水戸地方裁判所 昭和47年(ワ)105号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔編註〕 本誌二六八号一一六頁参照。
〔判決理由〕被告等は、原告の本件求償権の行使は信義則に違反し権利の濫用である旨主張するので、先づ、この点について判断するに証人田山重雄、神原道俊及び被告本人美留町清の各供述を総合すると、原告は石炭、石油類、プロパンガスなどの販売、石油類の輸送等を目的とし、その業務に供するため加害車を含めてタンクローリー車六台、小型普通トラック五台位、乗用車二台位を所有しているが、加害車については対人保険以外の保険に加入していなかつたこと、被告清は原告会社に採用されてから一カ月程タンクローリー車の助手をした後、小型貨物自動車による石炭やプロパンガスの配達業務に従事し、タンクローリー車の運転手が欠勤した場合等に臨時にタンクローリー車を運転したに止り、本件加害者の運転も臨時的なものであつて給与も一カ月金四万円位であつた事実を認めことができる。
ところで、原告は、前示業務により収益を収めているものというべきであるが、他面これに使用する自動車の事故発生の危険性はつねに随伴するのであることに着目するなら、右の如き事故によつて生じた損害のすべてを従業員の負担において填補するが如きことは、報償責任、企業責任の立場に立つかどうかは別としても、これを是認し得ないこと、多く説明を要しないところであろう。さればこそ、企業経営者は、かような事故発生の危険に備えて自動車損害賠償責任保険(強制保険)のみならずその他の損害保険(任意保険)に加入する等して損害の分散の措置を講ずべきことは、現代の社会状態において、企業経営者のまさになすべきところであるといわなければならない。
そこで、既に認定した被告清の本件事故の態様、過失の程度加害車に乗務するに至つた経緯、給与等諸般の事情を綜合して勘案すると、原告の被告等に対する求償権の行使は、四分の一すなわち金一万九、九〇〇円を超える限度においては信義則に反し権利の濫用として許されないものと認めるを相当とするから、被告等の抗弁は、右の限度において理由がある (長久保武)