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水戸地方裁判所 昭和40年(行ウ)3号 判決 1966年6月29日

原告 坂入徳治 外七名

被告 下館市長

主文

原告らの本件訴をいずれも却下する。

訴訟費用は原告らの負担とする。

事実

第一当事者双方の求める裁判

原告ら訴訟代理人は、第一次的請求として「被告が、昭和四〇年二月二五日下館市大字小川字前原一、四一四番の一(別紙図面中(イ)および(ニ)の点)を起点とし、同所同字一、四三四番の三(同図面中(ロ)および(ハ)の点)を終点とする幅員三・六米、延長二三五米の市道下館三〇二号線(同図面中、点線で囲まれた部分)を、同所同字一、四一四番の一(同図面中(ニ)および(ホ)の点)を起点とし、同所同字一、四三四番の三(同図面中(ハ)および(ヘ)の点)を終点とする幅員五・四米、延長五二八米の路線(同図面中斜線部分)に変更した市道路線変更処分および市道区域決定処分が無効であることを確認する。」旨の判決を、予備的請求として「被告が昭和四〇年二月二五日にした右市道路線変更処分および市道区域決定処分は、これを取消す。」との判決をそれぞれ求め、

被告訴訟代理人は、第一次的に主文同旨の判決を、第二次的に本案につき「原告らの請求を棄却する、訴訟費用は原告らの負担とする。」との判決を求めた。

第二当事者双方の事実上および法律上の主張

一  原告ら訴訟代理人は請求の原因および被告の本案前の主張について次のとおり陳述した。

(請求の原因)

(一) 前記第一記載の下館市道三〇二号線(以下本件旧路線という。)は、明治二二年に公道として開設されたが、それ以前より数百年にわたり所謂塩付街道として利用され、鬼怒川を舟玉、久保田河岸まで運搬された物資を久下田、真岡、益子方面まで陸路運搬する唯一の道路であり、かつ小川、中小川、伊讃美各部落の住民は、本件通路を含む周辺一帯の伊讃美ケ原と称された山林、原野において、自給のため必要な堆肥の原料、家屋補修用材、自家用然料、家畜用飼料等を採収し、農閑期には放牧を行う等入会的権利を有してきたが、本件旧路線はその利用管理のために必要欠くべからざる通路として、小川地区住民である原告や原告の先代、先々代において慣行として継続的に通行の便に供してきた。(原告関一郎の家は元祿の頃より小川地区内において代々農業を営んでいるものであり、同坂入徳治は、先代文治が明治初年頃肩書現住地に住居を定めて農業を営み、同原告もそれを引継いで現在に至つているものであり、同大谷忠助は、先代音松が大正三年伊讃美地区内の通称五軒やと称された場所に住居を定め農業を営んだが、大正九年大谷原に移住し現在に至つているものであり、同行本源太郎は、先代勢吉郎が昭和一八年に日立化成工業株式会社の正門東方の約四町歩の土地を購入して開墾し畑としたが、翌昭和一九年その土地が軍需工場の敷地として強制収用されたので肩書現住地に移転し現在に至つているものであり、同横山豊治は、先代が大正一三年小川地区内に住居を定め農業を営み、同原告は戦後砂利採取を業として本件旧路線を利用するかたわら自費で砂利、くり石等を敷くなどその補修に努めてきたものである。)したがつて、小川地区住民である原告らは本件旧路線につき、地方自治法第二三八条の六による旧慣使用権を有する。

(二) また、本件旧路線は公道として開設されてからは、前記の各部落から国鉄川島駅および川島市街地に通じる唯一の道路として附近住民の通行の便に供され、最近まで一日に二百数十名の通学児童、約三〇〇名の通勤者および約一、五〇〇名の一般通行者が通行している状況にあつた。小川地区住民である原告らも(前記の原告らの他、原告竹内三郎、同竹内クニ、同真中美智子は、昭和三二年四月頃より肩書地に居住しているものである。)、国鉄川島駅を乗降駅としており、通勤および市街地への通行のために本件旧路線を利用してきたものであり、したがつて原告らは、他の住民が本件旧路線に対して有する利益ないし自由を侵害しない程度において、自己の生活上必須の行動を自由に行いうべき道路使用の自由権を有する(最高裁判所第一小法廷昭和三九年一月一六日判決参照)。

(三) ところで被告は、昭和四〇年二月二四日下館市議会の議決を経て、同月二五日市道である本件旧路線に関し、路線変更処分および市道区域決定処分をし(別紙図面に示す斜線部分の路線に変更した。)、同日その旨公示をしたが、右の各処分は次の各理由により瑕疵があるから、当然無効もしくは取消さるべきものである。

1 本件旧路線を閉鎖することは原告らの前記旧慣による使用権を変更ないし廃止するものであるから、そのためには地方自治法に規定する市議会の議決を要するところ、本件においては右の適法な手続が何らとられていない。

2 路線変更処分は旧路線の廃止と新路線の認定とを含むものであり、公共の福祉の増進および交通の発達への寄与の観点からその両路線の間に必要から十分な代替性を保有することが要件であるところ、新路線は本件旧路線が直線であるのに比して「コ」の字型に変形され、直角に曲る角が四ケ所できることになり、また距離も約三〇〇米延長されるのであるから、通行上、不便かつ危険となることは明瞭であつて、代替性の要件を本質的に欠いているといわねばならない。

3 仮にそうでないとしても、本件路線変更処分は裁量権の範囲を著しく逸脱した違法がある。

すなわち、本件旧路線の東側は日立化成工業株式会社の使用する下館工場敷地であり、西側は日立土地株式会社所有の空地であつて、右日立化成はかねてより右空地を自己の工場敷地と合せて一区画として有効に利用するため、障害となる本件旧路線を早期に廃止するよう被告および下館市議会議員の一部に働きかけた結果、被告は市財源の確保を名目として本件路線変更処分をしたものである。したがつてこの処分は一私企業の便益のみを考え、地元住民の権利を侵害し、その福祉を無視するもので、憲法ないしその精神から導き出される住民福祉平等の原則および信義則等に反するとともに、公共の福祉の増進を目指す地方自治法、道路法の内在目的にも著しく反することになり、裁量権の限界を逸脱したものといわねばならない。

(被告の本案前の主張について)

(一) 被告の本案前の主張のうち、被告と日立化成工業株式会社との間において、本件旧道路敷ともと同会社所有の新道路敷との交換手続が完了している事実は認めるが、その余の法律上の主張は争う。

(二)1 原告らは前記主張のとおり、本件旧路線につき旧慣による使用権を有していたのであるから、違法な本件各処分によりその権利を侵害されたものとしてその無効確認または取消を求める法律上の利益を有することは当然である。

2 また原告らは道路使用の自由権を有するところ、この自由権は単に地方自治体が公道を開設していることを前提とする反射的利益にとどまらず、道路法が交通の発達に寄与し公共の福祉を増進することを目的とし(同法第一条)、路線の認定、廃止について当該市町村の議決を経なければならない等の要件を詳細に規定し(同法第一〇条)、また、道路管理者に対し、一般交通に支障を及ぼさないよう常時道路を保全すべき義務を課しており(同法第四二条)、さらには私人に道路の占有使用を許可する規定(同法第三二条以下)、受益者負担、道路占有に関する工事費用負担の各規定(同法第六一条、六二条)等が存する一方、地方自治法第一〇条第二項によれば、住民は法律の定めるところによりその属する普通地方公共団体の役務の提供をひとしく受ける権利を有すると規定されているのであるから、これら規定の趣旨から考えると、道路法は道路利用者の個人的利益を保護する意図で行政権の行使を制約していることは明らかであり、したがつて右道路使用の自由権は道路法により保護される法的利益であるといわねばならない。かかる法定利益の侵害に対して関係人たる原告らに原告適格が認められることは、第三者に対する新規の浴場営業許可処分につき、公衆浴場法並びにこれに基く条例等の違反を理由として、既設公衆浴場経営者が無効または取消を求めた訴に対し、その原告適格を承認した最高裁判所第二小法廷昭和三七年一月一九日判決(民集一六巻一号五七頁)に徴しても、明らかである。

3 仮に道路使用の自由権が単なる事実上の反射的利益に過ぎないとしても、本件のような瑕疵ある行政処分に対しその取消ないし無効確認を求め得る者を、当該廃止路線につき道路法による占有使用権または地方自治法による旧慣使用権を有する者に限るとするのは、道路法の前記内在目的および憲法またはその精神から導き出される比例原則、平等原則並びに法秩序一般から導き出される信義則等に反するのみならず、被告訴訟の目的が一面において行政の法適合性を保障することにあることから考えても、狭きに失するといわざるを得ない。すなわち瑕疵ある当該路線変更処分につき直接の利害関係を有するものは、それが事実上の利益に過ぎないとしても、その取消もしくは無効確認を求めるにつき原告適格を有するものとして広くその訴を許容すべきである(昭和三六年三月一五日東京高等裁判所廃道敷処分取消等請求控訴事件判決―行政事件裁判例集一二巻三号六〇四頁―および前掲最高裁判所第二小法廷判決中の池田克裁判官の補足意見参照)。

二  被告訴訟代理人は、本案前の主張および原告らの請求の原因に対する答弁として、次のとおり陳述した。

(本案前の主張)

(一) 路線変更処分は行政訴訟の対象とはなり得ない。すなわち、本件訴訟において対負とされている市道路線変更処分および市道区域決定処分のうち、前者は市議会の議決に基き市長が廃止路線およびこれに代る認定路線についてそれぞれその路線名、起点、終点、経過地等を公示することによつて成立するものであるが、その効果は爾後市により道路区域の決定、その公示、道路造成、新道路供用開始、旧道路供用廃止の公示がなされ得ることとなるにとどまり、路線変更処分自体は特定の主体の権利義務に何らの影響を及ぼすこともないから、その処分の無効確認もしくは取消を求める訴訟は裁判所法第三条に所謂法律上の争訟に該当せず、したがつて抗告訴訟、当事者訴訟としては不適法であり、また民衆訴訟としてはこれを許容する法律上の特別の規定は存しないから、いずれにしても不適法といわざるを得ない。

(二) 原告らは本件請求を求めるにつき法律上の利益を有しないから、原告適格を欠くものである。すなわち本件訴訟は抗告訴訟として提起されているものと解すべきところ、行政事件訴訟法第九条、第三六条によれば、抗告訴訟の原告適格として法律上の利益を有することが要求されていることは明らかであるから、原告らに原告適格ありというためには、本件各処分が無効であることが確認されまたは取消されることによつて、原告らの法律上の地位が明確化され、原告らの個人的権利その他法律上の利益が保護される場合であることが必須の要件である。単なる事実上の利益についても原告適格を認める理論があるとすれば、それは抗告訴訟における行政の適法性維持機能を前提としなければ成り立ち得ないのであつて、権利保護機能を前提とする行政事件訴訟法第九条、第三六条の明文に反することとなるから、到底採り得ないものといわねばならない。

1 先ず原告らは、本件旧路線が公道として開設される以前からその道路敷を継続して使用してきたから、地方自治法第二三八条の六にいう旧慣による使用権を有すると主張するが、この使用権限は特定の財産について成立する特定の権利であり(公道敷となる以前に使用権を取得したとする以上、私法上の使用権限―たとえば地役権―と思われる。)、かような権利は本件旧路線が道路敷でなくなることによつてその権利に対する制約が失われることはあつても、さらに制約が加わつたりまたは権利が消滅したりすることはないはずである。すなわち、本件市道路線変更処分、市道区域決定処分ないしそれに続く処分によつて本件旧路線が公道敷でなくなることは、当該土地が一般の交通の用に供されなくなるという効果を生ずるにとどまり、当該土地に存した所有権、抵当権、用益権等の私権を何ら侵害するものではないから、仮に原告らが本件旧道路敷につき何らかの旧慣使用権を有していたとしてもそれは何らの影響を受けるものではなく、したがつて本件各処分の効力を争う法律上の利益はない。

2 次に原告ら主張の道路使用の自由権についてみると、それは特定人の特定物件に対する特定内容の権利とは異り、当該土地が道路として一般通行の用に供せられているという事実を前提とし、何人も一般公衆の一員として当該公道敷の通行を妨げられないということから、その通行の自由が妨害されることにより日常生活に支障をきたす場合に、その妨害の排除を要求できる権利であるにとどまり、いわば人格権の一部としての自由に過ぎず、特定人が当該土地を道路敷として通行の用に供せしむることを要求しうる排他的権利ではない。したがつて、本件旧路線の道路の供用が廃止されることになつたとしても、権利が侵害されたことにならないことはもちろんのこと、通行の自由権が特定地を対象として成立するものでない以上、その対象は“公道敷一般”と解せざるを得ないから、かかる“公道敷一般”について成立する通行の自由権なるものが、現実の公道敷の移動によつて侵害されたり不明確化されたりする筋合のものでないことも、また明らかなことである。

(三) ところで道路の供用が廃止されると、道路法第九条第一、二項の規定により所定の期間当該物件を従前の道路管理者が管理し、その期間経過後にその物件を所有者に返還する等の処分行為が行われ、道路閉鎖という事実行為が行われることとなるが、これらの行為は道路管理者が行う公権力の行使ではなく、普通財産の所有者または管理者としての私法上の行為に過ぎない。本件旧路線についても所定の管理期間は経過し、被告と日立化成工業株式会社との間において本件旧道路敷ともと同会社所有の新道路敷との交換手続が完了している状況にある。道路供用廃止とは、先に述べたとおり、一般交通の用に供することを廃止するものであり、当該物件につき権原あるものがその権原に基いて通行する権利は何ら影響をうけていないのであるから、原告らにその権原ありとするならば、通行妨害行為としての閉鎖行為の排除をこそ求むべきであつて、本件路線変更処分および区域決定処分の無効確認ないし取消を求める法律上の利益はない。

(請求の原因に対する答弁)

(一) 請求原因第(一)項の旧慣使用権の主張は争う。

(二) 同第(二)項の事実中、本件旧路線が小川、中小川、伊讃美の各部落から国鉄川島駅および川島市街地に通じるもので、公道となつて以来附近住民の通行の便に供されてきたことは認めるが、道路使用自由権の主張は争う。

(三) 同第(三)項の事実中、冒頭の事実すなわち、昭和四〇年二月二四日原告ら主張の市道路線変更の議決が下館市議会においてなされ、被告が翌二五日同議決に基き原告ら主張のとおりの市道路線変更処分および市道区域決定処分をし、その旨告示したことは認める。同項1、2の各主張は争う。同項3の事実中、日立化成工業株式会社が本件旧路線にまたがる工場を建設する計画をたて、本件路線変更を請願した事実は認めるが、その余の主張は争う。

第三証拠関係<省略>

理由

一  本件旧路線は小川、中小川、伊讃美の各部落から国鉄川島駅および川島市街地に通じるもので、公道として開設されて以来、附近住民の通行の便に供されてきたところ、昭和四〇年二月二四日下館市議会において原告ら主張の市道路線変更の議決が行われ、被告が同月二五日同議決に基き原告ら主張のとおりの市道路線変更処分および市道区域決定処分をし、同日その旨の公示をしたことは当事者間に争いがない。

二  はじめに原告適格の有無について判断する。

(一)  原告らは先ず本件旧路線につき旧慣使用権を有すると主張するが、地方自治法二三八条の六に規定されている旧来の慣行による使用権とは、当該市町村の公有財産につき、明治二二年の市町村制施行以前より当該市町村の特定の住民または特定の団体等限られた範囲の人々の間に一定内容の使用が継続的に平穏かつ公然と行われ、それが正当な使用として一般に承認されるに至つた場合には、市町村制施行以後においても既得権として尊重し保護しようとするものであつて、その市町村の住民であることにより認められる一種の公法上の権利としての性質を有するものと解すべきところ、本件市道路線変更処分および市道区域決定処分並びにこれに続く道路供用廃止等の処分によつては、本件旧道路敷は単に道路として一般通行の用に供されなくなつたというにとどまり、公有財産としての性格は依然として失われていないのであるから、旧来の慣行によりこれを使用するものの権利はこれらの処分によりいささかも侵害されるものではなく、したがつて原告らに本件各処分の効力を争う法律上の利益はないというべきである。

もつとも、これらの処分により旧道路敷は普通財産として私権の対象となる結果、売却交換等の私法上の行為により公有財産としての性格が失われた場合には旧慣使用権も消滅することにならざるを得ず、その段階に至つてはじめて権利の侵害が問題となるのであるから、原告らに、その主張のとおりの旧慣使用権があるとするならば、地方自治法の規定によりそれを変更ないし廃止するのに必要とされる市議会の議決を経ていないことを理由に、被告の私法上の処分行為(本件においても被告と日立化成工業株式会社の間に本件旧道路敷の交換手続が完了している事実は当事者間に争いがない。)自体の効力を争い得るかどうかは自ら別の問題に属する。

(なお附言すれば、原告らの主張によつても、原告関一郎、同坂入徳治を除くその余の原告らは市町村制が施行された後に小川地区住民となつたものであることは明らかであるから、本件旧路線につき旧慣使用権を取得するいわれはなく、また原告関、同坂入についても、本件旧路線は明治二二年に公道として開設される以前より、所謂塩付街道と称されて物資の運搬等のために一般の通行の用に供せられてきたというのであるから、仮に小川地区住民である右原告らおよび原告ら先代、先々代が伊讃美ケ原における採草放牧のため必要な通路として継続的に使用してきたとしても、通行を内容とする使用権である限りは、特定の住民にのみ特別な利益として承認された慣行とはいい得ないから、本件の場合旧慣使用権があつたと認定することは、主張自体から考えても甚だ困難といわねばならない。

(二)  原告らは次に、本件旧路線につき道路使用の自由権を有し、かつそれは道路法により保護さるべき法的利益であると主張する。市道は一般交通の用に供することを目的とした公共用物であるから、道路として存在する限り、原告らもその主張のとおり他人の共同使用を妨げない限度において、自己の生活上必要な行動を自由に行い得べき道路使用の自由権を有することはもとよりのことであるが、それは道路が一般通行の用に供された結果の反射的利益に過ぎず、個人も享有する一般自由権の効果であつて、原告ら特定の個人のために特別の使用権が設定されているわけではない。またそれが反射的利益にとどまらず道路法により保護される個人的な法的利益であるとする根拠も見出し得ないから、被告が本件旧路線を廃止した結果、原告らの自由使用が不可能になつたとしても、それをもつて自己の権利もしくは法的利益が侵害されたとして本件各処分の違法を主張することはできないといわねばならない。(原告ら引用の最高裁判所第二小法廷判決は法律により保護さるべき特定の個人のための法的利益の侵害に関するもので、本件の場合には適切な引用とはいえない。)

(三)  さらに原告らは、道路使用の自由権が事実上の反射的利益に過ぎないとしても行政の適法性維持機能等の観点から本件訴の利益を認めるべきであると主張するが、原告らの主張は独自の見解であつて、このように権利もしくは法的利益の侵害を前提とせずに行政処分の違法を主張しその無効確認等を求める訴は抗告訴訟としては許されず、民衆訴訟として法律の特別の規定がある場合に例外的に認められるものであるところ、路線変更処分または路線区域決定処分に対しこのような訴を認めている特別の規定は存在しないから、この点からしても原告らは本件無効確認および取消を訴求するにつき原告適格を欠くものといわねばならない。〔原告ら引用の東京高等裁判所判決の事案は極めて特異な事例に属し、自己の住家の唯一の出入口が廃道処分によつて塞がれ外界との交通が途絶する結果に立至つたという生活上の利益の直接的かつ重大な侵害に関するものであるから、本件旧路線がほぼ直線であつたのに比し新路線は「コ」の字型をなしかつ距離も約三〇〇米延長される結果、原告らが生活上の不便を蒙ることは否定し得ないものの、なお旧路線の小川部落と川島市街地とを連絡する機能は新路線によつても維持されていると認められる(この事実は原本の存在および成立に争いない甲第七号証の当庁昭和四〇年(行ウ)第二号市道路線変更処分停止事件の検証調書写により認められる。)本件の場合には適切な引用とはいい得ない。〕

三  以上の理由により、原告らの本訴請求はいずれも不適法であるから本件訴を却下することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条第九三条第一項本文を適用して主文のとおり判決する。

(裁判所 太田夏生 石崎政男 佐野精孝)

(別紙省略)

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