よりも以前に、最終買受人に所有権移転登記が完了している土地が存することからして、原告が、土地の譲渡時期に関して虚偽の経理処理を行い収入の帰属する事業年度を仮装していたこと及び友伸がダミー業者であることは明らかである。
(一) D土地について
原告の帳簿によれば、原告は、昭和五八年一二月にD土地を友伸に売却したことになっているが、d1-2土地については同年八月二二日に桧山うらへ、d2-1及びd2-2の各土地については同年一一月二五日に北関東通商へ、それぞれ所有権移転登記が経由されており、右各日において右各土地の引渡しは完了していたものと認められるから、友伸が契約に介在する余地はなく、原告の経理処理は虚偽である。
(二) E土地について
原告帳簿によれば、原告は昭和六〇年四月期及び昭和六一年四月期の二事業年度にわたりE土地を友伸に売却し、このうち昭和六〇年四月期の譲渡は同五九年五月二日になされた旨の記載がある。しかしながら、e4-5、e4-16及びe4-17の各土地については、昭和五九年四月期中である同年四月二三日付で現所有者に所有権移転登記が経由されており、右各日において右各土地の引渡しは完了していたものと認められるから、友伸が契約に介在する余地はなく、原告の経理処理は虚偽である。
3 根抵当権設定及び抹消状況の不合理性について
原告が前記友伸等に売却したと主張する土地の中には、以下のとおり、右友伸等が土地を所有していたこととなる間、原告あるいは原告代表者が引き続いて当該土地上に設定された根抵当権の債務者となっており、最終譲受人への所有権移転登記と同時に根抵当権が抹消されているものが見受けられ、右事実からしても、これらの取引の真の当事者が原告であり、友伸等の業者が実体のないダミー業者であることが裏付けられる。
(一) B土地には、昭和五八年一二月二〇日、債権者を水戸信用金庫、債務者を原告とする根抵当権が設定され、右根抵当権は、北里譲に右土地の所有権移転登記が経由された昭和六二年四月三日、抹消されている。原告は、B土地の取引に関し、原告から友伸、友伸から菱信興産、菱信興産から北里譲に順次売却されたものであると主張するが、右根抵当権の抹消状況からみて、昭和六二年四月三日に北里が売買代金を支払い、同日に原告が右代金を受領したことが推認され、これに、前記友伸及び菱信興産の事業実態を考え併せれば、同土地の取引は、原告と北里譲との間でなされたものと認められる。
(二) 同様に、D1、D2、E1ないしE5、F、I、P、S、Uの各土地についても、原告あるいは原告代表者が債務者となって設定された根抵当権が、買主への所有権移転登記と同時に抹消されており、買主らは、いずれも右各土地を原告から売買により直接取得したと認められる。
そして、D1及びD2土地の売買に関与したとされている友伸、近郊都市開発及び明治興産、E1ないしE5土地の売買に関与したとされている近郊都市開発及び明治興産、F土地及びI1ないしI3土地の売買に関与したとされている友伸及び近郊都市開発、P土地の売買に関与したとされている菱信興産、S土地の売買に関与したとされている友伸及び菱信興産、U土地の売買に関与したとされている友伸についての事業実態は前記のとおりであり、いずれもダミー業者と認められるから、右各土地取引の当事者であったとは認めがたい。
(三) E1ないしE5の土地については、昭和五九年二月二〇日、木谷譲、内山喜久夫又は明興商事名義で所有権保存登記が経由されているが、これらすべての土地について債権者を水戸信用金庫、債務者を原告とする根抵当権設定登記がなされていること、内山喜久夫は原告の依頼により架空の契約書を作成するなどして原告の不正行為に加担していたことを自認している内山土地開発株式会社の代表取締役であること、明興商事は原告代表者が代表取締役を兼任する法人であることなどからすれば、本件各土地の売買の実質的当事者は原告であると認められる。
4 土地取引に係る現実の代金決済と原告の帳簿書類との齟齬等について
以下のとおり、原告が友伸等に売却したと主張する土地の代金の一部が、当該土地の最終譲受人から直接原告の預金口座に振り込まれたり、原告が友伸等から購入したと主張する土地の代金の一部が、最終譲受人から直接元所有者に支払われている事実等からして、原告は、売上取引、仕入取引にダミー業者を介在させ、売上金額を圧縮したり仕入金額を過大計上することにより、所得の隠ぺいを図っていたことが明らかである。
(一) 売上取引について
(1) 現実の決済と帳簿書類等との齟齬について
<1> E土地の取引
原告は、E土地を友伸に売却した旨主張し、また、確定申告書の記載によれば、同土地の一部は、昭和五九年五月二日、代金九二七二万円で友伸に、昭和六〇年七月、代金五三九九万円で創殖にそれぞれ売却されたことになっている。
そして、右各譲渡の後分割されたE土地の売却に関する契約書によれば、右各土地は、最終的な譲受人に対し、以下のとおり売却されたことになっている。
ア e4-11の土地
売主・近郊都市開発、買主・友水宏之、昭和六〇年一月六日契約、売却金額・六四〇万円
イ e1-6の土地
売主・明治興産、買主・磯野三千男、昭和六〇年一〇月五日契約、売却金額・一三〇〇万円
ウ e1-4の土地
売主・近郊都市開発、買主・綿引信光、昭和五九年一一月二〇日契約、売却金額・一七五〇万円
右の点からすれば、原告のE土地にかかる売却収入は友伸及び創殖から入金されるはずであるが、原告の預金口座等によれば、原告が各最終譲受人から売却収入の一部を直接受領している。
<2> J土地の取引
原告は、J土地を創殖に売却した旨主張し、また、確定申告書の記載によれば、同土地は昭和六〇年九月九日創殖に売却されたことになっている。
そして、J土地は、分割された後、明治興産(売却先件数一三件)、創殖(同一件)又は菱信興産(同一件)から、最終譲受人(一五人)に対し、昭和六〇年九月七日から同六一年四月三〇日の間にかけてそれぞれ売却された旨の契約書が存在する。
右の点からすれば、原告のJ土地にかかる売却収入は創殖から入金されるはずであるが、原告の預金口座等によれば、j-2、j-4、j-7、j-16の各土地について、原告が各最終譲受人から売却収入の一部を直接受領している。
<3> R土地の取引
原告は、R土地を友伸に売却した旨主張し、また、確定申告書の記載によれば、同土地は昭和六一年八月一日売却金額三五〇万円で友伸に売却されたことになっている。
そして、同土地については、菱信興産が最終譲受人である大谷隆に対し売却した旨の契約書が存在する。
右の点からすれば、原告のR土地にかかる売却収入は友伸から入金されるはずであるが、原告の預金口座によれば、原告が大谷隆から売却収入の一部を直接受領している。
<4> N、O及びP土地の取引等
n-2土地については海老沢威が、o-11土地についてはアサカ有限会社が、o-10土地については有限会社益子ガス圧接が、p-2土地については石川ウメが、p-8土地については大原總一郎が、p-11土地については大晃建設株式会社が、それぞれ菱信興産から買い受けた旨の売買契約書(o-11以外の土地)又は回答書(o-11土地)が存在するが、いずれの場合も右最終買受人から売却代金の一部が原告の預金口座に直接入金されている。
(2) 登記簿の記載等について
e-11土地を例にとると、同土地は、昭和五八年一二月二二日の売買を原因として同五九年二月二〇日に木谷譲に所有権が移転し、同六〇年一月一七日売買を原因として同月一八日最終譲受人である友水宏之に所有権が移転したことになっている。
原告の確定申告書上同土地の購入者とされる友伸、創殖、同土地の売買契約書上の譲受人である近郊都市開発又は明治興産が右土地を取得した旨の登記は全くなされていない。
右土地の登記名義人となっている木谷譲は、原告の業務に従事して最終譲受人との売買契約に立ち会った者であり、原告会社の営業部長であるとともに、右土地取引が行われた当時、明治興産の営業部長・取引主任者及び近郊都市開発の営業二課・登記担当等の名刺を使用していた。
また、右土地に設定された原告を債務者、水戸信用金庫を根抵当権者とする根抵当権は、最終譲受人に移転登記されるまでの間、設定されたままであった。
右各事実からすれば、右土地を原告が取得してから最終譲受人に売却するまでの間、実際は原告が所有していたものであって、同土地に係る所有権の移転登記は真実の権利関係に合致するものではない。
(3) 以上の事実から、原告の確定申告書作成の基となった帳簿等に記載された事実と現実の入金状況との間には明かな齟齬があり、また、売買契約書や登記簿も、通常の中間省略取引では想定しがたい内容になっていることからすれば、本件各土地取引に関して作成された確定申告書、売買契約書及び登記簿の記載は、現実の取引に基いて作成されたものではなく、原告による仮装工作と判断でき、友伸、近郊都市開発、明治興産、創殖、菱信興産の各社は、原告の所得金額を不当に圧縮させるために介在させたダミー業者であることが明らかである。
(二) 仕入取引について
(1) 帳簿、登記簿、契約書等の乖離
C土地の取引を例にとると、原告は、右土地を昭和五九年二月一九日、代金四九五〇万円で友伸から購入したと主張し、確定申告書にも同様の記載があり、その後、右土地は四分割され、同年三月一七日、売却金額一三五〇万円で長谷川憲昭へ、同月一八日、売却金額一一七〇万円で草川文雄へ、同月二五日、売却金額一三五〇万円で荒殿保幸へ、同年四月二〇日、売却金額一五六〇万円で磯崎孝へ、それぞれ売却した旨の記載がなされている。
分割された右各土地の登記簿によれば、長谷川憲昭へは昭和五九年四月二五日の売買を原因として同月二七日に、草川文雄へは同月二七日の売買を原因として同日、荒殿保幸へは同年五月一一日の売買を原因として同日、それぞれ榎本完一から直接所有権移転登記がなされており、また、磯崎孝へは、同日の売買を原因として同日榎本完一から明興商事に一旦所有権が移転し、昭和六〇年五月一〇日の売買を原因として同月一一日明興商事から磯崎孝へ所有権が移転している。
契約書によれば、昭和五九年二月一九日の契約により、近郊都市開発が榎本完一からC土地を代金四〇四六万円で取得したことになっている。
このように、原告の確定申告書(さらには帳簿)の記載と、登記簿及び契約書の記載は全く乖離している。
(2) 原告主張と仕入取引の代金決済の相違
さらに、原告と友伸との間のC土地の仕入取引について、原告の取引台帳によれば、原告の仕入金額四九五〇万円は、昭和五九年二月一九日に五〇〇万円、同年三月二五日に四四五〇万円を支払うことになっており、他方、原告とC土地の最終譲受人である荒殿保幸との間の売上取引について、取引台帳によれば、原告は、荒殿保幸から、昭和五九年三月二五日に五万円、同月二七日に九五万円、同年五月一一日に一二五〇万円を受領したことになっている。
しかしながら、同土地の元所有者である榎本完一は、売却代金のうち一二六〇万円を、昭和五九年五月一一日に荒殿保幸から直接受領している。
(3) 以上の事実によれば、原告の帳簿が真実の取引を記載したものとは認められず、C土地について登記簿上の所有者となった明興商事、契約書上榎本完一からの買受人となった近郊都市開発及び帳簿上の仕入先である友伸は、いずれも実際はC土地の取引に関与したものとは認められない。
5 各事業年度分の原告の所得金額について
(一) 前記1ないし4から、本件各土地に係る取引価額を算定すると、別表四「土地別増減所得の内訳書」の被告主張額記載のとおりである。
(二) 本件各土地の期末たな卸高の算定の経緯は、別表四中の各「棚卸計算」記載のとおりである。
右算定において、被告が主張する仲介料及び造成費等の額は、原告が確定申告に係る期末たな卸高の計算において、取得価額に当たるとして計算した金額と同額である。
なお、本件各土地の面積の算定については不動産登記簿の登記面積によることとし、縄縮み分に相当する取得価額については、期末たな卸高として翌事業年度以降の費用とするのではなく、当期の事業年度での費用となるよう、販売された土地の面積に含めて処理した。
(三) 原告は、販売費及び一般管理費のうち、別紙二の各経費科目を本件各土地の取得価額に含めたところで右取得価額の計算をしている。しかし、法人税法施行令三二条一項一号ロに規定する「販売の用に供するために直接要した費用」とは、商品として販売に供しうるに至るまでの費用と解されており、購入後の造成等に要する費用及び本件各土地の購入に係る支払利息の額については右費用と認められるものの、右販売費及び一般管理費についてはたな卸資産の取得価額を構成するものではなく、右支出した日の属する事業年度の費用として処理されるのが合理的である。なお、右販売費及び一般管理費には、一部、「販売の用に供するために直接要した費用」も含まれていると考えられるが、これを期中費用とたな卸土地の取得価額に区分することは困難であるので、すべて期中費用とすることにより、所得金額を算定した。
(四) 期末たな卸土地に対する支払利息の額の配賦に当たり、原告は、期首における総資産に占める期首たな卸土地と、期末における総資産に占める期末たな卸土地の割合の平均値を算定し、右割合を各事業年度の支払利息の額に乗じて計算した金額をもって配賦対象利息額とし、これに各土地の保有月数等をもとに算定した配賦割合を乗じて各土地ごとに配賦すべき支払利息の額を算定し、本件各土地の取得価額を構成するものとして処理している。
しかしながら、配賦対象利息額の算定について右手法によると、商品としての土地を、各事業年度の期中に仕入れ、かつ、期中に売却した場合には、期末たな卸土地として把握できないことから、適正な配賦額以上の額が固定資産等の資産の取得価額として算定されることとなり不合理である。
そこで、被告は、以下の算定方法により、支払利息の額を算定した。
(1) 各事業年度において保有する、支払利息を配賦すべき資産の額
固定資産等については、本件各事業年度における期首の総資産に係る帳簿価額のうち、本件各土地(期首たな卸土地)の帳簿価額を控除した残額と、期末の総資産に係る帳簿価額のうち、本件各土地(期末たな卸土地)の帳簿価額を控除した残額との平均値をもって各事業年度を通して保有する固定資産等の額と算定する。
本件各土地のうち、期首たな卸土地については、右各土地ごとの期首たな卸高と期中における仕入金額等の合計額に、また、期中仕入土地については、右各土地ごとの期中における仕入金額等の額に、それぞれ、保有月数割合(一月に満たない端数は1月として算定する。)を乗じて算出して、期首たな卸土地、期中仕入土地、それぞれの額を算定する。
(2) 配賦割合の算定
(1)の固定資産保有額と本件各土地の仕入保有額の合計額に占める、本件各土地ごとの仕入保有額の割合を算定する。
(3) 本件各事業年度における支払利息の額に、右(2)の配賦割合を乗じて、各事業年度の各期末たな卸土地に配賦すべき支払利息の額を算定する。
(五) 以上に基づいて、各事業年度分の原告の所得金額及びその細目を算定すると、別表五「所得金額の計算表」のとおりである。
6 土地の譲渡等がある場合の特別税率の適用について
(一) 租税特別措置法は、土地の譲渡等がある場合の特別税率の特例を規定し、法人が、他の者から取得した土地又は土地の上に存する権利で、短期所有土地等(取得した日から引き続き所有していた土地等でその所有期間が一〇年以下であるもの)に該当するものの譲渡がある場合には、右法人に対して課する各事業年度の所得に対する法人税の額は、右特例の適用がないものとして計算した法人税の額に、土地の譲渡に係る譲渡利益金額の合計額に一〇〇分の二〇の割合を乗じて計算した金額を加算した金額とする(昭和五九年四月期については、昭和五九年法律第六号による改正前の、昭和六〇年四月期ないし昭和六二年四月期については、昭和六二年法律第一四号による改正前の租税特別措置法六三条)と規定している。本件各事業年度において原告が譲渡した土地は、いずれも右短期所有土地等に当たることから、右各土地の譲渡利益の合計額に対しては右特例が適用されることになる。
(二) 各事業年度における課税土地譲渡利益金額及びこれに応ずる税額の計算過程は、別紙三の1ないし4「譲渡利益金額の計算明細」のとおりである。
7 本件各更正処分の適法性について
本件各事業年度の法人所得金額は、前記のとおり、別表五「所得金額の計算表」記載のとおりであり、各事業年度における課税土地譲渡利益金額及びこれに応ずる税額の計算過程は、別紙三の1ないし4「譲渡利益金額の計算明細」のとおりであるから、これに基いて各事業年度における納付すべき法人税額を計算すると、別表六「原告の納付すべき法人税額等の計算書」の順号11記載の金額となるところ、右金額は、それぞれ本件各更正処分(昭和五九年四月期については、裁決により一部取り消された後のもの。)に係る各事業年度の納付すべき法人税額を上回るから、本件各更正処分は適法である。
8 本件各賦課決定処分の適法性について
原告は、前述のとおり本件各事業年度における本件各土地の購入又は販売に際して、実際の購入又は販売先を偽り、ダミー業者である原告主張の各取引当事者から購入又は販売したかのごとく仮装し、右各取引当事者と取引したものとして本件各事業年度に係る所得金額及び土地譲渡利益金額並びに法人税額を算出し、右各金額により確定申告書を被告に対して提出した。このことは、国税通則法六八条一項に規定する国税の課税標準等の計算の基礎となるべき事実の一部を隠ぺいし又は仮装したこと(以下、「仮装隠ぺい行為」という。)に該当する。
国税通則法六八条一項は、納税者が仮装隠ぺい行為に基き納税申告書を提出していたときは、過少申告加算税の額の計算の基礎となるべき税額に係る過少申告加算税に代え、重加算税を課すると規定し、ただし、右基礎となるべき税額の計算の基礎となるべき事実のうち、仮装隠ぺい行為に基くものでないことが明かであるものがあるときは、右基礎となるべき税額から、右仮装隠ぺい行為でない事実に基く税額として国税通則法施行令で定めるところにより計算した金額(仮装隠ぺい行為でない事実のみに基いて修正申告書の提出又は更正があったものとした場合における納付すべき税額。国税通則法施行令二八条一項。以下、「過少申告加算税対象税額」という。)を控除した後の税額を基礎として、重加算税を課すると規定する。
本件各事業年度についてこれを見ると、いずれも過少申告加算税対象税額がないことから、被告が本訴において主張する各事業年度に係る各更正処分により新たに納付すべきこととなる税額(被告が本訴において主張する納付すべき法人税額から、確定申告に係る法人税額を控除した後の額。ただし、国税通則法一一八条三項の規定により一万円未満の端数切り捨て。)に、一〇〇分の三〇の割合を乗じて重加算税の額を算定すべきことになり、その計算は、別表六「原告の納付すべき法人税額等の計算書」の順号11ないし14のとおりである。そして、各事業年度における右新たに納付すべきこととなる税額は、いずれも各事業年度に係る重加算税賦課決定処分の基礎となった税額(昭和五九年四月期については、裁決により一部取り消された後のもの。)を上回ることから、本件重加算税賦課決定処分は適法である。
9 本件青色申告承認取消処分の適法性について
原告が、昭和六〇年四月期において、取引にダミー業者等を介在させることにより取引の全部又は一部を隠ぺいし又は仮装し、その帳簿書類に取引の事実を記載せず又は真実と異なる記載をしていたことは前記1記載の事実及び以下の事実から明らかである。
(一) 仕入取引における隠ぺい、仮装記載
(1) 原告は、大川邦義から交換取得したe3-2土地について、右取引を仕入として会計帳簿に記載せず、契約書上及び登記簿上の取得者に原告代表者が代表取締役を兼任する明興商事の名義を用いることにより取引を仮装した。
(2) 原告は、石川佳文から交換取得したH土地について、会計帳簿上の仕入先及び契約書上の取得者にダミー業者である近郊都市開発の名義を用いて取引を仮装した。
(二) 売上取引における隠ぺい、仮装記載
(1) 原告は、福田健次(e1-3及びe4-7土地)、綿引信光(e1-4土地)、友水宏之(e4-11土地)、石田力(e4-2土地)及び福井安治(e4-14土地)に対する売上取引について、会計帳簿上の売上先を友伸、契約書上の売主を近郊都市開発、譲渡直前における登記簿上の所有権者を内山喜久夫又は木谷譲とするなど、いずれもダミー業者等の名義を使って取引を仮装した。
(2) 原告は、大川邦義に交換譲渡したe2-2、e2-3土地について、右取引を売上として会社帳簿に記載せず、また、契約書上の譲受人及び譲渡直前における登記簿上の所有権者を前記明興商事とすることにより取引を仮装した。
(三) 会計帳簿に全く記載のない取引の隠ぺい、仮装記載
(1) 原告は、峯島孝(u1及びu2土地)、根本その(v3土地)、根本保(v1及びv2土地)及び根本幸雄(v4及びv5土地)からの仕入取引について、右取引を会計帳簿に全く記載せず、また、契約書上の買主を友伸(v1ないしv5土地)、登記簿上の取得者を鈴木精一(u1及びu2土地)又は内山都市開発(v1ないしv5土地)とするなど、いずれもダミー業者等の名義を利用することにより取引を仮装した。
(2) 原告は、塚原修(u1及びu2土地)、小川信一(v9土地)、弓野金正(v10土地)、高橋ハルエ(v14土地)、蛭田輝紀(v16土地)、荻野谷康夫(v8土地)、松本義明(v7土地)、富田忠男(v13土地)、青木善次郎(v12土地)、白井英敏(v11土地)及び鈴木尚子(v15土地)に対する売上取引について、右取引を会計帳簿に全く記載せず、また、契約書上の売主を近郊都市開発、登記簿上の所有者を内山都市開発とするなど、いずれもダミー業者等の名義を利用することにより取引を仮装した。
右各事実は、法人税法一二七条一項三号に規定する要件に該当するから、右事実に基づいてなされた本件青色申告承認取消処分は適法である。
(原告の主張)
1 友伸等について事業実態が認められないとの主張について
原告の不動産売買の相手方となった友伸、近郊都市開発等が、設立後所轄税務署に法人税確定申告書を全く提出しておらずまたは一期だけしか提出していないこと、また、明治興産については、原告代表者が代表者を兼任していたことをもって、それだけで直ちに会社としての実態がないということにはならない。右各会社は、いずれも現実に営業活動を行っていたものである。
2 不動産取引時期の虚偽性の主張について
(一) D土地について
d1-2、d2-2及びd2-1<1>の各土地につき、原告がD土地を友伸に売却したとして帳簿に記載されている昭和五八年一二月よりも以前に、それぞれ現所有者に所有権移転登記が経由されているのは、単なる帳簿記入時の誤記に過ぎず、実際の友伸への売却時期は昭和五八年六月ないし七月ころであった。
(二) E土地について
e4-5、e4-16及びe4-17の各土地につき、昭和五九年四月二三日付で現所有者に所有権移転登記が経由されているにもかかわらず、原告の帳簿上は、昭和六〇年四月期及び昭和六一年四月期の二事業年度にわたって友伸に売却した旨の記載のある理由は以下のとおりである。
すなわち、現実の取引においては、まず元売主と買主との間で仮契約を結び、あるいは買主に売渡証明書を交付して転買人を探させ、買主-転買人間で売買契約を締結し、転買人かさらに最終買受人を探して売買契約を締結した後、順次代金決算が行われ、最後に当初の買主から元売主が代金の支払いを受け、その段階に至って元売主と当初の買主間で本契約を正式に締結するという例があり、本契約の締結日が、最終買受人への移転登記よりも遅れることは稀なことではない。
本件は、このような仮契約手続を経てなされたものであって、日付が前後不整合を生じていることをもって、仮装取引の根拠とすることはできないものである。
3 根抵当権設定の不合理性の主張について
(一) B土地について
本件土地は、原告から友伸、友伸から菱信興産、菱信興産から北里譲に順次売却されたものであるが、かかる転売がなされる場合には、中間者の債権を保全するため、最終買受人が買受代金を支払うまで元売主が金融機関に負担する債務の根抵当権登記は抹消せず、抹消登記及び所有権移転登記は同時に行われることが普通である。したがって、北里譲に本件土地の所有権移転登記が経由された日に、原告を債務者とする水戸信用金庫の根抵当権が抹消されているとの事実をもって、原告が北里に直接本件土地を売却したとの根拠にはならない。
I土地についても同様である。
(二) E1ないしE5の土地について
本件各土地の取引は、まず、元の所有者である関東鉄道と前所有者木谷譲、同内山喜久夫らとの間でなされたが、木谷らに買受の資力がなく、金融機関からも融資を受けられなかったことから、同人らの申し出を受けた原告が、同人らを物上保証人として水戸信用金庫から金員を借り受け、これを本件土地の買受資金として同人らに融資し、その後同人らから本件土地を譲り受け、さらに後日これを友伸に売却したものである。右木谷らへの所有権移転登記の日に、本件土地について、原告を債務者とする根抵当権設定登記がなされているからといって、売買の実質的当事者が原告であるというわけではない。
4 土地取引に係る現実の代金決済と原告の帳簿書類との齟齬について
(一) 売上取引について
実際の不動産取引においては、譲渡人が、契約の相手方である譲受人から直接代金全額を受領するとは限らず、譲受人からの転売人ないし最終譲受人から支払を受けることは稀なことではない。
したがって、本件E土地の取引において、原告が、友伸から代金全額の支払を受けず、転買人である近郊都市開発又は最終譲受人である友水宏之等から売買代金の一部又は全部の振込を受けていることをもって、直ちに、原告と友伸との間の契約は実体がないとはいえない。J土地、R土地等についても同様である。
(二) 仕入取引について
(一)と同様、不動産譲受取引においても、譲受人が代金全部を譲渡人に支払うとは限らず、譲受人からの転買人や最終譲受人が、代金の全部又は一部を直接原所有者である譲受人に支払い、登記についても、手続の煩雑さを避け、経費を節約するために、中間省略登記を行うことは珍しくない。
本件C土地の買受けについても、原告は、譲受人友伸に二度に分けて代金を支払うことになっていたが、売買代金の一部の支払について、最終譲受人荒殿保幸らから、原所有者榎本完一に直接支払をしてもらい、中間省略登記を行ったに過ぎないものであるから、確定申告書、契約書、登記等の齟齬をもって、仮装取引であると被告が認定したのは誤りである。
5 本件各処分の違法性
以上のとおり、原告の、各事業年度における不動産取引の当事者、取引金額等は別表三のとおりであり、友伸等との間でいずれも正当な不動産売買取引を行い、これに基づいて適正な経理処理をしたものであるところ、被告は、右各取引が仮装行為であるとして事業所得金額を過大に認定した違法がある。
したがって、各事業年度の本件各更正処分及び重加算税賦課決定処分(ただし、昭和五九年四月期事業年度文については裁決により一部取り消された後のもの)並びに青色申告承認取消処分は違法であり、いずれも取り消されるべきである。
三 争点
1 本件各土地取引の実体
2 本件各更正処分の適法性
3 本件各賦課決定処分の適法性
4 本件青色申告承認取消処分の適法性
第三当裁判所の判断
一 本件各土地取引の実体
1 原告が正当な取引相手であると主張する法人等の事業実態について
友伸に関し乙第一〇号証の一、二、第二一号証ないし第二三号証、近郊都市開発に関し乙第一一号証の一、二、創殖に関し乙第九号証、第一二号証、明治興産に関し乙第六号証、第一三号証の一、二、第一五号証ないし第二〇号証、第二四号証、菱信興産に関し乙第三号証の四五、六九、七七、八八、一〇二、一一八、一二〇、第一四号証、第三五号証ないし第三一号証、第四四号証、長谷川新一に関し乙第一号証の四八、第三二号証、稲野辺洋子及び稲野辺紀孝に関し乙第一号証の七一、一二二、第三七号証、住友開発に関し乙第三号証の一二二、第三五号証の各号証に加え、上記すべてに関し原告代表者本人尋問の結果の一部並びに弁論の全趣旨を併せ考慮すれば、原告が正当な取引相手であると主張する法人等の事業実態に関する前記第二、二、(被告の主張)1、(一)ないし(八)記載の事実はこれを右記載のとおり認めることができ、右事実によれば、友伸、明治興産、近郊都市開発及び住友開発は、商業登記簿上は存在した法人てあるが事業活動を行っていた形跡が存しないこと、菱信興産は、事業活動を行ってはいたものの、本件不動産に係る売買取引の当事者とはいえず、創殖も、事業活動は行ってはいたものの、本件不動産に係る売買取引に関しては、S土地の取引について代理仲介をしたものにすぎないこと、長谷川新一、稲野辺洋子及び稲野辺紀孝は、実在する者ではあるが、売買取引の当事者とは認められず、いずれも原告が単にその名義を使用していたにすぎないものであることを一応認めることができる。そこで、右のとおり認定できる事実を基礎とし、前記第二、二、(被告の主張)及び同(原告の主張)の各2ないし4の各点に関する原告、被告の主張をもふまえて、以下、本件各土地取引の実体(取引相手、取引金額等)について判断する。
2 AないしF土地、KないしR土地について
AないしF土地、KないしR土地の取引は、原告が、友伸との間で取引をしたと主張するものであるが、前記認定の友伸の事業実態に加え、各土地について認められる以下の各事実を併せ考慮すると、右各土地に関する取引の実体を、以下のとおりに認めることができる。
(一) A土地について
内山都市開発の代表取締役である内山喜久夫は、原告代表者の依頼により、実際には原告との間の取引であるにもかかわらず、友伸との売買契約書を作成したことがある旨供述していること(乙第三三号証)、A土地の元の所有者である高野修之が、原告との取引であった旨述べているのみならず(乙第二一号証)、原告代表者本人も右高野からの売買代金の授受の際に立ち会っている旨述べていること、売買契約書及び登記簿上の買主となっている明治興産の事業実態は前記認定のとおりであり、原告代表者本人も、明治興産の名称を利用していた旨認めていることからすれば、A土地は、原告が、明治興産の名称を用いて、昭和五八年七月二一日、高野修之から二七〇〇万円で仕入れたものであることが認められる。
(二) B土地について
原告が、B土地を友伸に売却したと主張する時点よりもおよそ二か月前の昭和六二年二月九日に、菱信興産を売主、北里譲を買主とする売買契約書が存在すること(乙第三号証の二)、菱信興産の事業実態は前記認定のとおりであること、原告の従業員である木谷譲は、B土地の売買代金は、同人が受取り原告代表者に渡すか又は原告代表者が直接受取った旨供述していること(乙第三六号証)、B土地の登記は、昭和六二年四月三日に、原告から北里譲に直接移転しており、その間、根抵当権者を水戸信用金庫、債務者を原告とする根抵当権が設定されていたこと(乙第一号証の四)からすれば、B土地は、原告が、菱信興産の名称を用いて、昭和六二年二月九日、北里譲に八〇〇万円で売却したものであることが認められる。
原告は、右根抵当権の設定状況について、B土地は、原告から友伸、友伸から菱信興産、菱信興産から北里譲に順次売却されたものであり、中間者の債権を保全するため、最終買受人が買受代金を支払うまで、元売主である原告が金融機関に負担する債務の根抵当権登記を抹消しなかったものにすぎないと主張し、原告代表者本人はこれに添った供述をするが、前記契約書の存在や、木谷譲の供述に照らしてみると、容易に措信することができない。
(三) C土地について
原告が、友伸からC土地を仕入れたと主張する日と同日付で、旧所有者である榎本完一から近郊都市開発が購入したとの内容の売買契約書が存在すること(乙第三号証の三)、近郊都市開発の事業実態は前記認定のとおりであること、木谷譲は、近郊都市開発の記名押印がなされた契約書や領収書を原告代表者から予め預かっておき、それを用いて土地取引を行い、売買代金については、右木谷若しくは原告代表者が受領した旨供述していること(乙第三六号証)、前記内山喜久夫は、実際には原告との間の取引であるにもかかわらず、近郊都市開発を相手方とする売買契約書を作成したことがある旨述べていること(乙第三三号証)、C土地の一部は、榎本完一から明興商事、明興商事から磯崎孝に所有権移転登記がなされているところ(乙第一号証の五、第五号証)、明興商事は、原告代表者が代表取締役を兼任する法人であり(乙第三四号証)、原告代表者自身も同社が営業活動を行っていなかったことを認めていること(原告代表者本人)、榎本完一に対する売買代金のうち一二六〇万円は、原告がC土地を分筆した後譲渡した荒殿保幸から受取った売買代金によって支払われていること(乙第五号証、第五三号証、第五四号証)からすれば、C土地は、原告が、近郊都市開発の名称を用いて、昭和五九年二月一九日、榎本完一から四〇四六万円で仕入れたものであることが認められる。
原告は、右代金支払の点に関し、友伸に二度に分けて代金を支払うことになっていたが、売買代金の一部の支払について、荒殿保幸から、榎本完一に直接支払をしてもらい、中間省略登記を行ったにすぎないものであり、不動産譲受取引において、手続の煩雑さを避け経費を節約するために、譲受人が代金全部を譲受人に支払わず、譲受人からの転買人や最終譲受人が、代金の全部又は一部を直接原所有者である譲受人に支払い、中間省略登記を行うことは珍しくないと主張し、原告代表者本人はこれに添った供述をするけれども、近郊都市開発、明興商事の前記事業実態や、木谷譲、内山喜久夫らの供述に照らしてみれば、措信することができない。
(四) D土地について
原告が友伸に売却したと主張する時期以前に、近郊都市開発又は明治興産を売主とし、石塚章、桧山うら、株式会社北関東通商を買主とする売買契約が締結された旨の売買契約書が存すること(乙第三号証の四ないし六)、近郊都市開発及び明治興産の事業実態は前述のとおりであること、所有権移転登記は、原告から石塚章、桧山うら、株式会社北関東通商に対し直接なされており、右移転登記がなされるまでの間、根抵当権者を水戸信用金庫、債務者を原告とする根抵当権が設定されており、右移転登記がなされると同時に根抵当権が抹消されていること(乙第一号証の七ないし一〇)からすれば、D土地は、原告が、別表四の「D1及びD2土地」の「被告主張額・売上」欄記載のとおりの内容で、石塚章らに売却したものであることが認められる。
原告は、原告がD土地を友伸に売却したとして帳簿に記載されている昭和五八年一二月よりも以前に、それぞれ現所有者に所有権移転登記が経由されているのは、単なる帳簿記入時の誤記にすぎないと主張し、原告代表者本人はこれに添った供述をするが、前記近郊都市開発及び明治興産の事業実態や、根抵当権の設定状況に照らせば、にわかに措信しがたい。
(五) E土地について
(1) E土地は、原告が資金を提供して、木谷譲、内山喜久夫、明興商事の名義で、関東鉄道から購入した土地であること(原告代表者本人)、最終譲受人らとの間で、近郊都市開発、木谷譲、明興商事、明治興産を売主とする売買契約書(ただし、e2-2、E2-3の土地については交換契約書)が作成されていること(乙第三号証の八ないし一三、一五ないし一八、二三、二五、二七ないし三五)、木谷譲は、予め売主欄に記名押印済みの契約書や領収書を相当数原告代表者から預かっており、最終譲受人との契約はこれらを用いて行い、売却代金については、右木谷又は原告代表者が受取った旨供述していること(乙第三六号証)、E土地の一部の譲受人である友水宏之は、売買の際、木谷譲が立ち会った旨回答していること(乙第四三号証)、e1-4の土地(契約書上の売主・近郊都市開発、買主・綿引信光、昭和五九年一一月二〇日契約。乙第三号証の一一)の売却金額一七五〇万円のうち一五五〇万円、e4-11の土地(契約書上の売主・近郊都市開発、買主・友水宏之、昭和六〇年一月六日契約。乙第三号証の二九)の売却金額六四〇万円のうち三〇〇万円、e1-6の土地(契約書上の売主・明治興産、買主・磯野三千男、昭和六〇年一〇月五日契約。乙第三号証の一二)の売却金額一三〇〇万円のうち二〇〇万円は、いずれも右各買主から、直接、原告の水戸信用金庫普通預金口座に入金されていること(乙第三八号証ないし第四〇号証)からすれば、E土地は、原告が、近郊都市開発、木谷譲、明興商事、明治興産の名義を用いて、別表四の「E1ないしE5土地」の「被告主張額・売上」欄記載のとおりの内容で、鈴木豊らに売却したものであることが認められる。
原告は、昭和五九年五月及び昭和六〇年七月の二回に分けて、友伸にE土地を売却したものであり、それに先立って現所有者に所有権移転登記が経由されているのは、元売主と買主との間で仮契約を結んだうえ、転買人、最終買受人を探し、順次代金決済及び移転登記を経由した後、本契約を締結したためである旨主張するが、これを認めるに足りる証拠はない。また、債務者を原告とする根抵当権が設定されている事情について、原告は、木谷譲、内山喜久夫らに買受の資力がなく、融資を受ける信用もなかったために、同人らの申出を受け、同人らを物上保証人として、原告の信用で融資を受け、これを同人らに融資し、その後同人らから買い受けた土地を後日友伸に売却したものである旨主張し原告代表者本人はこれに添った供述をするが、同人らは何ら原告の主張するような事情が存在したことを窺わせるような供述をしておらず、かえって原告の仮装取引に加担したことを自認する供述をしていることからすれば、原告代表者の右供述はにわかに措信しがたい。
(2) 原告は、E土地の一部である水戸市笠原町一三九一番一四(e5-1)及び同番一五(e5-2)の土地を、梶田哲雄らから、昭和五九年五月一一日に仕入れた旨主張しているが、乙第一号証の二九、四四ないし四六、第三号証の二二、三六、三七、第五七号証ないし第六一号証によれば、右各土地は、原告が、昭和五九年四月期中に、原告の所有していたe4-3の土地を、梶田哲夫所有のe5-2、e5-3の土地と交換し、さらにe5-3の土地を高橋梅次所有のe5-1土地と交換取得したものであること、したがって、原告は、昭和五九年四月期中に、e5-1及びe5-2の土地を取得していることが認められる。また、原告は、昭和五九年一〇月二日、原告所有のe2-2及びe2-3土地と、大川邦義所有のe3-1及びe3-2土地を交換していることが認められ(乙第三号証の一八)、したがって、一五万六〇〇〇円が、昭和六〇年四月期における仕入過大計上額となることが認められる。
(六) F土地について
原告がF土地を友伸に売却したとするのと同日付で、売主・近郊都市開発、買主・飯島洋一とする売買契約書が存在すること(乙第三号証の三八)、近郊都市開発の事業実態は、前記認定のとおりであること、登記簿上、原告から右飯島に対し、直接所有権移転登記がなされており、右移転登記まで、債務者を原告とする根抵当権が設定されていたことからすれば、F土地は、原告が、近郊都市開発の名称を用いて、昭和六〇年一月二八日、飯島洋一に四五〇〇万円で売却したものであることが認められる。
(七) K土地について
原告が友伸に売却したと主張する日時以前に、契約書上、K土地は分筆され、菱信興産から岡部成弘ら譲受人に譲渡されていること(乙第三号証の五七の一ないし四、乙第三号証の五八ないし六三)、菱信興産の事業実態は前記認定のとおりであること、右譲渡に先立ち、K土地は、一旦、稲野辺洋子に所有権移転登記がなされているが、これは原告が右稲野辺の名義を借りて登記したものであると認められるところ(乙第一号証の七一ないし七八、乙第三七号証、原告代表者本人)、右稲野辺の名義を借りて登記した理由について原告は何ら合理的な説明をしていないことからすれば、K土地は、原告が、菱信興産の名義を用いて、別表四の「K土地」の「被告主張額・売主」欄記載のとおりの内容で、岡部成弘らに売却したものであることが認められる。
(八) L土地について
L土地については、菱信興産から譲受人である宮田吉喜久らに売却した旨の契約書等が存在すること(乙第三号証の六四ないし六六、六八ないし七一)、菱信興産の事業実態は前記のとおりであること、L土地の一部の譲受人である遠藤昭雄及び西野秋夫は、売買の際、原告の関係者が説明ないし立ち会うなどしたと回答していること(乙第三号証の六七、第二八号証)、L土地は分筆され、登記簿上、鈴木まさ子、稲野辺洋子、小室綾子らに一旦所有権が移転した後、同人らから最終譲受人らに所有権移転登記がなされているが(乙第一号証の七九ないし八八)、これらは名義を借りたにすぎないものと認められるところ(乙第二四号証、原告代表者本人)、名義を借りて登記した理由について原告は何ら合理的な説明をしていないことからすれば、L土地は、原告が、菱信興産の名義を用いて、別表四の「L土地」の「被告主張額・売上」欄記載のとおりの内容で、宮田吉喜久らに売却したものであることが認められる。
(九) M土地について
M土地は、原告が友伸に売却したと主張するよりも以前に、菱信興産に対し所有権移転登記がなされ(乙第一号証の八九)、かつ、菱信興産から雨宮太刀雄及び久美子に譲渡されたこと(乙第三号証の七二)、菱信興産の事業実態は前記認定のとおりであることからすれば、同土地は、原告が、菱信興産の名称を用いて、昭和六一年五月一二日、雨宮太刀雄及び久美子に二〇七七万円で売却したものであることが認められる。
(十) N土地について
原告は、昭和六一年九月二九日に、友伸にN土地を売却した旨主張するが、同土地は分筆され、その大部分が、右日時以前に、菱信興産から野口喜代次ら最終譲受人に売却されていること(乙第三号証の七三ないし八五)、登記簿上、同年九月一九日に稲野辺洋子、同月二四日に木谷譲への所有権移転登記を経由したうえで、最終譲受人らに所有権が移転されていること(乙第一号証の九〇ないし一〇五)、右稲野辺らへの移転登記は、原告が名義を借りて行ったものと認められるところ(乙第三六号証、原告代表者本人)、名義を借りて登記した理由について原告は何ら合理的な説明をしていないこと、N土地の一部の譲受人である田所洋一は、売買の際、原告の従業員である木谷譲が立ち会った旨回答し(乙第二九号証)、木谷譲は、田所洋一が売買代金の一部を割賦により原告代表者に支払った旨供述していること(乙第三六号証)、n-3土地(契約書上の売主・菱信興産、買主・海老沢威、昭和六一年九月二七日契約。乙第三号証の七四)の売却金額八〇〇万円のうち一五七万円は、右海老沢から、直接、原告の水戸信用金庫普通預金口座に入金されていること(乙第三八号証)からすれば、N土地は、原告が、菱信興産の名称を用いて、別表四の「N土地」の「被告主張額・売上」欄記載のとおりの内容で、野口喜代次らに売却したものであることが認められる。
(十一) O土地について
(1) 原告は、昭和六二年一月一三日に、友伸にO土地を売却した旨主張するが、O土地は、右日時以前に、菱信興産から仲田典雄、アサカ有限会社、益子政太、武藤稔に譲渡されていること(乙第三号証の九〇、九三ないし九五)、登記簿上、昭和六一年一二月二二日に長谷川優子への所有権移転登記を経由したうえで、最終譲受人らに所有権が移転されていること(乙第一号証の一一〇等)、右長谷川への移転登記は、原告が名義を借りて行ったものと認められるところ(乙第三二号証、原告代表者本人)、名義を借りて登記した理由について原告は何ら合理的な説明をしていないこと、O土地の一部の譲受人である益子政太、上川健久は、売買の際、木谷譲が立ち会った旨回答していること(乙第二二号証、第三〇号証)、o-11土地(契約書上の売主・菱信興産、買主・アサカ有限会社、昭和六二年一月一一日契約。乙第三号証の九五)の売却金額三〇〇万円のうち五〇万円、o-10の土地(契約書上の売主・菱信興産、買主・益子政太、昭和六二年一月一〇日契約。乙第三号証の九四)の売却金額六八〇万円のうち六三〇万円は、いずれも右各買主から、直接、原告の水戸信用金庫普通預金口座に入金されていること(乙第三八号証、第四二号証)からすれば、O土地は、原告が、菱信興産の名称を用いて、別表四の「O土地」の「被告主張額・売上」欄記載のとおりの内容で、仲田典雄らに売却したものであることが認められる。
(2) 原告は、O土地の一部について、昭和六一年一二月二〇日、野上誠一から二三三〇万八四〇〇円で仕入れた旨主張するが、契約書(乙第三号証の八六)によれば、右契約代金は二二七七万四四〇〇円とされており、他に特段の反証もない以上、右金額を仕入れ価格と認定すべきである。したがって、五三万四〇〇〇円が仕入過大計上額となる。
(十二) P土地について
原告は、昭和六二年四月一四日に、友伸にP土地を売却した旨主張するが、同土地は、その大部分が、右日時以前に、菱信興産から石川ウメらに譲渡されていること(乙第三号証の九六ないし一〇三、一〇五、一〇八ないし一一〇、一一二ないし一一四)、登記簿上、昭和六二年三月一二日に稲野辺紀孝への所有権移転登記を経由したうえで、最終譲受人らに所有権が移転されていること(乙第一号証の一二二等)、右稲野辺への移転登記は、原告が名義を借りて行ったものと認められるところ(乙第三七号証、原告代表者本人)、名義を借りて登記した理由について原告は何ら合理的な説明をしていないこと、P土地には、同年三月一〇日付で、根抵当権者を水戸信用金庫、債務者を原告とする根抵当権が設定され、右根抵当権は、最終的な譲受人らに所有権移転登記がなされるまで抹消されていないこと(乙第一号証の一二二ないし一四〇)、P土地の一部の譲受人である鈴木昭平の妻由紀子、大原總一郎は、売買の際、木谷譲若しくは原告の従業員が立ち会った旨回答していること(乙第二三号証、第三一号証)、p-2土地(契約書上の売主・菱信興産、買主・石川ウメ、昭和六二年四月一一日契約。乙第三号証の九六)の売却金額六〇〇万かのうち四八〇万円、p-8土地(契約書上の売主・菱信興産、買主・大原總一郎、昭和六二年四月一二日契約。乙第三号証の一〇二)の売却金額四六八万円のうち三七八万円、p-11土地(契約書上の売主・菱信興産、買主・大晃建設株式会社、昭和六二年四月一一日契約。乙第三号証の一〇五)の売却金額九八〇万円のうち七八四万円は、いずれも右各買主から、直接、原告の水戸信用金庫普通預金口座に入金されていること(乙第三八号証、第四〇号証)からすれば、P土地は、原告が、菱信興産の名称を用いて、別表四の「P土地」の「被告主張額・売上」欄記載のとおりの内容で、石川ウメらに売却したものであることが認められる。
(十三) Q土地について
O土地については、元の所有者である打越かつ江らから、原告代表者である鈴木精一に売却した旨の契約書が存在すること(乙第三号証の一一五)、登記簿上も、打越かつ江らから、鈴木精一に所有権移転登記がなされていること(乙第一号証の一四三)からすれば、O土地は、原告が、昭和六〇年六月八日、打越かつ江外四名から四八四〇万円で仕入れたものであることが認められる。
(十四) R土地について
原告は、昭和六一年八月一日に、友伸にR土地を売却した旨主張するが、同土地は、右日時以前に、菱信興産から大谷隆に売却されていること(乙第三号証の一一六)、登記簿上、同年七月三日に稲野辺洋子に所有権移転登記がなされたうえで、大谷隆に所有権の一部移転登記がされていること(乙第一号証の一四四、一四五)、右稲野辺への移転登記は、原告が名義を借りて行ったものと認められるところ、名義を借りて登記した理由について原告は何ら合理的な説明をしていないこと、R土地(契約書上の売主・菱信興産、買主・大谷隆、昭和六一年七月二八日契約。乙第三号証の一一六)の売却金額五四〇万円のうち四四〇万円は、右大谷から、直接、原告の水戸信用金庫普通預金口座に入金されていること(乙第三八号証)からすれば、R土地は、原告が、菱信興産の名称を用いて、昭和六一年七月二八日、大谷隆に五四〇万円で売却したものであることが認められる。
3 G土地について
原告は、G土地の取引について、昭和五九年五月一九日、長谷川新一から五一六六万円で仕入れた旨主張する。
しかしながら、乙第三号証の三九、第三二号証によれば、G土地は、昭和五九年三月二一日、齊藤義政から友伸に、同年五月二一日、友伸から長谷川新一に、同月三〇日、長谷川新一から原告に、順次売却されたことになっているところ、長谷川新一の供述によれば、同人が右契約に関与した事実は認めることができず(乙第三二号証)、原告代表者本人も、G土地の取引について長谷川新一の名義を借りた旨述べていること、前記のように、友伸には法人としての実体が認められず、原告が、その名称を用いて土地取引をしていたものと認められることからすれば、G土地は、原告が、昭和五九年三月二一日、齊藤義政から三八〇〇万円で仕入れたものと認めることができる。
4 H及びI土地について
原告は、H及びI土地につき、いずれも近郊都市開発と取り引きしたものである旨主張する。
しかしながら、前記のとおり、近郊都市開発には法人としての実体が認められず、原告がその名称を用いて取引をしていたと認められることに加え、H土地については、原告が、同土地を近郊都市開発から二二九一万円で仕入れたと主張する昭和五九年一二月一八日付で、元の所有者である石川佳文から、近郊都市開発が一七四九万円で購入した旨の契約書が存在すること(乙第三号証の四〇)、I土地については、原告が、同土地を近郊都市開発に一四二七万円で売却したと主張する昭和五九年九月三〇日、同土地を鈴木精一から二一三〇万四八〇〇円で買い受けた旨の加部東正雄の回答が存すること(乙第三号証の四一)からすれば、右両土地に関する、原告と近郊都市開発との取引はいずれも仮装されたものであり、実際は、原告が石川佳文から代金一七四九万円で仕入れ(H土地)、あるいは、加部東正雄に代金二一三〇万四八〇〇円で直接売却した(I土地)ものと認めることができる。
5 J、T及びW土地について
J、T及びW土地の取引について、原告は、創殖から仕入れ又は創殖に売却したものである旨主張している。
しかしながら、創殖の代表取締役岩間正明は、原告代表者から、売買の間に入って手数料を稼がないかと持ちかけられ、創殖の名義を貸して手数料を受取ったことがあり、また、原告に対して創殖の名称を記載した白紙の契約書を数回にわたり渡したことがある旨答述していること(乙第九号証)、内山都市開発の代表取締役内山喜久夫は、実際には原告との取引であったにもかかわらず、原告代表者の依頼により、創殖名義の契約書を作成したことがある旨供述していること(乙第三三号証)が認められる。以上の事実を前提にして、さらに、各土地ごとに判断する。
(一) J土地について
原告は、昭和六〇年九月九日、創殖にJ土地を売却した旨主張しているが、同土地については、明治興産、創殖、菱信興産から、最終的な譲受人である佐伯稔らに売却した旨の契約書等があり、そのうち約半数は右日時以前に締結されたものであること(乙第三号証の四二ないし五六)、登記簿上は、創殖への所有権移転登記はなされておらず、同年七月二四日付で菱信興産に対する所有権移転登記を経由して、同社から、佐伯美智枝ら最終譲受人に所有権の一部移転ないし移転登記がなされていること(乙第一号証の五五等)、J土地の一部の譲受人である山南商事株式会社の代表取締役塚沢友朗は、契約書は木谷譲が作成し、代金も原告の事務所で木谷譲に支払った旨供述していること(乙第二五号証)、j-16土地の譲受人飯塚悌一から、売却金額八一九万円が、一六〇万円及び六五九万円の二回に分けて、原告の水戸信用金庫普通預金口座に入金されていること(乙第三号証の五六、第三八号証)、j-7土地の譲受人深作謙二郎から、売却金額五〇四万円(乙第三号証の四七)のうち四四四万円が、j-4土地の譲受人渡辺敏雄から、売却金額三七八万円(乙第三号証の四四)のうち三〇三万円が、j-2土地の譲受人株式会社双葉から、売却金額一二〇〇万円(乙第三号証の四二)のうち一〇〇万円が、いずれも右各譲受人から、直接、原告の水戸信用金庫普通預金口座に入金されていること(乙第三八号証、第四〇号証、第四一号証)からすれば、J土地は、原告が、明治興産等の名称を用いて、別表四の「J土地」の「被告主張額・売上」欄記載のとおりの内容で、佐伯稔らの譲受人に売却したものと認めることができる。
(二) T土地について
原告は、昭和六〇年一二月七日、創殖からT土地を一九一〇万円で仕入れた旨主張しているが、同土地については、同日付で、元の所有者である高畠晟輔を売主、住友開発を買主、売買代金を一四一〇万円とする契約書が存在する(乙第三号証の一二二)反面、住友開発と創殖、創殖と原告との間の取引を証する資料は存しないこと、登記簿上、創殖への移転登記はなされておらず、昭和六〇年一二月二〇日付で小室綾子に対する所有権移転登記がなされているところ(乙第一号証の一五三)、前述のとおり、小室綾子は、取引当事者としての実体を有せず、単に原告に名義を貸していたにすぎないものと認められること(乙第二四号証)からすれば、T土地は、原告が、昭和六〇年一二月七日、高畠晟輔から一四一〇万円で仕入れたものと認めることができる。
(三) W土地について
原告は、昭和六〇年五月三〇日、創殖にW土地を売却した旨主張しているが、同土地の一部の譲受人である飯島敏之及び栗山和子は、原告が取引相手であるとの認識を有していたものと認められること(乙第三号証の一四一、第五六号証の一、二)、登記簿上、創殖への移転登記はなされておらず、原告から直接海老澤たけら譲受人に所有権移転登記がなされていること(乙第一号証の一七二ないし一七七)からすれば、W土地は、原告が創殖の名称を用いて、別表四の「W土地」の「被告主張額・売上」欄記載のとおりの内容で、海老澤教雄らに売却したものと認めることができる。
6 S土地について
S土地にの取引について、原告は、一部は友伸に、一部は創殖に、一部は内山都市開発に売却したものであると主張するが、前述のとおり、友伸には法人としての実体が認められず、原告がその名称を用いて取り引きしていたにすぎないと認められること、創殖の代表取締役岩間正明は、S土地の取引に関し、内山都市開発に対する譲受の仲介をして手数料を受取ったにすぎない旨供述していること(乙第九号証)、創殖から内山都市開発に、昭和六一年一月一〇日、S土地の一部を二億三六〇七万六〇〇〇円で売却する旨の契約書が作成されているが、右契約書上には、創殖の記名印の横に「明治不動産(有)の代理」との記載があること(乙第三号証の一一七)からすれば、S土地の一部は、昭和六一年一月一〇日、原告が、創殖の名義を借りて、内山都市開発に二億三六〇七万六〇〇〇円で売却したものであることが認められ、また、S土地の他の部分については、菱信興産から遠藤和子、吹野邦一郎、株式会社みどり園、海老原達夫にそれぞれ売却された旨の契約書が存するところ(乙第三号証の一一八ないし一二一)、前述のとおり、菱信興産には、本件各土地取引に関し、取引当事者としての実体が認められず、原告がその名称を借りていたにすぎないと認められること、右みどり園の代表者及び吹野邦一郎は、取引に立ち会ったのは原告の社員若しくは木谷譲である旨回答していること(乙第二六号証、第二七号証)からすれば、原告が、菱信興産の名称を用いて、別表四の「S1及びS2の土地」の「被告主張額・売上(62・4期)」欄記載のとおりの内容で、遠藤和子らに売却したものと認めることができる。
7 U土地について
原告は、U土地について、原告が仕入れ又は売却した事実はないと主張するが、同土地については、元の所有者である峯島孝から原告に、昭和五九年六月一五日、三七九〇万五〇〇〇円で売却した旨の契約書(乙第三号証の一二三)及び友伸から塚原修に、同年一二月六日、六六〇〇万円で売却した旨の契約書(乙第三号証の一二四)が存在するところ、前述のとおり、友伸には法人としての実体がなく、原告がその名称を借りていたにすぎないと認められることからすれば、U土地は、原告が、昭和五九年六月一五日、峯島孝から三七九〇万五〇〇〇円で仕入れ、同年一二月六日、塚原修に六六〇〇万円で売却したものであることが認められる。
8 V土地について
原告は、V土地について、原告が仕入れ又は売却した事実はないと主張するが、同土地については、元の所有者である根本その、根本保及び根本幸男から友伸に、昭和五九年一二月二一日に売却した旨の契約書等(乙第三号証の一二五ないし一二七)及び近郊都市開発及び内山都市開発から最終的な譲受人である小川信一らに売却した旨の契約書等(乙第三号証の一二八ないし一三七)が存在するところ、前述のとおり、友伸及び近郊都市開発には法人としての実体がなく、原告がその名称を借りていたにすぎないと認められること、内山都市開発の代表取締役内山喜久夫は、原告代表者の依頼で、同土地について、友伸から内山都市開発へ売却した旨の架空の契約書及び内山都市開発から近郊都市開発へ売却した旨の架空の契約書を作成したことを認めていること(乙第三三号証)からすれば、V土地は、原告が、友伸、近郊都市開発、内山都市開発の名称を用いて、別表四の「V土地」の「被告主張額・仕入等」、「同・売上」欄各記載のとおりの内容で、仕入れ及び売却したものであることが認められる。
二 本件各更正処分の適法性
以上認定した本件各土地の取引実体に基づき、たな卸計算の方法については、前記第二、二、(被告の主張)五、(二)ないし(四)記載の方法を合理的なものと認めることができるからこれを採用して、原告の本件各事業年度の法人所得金額を算定すると、別表五「所得金額の計算表」記載のとおり(その細目は別表四に記載のとおり)であり、また、各事業年度における課税土地譲渡利益金額及びこれに応ずる税額の計算過程は、別紙三の1ないし4「譲渡利益金額の計算明細」のとおり認めることができるから、これに基いて各事業年度における納付すべき法人税額を計算したうえ、本件各更正処分の適法性を判断する。
1 昭和五九年四月期
(一) 所得金額に対する税額
原告の昭和五九年四月期の所得金額は、五八八七万三七一二円であるところ、これに対する法人税額は、昭和六〇年法律第七号による改正前の租税特別措置法四二条一項により、右所得金額のうち、八〇〇万円以下の部分については一〇〇分の三一の税率を、八〇〇万円を超える部分である五〇八七万三〇〇〇円(国税通則法一一八条一項により一〇〇〇円未満の端数切捨てによる。)については一〇〇分の四三・三の税率を、それぞれ乗じて計算した額二四五〇万八〇〇九円である。
(二) 課税土地譲渡利益金額に対する税額
原告の昭和五九年四月期の土地譲渡利益金額六五五〇万五〇〇〇円(国税通則法一一八条一項により一〇〇〇円未満の端数切捨てによる。)に昭和五九年法律第六号による改正前の租税特別措置法六三条一項の規定により一〇〇分の二〇を乗じて計算した額一三一〇万一〇〇〇円である。
(三) 納付すべき法人税額
原告の昭和五九年4月期の納付すべき法人税額は、前記(1)及び(2)の額の合計額である三七六〇万九〇〇〇円(国税通則法一一九条一項により一〇〇円未満の端数切捨てによる。)であるところ、右金額は、本件更正処分(裁決により一部取り消された後のもの)に係る納付すべき法人税額三四八三万五七〇〇円を上回るから、本件更正処分は適法である。
2 昭和六〇年四月期
(一) 所得金額に対する税額
原告の昭和六〇年四月期の所得金額は、一億四三九三万八三一五円であるところ、これに対する法人税額は、昭和六三年法律第四号による改正前の租税特別措置法四二条一項により、右所得金額のうち、八〇〇万円以下の部分については一〇〇分の三一の税率を、八〇〇万円を超える部分である一億三五九三万八〇〇〇円(国税通則法一一八条一項により一〇〇〇円未満の端数切捨てによる。)については一〇〇分の四三・三の税率を、それぞれ乗じて計算した額六一三四万一一五四円である。
(二) 課税土地譲渡利益金額に対する税額
原告の昭和六〇年四月期の土地譲渡利益金額一億四〇三九万四〇〇〇円(国税通則法一一八条一項により一〇〇〇円未満の端数切捨てによる。)に昭和六二年法律第一四号による改正前の租税特別措置法六三条一項の規定により一〇〇分の二〇を乗じて計算した額二八〇七万八八〇〇円である。
(三) 納付すべき法人税額
原告の昭和六〇年四月期の納付すべき法人税額は、前記(1)及び(2)の合計額である八九四一万九九五四円から、法人税法六八条一項の規定に基づき、利子・配当等の収入について既に源泉徴収されていた税額五万二〇三九円を控除した後の額八九三六万七九〇〇円(国税通則法一一九条一項により一〇〇円未満の端数切捨てによる。)であるところ、右金額は、本件更正処分に係る納付すべき法人税額七八二六万三二〇〇円を上回るから、本件更正処分は適法である。
3 昭和六一年四月期
(一) 所得金額に対する税額
原告の昭和六一年四月期の所得金額は、一億一三五六万八八六二円であるところ、これに対する法人税額は、昭和六三年法律第四号による改正前の租税特別措置法四二条一項により、右所得金額のうち、八〇〇万円以下の部分については一〇〇分の三一の税率を、八〇〇万円を超える部分である一億五五六万八〇〇〇円(国税通則法一一八条一項により一〇〇〇円未満の端数切捨てによる。)については一〇〇分の四三・三の税率を、それぞれ乗じて計算した額四八一九万九四四円である。
(二) 課税土地譲渡利益金額に対する税額
原告の昭和六一年四月期の土地譲渡利益金額一億二四五六万円(国税通則法一一八条一項により一〇〇〇円未満の端数切捨てによる。)に昭和六二年法律第一四号による改正前の租税特別措置法六三条一項の規定により一〇〇分の二〇を乗じて計算した額二四九一万二〇〇〇円である。
(三) 納付すべき法人税額
原告の昭和六一年四月期の納付すべき法人税額は、前記(1)及び(2)の額の合計額である七三一〇万二九四四円から、法人税法六八条一項の規定に基づき、利子・配当等の収入について既に源泉徴収されていた税額五九万七三二一円を控除した後の額七二五〇万五六〇〇円(国税通則法一一九条一項により一〇〇円未満の端数切捨てによる。)であるところ、右金額は、本件更正処分(裁決により一部取り消された後のもの)に係る納付すべき法人税額六二五六万一一〇〇円を上回るから、本件更正処分は適法である。
4 昭和六二年四月期
(一) 所得金額に対する税額
原告の昭和六二年四月期の所得金額は、二億一九七八万八二四三円であるところ、これに対する法人税額は、昭和六三年法律第一〇九号による改正前の法人税法六六条により、右所得金額のうち、八〇〇万円以下の部分については一〇〇分の三〇の税率を、八〇〇万円を超える部分である二億一一七八万八〇〇〇円(国税通則法一一八条一項により一〇〇〇円未満の端数切捨てによる。)については一〇〇分の四二の税率を、それぞれ乗じて計算した額九一三五万九六〇円である。
(二) 課税土地譲渡利益金額に対する税額
原告の昭和六二年四月期の土地譲渡利益金額二億二〇四三万九〇〇〇円(国税通則法一一八条一項により一〇〇〇円未満の端数切捨てによる。)に昭和六二年法律第一四号による改正前の租税特別措置法六三条一項の規定により一〇〇分の二〇を乗じて計算した額四四〇八万七八〇〇円である。
(三) 納付すべき法人税額
原告の昭和六二年四月期の納付すべき法人税額は、前記(1)及び(2)の額の合計額である一億三五四三万八七六〇円から、法人税法六八条一項の規定に基づき、利子・配当等の収入について既に源泉徴収されていた税額九六万一二七七円を控除した後の額一億三四四七万七四〇〇円(国税通則法一一九条一項により一〇〇円未満の端数切捨てによる。)であることろ、右金額は、本件更正処分に係る納付すべき法人税額一億二八〇〇万四六〇〇円を上回るから、本件更正処分は適法である。
三 本件各賦課決定処分の適法性
前記一で認定したところから、原告は、本件各土地の取引に際して、実際の購入又は販売先を偽り、ダミー業者である原告主張の各取引当事者から購入又は販売したかのごとく仮装し、右各取引当事者と取引したものとして本件各事業年度に係る所得金額及び土地譲渡利益金額並びに法人税額を算出し、右各金額により確定申告書を被告に対して提出したといえるものであり、右行為は、国税通則法六八条一項に規定する国税の課税標準等の計算の基礎となるべき事実の一部を隠ぺいし又は仮装したこと、すなわち仮装隠ぺい行為に該当することが認められる。
重加算税の額の算定方法は、被告主張のとおりであるから、これに基づいて各事業年度の重加算税の額を計算し、本件各賦課決定処分の適法性について判断する。
1 昭和五九年四月期
原告の納付すべきこととなる重加算税の税額は、右事業年度に係る更正処分により新たに納付すべきこととなる税額三七五四万円(原告の納付すべき法人税額三七六〇万九〇〇〇円から、確定申告に係る法人税額六万一二〇〇円を控除した後の額。ただし、国税通則法一一八条三項の規定により一万円未満の端数切り捨てによる。)に、一〇〇分の三〇の割合を乗じて算定した額一一二六万二〇〇〇円であるところ、右金額は、本件重加算税賦課決定処分の金額一〇四三万一〇〇〇円(裁決による一部取消し後のもの)を上回ることから、本件重加算税賦課決定処分は適法である。
2 昭和六〇年四月期
原告の納付すべきこととなる重加算税の税額は、右事業年度に係る更正処分により新たに納付すべきこととなる税額六七三二万円(原告の納付すべき法人税額八九三六万七九〇〇円から、確定申告に係る法人税額二二〇四万三七〇〇円を控除した後の額。ただし、国税通則法一一八条三項の規定により一万円未満の端数切り捨てによる。)に、一〇〇分の三〇の割合を乗じて算定した額二〇一九万六〇〇〇円であるところ、右金額は、本件重加算税賦課決定処分の金額一六八六万三〇〇〇円を上回ることから、本件重加算税賦課決定処分は適法である。
3 昭和六一年四月期
原告の納付すべきこととなる重加算税の税額は、右事業年度に係る更正処分により新たに納付すべきこととなる税額五五五九万円(原告の納付すべき法人税額七二五〇万五六〇〇円から、確定申告に係る法人税額一六九一万三〇〇〇円を控除した後の額。ただし、国税通則法一一八条三項の規定により一万か未満の端数切り捨てによる。)に、一〇〇分の三〇の割合を乗じて算定した額一六六七万七〇〇〇円であるところ、右金額は、本件重加算税賦課決定処分の金額一三六九万五〇〇〇円を上回ることから、本件重加算税賦課決定処分は適法である。
4 昭和六二年四月期
原告の納付すべきこととなる重加算税の税額は、右事業年度に係る更正処分により新たに納付すべきこととなる税額一億一〇〇九万円(原告の納付すべき法人税額一億三四四七万七四〇〇円から、確定申告に係る法人税額二四三七万九二〇〇円を控除した後の額。ただし、国税通則法一一八条三項の規定により一万円未満の端数切り捨てによる。)に、一〇〇分の三〇の割合を乗じて算定した額三三〇二万七〇〇〇円であるところ、右金額は、本件重加算税賦課決定処分の金額三一〇八万六〇〇〇円を上回ることから、本件重加算税賦課決定処分は適法である。
四 本件青色承認取消処分の適法性
前記一において認定したところから、原告が、昭和六〇年四月期において、帳簿書類に取引の全部又は一部を隠ぺい又は仮装して記載していたことは明らかであり、右事実は、法人税法一二七条三号に規定する要件に該当するから、当該事実を起因としてなされた本件青色申告承認取消処分は適法である。
五 結論
以上によれば、原告の本訴請求は、いずれも理由がない。
(裁判長裁判官 矢崎正彦 裁判官松本光一郎、裁判官福井健太は、転補のため署名捺印できない。裁判長裁判官 矢崎正彦)
別表一の1
自昭和五八年五月一〇日至昭和五九年四月三〇日までの事業年度分
<省略>
別表一の2
自昭和五九年五月一日至昭和六〇年四月三〇日までの事業年度分
<省略>
別表一の3
自昭和六〇年五月一日至昭和六一年四月三〇日までの事業年度分
<省略>
別表一の4
自昭和六一年五月一日至昭和六二年四月三〇日までの事業年度分
<省略>
別表二
<省略>
別表三
<省略>
別表四 土地別増減所得の内訳書
A土地
<省略>
B土地
<省略>
C土地
<省略>
<省略>
D1及びD2土地
<省略>
<省略>
E1ないしE5土地
<省略>
<省略>
<省略>
F土地
<省略>
G土地
<省略>
<省略>
H土地
<省略>
I1ないしI3土地
<省略>
J土地
<省略>
<省略>
K土地
<省略>
L土地
<省略>
<省略>
M土地
<省略>
N土地
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O土地
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P土地
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P土地
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Q土地
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R土地
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S1及びS2土地
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61.4期
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U土地
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V土地
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W土地
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別表五
所得金額の計算表
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別表六
原告の納付すべき法人税額等の計算書
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別紙-本件不動産目録
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別紙二
本件各事業年度における販売日及び一般管理費の各科目のうち、原告が本件各土地の取得価額に配賦した経費科目の一覧表
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別紙三の1
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別紙三の2
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別紙三の3
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別紙三の4
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