水戸地方裁判所日立支部 事件番号不詳 判決
主文
被告は原告に対し金九万九千円及び内金九万円に対し昭和三十三年八月一日より完済に至るまで年六分の割合による金員、内金九千円に対し昭和三十四年八月十日より完済に至るまで年二割の割合による金員並に金二万九千円に対する昭和三十三年十月一日より昭和三十四年八月九日まで年二割の割合による金員、の各支払をせよ。
原告のその余の請求を棄却する。
訴訟費用はこれを二分しその一を原告の負担としその余を被告の負担とする。
この判決は第一項に限り仮に執行することができる。
事実
原告訴訟代理人は被告は原告に対し金二十五万九千円及び内金二十三万円に対し昭和三十三年八月一日より右完済に至るまで年六分の割合による金員残金二万九千円に対し昭和三十三年十月一日より右完済に至るまで年二割の割合による金員の支払をせよとの判決並に仮執行の宣言を求め、其の請求の原因として「(一)被告は昭和三十三年七月一日北茨城市大津町北町に於て左記約束手形一通を原告宛振出した。金額二十五万円支払期日昭和三十三年七月三十一日支払地北茨城市大津町支払場所同市同町常陽銀行大津支店 (二)原告は支払期日に支払場所に於て右手形を呈示し支払を求めたが取引がないとの理由で拒絶されたが其後昭和三十四年八月十日金二万円の一部支払があつたが其余の支払をしない (三)原告は被告に対し昭和三十三年十月一日金二万九千円を利息年二割弁済期同年十二月二日の約で貸与したが弁済期を徒過するも支払をしない。 (四)依て右二口合計金二十五万九千円及び之に対する利息損害金等につき本訴に及んだ」と述べ尚お本件約束手形は同日金二十五万円の消費貸借について振出し交付されたものであつて被告が主張する当庁昭和三六年(ワ)第一号貸金請求訴訟事件となつた金二十五万円の貸金とは別個の債権であると主張し、但し昭和三六年(ワ)第一号貸金請求事件において金二十一万円につき消費貸借がありその内金十万円の内入弁済があつた旨の判決が確定したこと及びその残金十一万円が猶存在することは認める。
立証(省略)
被告訴訟代理人は原告の請求を棄却するとの判決を求め、その答弁として「請求原因第三項の主張の金員貸借関係については争わない。しかし右二万九千円については昭和三十四年八月十日金二万円の内入弁済をしている。その他の請求原因は全部否認する」と述べ尚お仮に被告が原告に対し本件約束手形(甲第一号証)を振出し交付したとしても振出す原因関係がなかつたものである。本件約束手形は当庁昭和三六年(ワ)第一号貸金請求訴訟事件となつた金二十五万円について昭和三十三年七月一日被告が原告に借入方を申込んだ際原告は手元不如意のため、他から金策するのに必要だからと言うことで作成された所謂見せ手形なるもので虚偽のものである。右貸金請求事件の判決においては金二十一万円につき金銭消費貸借がありその内金十万円の一部弁済があつたことが夫々認められたが猶その残金十一万円については未だ支払つていないと陳述した。
立証(省略)
理由
被告は本件約束手形金債権は当庁昭和三六年(ワ)第一号貸金事件の貸金債権の「見せ手形」で虚偽のものである旨主張し、原告は別個の金銭消費貸借につき振出された約束手形であると争うにつき判断するに、
真正に成立したものと推定される甲第一号証、鑑定人沼田繁雄同中田美代志の各鑑定結果、証人緑川勇弥被告本人尋問の結果並に弁論の全趣旨を綜合すると、被告が昭和三十三年七月一日原告より金二十五万円を借受ける際(昭和三六年(ワ)第一号貸金請求事件の訴訟物)該金員を原告は他より金融をして来るのに手形を見せなければならないからということで右借受金のため同日原告方で同道した訴外緑川勇弥と共に額面金二十五万円の約束手形(甲第一号証の約束手形)に両名が署名指印して作成し原告に交付したものであることが肯認できる。
原告本人尋問の供述中昭和三六年(ワ)第一号貸金事件の貸金とは別に同月四日本件約束手形により金二十五万円を貸与した旨を述べておるけれども右約束手形は七月一日附貸付の金二十五万円に引き続いて行なわれたとするのに何等これについて利息の定めがなく、又該手形には印紙も貼用されておらず、振出日は七月一日となつておつて、前掲証拠と対比するとき、右供述はにわかに措信することができず、又他に右認定を覆し原告の主張を認めるに足る証拠はない。
次で被告は本件約束手形は、見せ手形で虚偽のものである旨主張するけれども、原告が七月一日附貸金二十五万円を他より融資を受けるために振出されたもので、その支払確保の為めのものであるから右消費貸借債務の存在する限度においては有効に手形債務は成立しているものと解される。而して右貸付金については昭和三六年(ワ)第一号事件の確定判決により金二十一万円について金銭消費貸借が成立し、そのうち金十万円の一部弁済が認められた。そして残金十一万円が猶存在することは当事者間に争いがない。
次で原告主張の金二万九千円の金銭消費貸借の成立については当事者間に争いがない。而して昭和三十四年八月十日金二万円の一部弁済(乙第一号証)は本件約束手形債務に対してなされたかどうかにつき按ずるに、真正に成立したものと推定される甲第二号証成立に争いがない乙第一号証被告本人尋問の結果並に弁論の全趣旨を綜合すると、右金二万円の一部弁済は原告主張の金二万九千円の貸金債務(甲第二号証)に充当したものと認められる。蓋し昭和三六年(ワ)第一号事件の貸金債務に充当されなかつたことは明らかなところであり、本件約束手形債務については被告においてその存在を争うておるもので、且つ本件の場合弁済の充当権は先ず第一次に債務者に存することを併せ考えると当時昭和三十三年十二月二日の期限を経過しておる右二万九千円の債務に支払われたものと解される。原告本人尋問中原告の主張に副う旨の供述をしておるけれども、前掲証拠に照し措信することができないし又他に之を認めるに足る証拠はない。さすれば原告は本件約束手形金債権につき金二万円を控訴した金二十三万円を請求しおるところ前叙のとおり消費貸借は金二十一万円について成立し、そのうち金十万円の一部弁済があり尚お金十一万の債務が残存しておるので(このことは当事者間に争いがない)このうち金九万円の債務の存在する限度において原告の本件約束手形金請求はその理由があると謂わねばならない。
次で金二万九千円の貸金請求については、昭和三十四年八月十日金二万円の一部弁済があつたので、残金九千円の限度においてのみその理由がある。
而して被告は約束手形金九万円に対し昭和三十三年八月一日より右完済に至るまで年六分の割合による法定利息並に借受金二万九千円に対し昭和三十三年十月一日より昭和三十四年八月九日まで年二割の割合及び金九千円に対し昭和三十四年八月十日より右完済に至るまで年二割の割合による各利息損害金を支払う義務がある。仍て原告の本訴請求は右認定の限度において正当としてこれを認容し、その余は失当として棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第九十二条本文仮執行の宣言につき同法第百九十六条を各適用して主文のとおり判決する。