大判例

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水戸地方裁判所 昭和27年(行)35号 判決

原告 清水商事有限会社

被告 茨城県知事

一、主  文

被告が茨城県新治郡石岡町大字石岡字幸町南四九九番地の二所在木造セメント瓦葺二階建工場一棟建坪二十一坪外二階二十一坪(家屋番号幸町六九番)について買収期日を昭和二十七年三月一日と定めてした買収処分並びに売渡の相手方を清水定吉とし、売渡期日を右同日と定めてした売渡処分はいずれも無効であることを確認する。

訴訟費用は被告の負担とする。

二、事  実

原告は主文同旨の判決を求め、その請求原因として

一、訴外石岡町農業委員会は原告の所有する主文掲記の建物について訴外清水定吉の買収申請にもとずき昭和二十七年一月二十五日買収計画を樹立し縦覧期間を同日より同年二月五日までと定めて公告した。そこで原告は同年二月五日同委員会に異議を申立てたのであるが被告は昭和二十七年六月二十四日頃買収期日を同年三月一日と定めた買収令書を原告に交付して買収処分をなし、更に同月末頃売渡の時期を右同日、売渡の相手方を訴外清水定吉と定めた売渡通知書を同人に交付して売渡処分をなした。

二、然し乍ら右の買収処分はその基礎となつた買収計画に対する原告の適法な異議の申立に対し何等決定がなされないまゝに為されたものであつて当然無効であり、無効な買収処分にもとずく前記売渡処分も亦当然無効であるから、これら両処分の無効確認を求める。

と述べた。(立証省略)

被告訴訟代理人は請求棄却の判決を求め、答弁として

原告主張の一の事実は認める、同二の事実は否認する、石岡町農業委員会は原告の為した異議申立につき昭和二十七年二月十一日異議却下の議決を為し同日頃その決定書謄本を原告に送達した、従つて原告主張の買収処分にはその主張するような手続上の瑕疵はなく有効であり売渡処分も無効ではないと述べた。(立証省略)

三、理  由

原告主張の一の事実については当事者間に争がない。そこで本件買収処分がその基礎となつた買収計画に関する異議申立について何等の決定もないうちになされたものかどうかについて審究する。証人小野間一男の証言と本件弁論の全趣旨を綜合すると、原告が昭和二十七年二月五日訴外石岡町農業委員会に対してした異議申立については同委員会は同月十一日の会日において却下の決議をしその頃同決定書を作成したことが認められるけれども、右決定書謄本を原告に送付したという点については証人清水定吉の証言及び乙第一号証は前記小野間証人の証言及び原告会社代表者尋問の結果に徴し右事実を肯認する資料とすることができず、他にこれを認めるに足る証拠は存しない。凡そ地元農業委員会が異議申立について却下の決議をしたときはその決定書を作成しその謄本を申立人に対し送付しなければならないのであつて、この謄本の送付によつて決定は始めて行政処分としての効力を発生するとともに他方申立人は更に県農業委員会に訴願してこれが是正を求める機会が与えられるわけである。そして右の決定に対し訴願の提起がないか、又は訴願が提起されそれに対する裁決がなされた場合において、はじめて知事において買収処分をすることができるのであつて、異議に対する決定書の謄本が異議申立人に送達せられないうちに知事が買収処分をした場合には、その処分は、訴願の途をとざしておきながら、訴願の提起がないものとしてなされたことに帰着し、その違法なること勿論である。かゝる手続上の瑕疵は買収処分の効力を維持するには余りに重大な瑕疵であつて、無効原因となるものと解すべきである。そうすると決定書謄本の送付についてこれを認めるに足る資料のない事件においては右に記載したような理由により、前記買収処分は無効たるを免れず、同処分を前提とする本件売渡処分もまた無効であるといわねばならない。そして原告は本件建物の所有者として右買収処分並びに売渡処分の無効確認を求めるにつき法律上の利益を有すること勿論であるから、原告の本訴請求は正当としてこれを認容することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条を適用し主文の通り判決する。

(裁判官 多田貞治 広瀬友信 石崎政男)

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