水戸地方裁判所 昭和24年(行)75号 判決
原告 仲田亀吉
被告 国
一、主 文
原告の訴を却下する。
訴訟費用は原告の負担とする。
二、事 実
原告訴訟代理人は当初茨城縣知事を被告とし同被告が昭和二十二年十月二日別紙目録記載の土地に付爲した買收処分の無効なることの確認を求め、且つ該買收処分並該土地に対する賣渡処分の取消を求めて居たものであるが、後被告を国と変更すると共に別紙目録記載の土地に対し原告が訴外斎藤なつ、同仲田重吉及同渡辺すえと共に所有権を有することの確認を求める訴に変更し、且被告国に対し茨城縣知事の爲した該土地に対する買收処分の取消を求め、其請求原因として別紙目録規載の土地は元原告の姉仲田すての所有地にして同人自ら耕作して居たのであつたが、其の後病気となり自ら耕作することが出來なくなるに及んで一時他に貸與し、次で病が重くなつたので之が治療の爲昭和十八年頃其住所地であつた東茨城郡沢山村大字阿波山九百三十六番地から石塚町の実弟仲田重吉方に移り病気療養をしていたが、遂に昭和二十二年五月十九日右仲田重吉方で死亡した。其処で原告及訴外仲田重吉、同渡辺すえ並同斎藤なつの四人が右仲田すての相続をしたのである。然うであるのに訴外沢山村農地委員会では昭和二十二年七月二十二日別紙記戴の土地に対し仲田すてが不在地主であるとの理由で買收計画を樹て次で茨城縣知事は同年十月二日該土地を買收し該買收令書を昭和二十三年四月十二日訴外仲田重吉に交付した。然し乍ら前記の通り仲田すては訴外沢山村農地委員会が買收計画を樹てる以前である同年五月十九日死亡し当時に於ける所有者は原告外三名であつたのである。從つて訴外沢山村農地委員会は既に死亡し権利義務の主体となり得ない虚無人を相手とし買收計画を樹て茨城縣知事亦之を権利主体として買收処分をしたものであつて該買收処分が何等の効力を生ずることの無いこと勿論である。從つて別紙記載の土地は尚旧の様に原告及訴外斎藤なつ、同仲田重吉、同渡辺すての共有に属するものであること、亦勿論である。然うであるのに被告国に於ては之を爭うので茲に該物件が右原告等四名の共有に属するものであることの確認を求めると共に被告に対し形式的に存する買收処分の取消を求める爲本訴に及ぶと陳述し、被告の抗弁に対し自作農創設特別措置法第十一條の規定は生存者に対し買收手続が開始され其後生存者が死亡した場合の規定であり本件の様に死亡者に対し手続が開始せられた場合に適用されるものでない。又被告の本案前の抗弁に対し行政処分の無効を主張する場合も亦行政行爲の取消変更を求める訴と同様行政訴訟特例法第一條に依るものであり行政廳に対する行政処分の取消及変更を求める訴も実質的には国に対し該処分を求める訴に外ならずして同法第七條の適用を除外すべき理由がないから被告の変更は適法であると述べた。(立証省略)
被告訴訟代理人は先づ原告の新訴を却下する旨の判決を求め原告の訴は行政事件訴訟特例法第二條に謂う行政処分の取消又は変更を求める訴で無いから被告を彼此変更することが出來ないのみならず、被告国は行政廳でもない。從つて原告が被告を茨城縣知事から国に変更したのは不適法であるから却下せられらるべきものであると述べ、次で本案の答弁とし原告の請求を棄却する訴訟費用は原告とする旨の判決を求め原告主張事実中原告主張の土地が仲田すての所有であり、同人が病気の爲該土地を他に貸與した事実及訴外沢山村農地委員会が原告主張日時本件土地に対し買收計画を立てた事実並茨城縣知事が原告主張の通り該土地を買收し、買收令書を原告主張の通り仲田重吉に交付した事実は認めるが其の余の事実は総て否認すると述べ、尚原告主張の通り仲田すてが本件買收計画を樹てる際既に死亡して居たとしても該買收手続は同人の承継人に対し爲されたものと解すべきであるから該手続は無効では無いから原告の本訴請求は失当であると抗弁した。(立証省略)
三、理 由
先づ原告の本件訴が適法であるか否かを判断するに行政訴訟特例法第七條に於ては原告が被告行政廳を彼此変更することを許して居るが、原告の本件訴は主張自体に徴し明らかである様に被告茨城縣知事を国と変更すると共に買收処分の無効確認を求める訴を原告等の共有権の確認を求めるものと変更したのであつて請求原因が例え行政処分の無効を原因としたとしても此の点に於ては純然たる民事訴訟と変更せられたものと謂うべきである。從つて原告は單に被告行政廳を変更したに止らず訴を変更し民事訴訟と爲したものであつて全く新な訴を提起したものであつて到底許さるべきものでは無い。然うであるならば原告の本件訴中共有権の確認を求める部分は不適法であつて却下さるべきものであること勿論であり、又行政処分の取消を求める訴は処分廳を被告とすべきもので国を被告とすべきものでないから、原告の本件訴中此の部分も亦不適法であつて却下を免れない以上の通りであつて原告の本件訴は結局全部不適法であつて却下されるべきものである。仍て民事訴訟法第八十九條に則り主文の通り判決する。
(裁判官 滝沢正 川村義比古 綿引末男)
(目録省略)