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水戸地方裁判所 昭和58年(行ク)1号 決定

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

【判旨】

一申立人の申立の趣旨及びその理由は別紙のとおりであり、これに対する被申立人の意見は、「本件解任処分は、波崎町町議会議長により解任請求があつたので、農業委員会等に関する法律一七条に基づき行なつたものであり、正当な処分であるから、申立人の主張は容認できない。」というものである。

二よつて判断するに、本件疎明資料によれば、次の各事実が認められる。

1 申立人は農業を営むとともに、昭和五四年四月に波崎町町議会議員に初当選し、昭和五八年四月に再選されて、現在同町町議会議員の地位にある。

2 波崎町農業委員会委員の定数は二七名であり、そのうち二〇名は公選の委員であり、残り七名のうちの五名は学識経験者として同町議会の推薦に基づき町長により選任されていたところ、同町では広く一般から学識経験者五人を推薦するのではなく、同町町議会議員の中から推薦されることとなつていた。

3 申立人は昭和五六年八月三日に同町町議会において右のような学識経験者として農業委員会委員に推薦され、同月五日選任された。

4 昭和五八年七月五日、同町議会において、申立人に対する農業委員会委員解任決議が成立し、これを受けて同町議会議長からの解任請求があつたため、同月二六日付で被申立人は申立人に対し本件解任処分をした。

5 申立人の農業委員会委員としての任期は昭和五九年八月までであり、任期満了まで一年足らずの期間を残しているにすぎない。

6 農業委員会委員の地位は非常勤であり、その報酬は月約三万二〇〇〇円である。

三そこで、右の事実関係の下において本件執行停止の必要性につき案ずるに、行政事件訴訟法二五条二項によれば、執行停止は、処分あるいは処分の執行等により生ずる回復困難な損害を避けるため緊急の必要があるときに限りなしうるものとされているところ、申立人が農業委員会委員としてその職務執行ができないということ自体は処分あるいは処分の執行等を受けることの直接の結果であつて、前記法条にいう回復困難な損害にはあたらないものと解さざるをえないうえ、前認定のような事情を勘案すれば、申立人が農業委員会委員を解任されたことにより、他に申立人に回復困難な損害が生じたものと認めることはできない。

また、申立人は、申立人の後任者の選任がなされることによつて復職が不可能もしくは著しく困難となることをもつて回復困難な損害である旨主張するのであるが、後任者の選任の有無にかかわらず、本案訴訟において勝訴判決を得れば、法的にその地位を回復するものであることはいうまでもなく、したがつて後任者の選任がなされるか否かが、直ちに回復困難な損害の有無に影響を及ぼすものとは解しがたい。

(龍前三郎 大橋寛明 大澤廣)

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