水戸家庭裁判所 昭和38年(少)1048号 1963年10月28日
主文
少年を中等少年院に送致する。
押収にかかるクリ小刀一丁(昭和三八年押第一六三号の一)はこれを没取する。
理由
(罪となるべき事実)
少年はM、Hと共謀の上婦女を姦淫しようと考え、昭和三八年○月○○日午後一〇時過頃、水戸市××町○○区○○交通バス停留所の十字路附近において、その機会を窺いながら過すうち、同日午後一〇時四〇分頃たまたまバスを降りて右停留所の十字路を○○大学正門方向へ暗がりの道路を単身歩行する○山○子(当二一年)の姿を認め、折柄辺りの人影がないのを幸い、強いて同女を姦淫しようと企て、直ちにHが同女の跡を追いかけ同町○○区○○○○番地○井○二方前路上において同女に追いすがり呼びかけたところ、これに驚いた同女が大声で助けを求めるや、矢庭に手で同女の口を押さえあるいは逃れようとする同女の体を抱きかかえ、一方少年において同女に対し「静かにしろ」と言いつつその胸元に所携の刃渡り約一三糎のクリ小刀を突きつけ、強いて同女を姦淫しようとしたが、同女が必死に抵抗したため遂にその目的を遂げなかつたけれども、そのさい少年が前記クリ小刀をもつて同女の右胸部を突き刺し、同女に対し全治まで約四ヵ月を要する右胸部刺創の傷害を負わせたものである。
(法令の適用)
刑法一八一条、第一七七条、第六〇条
審判の結果、少年の素質と環境、事件の内容、少年の境遇、経歴、教育の程度、不良化の経過と程度、心身の状況その他を綜合考察して、この際少年に対して少年院の矯正教育を施し、もつて社会適応性をもたしめるのを相当と認める。そこで、少年法第二四条第一項第三号、少年審判規則第三七条第一項、少年院法第二条により、少年を中等少年院に送致することとし、なお押収にかかるクリ小刀一丁(昭和三八年押第一六三号の一)の没取について、少年法第二四条の二第一項第二号、第二項を適用して、主文のとおり決定する。
(裁判官 吉本俊雄)