大判例

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水戸地方裁判所 昭和27年(行)5号 判決

原告 藤沢友三郎

被告 国

一、主  文

茨城県知事が、別紙目録記載の土地について、昭和二十二年十二月二日を買収並びに売渡期日としてなした買収処分及び売渡処分が無効であることを確認する。

訴訟費用は被告の負担とする。

二、事  実

原告訴訟代理人は、主文同旨の判決を求めその請求原因として、

一、訴外大村農地委員会は、原告所有の別紙目録記載の土地について、昭和二十二年九月二十日自作農創設特別措置法第三条により、買収期日を同年十二月二日として買収計画を樹立し、その公告をした。茨城県知事は右買収計画にもとずき買収令書を発行し、昭和二十三年四月二日に右買収令書を原告に交付して買収処分をなした。更に大村農地委員会は前記土地につき、昭和二十四年二月十七日売渡の相手方を藤沢要売渡の期日を昭和二十二年十二月二日と定めて売渡計画を樹立し、茨城県知事は右計画にもとずき昭和二十四年十一月二十九日附売渡通知書を発行し、それを同年十二月五日、藤沢要に交付して本件土地の売渡処分をなした。

二、しかしながら右の買収処分及び売渡処分には、次のような違法があるから無効である。即ち、

(一)  原告は居村大村において自作農を営む専業農にして、別紙目録記載の土地は、原告が昭和十五年三月先代高治の隠居により、家督相続をしてその所有権を取得し、爾来原告の名をもつて直接自ら自作しているものである。ところが大村農地委員会は、原告から本件土地を所謂地主の自発解放する旨の申出があつたとして買収計画を樹立したものである。しかし原告は本件土地を自発解放する意思はなく勿論その申出をしたこともない。即ち右買収計画は何らの根拠もなくしてなされた違法な買収計画であつて、かかる重大且つ明白な瑕疵をおびた買収計画は当然無効の行政処分というべく、従つてこれに基く買収処分も違法無効である。

(二)  次に右のように本件土地の買収処分が当然無効のものであるのにかかわらずこれを適法のものとし、これにもとずいてなされた本件土地の売渡処分もまた当然無効な行政処分である。

以上の次第で本件土地の買収処分及び売渡処分は当然無効であるから、その確認を求めると述べた(立証省略)。

被告指定代理人は請求棄却の判決を求め、答弁として、原告の請求原因事実中一の事実は認める。

二の(一)の事実のうち、原告が大村に於て自作農を営む専業農であること、本件土地は原告の先代高治の隠居により原告が家督を相続しその所有権を取得したこと、爾来本件土地を原告が自作していること、大村農地委員会は原告から本件土地を自発解放する旨申出があつたとして買収計画を樹立したものであることは認めその余は否認する。即ち原告は昭和二十二年九月中本件土地についての所謂地主の自発解放の申出〔自作農創設特別措置法第三条第五項第六号(改正後の第七号)に規定する買収の申出〕をしたので、これに基き大村農地委員会は買収計画を樹立したもので、右計画には何らの違法もなく、従つてその計画に基いてなされた買収処分にも何らの違法はない。右のように買収処分は適法になされたのであるから、それが無効であることを前提とし、本件売渡処分が無効であるとする原告の主張も理由がないと述べた(立証省略)。

三、理  由

本件土地は買収計画樹立当時原告の所有にして原告が自作していたものであること及び買収並びに売渡手続の経過事実については当事者間に争がない。よつて大村農地委員会が本件土地の買収計画を樹立するにさきだち、被告主張のように原告から自発解放の申出即ち自作農創設特別措置法第三条第五項第六号(改正後の第七号)による買収申出があつたか否かについて案ずるに、証人飯島修一の証言中に原告が本件土地について買収してくれるようにとの旨の署名捺印ある書面をもつて大村農地委員会に申入れたものであるとの部分があり、証人藤沢要の証言中に同人が右書面を同委員会において見たとの部分があり、証人武井銀三郎の証言中に野手徳三郎委員の調査によると、原告が本件土地の自発解放の申出をしたことを原告自身において認めていたとのことであるとの趣旨の部分があるが、そもそも農地改革は農業生産力の発展と農村における民主的傾向の促進を図るために行われたものであるが、農地の解放は小作地についてすら多くの地主からは歓迎されなかつたものであり、まして地主が自己の保有し得べき自作地を自発解放するなどはよくよくの事情がないかぎりやらないことといつてもよいであろう。してみれば当時自作地の自発解放の申出があつたとすれば、農地委員会においては異常のこととして一応問題になつたことと思われる。しかるに証人坪松勝衛の証言によれば農地買収につき何らか異常な問題を含む案件については書記より委員会にその旨報告するのを例としたのに本件土地の買収計画を樹立するための当時の委員会において、本件土地について原告より自発解放の申出のあつたことにつき、書記から特に報告されたということもなく、委員会においても特に問題として取り上げられたこともなく、他の買収の議案と一括して議決されたことが認められる。又原告本人の供述によれば、原告は本件土地以外には田を耕作していないことでもあるし、本件土地を手放す意思がなかつたことが認められる。且つ被告は原告が書面を以て買収申出をしたと主張するのにその書面も現に存在しないことは弁論の全趣旨によつて明らかであつて、これらの事実と原告本人の供述を照し合せて考えると前記三名の証人の証言はにわかに信用しがたく、他に原告が本件土地の自発解放を申出たことを証するに足る証拠はない。

してみれば大村農地委員会は、本件土地について原告が自発解放を申し出た事実がないのにその申出があつたものとして買収計画を樹てたものであり、結局何らの法的根拠もなくして買収計画を樹立したものといわねばならない。かかる違法は重大且つ明白なものであるから、本件土地の買収計画は当然無効にして、ひいてはそれにもとずく買収処分並びに買収処分の有効なることを前提としてなされた売渡処分もまた無効の処分というべきである。従つてそれが無効であることの確認を求める原告の請求はこれを正当として認容すべきものとし、訴訟費用の負担につき、民事訴訟法第八十九条を適用し、主文のとおり判決する。

(裁判官 多田貞治 森松万英 高井清次)

(目録省略)

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