水戸地方裁判所下妻支部 事件番号不詳 判決
主文
被告人田中好正を懲役壱年六月及び罰金弍万円に処する。
被告人初瀬川一男を懲役拾月及び罰金弍万円に処する。
被告人野谷重雄を懲役壱年に処する。
被告人酒井豊を懲役壱年に処する。
被告人松浦一明を懲役拾月に処する。
但し被告人初瀬川一男同酒井豊及び同松浦一明に対し何れも本裁判が確定した日から参年間右各懲役刑の執行を猶予する。
被告人田中好正及び同初瀬川一男が右罰金を完納することができないときは五拾円を壱日に換算した期間当該被告人を労役場に留置する。
訴訟費用中証人脇山光博及び同染谷秋之助に支給した分は被告人田中好正及び同初瀬川一男の連帯負担とし其の余は被告人等五名の連帯負担とする。
理由
第一、被告人田中好正及び同野谷重雄は米山六三郎等と共謀して昭和二十二年四月九日川崎市所在浜川崎駅構内で領得の意思で荷送人昭和電工株式会社荷受人宮城県農業会硫酸アンモニヤ三百十九叺(一叺四十五瓩入)積込同県矢本駅行の貨車ワム第九〇〇八号の車票を密かに差換え情を知らない当該鉄道係員をしてこれを山形県羽前山〓駅に転送させ以て該硫酸アンモニヤ三百十九叺を窃取し
第二、被告人田中好正、同酒井豊、同野谷重雄及び同初瀬川一男は米山某等と共謀して同年五月十三日前記浜川崎駅構内で領得の意思で荷送人同会社荷受人新潟県農業会硫酸アンモニヤ三百十九叺(一叺四十五瓩入)積込同県六分駅行の貨車スム第三二〇二号の車票を窃かに差換え情を知らない当該鉄道係員をしてこれを茨城県三妻駅に転送させ以て該硫酸アンモニヤ三百十九叺を窃取し
第三、被告人田中好正及び同初瀬川一男は法定の除外事由がないのに拘らず右米山某と共謀して同年同月十六日同県結城郡三妻村大字中妻二四五〇番地染谷秋之助方で同人に対し同硫酸アンモニヤ三百十九叺を其の統制額から参拾四万千九百六拾壱円六拾弍銭超過した代金参拾八万弍千八百円で販売し
第四、(一)被告人酒井豊は右米山某等と共謀して同年八月二十四日同市所在扇町駅構内で領得の意思で荷送人同会社荷受人肥料配給公団埼玉支所、硫酸アンモニヤ三百十九叺(一叺四十五瓩入)積込埼玉県川越市駅行の貨車スム第一一九八号及び荷送人同会社荷受人同公団栃木支所硫酸アンモニヤ二百十三叺(一叺四十五瓩入)積込栃木県黒羽駅行貨車ツム第三四二四号の各車票を窃かに差換え情を知らない当該鉄道係員をして前者はこれを茨木県水海道駅に後者はこれを同県三妻駅に夫々転送させ以て該硫酸アンモニヤ合計五百三十二叺を窃取し
(二)被告人松浦一明は同年七月三十日頃前記扇町駅附近で右米山に同会社発送硫酸アンモニヤ積込貨車のある場所を教示し且つ同年八月二十三日頃神奈川県〓子町で同人に右差換に要する車票用紙五枚を交付し以て同人等の右(一)の犯行を容易ならしめてこれを幇助し
たもので被告人田中好正同野谷重雄及同酒井豊の右窃盗の各所為は夫々犯意継続に係るものである。
(証拠説明省略)
法律に照すと被告人田中好正及同初瀬川一男の判示所為中各窃盗の点は刑法第二百三十五条第六十条第五十五条に価格違反の点は物価統制令第三十三条第三条第七条同令施行規則第八条臨時肥料配給統制法第二条肥料配給統制規則第十一条、昭和二十一年二月八日農林省告示第三十一号同年三月三十日農林省告示第七十八号刑法第六十条に夫々該当するから後者につき其の所定刑中罰金刑を選択し以上は刑法第四十五条前段の併合罪であるから同法第四十八条第一項に従い被告人野谷重雄及び同酒井豊の判示各所為は夫々刑法第二百三十五条第六十条第五十五条に該当し被告人松浦一明の判示所為は刑法第二百三十五条第六十二条第一項に該当するから同法第六十三条第六十八条第三号に則り法律上の減軽を為し各其の刑期罰金額の範囲内で被告人田中好正を懲役壱年六月及び罰金弍万円に被告人初瀬川一男を懲役拾月及び罰金弍万円に被告人野谷重雄及び同酒井豊を夫々懲役壱年に被告人松浦一明を懲役拾月に夫々処し但し被告人初瀬川一男同酒井豊及び同松浦一明に対しては各其の犯情刑の執行を猶予するのを相当と認め同法第二十五条に則り何れも本裁判が確定した日から参年間右各懲役刑の執行を猶予し被告人田中好正及び同初瀬川一男が右罰金を完納することができないときは同法第十八条に依り五拾円を一日に換算した期間当該被告人を労役場に留置し訴訟費用中証人脇山光博及び染谷秋之助に支給した分は刑事訴訟法第二百三十七条第一項第二百三十八条に従い被告人田中好正及び同初瀬川一男をして其の余は右法条に従い被告人等五名をして各連帯してこれを負担せしむべきものとする。
仍て主文の通り判決する。(昭和二二年一一月五日水戸地方裁判所下妻支部)